とるーそーしょうこうぐん
トルーソー症候群
悪性腫瘍の影響で生じる血栓症
1人の医師がチェック 16回の改訂 最終更新: 2026.06.26

トルーソー症候群の基礎知識

POINT トルーソー症候群とは

悪性腫瘍に伴って血液が固まりやすくなり、血栓症を起こす病態です。もともとは、がんに伴って部位を変えながら繰り返す血栓性静脈炎を指す言葉でしたが、現在ではがん関連血栓症全般を指して使われることもあります。日本では特に、トルーソーがんに伴う凝固亢進によって起こる脳梗塞を指すことがあります。症状は血栓ができる場所によって異なり、脳梗塞では片麻痺や言語障害、肺血栓塞栓症では息苦しさや胸痛、深部静脈血栓症では脚の腫れや痛みがみられます。診断では血液検査や画像検査、悪性腫瘍の評価などを行い、治療ではがんの治療と抗凝固療法を行います。

トルーソー症候群について

  • 悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進によって、動脈や静脈に血栓を生じる病態
  • 狭い意味でがんに伴う遊走性血栓性静脈炎を指すこともある
  • 現在は深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、脳梗塞、非細菌性血栓性心内膜炎などを含む広い概念
  • 日本では、がんに伴う凝固亢進によって生じる脳梗塞を指すことが多い
  • 腫瘍細胞が産生する組織因子、ムチン、炎症サイトカインなどによる凝固系の活性化が原因と考えられている
  • 血管内皮障害、血小板活性化、血流停滞などが重なって起こる血栓形成
  • がんによる血管圧迫、長期臥床、手術、化学療法、中心静脈カテーテルなども発症に関与
  • 膵がん肺がん胃がん大腸がん卵巣がんなどの腺がんで多い傾向
  • 特にムチン産生腺がんや進行がん、転移性がんでリスクが高い病態
  • 血栓症を契機に、未診断の悪性腫瘍が見つかることがある

トルーソー症候群の症状

  • 脳梗塞:短期間に異なる部位の脳梗塞を繰り返すことあり
    • 突然の片側の手足や顔の麻痺
    • しびれ、ろれつが回らない状態
    • 言葉が出ない、言葉を理解できない失語
    • 視野障害、ふらつき、意識障害
  • 深部静脈血栓症
    • 片脚の腫れ、痛み、熱感、発赤
    • 上肢やカテーテル周囲に生じる血栓症
  • 血栓塞栓症:重症例では生命に関わる状態
    • 突然の息苦しさ、胸痛、動悸
    • 血圧低下、失神、低酸素血症
  • 遊走性血栓性静脈炎
    • 皮膚表面に近い静脈の痛み、発赤、硬結
    • 症状の出る場所が移動したり、異なる部位で繰り返したりする状態
  • 細菌性血栓性心内膜炎
    • 心臓弁にできた血栓による脳や全身への塞栓症
    • 発熱や心雑音が目立たないこともある
  • 原因となるがんの症状
    • 体重減少、食欲低下、倦怠感
    • 原発臓器や転移部位に応じた症状

トルーソー症候群の検査・診断

  • 問診・診察
    • がんの種類、病期、治療内容、手術歴、カテーテル留置歴の確認
    • 麻痺、言語障害、胸痛、呼吸困難、四肢の腫れなどの確認
    • 血栓症と出血リスクの評価
  • 血液検査
    • Dダイマー、フィブリノゲン、PT、APTT、血小板数などの測定:Dダイマーの著明な上昇が診断の手がかり
    • 貧血腎機能、肝機能、炎症反応の確認
    • DIC播種性血管内凝固症候群)の合併評価
  • 頭部MRI検査
    • 脳梗塞の有無、部位、広がりの確認
    • 複数の血管領域に新旧さまざまな梗塞を認めることが特徴のひとつ
  • 頭部CT検査
    • 脳出血の除外
    • CT血管撮影やMR血管撮影による脳血管閉塞の確認
  • 超音波検査
    • 下肢静脈超音波による深部静脈血栓の確認
    • 心臓超音波による心内血栓や非細菌性血栓性心内膜炎の評価
    • 必要に応じて経食道心エコーを検討
  • 胸部造影CT
    • 肺血栓塞栓症の診断
    • 胸腹部の悪性腫瘍転移病変の評価
    • 悪性腫瘍の検索
    • 血栓症の原因が不明な場合に、診察や画像検査などから悪性腫瘍を検索
    • 腫瘍マーカーのみで診断することはできないため、画像検査や病理検査と組み合わせた評価

トルーソー症候群の治療法

  • 原因となるがんの治療をすることがトルーソー症候群のコントロールにもつながる
    • 手術、薬物療法、放射線治療などによる悪性腫瘍の制御
  • 凝固亢進の原因を抑えるために重要な治療
    • 抗凝固療法:血栓の進展や再発を防ぐ中心的治療
    • 未分画ヘパリンや低分子量ヘパリンなどを病態に応じて使用
    • がん関連静脈血栓症では直接作用型経口抗凝固薬も選択肢
    • 消化管・泌尿器がん、血小板減少、腎機能障害などでは出血リスクを考慮
  • がん関連脳梗塞ではヘパリンを中心に行うことが多い
    • 急性期脳梗塞治療:発症時刻、血管閉塞部位、出血リスクなどに応じて血栓溶解療法や血栓回収療法を検討
    • がんの病状、手術歴、血小板数、予後などを含めた総合判断
  • 肺血栓塞栓症への治療
    • 抗凝固療法
    • 重症例では血栓溶解療法、カテーテル治療、外科的血栓摘除術などを検討
    • 下大静脈フィルター:抗凝固療法が行えない場合や、適切な治療中にも肺塞栓症を繰り返す場合に限定して検討
  • 支持療法・経過観察
    • Dダイマー、血小板数、凝固機能、出血症状の定期確認
    • 麻痺失語などに対するリハビリテーション
    • がん治療科、脳神経内科、循環器科などによる連携治療