ぱーきんそんびょう
パーキンソン病
脳からの命令を伝える物質のドパミンが不足し、体が自由に動かなくなる病気。排便・排尿障害やうつ、認知症を起こすこともある。
15人の医師がチェック 220回の改訂 最終更新: 2018.02.09

Beta パーキンソン病のQ&A

    パーキンソン病はどのような病気ですか?

    パーキンソン病は、神経変性疾患と呼ばれる病気の一種です。脳の中脳と呼ばれる部分にある、「ドパミン作動性神経細胞」が脱落していくことにより生じます

    体のふるえや、動作の遅さ、筋肉のかたさや転びやすさといった点が主な症状です。

    パーキンソン病ではどのような症状がみられますか?

    パーキンソン病では、ふるえや動作の遅さ、筋肉のかたさや転びやすさといった点が主な症状です。歩行の際には前かがみの姿勢になってしまうことも特徴的です。歩く際の歩幅は小さくなり、これを小刻み歩行と呼びます。いったん歩き始めると小走りのようになり、突進するような形で、止まりづらくなることもあります。

    また、歩行開始の際や方向転換の際、どうしても最初の一歩が踏み出せず、足が地面にはりついたようになってしまって動けないことがあります。これをすくみ足と呼びます。

    パーキンソン病はどのように診断するのですか?

    「血液検査でこの値が上昇しているからパーキンソン病」と、簡単に診断できるというわけにはいきません。血液検査や、頭部CT、頭部MRIといった画像検査でも特に異常を示さないのがパーキンソン病の特徴です。

    その一方で、これらの検査はパーキンソン病と似た症状を出す別の病気と区別するために必要ですので、診断の際にはほぼ必ず行われます。

    パーキンソン病の診断は、基本的には症状からつけられることになります。しかし近年、MIBG心筋シンチグラフィーや、ドパミントランスポーターシンチグラフィーといった、特殊な画像検査でパーキンソン病の診断をつけることができるようになってきています。詳しくは次の項目で説明します。

    パーキンソン病の治療について教えてください。

    パーキンソン病は中脳でドパミン作動性神経細胞が脱落することが原因で発症します。そのため、「ドパミンを補う」薬物治療が治療の中心となります。

    基本となるのがレボドパ製剤・ドパミンアゴニストというものです。その他にも多くの薬剤がありますが、基本的にはこれらの薬の効きを良くするために使われている薬と考えることができます。

    薬物治療がうまくいかない場合は、手術を行うことがあります。どんな人でも手術をすれば良くなるというわけではなく、手術の適応となる人はごく一部に限られています。適切な人に行われれば、非常に効果的な治療法です。

    レボドパ製剤にはどんな副作用がありますか?

    レボドパ製剤を服用すると、目立った副作用がない一方で、動きが悪いという症状が改善する期間、いわゆるハネムーン期が訪れます。パーキンソン病の治療期間が長くなると、段々と治療効果が弱くなり、副作用が目立つようになってきます。

    重要な副作用として以下のものがあげられます。

    ①ウェアリングオフ現象(wearing-off現象)
    レボドパ製剤を1回内服した後、効果がすぐに減弱してしまう現象です(ウェアリングオフとは、すりきれるという意味です)。効果が切れてしまうと、ふるえ(振戦)や筋肉のこわばり(筋強剛)などの症状が現れます。ウェアリングオフが出始めたばかりの頃は、効果の切れ方がゆっくりであり、「あ、薬が切れるな」と患者さんは予測できます。しかし、だんだんひどくなってくると、突然効果が切れて動けなくなってしまうことがあります。

    ②オン・オフ
    オン・オフは、レボドパ製剤の効果時間とは無関係に、スイッチが入ったり切れたりするように症状が急激に変動してしまう現象です。急激なレボドパ製剤の血中濃度の変化により、ウェアリングオフがオン・オフのように見えてしまうこともあります。

    ③ジスキネジア
    レボドパ製剤の血中濃度が高い時に、手足や口など体が勝手に動いてしまう現象です。程度が軽ければ気にならないのですが、動作の邪魔になるほど激しくなることもあります。

    レボドパ製剤を使う上での注意点について教えてください

    まず、レボドパ製剤を使う上での基本的な考え方についてお話します。 病気の早期のうちはレボドパ製剤で症状をうまくコントロールできます。ですが、上記のような症状が出てくるということは、レボドパの血中濃度が少し変化するだけで症状が変動してしまうということを意味しています。すなわち、症状のコントロールはだんだん難しくなってきてしまいます。

    こういった状態を招く因子は、上で述べた治療期間の長期化に加え、以下のようなものが考えられています。

    • 若年発症:若くしてパーキンソン病を発症してしまう方は、高齢で発症する方に比べ、こういった症状がでやすいです。
    • 1日投薬量:レボドパ製剤の量が多いほど、症状の変動が激しくなりやすいです。

    副作用が出た際のレボドパ製剤の服薬の調整については、ウェアリングオフが出ればレボドパ製剤を増やすことを検討する必要がありますが、ウェアリングオフとジスキネジアの両方がみられることもあります。

    ジスキネジアはレボドパ製剤の血中濃度が高いことが原因ですが、だからといってすぐに薬を減らすわけではありません。ジスキネジアはジスキネジアが強い場合は、まずジスキネジア誘発作用が強いセレギリンやエンタカポンをまず減らしていきます。それでもジスキネジアが強ければ、レボドパの1回あたりの量を減らし、その代わりに頻回投与にするなどの対策をとります。それでも良くならなければレボドパの量を減らして、その分ドパミンアゴニストを増やしていかなければなりません。このように薬の飲み方を大幅に変えてしまうと、動きが悪くなってしまうことにつながりますから、患者さんとよく相談しなければいけません。

