[医師監修・作成]白癬(水虫・たむし)の治療について | MEDLEY(メドレー)
はくせん
白癬
白癬菌(かびの一種)による皮膚感染症の総称
9人の医師がチェック 153回の改訂 最終更新: 2022.03.30

白癬(水虫・たむし)の治療について

白癬の人には薬物治療が行われます。症状の軽い足白癬の場合は外用薬のみを使い、それ以外のほとんどの場合で内服薬を併用します。治療をはじめると症状は速やかに改善しますが白癬菌はすぐには排除されません。症状がなくなったからといって薬を中止せず、指示された期間根気よく治療を続けることが重要です。ここでは処方薬に加え市販薬の治療についても詳しく説明します。

1. 病院などの医療機関で行われる治療

白癬の原因は白癬菌と呼ばれる真菌(カビ)であるため、治療では真菌の増殖を抑える抗真菌薬(こうしんきんやく)が使われます。感染部位によって外用薬のみ、もしくは外用薬と内服薬をあわせた治療が行われます。感染部位と大まかな治療方法をまとめると次の通りです。

【白癬菌の感染部位と治療方法】

感染の部位、タイプ 外用薬 内服薬
足白癬 軽症 ×
  中等症以上
  角質増殖型
爪白癬
体部白癬・股部白癬
頭部白癬 (シャンプー)

白癬は皮膚の病気ですが、塗り薬(外用薬)だけでなく内服薬も使われます。頭部白癬では外用薬が刺激になってかえって悪化することがあるため、内服薬での治療が中心になります。症状に応じて抗真菌薬が配合されたシャンプーを使うこともあります。

次からは、治療に使われる薬剤について詳しく説明します。

抗真菌薬の外用薬:ルリコン®️、ラミシール®️など

白癬菌は真菌(カビ)であるため、治療では真菌の増殖をおさえる抗真菌薬の外用薬が用いられます。白癬で使われる主な外用薬は次の通りです。

【白癬の治療で使われる主な外用薬】

系統 一般名 主な商品名
イミダゾール ルリコナゾール ルリコン®️
ラノコナゾール アスタット®️
モルホリン アモロルフィン塩酸塩 ペキロン®️
チオカルバミン酸 リラナフタート ゼフナート®️
アリルアミン テルビナフィン塩酸塩 ラミシール®️
ベンジルアミン ブテナフィン塩酸塩 メンタックス®️

これらの薬はいずれも、真菌の細胞膜の主な構成成分であるエルゴステロールという物質の合成酵素を阻害する作用をあらわし、これによって真菌の増殖を抑えます。

白癬の治療では通常1日1回患部に塗布します。外用薬にはクリーム剤、軟膏剤、ローション剤、スプレー剤があり、症状や使用感によって使い分けられます。白癬の治療では薬の伸びがよく使いやすいクリーム剤が用いられることが多いです。クリーム剤のベタつきが気になる人にはローション剤も処方されます。

また、外用薬の剤型を選ぶ際には使用感だけでなくは副作用も考慮されます。主な副作用には刺激感や痒み、赤み、湿疹などの皮膚症状、過敏症などがあります。これらの副作用が起きた場合には、刺激が少なく保湿効果の高い「軟膏剤」が選ばれます。特に皮膚がじゅくじゅくするタイプの足白癬では副作用が起きやすいため、軟膏が選ばれることが多いです。白癬とともに湿疹や感染が起きている人には、それらの治療のためのステロイド外用薬や抗菌薬の外用薬などが合わせて使われます。

◎爪白癬用の外用薬

外用薬は爪に塗っても浸透しにくいため、一般的には内服薬があわせて使われます。しかし、持病により内服治療ができない人やごく軽い爪白癬の人では外用薬のみの治療が選択されます。爪白癬用に、爪に浸透しやすい工夫がされた外用薬には次のものがあります。

