[医師監修・作成]白癬(水虫・たむし)の原因について:白癬菌はどこでうつるか | MEDLEY(メドレー)
はくせん
白癬
白癬菌(かびの一種)による皮膚感染症の総称
9人の医師がチェック 153回の改訂 最終更新: 2022.03.30

白癬(水虫・たむし)の原因について:白癬菌はどこでうつるか

白癬は真菌(カビ)の一種である白癬菌(皮膚糸状菌:ひふしじょうきん)が原因で起こります。皮膚に傷がある人や、免疫低下を起こしやすい糖尿病などの持病がある人は感染しやすくなります。ここでは白癬の原因となる白癬菌や感染経路について詳しく説明します。

1. 白癬の原因となる白癬菌とは?

白癬の原因は真菌(カビ)の一種である白癬菌(皮膚糸状菌)です。白癬菌には数多くの種類がいますが、日本では、Trichophyton rubrum(トリコフィトン・ルブルム)とTrichophyton mentagrophytes(トリコフィトン・メンタグロフィテス)の2種類が原因の約90%を占めています。

足白癬・爪白癬の原因となる白癬菌

日本で足白癬の原因となるのは先に紹介した2種類です。

  • Trichophyton rubrum(トリコフィトン・ルブルム)
  • Trichophyton mentagrophytes(トリコフィトン・メンタグロフィテス)

このうち最も多いのがTrichophyton rubrumで、日本の白癬の約80%がこの菌によって起こります。Trichophyton rubrumによる足白癬には角質増殖型が多く、趾間型、趾間型と小水疱型の混合型も起こします。

Trichophyton mentagrophytesは白癬の原因の10%を占めます。この菌による足白癬は小水疱型が多く、土踏まずや足の縁に大小の水疱ができます。

爪白癬は足白癬から広がることが多いため、同じ白癬菌が主な原因となります。

体部白癬・頭部白癬・股部白癬の原因となる白癬菌

体部白癬や頭部白癬、股部白癬の原因となる白癬菌の種類はさまざまです。近年増えているのが、2001年頃から広まったTrichophyton tonsurans(トリコフィトン・トンズランス)で、「新型水虫」とも呼ばれています。この菌はもともと欧米でよくみられる白癬菌でしたが、柔道、レスリング、相撲、格闘技などのボディコンタクトを伴う競技者の間で広まり、日本でも頭部白癬や体部白癬の原因となっています。接触によってうつりやすいため競技者間で集団感染を起こすこともあります。感染予防のためには、練習や試合の後にシャワーを浴びて洗い流すことが大切です。ただし、最近では格闘技をしていない子どもにも広がっているため、競技者でないからといって無縁ではないことに注意が必要です。

その他に、イヌやネコなどの動物がもっているMicrosporum canis(ミクロスポルム・カニス)という白癬菌も、ヒトに感染して体部白癬や頭部白癬を起こすことがあります。

2. 白癬はどこでうつるか:温泉、風呂、プールなどの感染経路

白癬は白癬菌に感染している皮膚に直接触れたり、感染した人が接触した物を介してうつります。例えば、足白癬の人が素足で使用したマットを共有したり、体部白癬や頭部白癬の人と素肌が接触する競技を行うことなどです。

足白癬の感染経路

足白癬がある人が素足で接触した場所から感染が広がります。足白癬がうつりやすいやすいと考えられるのは次の場所です。

【足白癬の感染が起きやすい場所】

  • 足白癬の人がいる家庭
  • 公衆浴場
  • プール
  • 宿泊施設
  • 飲食店
  • 病院、クリニック
  • 職員寮

いずれも靴を脱いで素足で歩いたり、スリッパを共用することがある場所です。白癬菌は乾燥した場所であっても数週から数ヶ月間は生きることができ、湿った環境であればさらに長期間生存します。そのため、上記のような場所には白癬菌が存在すると考えて対処することが予防につながります。

白癬菌は皮膚の表面についただけでは感染しません。付着後しばらくして角層(角質層、角質細胞層)内まで入りこむことで白癬(水虫)を発症します。したがって皮膚表面に付着した菌が角層まで入らないうちに落とすことが感染予防になるため、上記のような環境を素足で歩いた後は、できるだけ早く足をきれいに洗ってください。

体部白癬・頭部白癬の感染経路

体部白癬や頭部白癬はヒトや動物から感染します。Trichophyton tonsurans(トリコフィトン・トンズランス)は、素肌の接触が多い柔道、レスリング、相撲などを行う人の間で感染しやすい白癬菌です。これらの競技の部活動で集団感染も報告されています。予防のために競技後は全身を洗い流すようにしてください。

Microsporum canis(ミクロスポルム・カニス)は主にネコやイヌからヒトに感染します。ネコやイヌと直接接触がなくても、これらのペットが触れたものから感染することもあります。また、ウサギやモルモット、ハリネズミなどの小動物から感染したというの報告もあります。

ペットからうつった白癬と診断された場合は、再感染を防ぐためにペットも同時に治療する必要があります。

3. 足白癬になりやすい環境や生活習慣とは?

皮膚に付着した白癬菌が角層内に侵入することで感染が起こります。白癬菌が角層内に侵入しやすいのは、高温、高湿度、高pH(アルカリ性)の環境です。具体的には次のような状態が足白癬の感染を起こしやすくします。

【足白癬にかかりやすい状態】

  • 高温多湿の環境で過ごす
  • 足の洗浄が不十分である(特に指と指の間)
  • 足に汗をかきやすい
  • 通気性の悪い靴を長時間履いている
  • 足の指の間が狭い

ある研究では温度35度で湿度100%の環境では、足の皮膚表面に付着した白癬菌が1日で角層内に侵入すると報告しています。皮膚に傷がある場合にはこれよりも早く、半日で角層内に侵入する可能性があります。つまり足に白癬菌が付着しやすい環境に行った後12時間以内に足を洗うようにすれば、白癬に感染するリスクを減らすことができます。たとえ靴下を履いて過ごした場合でも白癬菌が付着することがあるので足の洗浄は重要です。

4. 白癬になりやすい病気とは?:糖尿病など

免疫が低下しやすい状態の人は白癬菌に感染しやすくなります。糖尿病の人や免疫抑制剤を使用している人などがこれに当たります。特に糖尿病の人では足白癬や爪白癬の合併が多く、適切なケアが必要になります。爪白癬は症状があまりないので放置しがちですが、悪化した場合には重い細菌感染を起こすこともあるので、放置せずにきちんと治療を受けることが重要です。

また、皮膚の病気などで免疫を低下させるような軟膏を使っている場合も、白癬菌が定着しやすくなります。例えばステロイド外用薬(アンテベート®️、アルメタ®️、ロコイド®️など)やタクロリムス軟膏(プロトピック®️軟膏)などです。これらの軟膏を使用していて皮膚の状況に変化がみられた人、かかりつけの医療機関で相談してください。

参考文献

・Jpn. J. Med. Mycol. 2000 ; 41 : 5-9.
「201年次皮膚真菌症疫学調査報告」, Med.Mycol.J. 2015 ; 56 : 129-135