    実は、ジスキネジアとウェアリングオフのどちらが困るか患者さんにお聞きすると、「ウェアリングオフの方が困る」という声のほうが大きいように思います。ウェアリングオフでは、ひどい時には全く動けず、ご飯も食べられない、トイレにも行けない、というようなことになってしまうことがあります。

    ジスキネジアも人前でも体が勝手に動いてしまうので恥ずかしいという声は聞きますが、とは言っても動けないよりましだ、という人が多いです。患者さんそれぞれ色々な考えをお持ちですから、ご自分の考えを主治医に伝えて今後の治療方針を一緒に考えていくことが重要だと思います。

    レボドパ製剤の副作用に対してどんな工夫や対処ができるでしょうか

    薬を調整するためには、医師が患者さんの普段の状態を知ることが重要です。いつ動けなくなってしまうのか、いつジスキネジアが出てしまうのかなど、毎日時間とともに日記のように記録していただけると、治療を考える際に非常に参考になります。病院によっては症状日誌という形で配布しているところもあります。

    レボドパ製剤を服薬する際の工夫をご紹介します。

    レボドパ製剤は食後に内服するよう指示されていることが多いと思います。食後に内服すると決まっていれば薬を飲むのを忘れることが少ない上に、薬の吸収がゆるやかになるなど、良い点も多いです。

    ですが、ウェアリングオフが出てしまっている状況では、必ずしも毎食後1日3回内服、ということに拘る必要はないと思います。薬の効果がすぐに切れてしまうのであれば、内服回数を多くする(例えば1日5回)ことも可能です。朝起きた時に動けないのであれば、起床直後に薬を飲んで、動けるようになるのを待つという手があります。また、食前にレボドパ製剤を服用すると、食後よりも薬の吸収が良くなるため効きが良い可能性があります。(あまりに空腹だと吸収が悪いので一概には言えないのですが…)

    どうして食前に内服すると吸収が上がるのかというと、レボドパは酸性下でないと吸収されないからです。胃酸が十分になければ吸収されません。したがって、胃薬(=胃酸を抑える働きを持つ)を飲んでいると、レボドパの効きが悪くなることがあるので注意が必要です。レモン果汁と一緒にレボドパ製剤を服用すると効果があると言われています。

    さらに、レボドパ製剤を水に溶かして(懸濁液)服用することも吸収を促します。

    パーキンソン病の治療薬「レボドパ製剤」について教えてください

    パーキンソン病は、ドパミンを身体の外から補うことが必要になりますが、ドパミンを飲んだだけでは脳の中にドパミンが入っていきません。血液脳関門というバリアがドパミンが脳に至るのを防いでいるのですが、レボドパという物質は血管脳関門を超えることができます。レボドパは脳に至ったのちに分解されてドパミンになります。レボドパは体内で分解されやすいために、脳以外の場所での分解を防ぐ薬を一緒に加えた薬が使われることがほとんどです。

    実際に使われている薬の例としては、メネシット®、ネオドパストン®、マドパー®、イーシー・ドパール®、ネオドパゾール®などがあります。

    長期間レボドパ製剤を服用していると、ウェアリングオフ現象やジスキネジアといった副作用がみられます。このために薬剤の調整が難しくなることがあります。詳細は別の項目で説明します。

    パーキンソン病の治療薬「ドパミンアゴニスト」について教えてください

    パーキンソン病ではドパミンを作る中脳黒質の神経細胞が変性してしまう病気です。

    脳内でドパミンの作用が発揮されるためには、ドパミン受容体という部分にドパミンが結合することが必要です。ドパミンアゴニストは、ドパミンではないのですが、ドパミンの代わりにドパミン受容体に結合して、ドパミンの作用を発揮します。

    かつては麦角系ドパミンアゴニストというものが使われていましたが、心臓弁膜症の副作用が報告されて以降、新しく開発された非麦角系ドパミンアゴニストが使われるようになっています。非麦角系ドパミンアゴニストにはプラミペキソール(ビ・シフロール®、ミラペックス®)、ロピニロール(レキップ®)、ロチゴチン(ニュープロパッチ®)などがあります。なお、ロチゴチンのみ内服薬ではなく貼付剤です。

    因みに麦角系ドパミンアゴニストにはブロモクリプチン(パーロデル®)、ペルゴリド(ペルマックス®)、カベルゴリン(カバサール®)などがあります。

    ドパミンアゴニストの中でも、これまでの速放剤(効果が現れるのも消えるのも速い薬)に加えて、徐放剤(効果が現れるのも消えるのもゆっくりな薬)が発売されています。徐放剤はドパミン受容体を持続的に刺激することで、安定した効果が期待されています。

    その他、アポモルヒネ(アポカイン®)という薬も2012年より使えるようになりました。これは皮下注射薬なのですが、専用の電動注射器を用いて患者さん自身に注射してもらう薬です。オフ時に注射することで、すみやかにオフ症状を軽減する効果が得られます。効果は一時的なので、オフ症状が強い時にレスキュー的に使うとよいとされています。機械の操作はやや複雑で、しかも注射ということもあり患者によっては抵抗感がありますが、有効性の高い治療薬です。

    非麦角系ドパミンアゴニストの主な副作用には日中の過眠、突発性睡眠、幻覚などがあります。頻度が高いために危険な作業、自動車の運転などは控える必要があります。自動車の運転を控えるよう説明しても守らず、突発性睡眠のために事故を起こしてしまった患者さんもいらっしゃいます。

    薬による治療を始める際、どうすればよいかは日本神経学会のパーキンソン病治療ガイドライン(2011年)に詳しく記載されています。ガイドラインは絶対に守らなければならないものではないですが、おおよその参考になります。

    ガイドラインでは、薬による治療が必要な場合に、以下の使用が推奨されています。

    • 高齢、認知機能障害、精神症状がある場合や早急に症状を改善させる場合はレボドパ用いる
    • 上記以外である場合はドパミンアゴニストを用いる

    ドパミンアゴニストで効果が得られない場合は、レボドパを追加する必要があります。パーキンソン病治療の中心はレボドパになります。

    レボドパ製剤とドパミンアゴニスト以外にはどのような治療薬がありますか?