外用薬を1日1回爪に塗ります。足の爪は伸びる速度が大変遅いため、少なくとも3-6か月の継続治療が必要で、病状によっては1年以上の治療が必要です。副作用は爪周囲の接触性皮膚炎です。薬が周囲の皮膚に付着することで、赤み、かゆみ、湿疹などの症状が起こります。エフィナコナゾールでは、爪が黄色くなる副作用も報告されていますが、爪白癬が治るにつれて改善することもあります。

内服薬

外用薬のみでは改善が期待できない白癬では、内服薬の併用が必要です。一般的には軽症の足白癬以外は内服薬が使われます。

よく処方されるのはテルビナフィン(商品名:ラミシール®️)やイトラコナゾール(商品名:イトリゾール®️)です。感染した部位によって内服期間や内服回数、量などが異なります。これらの薬の内服中は、副作用が生じていないかチェックするため定期的な血液検査が必要です。

◎テルビナフィン(商品名:ラミシール®️)

白癬に対する治療薬ではじめに検討される内服薬で、白癬菌を殺菌する効果があります。頻度はまれですが、重篤な副作用として肝機能障害、血球減少、横紋筋融解症などが報告されているため、内服中は血液検査で副作用を確認しながら治療が行われます。また、肝機能が低下している人や、貧血白血球減少などの血球減少がある人には使われないことがあります。

内服期間は感染部位と重症度によって異なりますが、目安として爪白癬では6か月、足白癬の角質増殖型では4か月と長期間にわたる内服が必要となります。

◎イトラコナゾール(商品名:イトリゾール®️)

テルビナフィンの使用が適さない人に使われる内服薬です。白癬菌の増殖速度を抑えることで、白癬に効果を発揮します。テルビナフィンは真菌の中でも白癬菌に特化して効果がありますが、イトラコナゾールはさまざまな真菌に幅広く効果を発揮します。テルビナフィンと同じく、肝機能障害と血球減少の副作用があり、長期間内服する人は定期的な血液検査が検討されます。

イトラコナゾールは一緒に使えない薬(併用禁忌薬)が多いため、内服を開始する前に使用中の薬との飲み合わせを確認してもらう必要があります。例えば、高血圧で用いられるアゼルニジン(商品名:カルブロック®)、心房細動などで用いられるダビガトラン(ブラザキサ®)、リバーロキサバン(イグザレルト®)などとは併用できません。

内服方法は「1週間連続して内服後に3週間休む」というサイクルを3セット行うパルス療法が一般的です。薬の吸収を良くするために食直後に内服することが重要です。

◎ホスラブコナゾール(商品名:ネイリン®)

2018年に発売された新しい薬です。白癬菌の増殖を抑えて白癬に効果があります。ホスラブコナゾールは白癬菌以外のさまざまな真菌にも幅広く効果を発揮します。

副作用は肝機能障害や胃腸障害があります。3ヶ月の内服が必要ですが、薬の吸収は食事に影響されないので、いつでも内服できる点が便利です。内服中から終了後3ヶ月は避妊が必要です。

抗菌薬の外用薬:ゲンタシン®️軟膏など

足白癬で皮膚がふやけた部分に細菌が感染することがあります。細菌感染が起きた皮膚に抗真菌薬を使用すると刺激によって症状が悪化するため、まずは抗菌薬の外用薬で細菌感染の治療を行ってから抗真菌薬の外用薬を使います。

さまざまな外用薬がありますが、ゲンタシン®️軟膏バラマイシン®️軟膏などが使われることが多いです。いずれもアミノグリコシド系の抗菌薬で、細菌の増殖に必要な蛋白合成を阻害して殺菌する効果があります。

2. 足白癬の治療で注意すること

足白癬は治っても再発することが多いと思っている人が多いかもしれません。治療によって白癬菌がいなくなるタイミングは、症状がおさまるタイミングよりもずっと後です。そのため、症状が良くなってすぐに治療をやめてしまうと、皮膚に残った白癬菌が再び増殖して症状が再発します。

しっかりと治療を続けることが症状を繰り返さないポイントです。次のようなことに注意することで治癒が期待できます。

  • 症状のない部分も含めて広範囲に薬を塗る
  • 症状がなくなっても指示された期間は薬を塗り続ける
  • 薬を塗り始めて悪化した場合には医療機関を受診する
  • 皮膚を刺激しないようにする

