2021.02.09 | コラム

お医者さんがよく使う言葉:「炎症」ってどういう意味?

炎症を起こす病気と、炎症を抑える薬・方法について

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「あー、のどが炎症を起こしてますね」

風邪をひいて病院を受診した時によく耳に知るフレーズです。他にも、中耳炎、肺炎、膀胱炎など炎症を意味する病気はたくさんあります。一方で、この「炎症」、イメージが少ししにくい言葉かもしれません。このコラムでは炎症とは何なのかについて解説していきたいと思います。

1. たくさんある炎症の病気

まず、炎症が身近なものであることを感じてもらうため、炎症の病名を挙げてみたいと思います。以下に炎症の病名の一例を挙げます。

 

  • 結膜炎
  • 中耳炎
  • 鼻炎
  • 口内炎
  • 咽頭炎(のどの炎症)
  • 気管支炎
  • 肺炎
  • 肝炎
  • 胆のう炎
  • 胃腸炎
  • 膵炎
  • 膀胱炎
  • 腎盂腎炎(じんうじんえん)
  • 関節炎
  • 蜂窩織炎(ほうかしきえん)
  • 皮膚炎

 

ぱっと挙げるだけでも炎症の病気はこれだけありますが、実はこれ以外にもまだまだあります。また、このリストをみてわかるように、炎症が起きている病気は「炎症を起こしている場所+炎」というように表現することができます。みなさん、どれかしらの病気を経験したことがあるのではないかと思います。

 

2. 炎症の症状の特徴とは?

さて、このように炎症が起きている病気はたくさんありますが、これらの病気の症状には特徴があります。具体的な炎症の特徴としては以下の5つがあります。

 

【炎症の5つの特徴】

特徴 症状の例
①発赤:赤くなっていること
  • 結膜炎:目が赤くなる
  • 咽頭炎:のどが赤くなる
②熱感:熱を持っていること
  • 関節炎:関節が熱を持つ
  • 肺炎:熱が出る
③疼痛:痛みを伴うこと
  • 中耳炎:耳が痛い
  • 胆のう炎:お腹が痛い
④腫脹:腫れていること
  • 咽頭炎:のどが腫れる
  • 関節炎:関節が腫れる
⑤機能障害:正常な役割を果たせないこと
  • 胃腸炎:食べ物を消化できず、下痢をする
  • 肺炎:息が苦しくなる

このように炎症の病気はそれぞれは別個のものであっても、症状にある程度の共通性があることがわかるかと思います。炎症の特徴を知っておくことで、炎症とはどういうものなのかイメージしやすくなります。

 

3. 炎症部位で何が起きているのか

炎症についてより理解を深めるため、炎症部位で何が起きているかについても見ていきましょう。

まず、結論を言うと炎症は白血球などの炎症を起こす細胞(炎症細胞)が集まった状況です。そして、このような状況を起こす原因には以下のことが考えられます。

 

【炎症の主要な原因の例】

  • 細菌・ウイルス感染
  • 異物に対するアレルギー反応
  • 組織の損傷(怪我など)

 

白血球には細菌・ウイルスを駆除し、感染症から身体を守る役割があります。そのため、感染を起こした部位には炎症細胞が集まります。

異物が体内に入った際にもこれを除去しようとするために炎症細胞が呼び寄せられます。

怪我などで皮膚や臓器の組織が傷付いた場合には、これを修復する際に損傷した組織を一度除去してから新しい組織への置き換わりが起こります。この組織の除去に炎症細胞が活躍します。

 

さらに炎症部位では、炎症細胞の働きを助けるさまざまな化学物質が産生されます。ただ困ったことに、この化学物質は良いことばかりだけでなく、熱や痛み、腫れなどの原因となる物質も含まれています。その結果、炎症部位では不快な症状があらわれてしまうのです。

 

4. 炎症を抑えるためにはどうしたら良いか

炎症は熱や痛み、腫れなどの辛い症状の原因になります。逆に言えば、炎症を抑えることができれば、これらの症状を緩和することができます。

ここで注意したいのが、炎症を抑える方法は一つではなく、その原因ごとに対応が異なるという点です。先ほど挙げた炎症の原因に沿って、それぞれの対応を説明していきたいと思います。

 

細菌・ウイルス感染

細菌・ウイルス感染が起きた場合には、根本的な原因である細菌・ウイルスを駆除することで炎症が治まります。感染症への対応としては抗菌薬(抗生物質)の使用が有名かもしれません。しかし、すべての感染症で抗菌薬を使用するわけではありません。

一つは感染症の原因としてウイルスが疑われる場合です。抗菌薬は細菌の増殖を抑えたり殺菌したりすることはできますが、対ウイルスとなると効果がありません。ウイルスによる炎症が多いものとしては咽頭炎(のどの炎症)があります。それゆえ、咽頭炎では抗菌薬を使用せず、アセトアミノフェンやNSAIDsなどの症状を抑える薬のみで治療を進める(対症療法)ことが多いです。

 

抗菌薬を使用するか否かの判断は、感染を起こしている場所や重症度、年齢などを加味して行われます。場合によっては、ご自身の免疫により自然に細菌・ウイルスが駆除されることを期待し、対症療法のみで様子をみることもあります。抗菌薬の使い方についてはコラム「抗菌薬の適正使用とは?」でも紹介しています。

 

異物に対するアレルギー反応

アレルギー性炎症の対応としては「原因となっている異物と触れないようにする」「抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬を使用する」があります。

アレルギーは異物に対する反応なので、原因物質から遠ざかれば改善が期待できます。例えば、花粉によるアレルギー性鼻炎であれば、花粉を吸入しないようにマスクをすることが挙げられます。金属アクセサリーによる接触皮膚炎ではあれば、金属アクセサリーをしない、服の上から装着して直に触れない、といったことで対応できます。

抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬はアレルギー反応を抑える薬です。根本的な治療ではありませんが、これも有効な方法の一つです。飲み薬だけでなく、塗り薬や目薬があり、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎で使われます。また、中にはアレジオン®️アレグラ®️などのように処方せんなしで買える市販薬もある(OTC医薬品)ので、病院に行く時間がない場合には、利用してみると良いかもしれません。OTC医薬品についてはこちらのコラムでも説明しています。

 

組織の損傷(怪我など)

怪我により炎症が起きている場合、受傷した直後には以下の応急処置を行うことで炎症の範囲を広げないようにできます。

 

  • 安静を保つ
  • 冷やす
  • 圧迫する
  • 怪我をした場所を心臓より高い位置に挙上する

 

この処置はRICE(ライス)処置と呼ばれます。RICE処置の名称はRest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字に由来します。RICE処置を行うことで、炎症の程度を軽くすることができます。

また、アセトアミノフェンやNSAIDsなどの薬を使うことで炎症を抑え、症状の緩和が期待できます。怪我をした時の応急処置については詳しくはコラム「足首を捻ったときに知っておくとよいこと:RICE処置などについて」も参考にしてみてください。

 

ここまでみてきたように炎症が起きる病気はたくさんありますが、見た目の特徴や炎症部位で起きていることには共通点があります。お医者さんは、赤み・腫れなどがあったり、白血球が集まっている状況が想定される場合に、炎症という言葉を使っていることが多いです。

炎症は同じような見た目であってもその原因に応じて対応が異なります。炎症の病気はありふれたものでもあり、お医者さんもその対応に慣れています。炎症が起きているかもしれないと不安になったら、是非相談してみてください。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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