    レボドパ製剤とドパミンアゴニストの2つの薬剤以外には以下のような薬が使われることがあります。

    (1)ドパミン遊離促進剤
    ドパミン神経からドパミンが分泌されるのを促進します。症状がまだ軽い段階で、最初にこの薬が使われることもあります。さらに、L-ドパ長期服用時の副作用であるジスキネジアを抑える効果も期待されています。この薬の中ではアマンタジン(シンメトレル®)が有名です。アマンタジンはインフルエンザの薬としても用いられます。副作用としては、幻覚や妄想など現れることがあります。

    (2)MAO-B阻害剤
    MAO-Bとは、脳内でドパミンを分解する酵素です。この酵素の働きを邪魔することで、L-ドパ製剤の効果を持続させます。このたぐいの薬の中でにセレギリン(エフピー®)があります。 ジスキネジアなどのL-ドパ製剤でみられる副作用がこの薬によって増強されることがあります。

    (3)COMT阻害剤
    L-ドパを、脳に入る前に体内で分解してしまうCOMTという酵素の働きを邪魔することで、L-ドパ製剤の効果を持続させます。 エンタカポン(コムタン®)が用いられます。L-ドパ製剤にエンタカポンを配合した薬も発売されており、スタレボ®という名前で発売されています。 これもMAO-B阻害薬同様、L-ドパ製剤の副作用を増強しうるとともに、赤みがかった尿が出ることがあります。尿の着色については特に有害というわけではありません。

    (4)抗てんかん薬
    ゾニサミドは、抗てんかん薬としてよく用いられていました。パーキンソン病にてんかんを併発した患者さんにおいて、ゾニサミドを投与したところ、パーキンソン症状が改善したことから、パーキンソン病にもゾニサミドは有効ではないかということで臨床試験が行われ、有効性が確かめられました。どうしてパーキンソン病に効果があるのかはまだはっきりしていませんが、ドパミンの合成を促進する作用があることが確かめられています。

    ゾニサミドは抗てんかん薬としてはエクセグラン®という名前ですが、パーキンソン病の治療薬としてはてんかんで使うよりも少ない量で効果があるために、薬の量を変えてトレリーフ®という別の名前で発売されています。

    (5)アデノシンA2A受容体拮抗剤
    A2A受容体拮抗剤はドパミンとは関係のない仕組みにより効果をあらわす新しいタイプのパーキンソン病治療薬です。この類の薬の例としてイストラデフィリン(ノウリアスト®)が使われています。 元々、カフェインを摂取しているとパーキンソン病を起こしにくいという研究がありました。カフェインはアデノシンA2A受容体をブロックする働きがあるため、それをヒントにして開発されたと言われています。

    運動症状の改善、特にオフ時間が長くなってしまった患者さんの症状を良くする効果が期待されています。

    (6)抗コリン剤
    実は最も古くから用いられてきたパーキンソン病治療薬です。パーキンソン病ではドパミンが減少していますが、そのために相対的に作用が強まってしまっているアセチルコリンという物質の働きを抑えるために使います。特にふるえ(振戦)に対して有効だと考えられています。

    数多くの薬剤が使われていますが、代表的なものにトリヘキシフェニジル(アーテン®)、ビペリデン(アキネトン®)、ピロヘプチン(トリモール®)、プロフェナミン(パーキン®)などがあります。 若い方で症状がふるえ(振戦)しかない時は、他の薬は使わずこの薬だけで治療することがあります。

    (7)ノルアドレナリン補充剤
    パーキンソン病ではノルアドレナリンという物質も減少しているため、立ちくらみなどの症状が現れます。ドロキシドパ(ドプス®)が使われています。ドロキシドパによりすくみ足や立ちくらみなどの症状が改善されます。

    パーキンソン病の診断、鑑別にMIBG心筋シンチグラフィー検査は有効ですか?

    心臓の動きは自律神経系で調節されています。MIBG心筋シンチグラフィーは、その心臓の自律神経(その中でも交感神経)の働きをみる検査です。もちろん元々は心臓の病気の検査に使うべく開発された検査なのですが、パーキンソン病では心臓を含む全身の自律神経系に異常が出ることから、この検査でも異常が出ることがわかっています。そのため、現在はパーキンソン病(およびレビー小体型認知症)の診断に非常に有用とされています。

    MIBG心筋シンチグラフィー検査では、まず123I-MIBGという物質を安静時に注射します。その15-30分後(早期像)と3-4時間後(後期像)の2回、画像を撮影します。パーキンソン病の人では心臓に集積が見られない(画像上変化がない)場合が多いことがわかっています。

    パーキンソン病の発症早期には異常が出ないことがあるので、異常はないがパーキンソン病の可能性が否定できない場合に、しばらく期間をおいてからもう一度検査をすることがあります。

    また、多系統萎縮症やアミロイドーシスなどの他の病気でも心臓に集積しないことがあるため注意が必要です。

    MIBG心筋シンチグラフィー検査は、パーキンソン病とパーキンソン病に似た症状が現れるパーキンソン症候群を鑑別するための確定検査はないので、検査や身体所見を総合して診断されます。

    パーキンソン病の非運動症状について詳しく教えてください

    パーキンソン病は全身に様々な症状を呈する病気であり、中核となるのは運動症状ですが、最近「非運動症状」と呼ばれる様々な症状が注目されるようになってきました。中核症状ではないために、たいしたことはないと思われるかもしれませんが、実際はそうではなく、患者さんは運動症状よりもむしろ非運動症状に苦しめられることもあるようです。症状は非常に多岐にわたるため、全てを網羅することは難しいですが、代表的な症状について取り上げていきます。

