パーキンソン病の人が知っておきたいこと:日常生活の工夫・難病申請など
パーキンソン病の人は日常生活を送る際にも症状と上手に付き合って行く必要があります。ここでは日常生活の工夫や難病申請の方法など知っておくとよいことを解説します。
1. 日常生活を過ごしやすくするための工夫

パーキンソン病は、病気の進行とともに体を動かしにくくなる症状が強くなり日常生活にも支障をきたすようになります。日常生活に取り入れることで楽になる工夫をいくつか紹介します。
食事の工夫
食事を気持ちよく行うためには工夫してほしいことが2つあります。一つ目は口の中の食事を飲み込む際の工夫で、もう一つは食事に使う食器の工夫です。
【食品・食べ方の工夫】
パーキンソン病は、病気が進行すると食べ物の飲み込みが悪くなることがあり、食べ物が喉頭や気管に入る誤嚥(ごえん)が起こる原因になります。誤嚥は誤嚥性肺炎の原因になってしまい、治療が必要になります。誤嚥は避けなければなりません。ではどうすればいいでしょうか。工夫の例を挙げます。
- 食事にトロミをつけて喉越しを良くする
- 硬いものや大きいものは小さくしたりペースト状にして食べやすくする
- 少しずつ口に運び飲み込むようにする
- ゆっくり食べる
食事にトロミを付けると喉越しが良くなり、誤嚥の防止に期待ができます。さらに大きいものや固いものは飲み込みにくく誤嚥してしまうことがあるので、小さくしたりペースト状にしたりして食べやすくするとよいでしょう。

食事をするときは、少しずつ口に運んで飲み込むようにすることやゆっくり食べるように意識付けをしてください。早く食べてしまう習慣がある人でも日々の意識付けで良くなると思います。周りの人の協力を得ながら取り組んでみるとさらに効果的かもしれません。
【食器の工夫】
パーキンソン病の人は、食事の内容や食べ方だけではなく食器にも工夫をすることで食事をより楽しむことができます。パーキンソン病の人は病状の進行とともに動作がしづらくなり食事も以前のようには出来なくなることがあります。具体的には箸を使ったり食器を持ち上げることにも不自由さを感じるようになります。こうなると本来は楽しみを与えてくれる食事が苦痛にすら感じてしまうこともあるかもしれません。
食べにくさを解消するには箸など複雑な動きが必要なものからスプーンやフォークのように使いやすいものに変えてみると効果があると思います。また食器をテーブルにおいたまま食事をする場合には食器の下にすべり止めの効果があるようなものを敷くと食べやすさはますでしょう。食事は生活を豊かにしてくれます。その時間を最大限に楽しめるように工夫をしてみてください。
トイレの工夫
トイレは狭いことが多いので付き添いの人が十分に手助けが出来ないこともあります。その分環境をあらかじめ整えておくことが重要です。トイレの工夫を環境面と習慣面の2つの視点から解説します。まず以下のことが大切です。
- 洋式トイレの方が使いやすい
- 照明は明るい方がよい
- 動けなくなったときにわかるようなブザーがあるとよい
- 早めにトイレに行く方がよい
トイレは、和式より洋式の方が立ったり座ったりするのが簡単です。また座った状態でも姿勢を安定させるためにつかまりやすい位置に手すりを備え付けておくとさらによいでしょう。

トイレの照明にはやや暗い電球が使われることもありますが、足元などが見えづらいと躓く原因になります。このために照明が暗い場合には明るい照明に変えておくと転倒予防に役立つことも期待できます。
パーキンソン病の人はトイレの便座から立ち上がれなくることにも注意が必要です。トイレは一人で入るので中の状況はわからないことも多いので、動けなくなったときには周りの人に知らせるための方法を工夫する必要があります。そのためにトイレで何か起こった時に知らせる方法としてブザーなどを取り付けておくことも検討してみてください。
尿意や便意を感じると人間どうしても焦ってしまい、躓いたり転んだりするアクシデントに見舞われやすくなります。そのため、できるだけ早めにトイレに行く習慣をつけておくことをお勧めします。他では、尿意や便意がなくても時間を決めてトイレにいくという方法も有効な可能性があります。自分の生活にあった方法を見つけてみてください。
入浴時の工夫
入浴は疲れを癒やす効果が期待でき気分のリフレッシュもはかれます。浴室は注意が必要な場所の一つですがいくつかの工夫をすることで、入浴を楽しむことができます。
- 浴槽に移動するときの注意点
- 身体を洗う時の椅子の選び方
- 床で滑らないようにする工夫