一つひとつ説明します。

◎症状のない部分も含めて広範囲に薬を塗る

白癬菌は見た目の症状がない部分にも存在します。治療のためには正常に見える部分も含めて、広い範囲に十分に薬を塗布する必要があります。

具体的には、足底全体と足指全体に隙間なく塗り広げてください。かかとや足のフチも含めて、ぐるりとくまなく塗ることが大切です。症状が片足にしかない場合でも両足に塗ります。

また、十分な量の薬を使うことも重要です。上記の範囲を片方の足に十分塗る場合、1回で約0.5gの外用薬が必要になります。これは大体、人差指の先端から第一関節までの長さでチューブから薬を絞り出した量に相当します。処方される外用薬のほとんどが30g入のチューブなので、両足に計1gを毎日1回ずつ塗り続けると、1か月で1本を使い切るペースです。

ベタつきが気になる場合にはクリームではなくローションが使いやすいので、お医者さんと相談してみてください。

◎症状がなくなっても指示された期間は薬を塗り続ける

抗真菌薬の薬を使い始めると2週間程度で症状は改善します。しかし白癬菌はまだ存在しているので、この時点で治療を中止すると症状が再発します。そのため症状がなくなった後も最低1ヶ月は外用薬の塗布を続けてください。指示された期間がある場合にはそれに従って治療を続けることが、再発を防ぐために重要なポイントです。

◎薬を塗り始めて悪化した場合には受診する

抗真菌薬の刺激で皮膚炎を起こすことがあります。特に趾間型で皮膚がふやけている場合や亀裂がある場合には外用薬の刺激を受けやすくなっています。外用薬の塗布をはじめて症状が悪化したときはお医者さんに相談してください。外用薬の変更や追加で改善が期待できます。

◎皮膚を刺激しないようにする

白癬菌を洗い落とそうとして強くこすると皮膚の荒れに繋がります。また、アルコールなどの消毒薬も白癬に効果がないだけでなく、皮膚の荒れを引き起こすことがあります。皮膚が荒れると抗真菌薬による刺激性皮膚炎を起こしやくなるので、これらの行為はさけて、、外用薬を塗布する時は優しく塗ることを心がけてください。

セルフケアでの対処法

足白癬の治療中は薬物治療とともにセルフケアも重要です。常に清潔にして、蒸れを避け、乾燥させることを日常生活に取り入れてみてください。

◎清潔にする

足白癬(水虫)の悪化を防ぐためには清潔にすることが重要です。強くこすると傷がつくので、洗浄する時には、よく泡立てた石鹸で優しく洗います。足は指の間まできちんと1本1本丁寧に洗ってください。石鹸は十分洗い流して、清潔なタオルで水分を拭き取り、足の指の間に水分を残さないようにします。足を乾燥させた後に抗真菌薬の外用薬を十分な量塗ってください。

◎蒸れを避ける

足が蒸れないように通気性のよい靴や靴下を選ぶとよいです。毎日同じ靴を履いていると、靴の中に湿気が残りがちなので、履く靴を毎日変えることも効果的です。必要がないときには靴や靴下をはかないようにして乾燥させてください。デスクワークをするときには、サンダルに履き替えることなども効果的です。

3. 市販薬での治療

白癬に対する市販の治療薬は多数販売されています。入手が簡単な点で優れていますが、白癬と自己判断して市販薬を使いをはじめることは好ましくありません。白癬と似た症状が出る病気が他にもあるため、他の病気の場合は悪化する可能性があります。医療機関で白癬と診断された後に、薬をもらいに行く時間がないときや、再発したときに市販薬を使うのが便利です。この場合でも薬を使い始めて悪化した場合やなかなか改善しない場合には医療期間への受診をお勧めします。

次に、市販されている外用薬を中心に、白癬に効果があるといわれている石鹸やシャンプーの効果などについても説明します。

外用薬:ダマリン®、ブテナロック®など

白癬の治療薬は市販でも多数販売されていて、処方薬と同じ成分が含まれた薬もあります。白癬に対して病院で主に処方される薬(医療用医薬品)と市販薬との対応は次の通りです。