    (1)便秘
    ありふれた症状ではありますが、パーキンソン病の患者さんは軽度なものも含めるとほぼ全員が便秘を訴えるといってよいと思います。また、運動症状に先駆けて発症すると言われています。

    パーキンソン病は全身に症状が出るとさきほど述べましたが、腸の動きを司る神経の動きが弱くなってしまい、便秘が起こると考えられています。

    対策としては、まずは普通の便秘と同じです。繊維質の食事を摂り、必要があれば下剤を用います。

    (2)排尿障害
    多くはパーキンソン病を発症してから出てくる症状であると考えられています。最も多いのは夜間頻尿、次いで尿意切迫感です。尿失禁がみられることもあります。原因としては、脳内の病変のせいで排尿の際の反射が働き過ぎてしまうことが想定されています。

    (3)起立性低血圧
    パーキンソン病では血圧が低くなることが多いです。血圧が下がると自律神経が働いて血圧を上げようとするのですが、パーキンソン病ではこの働きが障害されています。ひどくなると、立ち上がった時に血圧が下がってしまい、ふらついてしまったり、倒れてしまったりすることがあります。特に入浴の際は注意が必要で、浴槽から立ち上がる時に血圧が下がり、倒れて頭を浴槽にぶつけてしまったり溺水してしまったりということも考えられます。起立性低血圧の方は、立ち上がった直後には血圧が下がりすぎ、そうでない時には逆に血圧が高くなってしまうことがよくあり、治療に苦労することもあります。

    パーキンソン病では発症早期から起立性低血圧が目立つということはあまりなく、その場合にはむしろ多系統萎縮症を疑います。

    (4)嗅覚低下
    パーキンソン病では副鼻腔炎など鼻の病気がないのににおいがわからなくなってしまうということがあります。これはパーキンソン病の症状に先駆けて発症するもので、日常生活で香水やコーヒーなど強いにおいのものがわからなくなっていないかを確認します。ただし、嗅覚低下の頻度はパーキンソン病よりも耳鼻科疾患が原因であることの方が多いので、なかなかこれだけで疑うことも難しいかもしれません。

    (5)睡眠障害
    パーキンソン病では睡眠に問題を抱える人が多いです。特に夜間頻尿などによる中途覚醒(夜間に目が覚めてしまうこと)が多いです。

    また、パーキンソン病ではレム睡眠行動障害という病気がみられることが多いです(詳しくはレム睡眠行動障害のページを参照して下さい)。パーキンソン病患者の半数近くでみられると言われています。これも運動症状に先立ってみられることがあり、早期診断の参考になると言われています。

    さらに、むずむず脚症候群という病気が合併することもあります(これも詳しくはむずむず脚症候群のページを参照して下さい)。この病気では脚がむずむずして不快感を感じる病気です。脚の不快な感覚のせいで眠れないという人もいます。パーキンソン病の10-20%でむずむず脚症候群がみられると言われています。

    レム睡眠行動障害もむずむず脚症候群も治療薬があり、必要があればその薬を試してみることになります。

    (6)日中過眠
    日中に眠気が強くなり、寝てしまうことがあります。上に挙げた睡眠障害が原因であったり、またパーキンソン病が進んできた時にみられたりしますが、パーキンソン病治療薬の副作用であることもあります。

    時に、眠気を感じることなく突発的に眠ってしまうこともあります。特にこれはパーキンソン病治療薬の副作用であることが多いです。

    (7)うつ病
    パーキンソン病ではうつ病を合併することが非常に多く、生活の質が低くなる重大な要因の一つでもあります。特徴的な症状として「やる気がでない」「楽しいと思えることがない」といったものがあります。抗うつ薬の投与が必要になることがあり、必要であれば精神科医の診察を受けます。

    (8)認知症
    パーキンソン病に認知症を合併することもあります。また、パーキンソン病と同じグループの病気にレビー小体型認知症というものがあり、これはパーキンソン病の症状の発症と同時期もしくはその前に認知症が出現するものです。

    注意していただきたいのは、パーキンソン病に認知症が合併することがあるからといって、パーキンソン病の方が全員認知症になるわけではないことです。

    パーキンソン病は運動症状だけでなく極めて多彩な症状を呈しますので、総合的に病態を把握することが大切になります。

    パーキンソン病とパーキンソン症候群の鑑別に必要な検査について教えてください

    パーキンソン病の診断の際には、パーキンソン病に似た症状を出す病気(パーキンソン症候群)ではないことを確認することが非常に重要です。必要となる検査を中心に説明していきます。

    (1)診察-問診と症状の評価-
    パーキンソンを疑った場合には検査の前に病気の状態を詳しく聞かれます。パーキンソン病を診断するには、どういった症状がいつからあるのか、ということを詳しく聞くことが一番重要です。また、飲んでいる薬を確認することも必須です。パーキンソン病に似た症状を副作用で起こしやすい薬というものがあり、そういう薬を飲んでいないか確認します。

    次に症状を確認する目的の検査を必要に応じて行います。

    ◎嗅覚検査
    パーキンソン病では発症前から嗅覚が低下することが知られています。嗅覚のテストとしてOSIT-Jという検査が行われることがあります。12種類の様々なにおいのスティックをかぎ、どれだけにおいが分かるか調べるものです。

    ◎終夜睡眠ポリグラフ検査
    レム睡眠行動異常症があるかどうかを診断に役に立ちます。睡眠時の脳波、呼吸、あごや眼球などの運動、心電図、酸素飽和度などを一晩中測定します。

    ◎ヘッドアップティルト試験
    パーキンソン病では自律神経系の障害から起立性低血圧(立ちくらみ)をきたすことがよくあります。台に乗って60-80°ほど頭を上げ、その状態で血圧や心拍数がどの程度変わるか測定します。健康な方であれば頭が上がっても血圧が保たれるよう自律神経系が働きますが、パーキンソン病の方では血圧が下がってしまいます。

