性病
性病はナイーブな話ですのでなかなか人に相談できない病気です。それでいて放っておいても治ることは期待できません。また、ともすれば不妊症の原因になります。 性病を起こす原因や治療法について考えていきましょう。
最終更新: 2023.02.28

望まない性行為(レイプ)に巻き込まれてしまった場合にすぐ行うべきこと

性暴力の被害に遭ったときはショックで何も考えられなくなってしまうかもしれませんが、忘れてはいけないのが緊急避妊と性病対策です。性暴力で気を付けるべき性病の例と、3か月後にも検査が必要な理由を説明します。

1. 目を伏せてばかりではいられないレイプの状況

日本でもレイプの被害は少なくありません。内閣府の2014年の調査に「男女間における暴力に関する調査」というものがあります。その中で、回答者全体の6.5%が望まない性交をさせれた経験があると答えています。

つまり、16人に1人がレイプの経験があるということになります。性暴力を受けてしまった後の複雑な背景を考えますと、経験があっても答えられなかったという人が更にいることも予想されますので、実際にはもっと多い可能性があります。

レイプの被害は深刻なだけでなく、なかなかわかってもらえない、相談しにくいものです。

世の中には、日本は治安の良い国というイメージが有ります。レイプされたという言葉が現実に思えないという人も多くいます。そして「危ない地域にいたから巻き込まれたんだろう」「不運にも凶悪犯に襲われてしまったんだろう」あるいは「襲われた側も悪い部分があったのではないか」といった誤解が生まれやすい環境です。しかし実際にレイプの被害を受ける人は少なくないのです。

2. 身近に潜んでいる性暴力

性暴力を振るってくる相手はどんな人が多いのでしょうか?

凶悪犯?危ない人?

いえいえ、実際は知り合いからの暴力がほとんどです。「男女間における暴力に関する調査」では全く知らない人から暴力を受けたという割合は11%としています。

もちろん11%は大きい数字ですが、見知らぬ人からの暴力よりも以下のことが多いのです。

  • 交際相手・元交際相手からの性暴力
  • 配偶者・元配偶者からの性暴力
  • 職場の関係者からの性暴力

性暴力を受けてしまったらどうするべきなのでしょうか?

もちろん、警察に報告したり、踏みにじられた心を落ち着かせることは極めて大事です。しかし、それと並んで重要なのは、体の被害を最小限にすることです。

性暴力によって性感染症をうつされていないか、また被害者が女性なら望まない妊娠をしていないか、医療機関で診察と検査を受ける必要があります。

3. 診察が怖いときは?

性暴力によって被害者は心身ともに傷つけられてしまいます。診察を受けて嫌な記憶を振り返るには勇気が要ります。

暴力を受けたショックで落ち込んでいるときに、さらに続く危険性を考えることは簡単ではありません。

診察に行くときは、まずは心を落ち着かせてください。

診察室まで行くことができれば一歩前進です。

心の傷に配慮してもらう

お医者さんに性暴力を受けたと言うと、心の傷に配慮してほしいことを伝えられます。

それでもお医者さんのペースで詳しく質問されてつらい気持ちになったら、少し待ってもらいましょう。

お医者さんは性暴力の被害者に心理的な葛藤があることはわかっているので、質問に答えにくいと思ったら、話しやすいことから少しずつでも話してください。

検査が必要と言われて圧迫感を受けたら、検査をする目的を自分の言葉でゆっくり考えてみましょう。

性病を見逃すことのダメージを思い浮かべる

性暴力によって性病をうつされていた場合は、治療する必要があります。性病がうつっているのに放っておくとさまざまな問題が生じます。

  • 性病が重症化する
  • 性病がなかなか治らなくなる(難治化)
  • 不妊症になる

性病の検査と治療は、性暴力の被害を食い止め、さらに大きな悲劇に巻き込まれないようにするのが目的です。

目的を思い浮かべて、怖がらず検査を受けてください。

4. 性暴力による性感染症の検査

性行為によって性病はうつりますので、異性間であろうと同性間であろうと、性暴力のあとは性病になるリスクがあります。加害者がどんな性病に感染しているかはまずわかりません。特に同意のない性行為はコンドームをつけていないことが多いので、主な性病はすべて可能性があると考えて検査を行うことが重要です。

特にチェックしたほうが良い病気は以下のものです。

性器を挿入された部位の全てに性病の原因微生物がいないかを調べることと、血液検査で感染を調べる必要があります。また、HIV梅毒は、もし感染していても感染した直後にはわからないことがほとんどなので、3ヶ月後にHIVと梅毒の再検査をする必要があります。

5. 性病に備える治療

検査結果が出れば感染した病気がわかりますが、結果が出るまでに時間がかかります。病気によっては、1日でも早く治療を始める必要があり、検査結果を待っていると遅くなってしまいます。

そこで、検査結果が出る前に、感染している可能性があるとみなして治療を始める場合があります。

検査結果が出る前の治療には主に以下の薬を使います。

  • セフトリアキソン(ロセフィン®など)
    • 梅毒など多くの細菌に対して効果がある抗生剤です。
  • メトロニダゾール(フラジール®など)
    • 膣トリコモナスに効果がある抗生剤です。
  • アジスロマイシン(ジスロマック®など)
  • B型肝炎ワクチン
    • B型肝炎ワクチンは、B型肝炎ウイルスに触れた直後に打ってもB型肝炎を防ぐ効果があります。

抗菌薬抗生物質、抗生剤)やワクチンを用いることで、気を付けるべきほとんどの性病は治療できることになります。

6. 妊娠のリスクに対する緊急避妊

女性が被害者の場合妊娠のリスクがあります。望まない性行為の多くはコンドームを用いたものではないため、性周期や性行為の内容にかかわらず、生理(月経)のある女性は緊急避妊を行う必要があります。

性行為の72時間以内にピルを飲むことで、妊娠を防ぐ効果があります。ピルには女性ホルモンが含まれていて、体を生理に近い状態にし、妊娠を防ぎます。

7. 3ヶ月後の再検査

性暴力による性病は感染した可能性があるとみなして治療を始めますが、HIVに関しては性行為における感染率が1%以下と低く、また治療薬の副作用が出やすいことから、通常は感染が確認されてから治療を始めます。

またHIVと梅毒は、感染した直後に検査で見つけることが難しいので、3ヶ月後の再検査があります。

3ヶ月後の再検査は必ず受けて、HIVと梅毒に感染したかどうかはっきりさせてください。



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