浴槽に入る時には足を大きくあげて入らなくてはならないのでバランスを崩しやすいです。このために、壁につかまる用の手すりなどを設置しておくと安全に浴槽に入ることができます。手すりの設置が難しい場合には、高めの椅子を浴槽の横につけて一度その椅子に座ってから浴槽に移動すると身体へ負担をかけずに移動できる効果が期待できます。
身体を洗う際に使う椅子にも工夫があります。椅子は低いものよりは高いものを選んだ方が立ち上がりなどの動作がスムーズにできます。風呂用の椅子は簡単な作りになっているものが多いのですが、できるだけ肘置きなどがついているものがよいと思います。肘掛けがある方が身体を預けられる場所が多くなるので姿勢を保ちやすくなります。
風呂場はどうしても洗剤やお湯のせいで滑りやすくなっています。滑って転倒してしまうと怪我の原因にもなりかねないので滑りにくい環境を整えるのが良いです。床を滑りにくくするには、すべり止め用のマットを敷くことなどが効果的でしょう。
睡眠の工夫
パーキンソン病の症状には睡眠障害があります。睡眠障害が起こると1日のリズムは崩れ疲労も溜まりやすくなるなどの悪影響があるのでできるだけ良質な睡眠をとることが大切です。以下がよりよい睡眠をとるためのポイントです。
- 規則正しい生活
- 寝具の工夫
- 適度な高さのベッドがよい
- 寝床は布団もしくは硬めのマットレスが寝返りを打ちやすい
パーキンソン病の人のみならず質のよい睡眠には規則正しい生活を送ることが大切です。就寝時間が極端にバラつくようならば寝付きが悪く次の日にも引きずってしまいます。そして次の日には日中に多くの睡眠をしてしまい夜は眠れないという悪循環にもなりえます。就寝時間だけの調整ではなく食事などの他の日常生活もできるだけ時間をきめる方がリズムを整えるにはよいでしょう。
快適な睡眠が送れている人には注意点はないのでしょうか。睡眠中にも注意しなければならないことがあります。できれば寝床は布団ではなくベッドの方がいいでしょう。ベッドの場合は一度腰かけることもできるので布団を地べたに敷くよりは姿勢を変えるのが楽です。
寝具ではパーキンソン病の人は寝返りを打ちにくくなっているので床ずれ(褥瘡)が出来やすくなっています。このために、できるだけ寝返りを打ちやすいように布団や硬めのマットレスがよいと考えられます。やわらかいマットレスは身体が沈み込んでしまい寝返りが打ちづらいからです。
パーキンソン病の人は睡眠時にいくつかの工夫をすることで安眠を得ることができます。ここで挙げたものは一つの例であり、一人ひとりで違う方法が身体に合うこともあります。自分にあったやり方を見つける参考にしてみてください。
移動するときの工夫
パーキンソン病の人の人は病状の進行とともに足がすくんでしまって動けなくなるという症状が現れます。足がすくんでしまうと移動がままならない状況に陥ってしまいます。どうすればいいのでしょうか。
詳しいことは分かってはいないのですが、足がすくんでしまうパーキンソン病の人が階段をすっと登ったり等間隔に引かれたラインを一歩ずつまたぎながら上手く歩いたりする現象があります。この現象を逆説的歩行と呼んだりします。この逆説的歩行を利用して生活の導線にラインを引いたりして移動を行う助けにすることができます。もし逆説的歩行がみられる人の場合には試してみてもよいと思います。
2. 薬物療法で知っておきたいこと
薬物療法を行っている時にはいくつか注意しないといけないことがあります。パーキンソン病の治療は薬物療法が中心になりますが、薬の調整は難しく副作用が出やすかったりもします。パーキンソン病の人は薬をずっと使うこともありうるので薬の知識を深めることはよりよい生活を送るためにも重要です。
病気が進行すると薬の効果が弱くなる:ウェアリング・オフ現象
パーキンソン病は、薬物療法を開始すると効果が現れて安静時の身体の震え(安静時振戦)や身体の動かしにくさなどの症状は改善します。薬物療法は、主にパーキンソン病の原因であるドパミンの不足を薬で補うことで症状を改善していますが、根本となるドパミンを出す細胞の減少をくいとめている訳ではありません。つまりパーキンソン病の進行を止めている訳ではないのです。
このため時間の経過とともに必要となるドパミンの量は増えていき、薬への依存度が増します。このため薬によって補うドパミンの量が不足する時間帯が出来てしまい1日の中でも症状の良いときと悪いときとなって現れます。