    ◎改訂長谷川式簡易知能評価スケール・ミニメンタルステート検査
    パーキンソン病では認知症を合併することがあります。認知症の簡単な評価のために用います。

    ◎ハミルトンうつ病評価尺度
    うつ病の合併がないか調べるために使います。パーキンソン病ではうつ病を合併する方が多く、生活の質を下げる原因となっています。

    ◎嚥下造影検査
    病気が進んでくると、飲み込みづらさが目立ってきます。飲み込みに問題がないか、造影剤入りの液体を飲んでもらって調べます。

    これらの検査はあくまで症状や合併症を確認するために行うものです。また、診断の参考にはなりますが、診断の決め手とはならないことに注意して下さい。

    (2)血液検査
    パーキンソン病では血液検査で分かりやすい異常が出ることはありません。明らかな異常がある場合には他の原因を考えます。

    ただし、家族性パーキンソン病といって、パーキンソン病の中にはわずかですが遺伝するものがあります。そういった場合に遺伝子検査の目的で血液を調べることがあります。

    (3)画像検査<一般的なもの>
    パーキンソン病を診断する上で、脳の画像の検査は非常に重要です。頭部CT/MRI検査を行います。

    血液検査と同じく、パーキンソン病では画像検査で異常が出ることはほとんどありませんが、この検査は非常に重要です。というのも、パーキンソン病のような症状をきたす他の病気は、画像で異常が出ることが多いからです。

    • 多発性脳梗塞(脳血管性パーキンソニズムの原因となる)

    • 正常圧水頭症

    • 脳腫瘍

    • 多系統萎縮症

    • 進行性核上性麻痺

    • 大脳皮質基底核変性症

    これらの病気の一部は画像で異常が出ることがありますから、こういった病気との区別に役立ちます。多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症は、画像上異常がでないこともあり、経過を注意深く追うことが必要です。

    (4)画像検査<特殊なもの>
    以上の検査で大体診断がつけばよいのですが、実際はなかなかそう簡単にはいきません。その場合には、以下に記す特殊な画像検査を行うことがあります。

    ① MIBG心筋シンチグラフィー
    MIBG心筋シンチグラフィーは、心臓の自律神経(その中でも交感神経)の働きをみる検査です。パーキンソン病では心臓を含む全身の自律神経系に異常が出ることから、この検査でも異常が出る場合があることがわかっています。そのため、現在はパーキンソン病(およびレビー小体型認知症)の診断に非常に有用とされています。

    また、パーキンソン病の発症早期には異常が出ないことがあるので、異常がないがパーキンソン病の可能性が否定できない場合はしばらく期間をおいてからもう一度検査をすることがあります。

    ② ドパミントランスポーターシンチグラフィ
    パーキンソン病(+レビー小体型認知症)は、脳のある部分でドパミン作動性ニューロンという神経細胞が脱落していくことが原因で起きる病気です。この神経には、ドパミンの再取り込みに働くドパミントランスポーターというものがあります。この神経が脱落するとドパミントランスポーターも減少します。ドパミントランスポーターシンチグラフィは、このドパミントランスポーターを画像で評価できるようにしたものです。

    この検査は、パーキンソン病(+レビー小体型認知症)だけでなく、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症といった、パーキンソン症候群を呈する神経変性疾患といわれる病気のグループで異常が出ることがわかっています。逆に、薬剤性パーキンソニズム、脳血管性パーキンソニズム、本態性振戦といった、神経変性疾患ではないパーキンソン症候群では正常な結果が出ます。

    どのような検査かといいますと、MIBG心筋シンチグラフィーと同じく、まず薬を注射します。その上で、3-6時間待ってから画像を撮影します。

    この検査は比較的早期から異常が出ることが分かっており、早期診断に有効かもしれないと言われています。最近開発された検査で、実際に病院で行われるようになってきたのもごく最近です。実際どの程度役に立つか、情報を集めていく必要があります。

    以上、パーキンソン病を疑った時はどのように考えて検査をしていくのかということをまとめました。数多くの検査について説明しましたが、これでも全てを網羅しているわけではありません。また、パーキンソン病を診断するためにはこれらの検査が全て必要なわけでもありません。症状などからどういう病気の可能性が高いか考え、検査を取捨選択していく必要があります。

    パーキンソン病の運動症状について詳しく教えてください

    パーキンソン病は全身に様々な症状を呈する病気です。その症状の中で中核となるのは運動に関する症状です。ここではどのような症状があるのか、代表的な5つの症状(振戦、筋強剛、寡動、姿勢反射障害、歩行障害)について説明します。

    (1)振戦(しんせん)
    パーキンソン病の初発症状は安静時振戦であることが多いです。安静時振戦とは、じっとしている時に手や足がふるえてしまうことです。典型的には、左か右の手から始まり、同じ側の足がふるえ、次に反対側の手がふるえだすといったように症状は進んでいきます。「片側から始まる」というのがパーキンソン病のふるえの特徴で、最初にふるえが始まった側の方が、後からふるえが生じた側よりもふるえはひどいです。

    区別しなければならないものとして、「本態性振戦」という病気があります。高齢者に多く、原因もはっきりしていないのですが、ふるえ以外に特に症状はなく、ふるえが軽いものであれば特に心配する必要もないものです。この本態性振戦では、ふるえは両側対称的で、じっとしている時には目立ちませんが、手を挙げるなどの姿勢をとったとき、動作を行う際などにふるえが目立つようになります。パーキンソン病でも姿勢をとったときにふるえが出ます。姿勢をとった最初はふるえがおさまっていますが10秒ほど経つとふるえが出てくることがあり、これはパーキンソン病に特徴的です。よく本態性振戦の方が、ふるえがあるからパーキンソン病ではないかと心配して受診されることがあります。ふるえのパターンだけでは判断がつかないこともありますが、パーキンソン病の場合、その後の経過で必ず他の症状を合併してきます。

