かんぞうがん
肝臓がん
肝臓にできた悪性腫瘍のこと
1人の医師がチェック 126回の改訂 最終更新: 2026.02.16

肝臓にできる腫瘍:良性腫瘍と悪性腫瘍のちがい、肝血管腫・肝のうほう・肝細胞腺腫など

腫瘍は細胞や組織が増殖してできる塊のことです。腫瘍は体のどこにでもできる可能性があります。腫瘍の中で悪性のものは「がん」です。腫瘍の中には良性のものもあります。ここでは肝臓にできる腫瘍について解説します。

1. 肝臓の腫瘍には良性と悪性がある

腫瘍には良性と悪性があります。悪性腫瘍はがんです。腫瘍を指摘されたからといってそれが肝臓がんであるかは詳しく調べてみないとわかりません。肝臓にできる腫瘍には肝血管腫のような良性腫瘍もあります。

2. 良性腫瘍と悪性腫瘍のちがい

肝臓に腫瘍ができたからといって必ずしも悪性腫瘍とは限りません。逆に良性腫瘍とも限りません。どちらの可能性もあります。まず良性腫瘍と悪性腫瘍の一般的な特徴を説明します。

  • 良性腫瘍の特徴
    • 大きくなるスピードが緩やか
    • 周囲の臓器を破壊することは少ない
    • 転移しない
  • 悪性腫瘍の特徴
    • 大きくなるスピードが速い
    • 周囲の組織を破壊することが多い
    • 進行すると転移する

悪性腫瘍には浸潤(しんじゅん)や転移をするという特徴があります。浸潤とは、周りの組織にがん細胞が入り込みながら広がっていくことです。

上の特徴は典型的な場合の特徴です。例外はあります。良性腫瘍か悪性腫瘍か見分けにくい場合もあります。良性腫瘍と診断されても経過観察を勧められることがあります。

3. 肝臓にできる腫瘍の種類

肝臓にできる腫瘍の種類を示します。

  • 主な良性腫瘍
    • 肝血管腫(かんけっかんしゅ)
    • 肝嚢胞(かんのうほう) 
    • 肝細胞腺腫(かんさいぼうせんしゅ) 
    • 限局性結節性過形成(げんきょくせいけっせつせいかけいせい) 
  • 主な悪性腫瘍
    • 原発性肝がん 
      • 肝細胞がん 
      • 肝内胆管がん
      • 肝芽腫(かんがしゅ) 
      • 胆管嚢胞腺がん(たんかんのうほうせんがん) 
      • 混合型肝がん 
      • 肉腫
      • 未分化がん
    • 転移性肝がん

比較的よく見られる良性腫瘍には肝血管腫肝嚢胞があります(厳密には腫瘍ではないものも一緒に挙げています)。一方、肝臓に発生する悪性腫瘍のほとんどは肝細胞がんと肝内胆管がんです。他の臓器にできたがんが肝臓に転移した場合を、転移性肝がんといいます。転移性肝がんの原因で多いのは大腸がんです。大腸がんの肝臓への転移は手術で取り除けることも多いので重要です。

4. 良性腫瘍

肝臓の良性腫瘍でよく知られているのは肝臓に血管の塊ができる肝血管腫などです。以下でそれぞれについて解説します。まれな腫瘍も挙げています。まれな腫瘍にはその性質が不明な点があります。良性腫瘍といわれても注意が必要な場合もあります。

肝血管腫(かんけっかんしゅ)

肝血管腫は、肝臓にできる良性腫瘍として頻度が高く、女性に多い腫瘍です。検診や人間ドックのエコーで見つかることも珍しくはありません。血管腫は血管の塊です。他の臓器に浸潤したり転移することはなく、特に悪さはしません。そのため、症状がなく小さければ基本的には治療は不要ですが、大きさや症状から治療を検討することがあります。

参考:肝海綿状血管腫の画像診断ガイドライン 

肝嚢胞(かんのうほう)

肝のうほうのイメージ

中身が水の袋状の構造を嚢胞(のうほう)と言います。肝嚢胞は肝臓に嚢胞ができたものです。浸潤や転移はしません。肝嚢胞は基本的には治療は必要とせず経過観察をします。

まれに嚢胞がかなり大きくなり腹痛などの症状がでることがあります。また、まれに肝嚢胞の中に細菌が入り込み感染を起こすことがあります。感染が起きると発熱したりします。

