じんがん(じんさいぼうがん)
腎がん(腎細胞がん)
腎臓の実質にできるがん。手術や分子標的薬により治療する。
10人の医師がチェック 260回の改訂 最終更新: 2024.05.08

腎がんの検査について:CT検査や超音波検査など

 

腎がんの検査にはいくつかありますが、特に重要なのが画像検査です。腎がんが疑われる人では画像検査によって、腎がんかどうかが分かります。また、腎がんと診断された人では、画像検査によって、腎がんのステージを調べられます。 このページでは画検査を中心に腎がんの検査について説明します。

1. 問診

お医者さんと患者さんが主に対話形式で行う診察を問診と言います。問診には患者さんの身体の状況や背景を確認する目的があります。問診では症状の有無や、症状の様子、今までにかかった病気、飲んでいる薬などを伝えてください。

2. 身体診察

身体診察とはお医者さんが患者さんの身体を直接くまなく調べる診察のことを指します。腎がんが疑われる人には腹部の診察が念入りに行われます。具体的には、お腹を触ったり、優しく叩いたりします。

3. 血液検査

腎がんが疑われる人に行われる血液検査の目的は、腎臓や肝臓などの全身状態の把握です。腎がんを血液検査だけで見つけることは困難なので、腎がんを見つける目的はありません。血液検査の結果で薬物療法の種類であったり、手術の方法が決められます。例えば、肝臓の機能が低下している人には、肝臓への負担が少ない薬が選ばれます。また、腎臓の機能が低下している人では、腎臓を丸ごと摘出する方法(根治的腎摘出術)より腎臓の一部分を摘出する方法(腎部分切除術)の方を選ぶことになります。

4. 画像検査

腎がんが疑われる人には、診断のために超音波検査CT検査が行われます。特殊な腎がんや良性腫瘍と見分けがつかない場合には、MRI検査やPET検査が用いられることもあります。

腹部超音波検査(エコー検査)

エコー検査は超音波を利用して体の中を画像化する検査です。放射線を使うない検査なので、被ばくの心配はありません。超音波検査で腎がんが疑わしい人には、CT検査が行われます。

CT検査

CT検査は腎がんの診断の決め手になる検査で、放射線を利用して、身体の断面を画像化する検査です。がんの広がりがよく分かるので、転移の有無を確認することができ、ステージを決める判断材料になります。 また、より詳細に調べるために、造影剤という薬を注射してCT検査が行われることがあり、これを造影CT検査(ダイナミックCT含む)と言います。CT検査で得られる画像は白黒ですが、造影CT検査では白黒のコントラストがはっきりとするので、より詳しい情報が得られます。 なお、「腎臓の機能が低下している人」や「一部の糖尿病治療薬(メトグルコ®など)を内服している人」には造影剤を使うことができません。当てはまる人はCT検査を受ける前に「腎臓の機能が低下している」「糖尿病治療薬を内服している」旨をお医者さんに伝えてください。CT検査のより詳しい説明は「こちらのコラム」を参考にしてください。

MRI検査

MRI検査は磁気を用いて体の中を画像化する検査です。CT検査とは異なり、放射線を用いないので被曝することはありません。腎がんの診断ではCT検査の方が行われることが多いのですが、次の場合はMRI検査が行われます。

  • 腎がんが小さい場合
  • 腎臓の機能が低下していて、造影CT検査ができない場合

腎がんは大きくなるとCT検査で得られる画像の特徴がはっきりしますが、小い段階では良性の病気とCT検査で見分けるのが難しい場合があります。この場合はMRI検査で得られる画像所見が参考になります。 また、腎がんの診断には造影CT検査が有用なのですが、腎臓の機能が低下している人には行えません。その際には、MRI検査によって診断がより確実になることがあります。

PET-CT検査

PET-CT検査はPETとCT検査を組み合わせたものです。 PET検査はFCG(フルオロデオキシグルコース)という放射線を放出する物質を利用して行われます。FDGはグルコースに類似した物質で、グルコースのように細胞に取り込まれます。FDGがグルコースに代わって細胞に取り込まれると、発生する放射線を利用して取り込みが盛んな部分を画像化することができます。 一部のがんでは診断目的でPET-CT検査が行われることがあります。しかし、腎がんにおいては現在のところ、PET-CT検査がCT検査やMRI検査より優れているといると証明されていないこともあり、限られた場面でのみ用いられます。

【腎がんでPET-CT検査が行われる場面】

  • 画像上、腎がんかどうかの判断が難しい場合
  • 転移性腎がんに対する薬物療法の効果を行う場合

今後の研究などで有用性が明らかになるかもしれませんが、現在のところPET-CT検査は一般的な検査ではありません。

骨シンチグラフィー

骨シンチグラフィーはがんの骨転移を調べる検査です。放射線を使って全身を撮影し、骨転移の有無を明らかにします。腎がんの人全員に行われる検査ではありませうが、進行した腎がんは骨への転移を起こしやすい性質がるので、当てはまる人に行われます。

5. 病理学的検査

生検は臓器の一部(がんの部分)をを取り出して顕微鏡で見る検査です。生検でがんが認められた場合、診断が確実になるので、多くのがんでは一般的に行われます。しかし、腎がんが疑われる人に病理検査が行われることは多くはありません。 ■腎がんの生検の問題点 腎がんの生検には次のような問題点があります。

  • 腎がんが他の場所に広がる(播種する)危険がある
  • 腎がんは血流が豊富なために出血の可能性がある

腎がんに針をさすとがん細胞が広がってしまう危険性が指摘されています。このため、腎がんが疑われる人には超音波検査やCT検査といった画像検査でなるべく診断が行われています。 また、腎がんは血流が非常に多い事も知られています。針の当たりどころによっては大量に出血してしまうことも懸念されます。このため、なるべく生検は避けた方がメリットがあるとも考えられています。

■腎がんが疑われる人に生検が行われる場合 腎がんが疑われる人に行われる頻度は多いとは言えない生検ですが、どうしても必要なケースもあります。

  • 良性腫瘍が否定できない場合
  • 腎がん以外の悪性腫瘍の可能性が否定できない場合(腎盂がん悪性リンパ腫、転移性腫瘍など)
  • 手術せずに抗がん剤(分子標的薬)を使用する場合

それぞれの場合について説明します。

■良性腫瘍が否定できない場合 腎がんではなく良性腫瘍である場合は、手術の必要がありません。画像検査で良性腫瘍の可能性が否定できない場合に生検が検討されます。

■腎がん以外の悪性腫瘍の 悪性リンパ腫や転移性腫瘍が疑われる場合も生検が行われます。悪性リンパ腫や転移性腫瘍の治療は抗がん剤が中心になります。手術による治療は原則として行われません。 また、腎盂がんの治療は手術になりますが、腎がんとは手術の方法が異なる(腎臓だけではなく尿管も切除が必要)ので、区別が使い時には生検が行われます。

■手術せずに抗がん剤(分子標的薬)を使用する場合 転移のある腎がんの治療は抗がん剤(分子標的薬)を使います。がんについて多くの情報があった方が、適切な抗がん剤(分子標的薬)を選びやすくなるので、生検が行われることがあります。