    (2)筋強剛(きんきょうごう)
    患者さんの腕や脚を動かすと、ガクガクガクと引っかかるような抵抗を感じます。これを筋強剛と呼びます。筋肉がこわばっているためにこのようなことが起きます。パーキンソン病以外の病気(パーキンソン症候群)でもこのような抵抗を感じることはありますが、パーキンソン病と違ってガクガクガクという抵抗ではなく一定の抵抗を感じます。最初のうちはご自分で気づくことは難しいかもしれませんが、症状が進むと手足の動かしづらさにつながります。

    (3)寡動(かどう)
    体を動かそうと思っても実際に動かすまでに時間がかかり、ゆっくりした動作しか出来ないことを寡動と呼びます。歩行も含めた日常動作が全般的にゆっくりしたものになります。動作を始めるのが大変になってしまうために、動き自体も少なくなり、例えばまばたきが少なくなったり、手足を動かすのが少なくなったりします。表情も少なくなり、無表情になりますが、これを仮面様顔貌と呼びます。字を書く際も動きが小さくなるために、字が小さくなっていきます(小字症)。

    (4)姿勢反射障害
    普通は少し押されたぐらいでも転ばずに姿勢を立て直すことができますが、パーキンソン病の患者さんは姿勢を立て直せず転んでしまいます。これを姿勢反射障害と呼びます。日常生活では転びやすくなるということで気づかれます。この症状が激しいと、パーキンソン病だけでなく進行性核上性麻痺という病気も疑われます。

    また、歩行の際には背筋をまっすぐ伸ばさずに前かがみの姿勢をとります。

    (5)歩行障害
    歩行の際は寡動のため歩行開始まで時間がかかってしまいます。また、前かがみの姿勢になってしまうことも先に述べたとおりです。歩き始めると、歩幅は小さくなり、これを小刻み歩行と呼びます。いったん歩き始めると小走りのようになり、突進するような動きになり、止まりづらくなることもあります。

    また、歩行開始の際や方向転換の際、最初の一歩がどうしても踏み出せず、足が地面にはりついたようになってしまって動けないことがあります。これをすくみ足と呼びます。最初の一歩を出すのが難しいのに、歩き始めるとその後はスムーズに歩くことができます。すくみ足の対策としては、様々な工夫があります。例えば、床に歩幅に合わせてテープを貼ったり、歩き始めの際に手を叩いてあげたりすると動きやすくなることがあります。パーキンソン病では刺激で動きやすくなるということも特徴で、平地では歩きづらいのに意外と階段はのぼれてしまう、というのもこの特徴の表れです。

    認知症を伴うパーキンソン病とレビー小体型認知症の違いについて教えてください

    現在では、この2つの病気に本質的な違いはないのではないかという考え方が一般的です。どうやって病名の区別をしているのかというと、認知症の発症がパーキンソン病症状の発症前あるいはほぼ同時期の場合にはレビー小体型認知症と呼び、パーキンソン病症状が出てある程度の期間経ってから認知症が出てきた場合には認知症を伴うパーキンソン病としています。パーキンソン病もレビー小体型認知症も同じくレビー小体が脳の中にたまる病気ですので、両者をまとめてレビー小体病と呼ぶこともあります。レビー小体型認知症なのか、認知症を伴うパーキンソン病なのか、なかなか区別がつきづらい場合には、レビー小体病であると医師から説明されることがあります。

    パーキンソン病の認知症症状について教えてください

    パーキンソン病では合併症として認知症がみられることがあります。また、パーキンソン病の仲間の病気としてレビー小体型認知症という病気があります。レビー小体型認知症の認知症症状と、認知症を伴うパーキンソン病の認知症症状に違いはありません。認知症症状の特徴について、以下で説明します。

    ◎幻視

    ありありとした幻視が特徴的です。ひよこがベッド上で遊んでいる、子供が部屋の中にいる、小人が体の上に乗っている、お坊さんがお経を唱えに来ている、など幻視の内容は非常に具体的です。また、壁のシミや床のゴミを虫と間違えてつまもうとすることもあります。この点に着されて開発されたのが、「パレイドリアテスト」というものです(Uchiyama M et al. Pareidolias: complex visual illusions in dementia with Lewy bodies. Brain. 2012;135:2458-69.)。

    パレイドリアテストとは、花の模様や雲の形がヒトの顔や動物の姿に見える画像を用いて幻視を誘発するテストです。通常ならば、人の顔に似ているとは思っても本物ではないと気づくような花の写真でも、レビー小体型認知症の患者さんは画像の一部を見て人の顔だと認識してしまうようです。幻視がないと言われている患者さんでもこのテストでは異常を見いだせることが分かっており、早期診断に役立つのではないかと期待されています。

    ◎症状の動揺性

    認知症の症状が1日の中で、あるいは日によって変わることが特徴です。これには患者さんも家族も明確には自覚していないことが多いです。調子の良い時と悪い時がないか詳しく聞きます。

    ◎薬剤過敏性

    ドネペジル(アリセプト®)などのコリンエステラーゼ阻害薬を使用すると、認知症の症状が悪くなったり薬が効き過ぎたりする場合があります。これを薬剤過敏性と言い、レビー小体型認知症に特徴的な症状です。

    ◎遂行障害

    認知症症状の中核とも言えるものです。複数の手順を含む行動を計画したり行ったりすることができなくなっていきます。日常生活でこの遂行障害が顕著に現れるのは料理です。料理をするには、献立を考え、必要な材料を買い、下ごしらえをして料理をするという複数の手順を含みます。認知症による遂行障害につきましてはこういったことが苦手になってしまいます。遂行障害は、アルツハイマー型認知症でもみられる症状ですが、レビー小体型認知症では非常に目立ちます。

    パーキンソン病はどのくらいの頻度で起きる病気ですか?