症状がある肝嚢胞には治療をします。治療は肝嚢胞の中身を抜き、再び水が溜まらないように薬(エタノール、ミノサイクリン塩酸塩など)を注入することがあります。治療で手術を選択することはかなりまれです。治療をしても肝嚢胞が再発することがあります。

参考:日本消化器病学会誌.2000;97:342-346

肝血管筋脂肪腫(かんけっかんきんしぼうしゅ)

肝血管筋脂肪腫は肝臓にできる良性腫瘍です。腫瘍が血管、筋肉、脂肪で構成されるので血管筋脂肪腫といいます。腎臓にできることもあります。

良性腫瘍なので治療を必要とはせずに経過観察されることが多いです。しかし、肝血管筋脂肪腫は肝臓がんとの区別が難しいことがあります。画像診断や生検で区別ができないときは手術が検討されることもあります。

参考:J Gastrointest Surg. 2007;11:452-7.

肝細胞腺腫(かんさいぼうせんしゅ)

肝細胞腺腫は肝臓にできる良性腫瘍です。男性より女性に多く、また経口避妊薬ステロイドの使用との関連が示唆されています。正常な肝臓に発生して単発のことが多いとされます。大きくなった場合には出血して腹痛があらわれることがあります。肝細胞がんと区別しにくいことがあります。

参考:肝臓.2015;56:584-595 

限局性結節性過形成(げんきょくせいけっせつせいかけいせい)

過形成とは細胞の数が増加することです。限局結節性過形成は、肝臓の限られた範囲で過形成が起きた状態です。大きくなると過形成の真ん中が瘢痕化(はんこんか)するなどの特徴があります。瘢痕化は線維化などがおきて本来の組織に置き換わることです。

肝細胞がんと区別が難しいことがあります。

参考:肝臓.2006;47:433-40 

5. 悪性腫瘍

悪性腫瘍は、まずは肝臓に由来したものかどうかで区別します。肝臓に由来したものを原発性肝がんといいます。

原発性肝がんにはいくつか種類がありますが肝細胞がん、肝内胆管がん肝芽腫でその99%を占めます。肝細胞がんはこの中でも特に多く、原発性肝がんの約94%を占めます。肝臓がんというと肝細胞がんを指すことが多いです。

その他の悪性腫瘍はかなりまれです。

肝細胞がん

肝臓には肝細胞という細胞があります。肝細胞はたんぱく質合成、炭水化物・脂質の代謝、解毒作用などさまざまな役割を担っています。肝細胞がんは肝細胞ががん化したものです。肝細胞がんの主な原因は肝炎ウイルスの持続感染による慢性肝炎や肝硬変です。

肝内胆管がん

肝臓には胆管が張り巡らされています。胆管は胆汁が流れる管で、胆道ということもあります。肝内胆管がんは胆管の上皮から発生するがんです。肝細胞ががん化する肝細胞がんとはがん化する細胞が異なります。肝内胆管がん胆道がんの一部に分類されます。

肝芽腫(かんがしゅ)

肝芽腫は2歳未満に発生することが多い、肝臓にできる悪性腫瘍です。男児に多い傾向にあります。肝芽腫はお腹に硬いコブとして触れることができたり、ほかの先天形態異常を伴うことがあります。血液検査では、AFPという腫瘍マーカーが増加することがあります。CT検査やMRI検査で診断します。抗がん剤と手術を組み合わせて治療します。

転移性肝がん

転移性肝がんは他の臓器に発生したがんが肝臓に転移して発見されたものです。大腸がんは肝臓に転移することが多いです。大腸がんの肝転移は転移したがんを切除することで根治が可能と考えられています。他のがんでも状況を見て肝臓に転移した病変を切除することが検討されることがあります。

原発巣(げんぱつそう)と転移巣(てんいそう)の違いについて

がんの大きな特徴のひとつが転移を起こすことです。転移とは、がんが元あった場所とは違うところにも移動して増殖することです。元あった場所のがんを原発巣(げんぱつそう)または原発腫瘍と言います。転移によってできたがんを転移巣(てんいそう)と言います。転移巣での特徴は原発巣の特徴を引き継いでいます。

つまり、転移性肝がんの原因が大腸がんであった場合、抗がん剤は肝臓がんのものではなく大腸がんに効果のあるものを選択します。これは治療方針を考えるうえで非常に重要です。当たり前と感じる人もいると思いますが、憶えておいてください。