関節リウマチの薬を使った人が皮膚がんになりやすい?
過去の研究から、関節リウマチや炎症性腸疾患のような免疫疾患の治療によって、皮膚がんになる可能性が指摘されています。それらの免疫疾患の治療薬として一般的なメトトレキサートなどによる皮膚がんへの影響について報告されました。
◆患者9,460人の皮膚がんの再発リスクを調査
関節リウマチや
研究チームは、皮膚がん(悪性黒色腫を除く)の手術を受けた後の関節リウマチや炎症性腸疾患の患者計9,460人を対象として、それらの薬の影響を検討しました。
皮膚がんの手術後に、免疫を調整する薬を1年間以上服用していた患者では、皮膚がんが再発するのかどうかを調査しました。
また、7種類の薬の組み合わせによって皮膚がんの再発のしやすさに変化が出るのかどうかも確認しました。薬には、メトトレキサート・チオプリン・抗TNF薬・スルファサラジン・ヒドロキシクロロキン・アバタセプト・リツキシマブの7種類の薬を調べました。
◆メトトレキサートを使った人で皮膚がん再発が多かった
調査の結果、以下のことが分かりました。
関節リウマチの患者では、他の薬との組み合わせて使ったメトトレキサートが、NMSC の再発のリスク増加に関与していた(ハザード比:1.60、95%信頼区間:1.08-2.37)。他の薬剤の影響を補正すると、NMSCのリスクは1年以上のメトトレキサートの使用で増加した(ハザード比:1.24、95%信頼区間:1.04-1.48)。
つまりこの研究から、皮膚がんの手術をした後の関節リウマチの治療でメトトレキサートを使った人では、皮膚がんの再発するリスクが高かったことが示されました。また、炎症性腸疾患の患者では、チオプリンや抗TNF薬を使った時の皮膚がんの再発リスクに影響は見られませんでした。
この研究では、もともと皮膚がんを再発しやすい人がメトトレキサートを選択しやすい傾向にあった可能性もありますが、メトトレキサートが皮膚がんの再発を促した可能性も考えられます。あらゆる薬には副作用もあり、関節リウマチの治療に使う薬を選ぶために、今後この点について議論が進むかもしれません。
執筆者
Risk of Nonmelanoma Skin Cancer Associated With the Use of Immunosuppressant and Biologic Agents in Patients With a History of Autoimmune Disease and Nonmelanoma Skin Cancer.
JAMA Dermatol. 2016. Feb. 1.
[PMID: 26510126]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。