まんせいふくびくうえん(ちくのうしょう)
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化したもの。一般的には蓄膿症と呼ばれることも多い
11人の医師がチェック 86回の改訂 最終更新: 2026.04.01

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)とは?

慢性副鼻腔炎ではねばっこい鼻水や色のついた鼻水、咳、頭痛などが2-3ヶ月以上続くきます。蓄膿症という呼び名で馴染みのある慢性副鼻腔炎の症状・原因・治療について説明します。  

副鼻腔とは鼻の周囲にある骨に囲まれた空間で、中には空気が入っています。通常は鼻の中(鼻腔)と副鼻腔が小さな通り道でつながっており、副鼻腔の空気は鼻腔を通じて入れ替わっています。この通り道が腫れなどで狭くなると、副鼻腔の換気や排泄が悪くなり、炎症が起こりやすくなります。

副鼻腔は左右にそれぞれ4つあります。

  • 前頭洞(ぜんとうどう)
  • 上顎洞(じょうがくどう)
  • 篩骨洞(しこつどう)
  • 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)

図:副鼻腔の解剖イラスト。前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、上顎洞の位置を示す。

炎症が起こる場所によって、出やすい症状が変わります。たとえば前頭洞が中心の場合は頭痛が目立つことがあり、上顎洞が中心の場合は頬や歯のあたりの痛みが出ることがあります。

副鼻腔炎」という言葉から慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、副鼻腔炎は慢性だけではありません。ここでは、副鼻腔炎の種類を整理します。

症状が続いている期間による分類

症状が続く期間に注目すると、副鼻腔炎は大きく急性と慢性に分けられます。期間はあくまで目安で、実際には経過や所見もあわせて判断します。

  • 急性副鼻腔炎1ヶ月以内に症状がなくなるもの
  • 慢性副鼻腔炎2−3ヶ月以上、症状が持続するもの
  • 中間:1ヶ月から2ヶ月の症状、炎症の繰り返し回数、鼻の中の見た目で急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎に分類

副鼻腔炎の多くは、かぜウイルス感染)をきっかけに始まります。ただし一部では細菌感染が関わることがあり、その場合は抗菌薬が必要になることがあります。急性と慢性では治療の考え方や治療期間が異なるため、急性か慢性かを整理しておくことが重要です。

特殊な副鼻腔炎

副鼻腔炎には、一般的な経過とは異なる原因で起こるタイプもあります。代表的なものは次のとおりです。

これらは特殊な治療が必要になることがあるので、一般的な副鼻腔炎と見分けることが大切です。1つ例を挙げると、副鼻腔真菌症であった場合には、真菌に効果の高い抗真菌薬を用いて治療する必要があります。

慢性副鼻腔炎の症状は下記のものがあります

  • ねばっこい鼻水
  • 色のついた鼻水
  • 鼻づまり
  • 鼻漏:鼻水がのどの奥に流れる症状
  • 痰がらみの咳
  • 頭痛
  • 頰の違和感
  • 嗅覚障害
  • 鼻茸(びじょう/はなたけ;鼻ポリープ):鼻粘膜がむくんでできた粘膜の腫れ。

慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎が長引いたり、繰り返したりする中で、副鼻腔の炎症が持続して起こります。

副鼻腔と鼻腔は、小さな通り道(副鼻腔自然口)でつながっており、副鼻腔で作られた分泌物はこの通り道を通って鼻腔へ流れ、体の外へ排出されます。ところが炎症が続くと、副鼻腔の粘膜が腫れて分泌物が増えたり、副鼻腔自然口が狭くなって分泌物が流れにくくなったりします。その結果、分泌物が副鼻腔内にたまりやすくなり、炎症が長引いて慢性副鼻腔炎の状態にいたります。

慢性副鼻腔炎の治療は、薬物療法と局所療法、必要に応じて手術治療を組み合わせて行います。ここでは代表的な方法を説明します。薬物療法の詳細は「慢性副鼻腔炎の薬」、局所療法の詳細は「慢性副鼻腔炎の治し方」、手術の詳細は「慢性副鼻腔炎の手術」で解説しています。

ここでは、代表的な薬物療法である少量マクロライド療法と粘液溶解薬(去痰薬)について説明します。「慢性副鼻腔炎の薬」で詳しく解説しているので参考にして下さい。

慢性副鼻腔炎では、薬物療法の選択肢の一つとして少量マクロライド療法が検討されることがあります。マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン:クラリス®、クラリシッド®など)を、通常量より少ない量で一定期間内服する治療です。