    10万人につき100人~150人と、神経変性疾患の中ではかなり多い部類に入ります。

    パーキンソン病の、その他の症状にはどのようなものがありますか?

    パーキンソン病は、動きだけでなく全身に症状が出ることが注目されるようになってきました。主なものを列挙しますと、便秘、排尿障害、起立性低血圧、嗅覚低下、睡眠障害、うつ病、認知症などがあります。

    これらの症状に対しては、それぞれ症状を和らげる薬を使って対処していきます。

    パーキンソン病ではどのような画像検査をするのですか?

    パーキンソン病で行われることのある特殊な画像検査について説明します。

    MIBG心筋シンチグラフィーは心臓の自律神経(その中でも交感神経)の働きをみる検査です。パーキンソン病では心臓を含む全身の自律神経系に異常が出ることから、この検査でも異常が出ることがわかっています。

    ドパミントランスポーターシンチグラフィーは、パーキンソン病(+レビー小体型認知症)だけでなく、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症といった、パーキンソン症候群を呈する神経変性疾患といわれる病気のグループで異常が出る検査です。

    パーキンソン病に、根治薬が開発される見込みはありますか。

    現在の薬物治療や手術治療に加え、画期的な治療法として遺伝子治療の研究が進んでいます。アデノ随伴ウイルスという、人間には特に害を与えないウイルスを用いて、脳内の神経細胞に治療用の遺伝子を導入するというものです。

    また、細胞移植の研究も進んでいます。元々は中絶された胎児からとってきた中脳の細胞を移植する研究が行われていましたが、現在はそれをiPS細胞でできないかという研究が進んでいます。

    パーキンソン病は遺伝する病気ですか?

    パーキンソン病の一部には遺伝するタイプのものもありますが、基本的には遺伝しない病気です。

    特殊な例である、遺伝するタイプのパーキンソン病では、発症年齢が低いことが特徴の一つです。

    パーキンソン病では認知症がみられますか?

    パーキンソン病のような症状が出るのとほぼ同時、もしくは出る少し前から認知症症状が出ることがあります。

    初期症状としては、ありありとした幻視が非常に特徴的です。また、症状が1日の中で、あるいは日によって変わる(症状の動揺性)ことも重要な特徴です。

    この認知症には名前がついていて、レビー小体型認知症と呼ばれます。

    手術でパーキンソン病を治す?「DBS(脳深部刺激療法)」とは?

    パーキンソン病の治療の基本となるのは、薬剤による治療です。しかし、パーキンソン病治療薬だけで良好なコントロールが得られる患者さんばかりではありません。薬自体に効果はあるものの(効果がないのであれば診断を考えなおす必要があります)、症状の日内変動が激しく、困っていらっしゃる患者さんは多いです。

    そういう患者さんに適応となりうるのが、外科手術です。外科手術は、主に定位的破壊術と脳深部刺激療法(deep brain stimulation: 以下DBS)の2つに分けることができます。この2つの内、脳の中で運動の調整に関わる部分に電極を埋め込んで刺激し続けるDBSが、現在は主流となっています。とりわけ、視床下核と呼ばれる場所を刺激する視床下核刺激術が行われることが多いです。その他にも淡蒼球内節、脚橋被蓋核といった場所がDBS治療のターゲットとなります。

    DBSが何故効くのか、はっきりしたことはわかっていません。ただし、「刺激」することで、ターゲットとなる部位を活性化しているわけではないだろうと言われています。むしろ、ターゲットとなる部位の病的な活動を抑えてしまうのではないかと考えられています。

    ◆DBSの効果とは?
    上でも述べましたが、L-ドパ製剤で改善する症状は、DBS治療で改善することが見込まれます。主な効果についてまず説明していきます。

    DBSはオフ症状を改善し、日中動ける時間が長くなります。その結果、症状の日内変動を和らげることが可能となります。また、パーキンソン病治療薬(L-ドパ製剤)を減量することもできるので、ジスキネジアなどの困った動きも減らすことができます。

    しかし、姿勢の異常やすくみ足、転びやすさや嚥下障害なども非常に困る症状ではありますが、これらの症状に対する効果は薄いことがわかっています。

    DBSは上記のようなパーキンソン病の運動症状に効果があると今まで考えられてきましたが、実は非運動症状にも効果があるのではないかと言われています。痛みや睡眠障害などの症状に有効ではないかという報告があります。


    ◆DBSとは、どのような手術か?
    手術は、刺激電極を埋め込むパート(頭の手術)と、刺激装置を埋め込むパート(前胸部の手術)から成ります。

    まず刺激電極の埋め込みから説明していきます。

    手術前に、頭に手術用のフレームを装着した状態でMRIを施行します。その画像をもとに、治療のターゲットとする場所を非常に精密に、正確に確認します。

    頭の手術自体は、全身麻酔ではなく局所麻酔で行われます。手術中に患者さんの意識はあり、話をすることさえできます。手術中に動きが良くなったか確認しながら手術を進めることが出来ます。

    頭蓋骨にコイン大の孔をあけ、その孔から小さな針電極をさしこんでいきます。電極の先端がターゲットとする場所にいるかどうかは、先端の電位を測定し、モニターすることで確かめます。

    最適な場所が決まったら、脳の中に埋め込む刺激電極を固定します。これで頭の手術は完了です。

    次は、刺激装置を埋め込みます。これは心臓のペースメーカーと同じように、前胸部の皮下に埋め込むことが多いです。これは、全身麻酔で手術をすることが多いようです。

    刺激装置の電池の寿命は3-5年程度であるため、数年経てば電池の交換が必要となります。電池を交換する場合は、前胸部の刺激装置の部分を、局所麻酔で手術します。

    DBS(脳深部刺激療法)の対象になる患者さんは?

