肝臓にできる腫瘍:良性腫瘍と悪性腫瘍のちがい、肝血管腫・肝のうほう・肝細胞腺腫など
1. 肝臓の腫瘍には良性と悪性がある
腫瘍には良性と悪性があります。
2. 良性腫瘍と悪性腫瘍のちがい
肝臓に腫瘍ができたからといって必ずしも悪性腫瘍とは限りません。逆に良性腫瘍とも限りません。どちらの可能性もあります。まず良性腫瘍と悪性腫瘍の一般的な特徴を説明します。
- 良性腫瘍の特徴
- 大きくなるスピードが緩やか
- 周囲の臓器を破壊することは少ない
転移 しない
- 悪性腫瘍の特徴
- 大きくなるスピードが速い
- 周囲の組織を破壊することが多い
- 進行すると転移する
悪性腫瘍には浸潤(しんじゅん)や転移をするという特徴があります。浸潤とは、周りの組織にがん細胞が入り込みながら広がっていくことです。
上の特徴は典型的な場合の特徴です。例外はあります。良性腫瘍か悪性腫瘍か見分けにくい場合もあります。良性腫瘍と診断されても
3. 肝臓にできる腫瘍の種類
肝臓にできる腫瘍の種類を示します。
- 主な良性腫瘍
- 主な悪性腫瘍
比較的よく見られる良性腫瘍には肝血管腫や肝嚢胞があります(厳密には腫瘍ではないものも一緒に挙げています)。一方、肝臓に発生する悪性腫瘍のほとんどは肝細胞がんと肝内胆管がんです。他の臓器にできたがんが肝臓に転移した場合を、転移性肝がんといいます。転移性肝がんの原因で多いのは大腸がんです。大腸がんの肝臓への転移は手術で取り除けることも多いので重要です。
4. 良性腫瘍
肝臓の良性腫瘍でよく知られているのは肝臓に血管の塊ができる肝血管腫などです。以下でそれぞれについて解説します。まれな腫瘍も挙げています。まれな腫瘍にはその性質が不明な点があります。良性腫瘍といわれても注意が必要な場合もあります。
肝血管腫(かんけっかんしゅ)
肝血管腫は、肝臓にできる良性腫瘍として頻度が高く、女性に多い腫瘍です。検診や人間ドックの
肝嚢胞(かんのうほう)

中身が水の袋状の構造を嚢胞(のうほう)と言います。肝嚢胞は肝臓に嚢胞ができたものです。浸潤や転移はしません。肝嚢胞は基本的には治療は必要とせず経過観察をします。
まれに嚢胞がかなり大きくなり腹痛などの症状がでることがあります。また、まれに肝嚢胞の中に
症状がある肝嚢胞には治療をします。治療は肝嚢胞の中身を抜き、再び水が溜まらないように薬(エタノール、ミノサイクリン塩酸塩など)を注入することがあります。治療で手術を選択することはかなりまれです。治療をしても肝嚢胞が再発することがあります。
肝血管筋脂肪腫(かんけっかんきんしぼうしゅ)
肝血管筋脂肪腫は肝臓にできる良性腫瘍です。腫瘍が血管、筋肉、脂肪で構成されるので血管筋脂肪腫といいます。腎臓にできることもあります。
良性腫瘍なので治療を必要とはせずに経過観察されることが多いです。しかし、肝血管筋脂肪腫は肝臓がんとの区別が難しいことがあります。画像診断や
参考:J Gastrointest Surg. 2007;11:452-7.
肝細胞腺腫(かんさいぼうせんしゅ)
肝細胞腺腫は肝臓にできる良性腫瘍です。男性より女性に多く、また
限局性結節性過形成(げんきょくせいけっせつせいかけいせい)
過形成とは細胞の数が増加することです。限局結節性過形成は、肝臓の限られた範囲で過形成が起きた状態です。大きくなると過形成の真ん中が瘢痕化(はんこんか)するなどの特徴があります。瘢痕化は
肝細胞がんと区別が難しいことがあります。
5. 悪性腫瘍
悪性腫瘍は、まずは肝臓に由来したものかどうかで区別します。肝臓に由来したものを原発性肝がんといいます。
原発性肝がんにはいくつか種類がありますが肝細胞がん、肝内胆管がん、肝芽腫でその99%を占めます。肝細胞がんはこの中でも特に多く、原発性肝がんの約94%を占めます。肝臓がんというと肝細胞がんを指すことが多いです。
その他の悪性腫瘍はかなりまれです。
肝細胞がん
肝臓には肝細胞という細胞があります。肝細胞はたんぱく質合成、炭水化物・脂質の
肝内胆管がん
肝臓には胆管が張り巡らされています。胆管は胆汁が流れる管で、胆道ということもあります。肝内胆管がんは胆管の上皮から発生するがんです。肝細胞ががん化する肝細胞がんとはがん化する細胞が異なります。肝内胆管がんは胆道がんの一部に分類されます。
肝芽腫(かんがしゅ)
肝芽腫は2歳未満に発生することが多い、肝臓にできる悪性腫瘍です。男児に多い傾向にあります。肝芽腫はお腹に硬いコブとして触れることができたり、ほかの先天形態異常を伴うことがあります。血液検査では、AFPという
転移性肝がん
転移性肝がんは他の臓器に発生したがんが肝臓に転移して発見されたものです。大腸がんは肝臓に転移することが多いです。大腸がんの肝転移は転移したがんを切除することで根治が可能と考えられています。他のがんでも状況を見て肝臓に転移した
原発巣(げんぱつそう)と転移巣(てんいそう)の違いについて
がんの大きな特徴のひとつが転移を起こすことです。転移とは、がんが元あった場所とは違うところにも移動して増殖することです。元あった場所のがんを
つまり、転移性肝がんの原因が大腸がんであった場合、抗がん剤は肝臓がんのものではなく大腸がんに効果のあるものを選択します。これは治療方針を考えるうえで非常に重要です。当たり前と感じる人もいると思いますが、憶えておいてください。