血管炎症候群と診断をされた人に知っておいて頂きたいこと:難病申請など
血管炎症候群は完治が難しく、付き合いも長くなる病気です。ここでは血管炎症候群と診断された人に知っておいて頂きたいことをまとめました。医療費助成についても説明しています。
1. 血管炎症候群と診断をされた人に知っておいて頂きたいこと
この記事を読んでいる方の中には、血管炎症候群と診断されこれからどうなるのかを不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。ここでは血管炎症候群について心配な人に知っておいて頂きたい以下の点についてまとめました。
- 血管炎症候群は完治するの?
- 血管炎症候群の治療は入院が必要?
- 血管炎症候群の治療中の注意点
- 血管炎症候群は再発(再燃)することはある?
以下で説明していきます。
血管炎症候群は完治するの?
残念ながら、血管炎症候群は現在の医療でも完治することが難しい病気です。しかしながら、近年新しい薬がたくさん開発されており、薬を継続すれば、かなり多くの方で症状がない状態を維持することができるようになりました。この状態を寛解(かんかい)と呼びます。寛解に至れば、血管炎症候群を患っていない方々と同じように生活を送ることができます。ただし、寛解した後も再燃といって症状をぶり返すこともあるため、定期的な診察が必要です。
血管炎症候群の治療は入院が必要?
血管炎症候群の治療を開始するときは原則入院で行います。これには理由が二つあります。
一つ目は血管炎症候群が急激に悪くなることもあり、また最悪の場合、命に関わりうるためです。そのため、入院しながら治療を開始して血管炎症候群の症状が良くなることを確認し、自宅で安全に過ごせるという判断となれば、外来通院での治療となります。
二つ目の理由は、血管炎症候群で用いられる治療薬を開始した時に、副作用があらわれた場合でもすぐに対応できるためです。血管炎症候群の治療は最初に薬を多く使って治療することが一般的であり、また薬の副作用は新しいものを始める時に起こることが多いです。そのため、血管炎症候群の治療を開始する時が副作用に特に注意が必要な時期であり、その期間を入院で過ごすことが望まれます。
入院しなければならないというと大変だと感じられる方も多いかもしれませんが、血管炎症候群の治療を安全に行うために必要な対応となります。
血管炎症候群の治療中の注意点
血管炎症候群は治療により症状が良くなっても、時間経過とともに悪くなることがあります。また、血管炎症候群の治療ではいくつかの薬を同時に使うこともあり、副作用により体調の変化が起こることもあります。
重要な副作用が出た場合は、原因となった薬を中止する必要があります。しかし、
血管炎症候群は再発(再燃)することはある?
新しい治療薬の登場もあり、多くの血管炎症候群の方で寛解に至ることができるようになりました。最初の症状が良くなって以降、一生涯寛解を維持できることもあります。しかし、一生涯寛解を維持できるのは全員ではなく、再び症状が悪くなることも珍しくありません。この再び悪くなることを「再燃」と呼びます。
このように書くと、今の症状が落ち着いていても、また悪くなるのではないか、と不安になることもあるかもしれません。しかし、血管炎症候群の治療は以前に比べると大きく進歩しています。新しい治療薬も登場し、症状が悪くなった時の治療の選択肢も増えています。再燃に対して不安があったり、以前の症状がまた出て来ていると感じれば、主治医の先生とも相談してみてください。
2. 血管炎症候群は難病?医療費助成が受けられる?
血管炎症候群の一部は難病に指定されています。さらにその中で、国の定めた重症度基準を満たす場合に医療費助成の対象となります。ここでは医療費助成の申請方法に関しても説明しています。
指定難病とは?
厚生労働省は原因が十分にわかっておらず治療法が確立されていない疾患を指定難病(難病)と分類しています。難病は患者の負担を軽減するため、医療費助成制度があります。現在300を超える病気が難病に指定されており、血管炎症候群や血管炎を起こす病気のうち以下のものが難病とされています。
- 高安動脈炎
- 巨細胞性動脈炎
- 結節性多発動脈炎
- 顕微鏡的多発血管炎
- 多発血管炎性肉芽腫症
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
- 悪性関節リウマチ
- バージャー病
- ベーチェット病
- 全身性エリテマトーデス
- サルコイドーシス
どんな場合に医療費の助成が受けられる?