    やはり手術ですから、患者さんにとって非常に負担の大きい治療法になります。それでも満足いく効果が得られないのであれば、非常に問題です。そこで、どういう患者さんにDBSは効果があるか、ということが調べられます。

    ◎レボドパが有効かどうか
    レボドパで症状が改善するということがDBSを行う際の大前提です。DBSは、パーキンソン病ではないパーキンソン症候群では無効です。従って、本当に診断がパーキンソン病であるかどうかが非常に重要となります。パーキンソン病であればレボドパ製剤が効くはずです。

    頭部MRIやMIBG心筋シンチグラフィーなどの画像検査で、パーキンソン病らしいかどうかを確かめます。また、本当にレボドパ製剤が有効かどうか慎重に検討します。具体的には、一晩パーキンソン病治療薬を休薬し、その後普段より多いレボドパ製剤を内服してもらい、症状が改善するかを確かめます。症状の評価は客観的な指標(UPDRSと呼ばれる評価スケール)を用います。レボドパ製剤で改善する症状は、DBS治療で改善することが見込まれます。

    ◎年齢、病気にかかっている期間
    より若くて病気にかかっている期間が短く、歩行障害などの症状が軽い方ほど効果が高いことがわかっています。

    ◎認知機能・精神症状
    埋め込んだ機器の取り扱いを理解する必要があるので、認知症の方にはDBSは行わないことになっています。

    また、精神症状がある方にもDBSを行わないことになっていますが、薬の副作用として精神症状が出てしまっている方には行います。レボドパ製剤を減量しても残ってしまうような精神症状は、DBSによりかえって悪くなりうることが知られています。

    ◎症状
    パーキンソン病の症状ならなんでも効くわけではありません。効果がみられる症状とみられない症状があります。

    DBS(脳深部刺激療法)はどのような効果がありますか?

    上でも述べた通り、レボドパ製剤で改善する症状は、DBS治療で改善することが見込まれます。主な効果についてまず説明していきます。

    DBSはオフ症状を改善し、日中動ける時間が長くなります。その結果、症状の日内変動を和らげることが可能となります。また、パーキンソン病治療薬(L-ドパ製剤)を減量することもできるので、ジスキネジアなどの困った動きも減らすことができます。

    しかし、姿勢の異常やすくみ足、転びやすさや嚥下障害なども非常に困る症状ではありますが、これらの症状に対する効果は薄いことがわかっています。

    DBSは上記のようなパーキンソン病の運動症状に効果があると今まで考えられてきましたが、実は非運動症状にも効果があるのではないかと言われています。痛みや睡眠障害などの症状に有効ではないかという報告があります。

    DBS(脳深部刺激療法)の合併症はありますか?

    電極をさしこむ際に脳出血を起こすことがあります。発生頻度は報告によりまちまちですが、2-20%程度であるようです。脳出血の程度は症例によって様々ですが、麻痺などの症状を残してしまうこともあります。

    また、体内に異物を埋め込むわけですから感染のリスクはやや上がってしまいます。命にかかわるような重篤な感染症となってしまうことはほぼないようですが、せっかく埋め込んだ電極を取り去ってしまわなければならないこともあります。

    DBS(脳深部刺激療法)はどのような手術でしょうか

    DBSの手術は、刺激電極を埋め込むパート(頭の手術)と、刺激装置を埋め込むパート(前胸部の手術)から成ります。

    まず刺激電極の埋め込みから説明していきます。

    手術前に、頭に手術用のフレームを装着した状態でMRIを施行します。その画像をもとに、治療のターゲットとする場所を非常に精密に、正確に確認します。 頭の手術自体は、全身麻酔ではなく局所麻酔で行われます。手術中に患者さんの意識はあり、話をすることさえできます。手術中に動きが良くなったか確認しながら手術を進めることが出来ます。 頭蓋骨にコイン大の孔をあけ、その孔から小さな針電極をさしこんでいきます。電極の先端がターゲットとする場所にいるかどうかは、先端の電位を測定し、モニターすることで確かめます。 最適な場所が決まったら、脳の中に埋め込む刺激電極を固定します。これで頭の手術は完了です。

    次は、刺激装置を埋め込みます。これは心臓のペースメーカーと同じように、前胸部の皮下に埋め込むことが多いです。これは、全身麻酔で手術をすることが多いようです。 刺激装置の電池の寿命は3-5年程度であるため、数年経てば電池の交換が必要となります。電池を交換する場合は、前胸部の刺激装置の部分を、局所麻酔で手術します。

    BSD(脳深部刺激療法)の術後の管理について教えてください

    手術後は外来(DBS治療を行っている病院では、DBS専門外来を設けていることが多いです)に通っていただき、刺激がうまくいっているかを確認します。患者さんがきちんと使用できているかを確かめ、効果が今ひとつである場合は、刺激の具合を調整します。また、刺激装置の電池残量の確認も非常に重要です。

    なお、DBSを埋め込んだ場合、以降頭部MRI検査はできなくなることがある(ペースメーカーの場合と同じです)ので注意が必要です。あらかじめ確認しておきましょう。

    DBS治療で症状の改善が見込めたり、レボドパ製剤の内服量が減らせたりしますが、パーキンソン病を完治できる治療法ではなく、また進行を食い止めるものでもないことに注意して下さい。せっかく手術するのだからそれですっきりと治ってしまうと思われている方がいらっしゃいますが、現在のところそのような治療法は存在しません。あくまで症状を改善する効果を持つものであり、このことを手術を受けようと考えている患者さんには十分理解して頂く必要があります。

    パーキンソン病はどのような経過をたどるのですか。

    様々な薬物療法の進歩により、現在パーキンソン病の方の平均寿命は、そうでない方も含めた全体の平均とほとんど変わらないようになっています。

    ですが、転倒しやすいために骨折してしまったり、飲み込みが上手にできなくなるために誤嚥性肺炎になってしまったりというリスクに気をつける必要があります。