2019.06.14 | コラム

足首を捻ったときに知っておくとよいこと:RICE処置などについて

医療機関にかかるまでの間にできることがあります

足首を捻ったときに知っておくとよいこと:RICE処置などについての写真

スポーツや日常生活で足首を捻ることは珍しくはありません。足首を捻ってしまった後はどうしてますか?痛みを我慢し、そのままにしていませんか?このコラムでは簡単にできる応急処置を中心に、足首を捻ってしまったときに役立つ知識をまとめます。

1. 足首を強く捻ったらすぐにやって欲しい応急処置について

お医者さんに診てもらうまでのつなぎとして、すぐにやって欲しい処置があります。適切な応急処置を行うと、状態の悪化を防いで早期の回復につなげることができます。

具体的には次の4つの処置を行ってください。

 

【足首を捻ったときの処置】

  • 安静を保つ
  • 冷やす
  • 圧迫する
  • 足首を心臓より高い位置に挙上する

 

これはRICE(ライス)処置と呼ばれるもので、捻った箇所の腫れを抑える効果が期待できます。RICE処置の名称はRest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字に由来します。難しそうな印象を抱くかもしれませんが、中身は至ってシンプルです。さっそく処置の具体的な方法について個別に説明していきます。

 

Rest(安静を保つ)

足首にできるだけ体重をかけないようにします。座るか横になるかして患部を動かさずに楽な姿勢で過ごすと良いです。トイレに行くなど移動が必要な時は、人の肩を借りたり、あれば杖を使用してください。

 

Ice(冷やす)

氷を詰めた袋や冷たい水を使って足首を冷やします。冷やし過ぎによる皮膚や皮下組織のダメージを避けるために、冷やす時間は1回あたり15分程度にして、2時間から3時間ごとに行うのがポイントです。

 

Compression(圧迫する)

テーピング材など伸縮性がある素材を患部に巻いて軽く圧迫し、腫れがひどくなるのを予防します。きつく巻きすぎると、血液の流れが悪くなってしまうので、圧迫感が強いと感じた場合は巻き直してください。また、圧迫中にしびれや触っている感覚が鈍くなってきた場合もテーピングを緩めてください。

 

Elevation(足首を心臓より高い位置に挙上する)

捻った足首を心臓より高い位置に上げておきます。心臓より高い位置にすることで、腫れの原因となる液体が溜まるのを予防できます。横になった状態で足首を吊るすようにしても良いですが、枕などの柔らかい素材ををいくつか重ねて太ももから膝下に入れると、無理なく足を挙上できます。

 

2. 鎮痛剤の使用について

腫れにはRICE処置が有効である一方で、痛みには鎮痛作用のある飲み薬が有効です。しかしながら、「お医者さんに診てもらってからのほうがいいと思って」「怪我の治りに影響するのが心配で」といった理由から鎮痛剤の使用をためらう患者さんは少なくありません。鎮痛剤がお医者さんの診察や、怪我の回復に悪影響を及ぼす可能性はほとんどないので、心配は無用です。医療機関で処方されるアセトアミノフェンNSAIDsは薬局でも購入できるので、受診に時間がかかりそうな場合はまず市販薬の痛み止めを使ってみてください。

 

3. これだけは絶対にやってはいけない

絶対やってはいけないことは、怪我した部位を強引に曲げたり伸ばしたりする行為です。怪我の具合を確かめたい気持ちはわかりますが、無理な曲げ伸ばしが悪化につながることがあります。

個人的な体験談になりますが、筆者にはサッカーの試合で肘から落下して骨折した経験があります。その際、その場にいた人に肘を強引に曲げ伸ばしされて、骨のずれ方がひどくなってしまいました。誤った行為によって、全治がいくらか延びてしまったことでしょう。 足と肘で違いはありますが、診察や検査で状態を十分把握していないにも関わらず、怪我をした関節に外から強い力を加えるのは危険な行為です。また、関節が動いたとしても、それが骨や靭帯の無事を示すわけではありません。くれぐれも安易に怪我した部位を動かさないようにしてください

 

怪我はしないに越したことはありませんが、正しい知識を持っていると、不測の事態が起こっても冷静に適切な対応ができます。このコラムが足を捻った人の1日でも早い回復に役立てば幸いです。

 

参考文献

・UpToDate. Ankle sprain Author:Karen L Maughan, MD

・「標準整形外科学」(中村利孝 , 松野丈夫/監)、医学書院、2017年

・「標準救急医学」(日本救急医学会/監)、医学書院、2014年

・日本整形外科学会:「スポーツ外傷の応急処置」

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る