この現象をウエアリング・オフ現象といいます。ウェアリング・オフ現象が起こると、極端な場合ではさっきまで問題なく身体を動かしていたのに突然身体が動かなくなるといったこともあります。
ウェアリング・オフ現象に対してはドパミンを補う薬の他にドパミンが分解されにくくしたり吸収量を上げたりする薬を併用して薬の効果がある時間を延ばして治療の効果を高めます。
パーキンソン病治療薬の効果が強いために出る症状:ジスキネジア
パーキンソン病治療薬の効果が強く出てしまい身体が意に反して勝手に動いたりしてしまうことがあります。この症状をジスキネジアといい、筋肉に異常に力が入ることが原因です。ジスキネジアの症状は、主に以下のようなものがあります。
- 体幹をくねらせてねじるような動きをする
- 繰り返して唇をすぼめる
- 口をもぐもぐとする
- 腕をねじるような動きをする
ジスキネジアは、血液中での薬の濃度が高くなっているときに現れると考えられています。症状が軽い場合には様子をみることもありますが、日常生活にも影響が及ぶほど重い場合には、薬の量を調節します。
自己判断での薬の中断は危険
薬の効果がないまたは副作用がでたと自己判断して、薬を飲むのをやめてしまう人がいます。パーキンソン病治療薬では効き目が弱かったり副作用が出たりすることはあるのですが、それを理由にして自己判断で薬を中断するのは危険な行為です。
パーキンソン病治療薬を急にやめてしまうと症状が悪くなったり悪性症候群という危険な副作用が現れたりします。このため薬の効果について不十分だと感じたり副作用が心配なときには、医師や薬剤師に相談して薬の量の調整または薬の変更などをしてもらうようにしてください。くれぐれも自分で薬の量を判断するべきではありません。
飲み合わせの悪い薬がある
パーキンソン病治療薬と飲み合わせが悪い薬があります。薬同士の相性が悪いと薬の効果が弱くなったりして症状が悪化するなど好ましくない結果が現れる恐れがあります。どのようなことに注意をすれば良いのでしょうか?
抗パーキンソン病薬の効果を弱める薬には吐き気止め(メトクロプラミド:商品名プリンペラン®など)や
- 市販薬などを安易に内服しない
- かかりつけ以外の医療機関を受診するときにはお薬手帳を持参し活用する
市販薬にもパーキンソン病治療薬の作用に影響するものが含まれていることがあります。「市販薬なら大丈夫だろう」という考えが自分の身を危険にさらしてしまうのです。したがって、できることなら病状を把握している医師から処方を受けるのが安全です。
とはいえどうしてもかかりつけの医療機関以外から薬を手にしなければならないこともあると思います。そのときにはお薬手帳を持参して医師に「自分はパーキンソン病でこのような治療をしている」と説明するとよいでしょう。そうすることで同時に使ってはいけない薬を避けることができます。もしお薬手帳が使えない状況ならば自分はパーキンソン病で治療をしていると告げるようにしてください。それだけでも全く違う配慮がとられると考えられます。
パーキンソン病の治療に用いる薬は絶妙な加減で決められています。その分少しのことにも影響を受けやすいことを頭の片隅においておきましょう。
3. パーキンソン病は難病?医療費助成が受けられる?
パーキンソン病は、国が定める難病(指定難病)で、一定の条件を満たす人は医療費の助成を受けることができます。ここでパーキンソン病の人が受けられる指定難病に対する医療費の助成などについて解説します。
パーキンソン病とパーキンソン症候群の違い
パーキンソン病は、脳が出す指令が身体に上手く伝わらないために、スムーズな動作ができなくなる病気です。パーキンソン病の原因は、脳の中でも中脳の黒質という場所にあるドパミン(
似た症状が現れる病気にパーキンソン症候群があります。パーキンソン病とパーキンソン症候群はどうちがうのでしょうか。
まずパーキンソン病の症状は、安静時の震え(安静時振戦)や腕や足がスムーズに動かない(筋強剛)、動作の開始ができないまたはゆっくり(無動・寡動)などです。
これらの症状は特徴的なのでパーキンソニズムといいますが、他の病気でも現れることがあります。
【パーキンソニズムを起こす主なもの】
- 脳または神経の病気
- 脳血管障害
- 薬の副作用
感染症 - 脳炎
- 梅毒
上にあげたものはパーキンソニズムをおこす主な原因で、これらが背景にありパーキンソニズムが起きているものをパーキンソン症候群といいます。
逆説的な話なのですが、パーキンソン病を診断するときにはパーキンソニズムをおこすものがないかを調べ上げることが条件になります。
指定難病とは?