国が難病と指定する血管炎症候群の人の中で、定められた重症度の基準を満たす人が医療費助成を受けられます。重症度の基準は血管炎症候群ごとに定められています。医療費助成を受けるための重症度の基準は厚生労働省のサイト内で公開されています。
難病の医療費助成の申請方法
難病の医療費助成の申請は大まかに以下の手順です。自治体ごとに準備する書類が異なりますので、詳しくは住んでいる都道府県の保健所にお問い合わせください。
- 医療費助成に必要な以下の書類を準備します。(カッコ内は入手可能な場所)
- 臨床調査個人票(厚生労働省のホームページ、福祉保健局のホームページ、市区町村の窓口)
- 特定医療費支給認定申請書(福祉保健局のホームページ、市区町村の窓口)
- 個人番号に関わる調書(市区町村の窓口)
- 住民票(市区町村の住民票窓口)
- 市区町村税課税証明書(市区町村の住民税窓口)
- 健康保険証の写し
- その他必要なもの
- 臨床調査個人票の記入を医師(※)に依頼します。臨床調査票は難病であることの証明(診断書)でもあるので、医師による記入が必要になります。
- 上記の書類を揃えて、住んでいる市区町村窓口で申請します。指定難病として認定されると、医療券が発行されます。要件が満たされないと判断された場合には不認定通知が発行されます。認定の決定は、指定難病審査会で行われ、結果が出るまでには3ヶ月程度の時間がかかります。
※臨床個人調査票は難病の臨床調査個人票の記入を都道府県知事から認定された医師しか作成できません。この都道府県知事から認定された医師を指定医と呼びます。主治医が指定医であるかは主治医に直接問い合わせてください。各自治体の福祉保健局のホームページなどにある一覧などでも確認できます。
助成される内容は?
医療費の助成が適用されるのは難病の治療にかかった費用のみです。以下は例になります。
- 指定医療機関で難病の治療に要した窓口の自己負担金
- 保険調剤の自己負担額
- 訪問看護ステーションや介護保険の医療サービスを利用したときの利用者負担額
医療費が助成されるかはっきりしないときもあると思います。そのときには担当する部署に前もって助成されるかどうかを尋ねておくとよいでしょう。
自己負担はどのくらいになる?
自己負担額上限額は世帯の市町村住民税によりが決まっています。詳細な金額は市町村に問い合わせるまたは難病情報センターのウェブサイトなども参考にしてください。
申請から交付までにどのくらいの時間がかかる?
医療費助成を申請してから交付までには約3ヵ月程度かかります。審査に時間がかかった場合はさらに延びることがあります。申請から交付までの期間にかかった医療費は払い戻しを受けることが可能です。
認定に有効期間はある?
医療費助成の認定には有効期間があり、申請した日から原則1年となっています。その後も治療を継続しなければならない場合には更新の手続きが必要になります。
3. その他知っておきたい助成制度
血管炎症候群の人のうち定められた重症度を満たす人は難病の医療費助成申請により負担額が軽減できます。難病指定による医療費助成が受けられない場合でも他の制度を用いることで自己負担を軽減することができます。高額療養費制度と限度額適用認定証について紹介します。
高額療養費制度とは?
高額療養費制度とは、家計に応じて医療費の自己負担額に上限を決めている制度です。
医療機関の窓口において医療費の自己負担額を一度支払ったあとに、月ごとの支払いが自己負担限度額を超えた部分について、払い戻しがあります。払い戻しを受け取るまでに数か月かかることがあります。
たとえば70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円の人では、1か月の自己負担限度額が80,100円+(総医療費-267,000円)×1%と定められています。それを超える医療費は払い戻しの対象になります。
この人で医療費が1,000,000円かかったとします。窓口で払う自己負担額は300,000円になります。この場合の自己負担限度額は80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円となります。
払い戻される金額は300,000-87,430=212,570円となります。所得によって自己負担最高額は35,400円から252,600円+(総医療費-84,200円)×1%まで幅があります。
高額療養費制度について詳しくは厚生労働省のウェブサイトやこちらの「コラム」による説明を参考にしてください。
限度額適用認定証(げんどがくてきようにんていしょう)とは?
あらかじめ医療費が高額になることが見込まれる場合は「限度額適用認定証」を申請し、認定証を医療機関の窓口で提示することで、自己負担分の支払い額が一定額まで軽減されます。高額療養費制度で支払われる還付金の前払いといった位置づけになります。保険外の費用(入院中の差額ベッド代や食事代など)は対象外となります。