マクロライドは抗菌薬ですが、少量で用いる場合は「細菌を直接たたく」というより、炎症や分泌に関わる作用を期待して使われます。具体的には、炎症に関わる物質や分泌の過剰を抑えたり、分泌物の排泄に関わる線毛運動を改善したりする作用があるとされ、慢性副鼻腔炎の悪循環を断つ目的で用いられます。

一般に、14員環マクロライドを少量で8-12週間内服します。効果を実感する場合は、内服開始後2-4週間で変化が出始め、2-3か月で効果が頭打ちになります。3か月程度続けても十分な改善が得られない場合は、ほかの治療法を検討します。

少量マクロライド療法は、すべての慢性副鼻腔炎に同じように効く治療ではありません。一般に、鼻茸が目立たないタイプでは検討されやすい一方で、大きな鼻茸がある場合や好酸球性副鼻腔炎、急性の感染が強い状態(急性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎の急性増悪)では、効果が十分でないことがあります。このような場合は、別の薬剤や手術治療が優先されることがあります。

効果判定は、鼻水、鼻づまり、後鼻漏などの自覚症状の変化を中心に行います。画像検査は必須ではなく、症状の改善が画像に反映されるまでには時間差が出ることがあります。

副作用として下痢などの消化器症状がみられることがあります。また、抗菌薬を長期間内服する治療であるため、耐性菌の問題も意識する必要があります。治療の必要性や適応は病状によって変わるため、症状や所見に応じて主治医と相談しながら方針を決めます。

粘液溶解薬は、鼻汁の粘り気(粘稠度)を下げ、分泌物を出しやすくする目的で用いられます。少量マクロライド療法と併用することで、症状が改善しやすくなるとされます。

代表的な薬として、システイン系製剤(カルボシステイン:ムコダイン®など)があります。ほかに、去痰薬(ムコソルバン®など)や、フドステイン(クリアナール®など)が用いられることもあります。

局所療法は、鼻腔内の分泌物を減らし、炎症に関わる物質を取り除く目的で行い、主に行われているのは鼻洗浄です。これは、鼻腔内を洗浄して粘性の鼻汁を除去し、分泌物に含まれる炎症関連物質を洗い流します。一般に食塩水を用いて行います。

内服治療や局所療法で改善しない場合、鼻茸が大きい場合、副鼻腔真菌症好酸球性副鼻腔炎などでは、手術治療が選択肢になります。手術に関しては「慢性副鼻腔炎の手術」でも詳しく説明しているので参考にしてください。

内視鏡を用いて鼻の穴から器具を入れて行う手術です。局所麻酔で行うこともありますが、全身麻酔で行われることが多いです。副鼻腔の排泄路(副鼻腔自然口)の狭窄や閉鎖が関与するため、自然口を広げて換気と排泄を改善し、副鼻腔炎の悪循環を断ち切ることを目的に行います。多くは入院で行われますが、日帰りで実施している施設もあります。

再発例などでは、内視鏡手術ではなく外切開を伴う手術が選択されることがあります。 

  • Caldwell–Luc手術:歯ぐきから切開し、上顎洞へ到達する方法
  • Killian手術:眉毛の下を切開し、前頭洞へ到達する方法

上顎洞や前頭洞に再発した副鼻腔炎などで検討されます。

慢性副鼻腔炎は、治療によって症状が落ち着く人もいれば、再発を繰り返して長く付き合う人もいます。いずれにしても、多くの人は治療によって症状の改善が期待できます。

一般的な慢性副鼻腔炎では、局所療法や薬物療法で改善が期待できます。内服治療や局所療法で十分に改善しない場合は、手術治療によって換気や排泄を改善し、症状を軽くすることがあります。

ただし、いったん落ち着いた後でも、かぜなどをきっかけに再び悪化することがあります。再燃した場合は、以前と同じ治療で対応できることもあれば、症状や所見に応じて治療内容を調整します。

また、大きな鼻茸を伴う場合や、副鼻腔真菌症など特殊なタイプでは、薬物療法だけでの改善が難しいことがあり、手術治療が選択肢になります。

慢性副鼻腔炎は治療が長引いたり、再発を経験したりすることで「治りにくい」と感じる人もいるかもしれません。慢性副鼻腔炎は治療を続けることで改善を目指せる病気です。治療中に不安や疑問が出た場合は、主治医に相談しながら方針を確認してください。

小児の慢性副鼻腔炎は、成長とともに改善していくことが多いとされています。一方で、鼻茸による鼻閉が強い場合や、粘り気の強い鼻汁が長期間続く人には、治療が長引いたり、手術が検討されたりすることがあります。