パーキンソン病は指定難病です。指定難病とはなんでしょうか?
指定難病は厚生労働省によって指定されている病気です。指定難病は、原因が不明であることや治療法が確立されていないなどの条件をもとにして指定されています。指定難病になった人は、定められている重症度(病気の重さ)を超える場合には医療費の助成を受けることができます。次にパーキンソン病の人が助成を受けられる条件について説明します。
どんな場合に医療費の助成が受けられる?
どんな場合に医療費の助成が受けられるのでしょうか。パーキンソン病と診断されていてもみな助成を受けられる訳ではありません。下の重症度分類で助成が受けられる人が決まります。重症度分類はやや難しいのですが、紹介します。
【重症度分類】
ヤールの重症度分類で3度以上かつ、生活機能障害度2度以上を対象とする。
- ヤールの重症度分類
- 0度:パーキンソニズムなし
- 1度:一側性パーキンソニズム
- 2度:両側性パーキンソニズム
- 3度:軽〜中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害あり。日常生活に介助不要
- 4度:高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能
- 5度:介助なしにはベッド又は車椅子生活
- 生活機能障害度
- 1度:日常生活、通院にほとんど介助を要しない
- 2度:日常生活、通院に部分的な介助を要する
- 3度:日常生活に全面的介助を要し独立では歩行起立不能
パーキンソン病のヤールの重症度分類や生活機能障害度は難しい内容です。これを理解しなければ助成の申請を出来ないわけではないので安心してください。重症度を判定するのは医師です。担当医が病気の状態を把握しているので助成が受けられるかどうかを相談してみてください。
また重症度分類を満たさない場合でも高額な医療を継続することが必要と判断されるときは、医療費助成の対象になることもあります。
難病の医療費助成:医療費受給証の交付
パーキンソン病は国が指定する難病に該当します。医療費受給者交付を得ることで医療費の助成(負担額の軽減)を受けることができます。
難病の医療費受給者証の申請は大まかに以下の手順です。自治体ごとに準備する書類が異なりますので、詳しくは住んでいる都道府県の保健所にお問い合わせください。
- 医療費受給者証の申請に必要な以下の書類を準備します。(カッコ内は入手可能な場所)
- 臨床調査個人票(厚生労働省のホームページ、福祉保健局のホームページ、市区町村の窓口)
- 特定医療費支給認定申請書(福祉保健局のホームページ、市区町村の窓口)
- 個人番号に関わる調書(市区町村の窓口)
- 住民票(市区町村の住民票窓口)
- 市区町村税課税証明書(市区町村の住民税窓口)
- 健康保険証の写し
- その他必要なもの
- 臨床調査個人票の記入を医師(※)に依頼します。臨床調査個人票は難病であることの証明(診断書)でもあるので、医師による記入が必要になります。
- 上記の書類を揃えて、住んでいる市区町村窓口で申請します。指定難病として認定されると、医療券が発行されます。要件が満たされないと判断された場合には不認定通知が発行されます。認定の決定は、指定難病審査会で行われ、結果が出るまでには3ヶ月程度の時間がかかります。
※臨床調査個人票は難病の臨床調査個人票の記入を都道府県知事から認定された医師しか作成できません。この都道府県知事から認定された医師を指定医と呼びます。主治医が指定医であるかは主治医に直接問い合わせてください。各自治体の福祉保健局のホームページなどにある一覧などでも確認できます。
助成される内容は?
医療費の助成が適用されるのは難病の治療にかかった費用のみです。以下は例になります。
- 指定医療機関で難病の治療に要した窓口の自己負担金
- 保険調剤の自己負担額
- 訪問看護ステーションや介護保険の医療サービスを利用したときの利用者負担額
実際にはどんなものが助成の対象になるのか判断が難しいときがあります。その場合は担当する部署に前もって助成されるかどうかを聞いて調べておくと確実です。
自己負担額はどれくらいになる?
自己負担額額の限度額は世帯の市町村住民税により変わります。詳細な限度額は市町村に問い合わせるのもよいですし、難病情報センターのウェブサイトなども参考になります。
申請から交付までにどのくらい時間がかかる?
医療費助成を申請してから交付までには約3ヵ月程度かかり、審査に時間がかかった場合はさらに延びることがあります。申請から交付までの期間にかかった医療費は助成の対象になるので申請をすることで払い戻しを受けることが可能です。
認定に有効期限はある?
医療費助成の認定には有効期限があり、申請した日から原則1年です。その後も継続して治療をする場合には更新の手続きが必要になります。