皮膚がんの症状について:皮膚の異常など
皮膚がんは皮膚の異常への気づきをきっかけに見つかることが多いです。このページでは皮膚がんの特徴的な症状や、
1. 皮膚がんの症状の特徴について
皮膚がんにはいくつか種類があります。なかでも多いのが「有棘細胞がん」、「基底細胞がん」、「悪性黒色腫」で、皮膚がんと診断された人のほとんどがこの3つのうちどれかに当てはまります。このページではこれらの症状の特徴について説明しますが、他にもパジェット病やマルトリンパ腫といった皮膚がんがあり、それぞれ皮膚の変化が症状としてみられます。ここで説明していない皮膚の症状でも心配があるものは皮膚科で相談してください。
有棘細胞がんの主な症状
皮膚に盛り上がりや
有棘細胞がんの発生部位は顔面が最も多くを占め、下腿(膝から足首の間)、手の甲、頭部と続きます。
基底細胞がんの主な症状
有棘細胞がんと同様に、皮膚の盛り上がりが見られます。ゆっくりと大きくなり、盛り上がりの真ん中あたりに潰瘍(皮膚のえぐれ)ができることがあります。また、病気の部分の縁に小結節と呼ばれる灰黒色の小さなできものが並んでできることがあるのも特徴の1つです。基底細胞がんの発生部位は、有棘細胞がんと同じく顔面が最も多いです。特に「眼の下」「頬」「鼻」など顔面の中央寄りの位置に発生しやすいことも知られています。
悪性黒色腫の主な症状
初期には褐色から黒色のしみやほくろに似た
【悪性黒色腫のABCDEルール】
Asymmetry | 形が左右で非対称である |
Borders | 境界が不明瞭である |
Color | 色むらがある |
Diameter | 直径が6mm以上ある |
Evolving | 大きくなる |
また、ABCDEルールには入っていませんが、色や形、硬さの変化も悪性黒色腫を疑う重要な特徴として知られています。そのため、ABCDEルールに当てはまらなくても悪性黒色腫と診断されることがあります。
悪性黒色腫ができやすい部位は足の裏や足の指で、爪にできることも少なくありません。爪に悪性黒色腫ができると、徐々に幅が拡大していく黒褐色の縦のすじ(色素線条)が現れます。
2. 皮膚がんが転移した場合の症状について
皮膚がんが進行すると、転移を起こすことがあります。転移とは
転移があっても症状があるとは限らない
がんが転移をしても、ある程度の大きさにならなければ症状が現れないことが多く、画像検査で転移が小さなうちに見つかった人のほとんどが無症状です。 転移が見つかった時に症状がなかったとしても、がんが大きくなると症状が現れます。無症状の段階で治療を開始すると、がんが大きくなる速度を緩やかにして、症状が現れるタイミングを遅らせることができます。
がんが転移した部位によって症状が異なる
がんの転移は身体のどこにでも起こりえます。そして、転移した部位によって現れる症状が異なります。例えば、肝臓に転移した場合は腹痛や腹部の張りを自覚しますし、肺に転移した場合は、呼吸苦(呼吸がしにくくなること)や
転移はさまざまな症状の原因になりますが、がんと診断された後に何らかの症状が現れたからといって転移が起きたサインとは限りません。例えば、腹痛は便秘や食中毒でも起こりますし、呼吸苦は肺炎や喘息によっても起こります。がんの診断後に新しい症状が現れるとどうしても転移と結びつけて考えてしまいがちですが、さまざまなことが原因になりうることを覚えておいてください。 とはいえ、症状だけで原因を推測するのは困難です。心配な症状はかかりつけのお医者さんで相談してください。
3. 皮膚がんの末期の症状について
皮膚がんに限らず「がんの末期」には明確な定義がありません。ここでは末期を抗がん治療(手術や
胸水・腹水の症状
お腹の中の臓器(胃や腸、肝臓など)の周りにある水分を腹水、肺の周りにある水分を胸水と言います。末期になると腹水や胸水が増加して、それに伴う症状が現れます。腹水が増えるとお腹が張ったり、胃や腸が圧迫されて食欲が低下したりします。胸水が増加すると、呼吸に影響が現れて、息苦しさを自覚するようになります。これらの症状を和らげるには、腹腔
悪液質の症状
がんが進行すると身体に悪影響を及ぼす物質が作られ、悪液質という状態になります。悪液質になると、がん細胞に身体の栄養が奪われてしまい、
ここまで、末期の症状について説明してきました。
末期になると身体に現れる症状だけではなく、精神面にも影響が及んで、心細さや孤独を感じやすくなり、精神的な支えがより重要になります。精神的なサポートは医療スタッフだけではなく、周りの人にもできることがあります。例えば、患者さんが好きな音楽や香りで部屋を包むと、過ごしやすい雰囲気づくりにつながるかもしれません。上手な雰囲気作りが見つからないときには、ただそばにいてあげるだけでもよいです。
がんの緩和知慮や末期の過ごし方の詳しい説明は「こちらのページ」も参考にしてください。
参考文献
・日本皮膚科学会ガイドライン作成委員会, 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版, 日皮会誌:125(1),5-75,2015
・「あたらしい皮膚科学 第2版」(清水 宏 / 著)、中山書店、2011年
・「がん診療レジデントマニュアル 第7版」(国立がん研究センター内科レジデント / 編)、医学書院、2016年