表:白癬治療に用いられる処方薬と市販薬

系統 成分名 医療用医薬品名 OTC薬品名
イミダゾール系 ラノコナゾール アスタット®️ ウィンダム®️
モルホリン系 アモロルフィン ペキロン®️ ダマリン®️
アリルアミン系 テルビナフィン ラミシール®️ ラミシール®️ATなど
ベンジルアミン系 ブテナフィン メンタックス® スコルバ®️
ブテナロック®️

以前に医療機関で処方された薬がある場合には、上記を参考に市販薬を使う選択肢もあります。

石鹸

白癬に効果のある抗真菌薬が含まれた石鹸が市販されています。しかし、抗真菌薬の外用薬や内服薬をせずに、石鹸のみで白癬を完治させることは難しいです。試してみたい場合は外用薬や内服薬での治療の補助として使うのがよいです。

常に清潔にし、蒸れを防ぎ、薬物治療を根気よく続けることが重要です。

シャンプー

ボディコンタクトを伴う格闘技を行う人で流行しやすい頭部白癬に対しては、抗真菌薬が含まれたシャンプーを用いても良いです。しかし白癬を完全に治癒させる効果は低く、白癬菌の増殖速度を遅くする効果がある程度です。そのため、治療では医療機関で処方された内服薬を併用する必要があります。

また、予防では、シャンプーに抗真菌薬が配合されているか否かよりも、白癬を毎回きちんと洗い流すことが大切です。試合や練習のあとには早めにシャワーで洗浄するよう心がけてください。

4. 白癬が治るまでどのくらいかかるのか

白癬は感染した場所やタイプによって治療期間が異なります。治療期間の大まかな目安は次の通りです。

感染の部位 治療期間
足白癬 趾間型 2ヶ月以上
  水疱 3ヶ月以上
  角質増殖型 6ヶ月以上
爪白癬 手:6か月
足:1-1.5年
体部白癬・股部白癬 1.5か月
頭部白癬 2-3か月

白癬の治療を開始すると2週間程度で症状が改善しますが、症状が改善しても白癬菌が角質層の中で生きている可能性があるため、指定された期間は薬での治療が必要です。途中で治療を中止すると減っていた菌が増殖して症状が再び悪化します。白癬菌がいる角質層が新しい細胞に全て置き換わってはがれ落ちる期間以上の治療期間が必要です。

5. 足白癬を放置するとどうなるのか

足白癬(水虫)を放置した場合でも、秋から冬にかけて菌の増殖が少なくなるため、症状が落ち着きます。自然治癒したように感じるかもしれませんが、白癬菌の感染は続いているので夏になると再び症状が現れます。このような状態を繰り返していると、次のようなことが起こり得ます。

  • 知らない間に周りに感染を広げる
  • 細菌感染を合併して症状が悪化する

症状がないからといって治療をせずに放置しておくと、白癬菌を家庭や公共の場で広めてしまうことになります。

また、白癬を放置した場合には細菌感染を起こすことがあります。特に皮膚がふやけてただれている人に起こりやすく、爪白癬に陥入爪を合わせて起こしている人や頭部白癬の人にも細菌感染が起こりやすいです。

細菌が感染すると皮膚や周りの組織に炎症を起こして、蜂窩織炎丹毒という状態になります。症状は皮膚の赤み、腫れ、熱感、痛みなどです。感染した細菌の種類や、糖尿病などの持病によっては、重症な感染症に進行するすことがあります。中でも「壊死性筋膜炎」になると急速に感染が広がって、病状次第で感染した足を切断する手術が必要になったり、命に関わる事態になることがあります。そうならないためにも、白癬では症状がなくともきちんと治療を行うことが重要です。

参考文献

「日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019」, 日皮会誌 2019 ; 129 : 2639-2673.(2020.2.26閲覧)
・臨床皮膚科 2019 ; 73 : 118-122.
・medicina 2017 ; 54 : 1420-1425.
・臨床皮膚科 2016 ; 70 : 104-109.