じんましん
じんましん(蕁麻疹)
皮膚が赤く腫れ、短時間で消える症状。原因はアレルギー、物理的刺激、発汗など。市販薬にもある抗ヒスタミン薬の飲み薬が有効。原因不明で長引く場合もある
16人の医師がチェック 246回の改訂 最終更新: 2024.04.04

蕁麻疹の原因について:ストレス、食べ物、入浴、運動

蕁麻疹の原因は詳しく調べてもはっきりしないことが少なくありません。その一方で、蕁麻疹が出た時の状況や生活習慣を振り返ることで原因がわかることもあります。原因となりやすいのは、食べ物、汗、皮膚への刺激などです。ここでは、蕁麻疹の原因について詳しく説明します。

1. 蕁麻疹の原因となるもの

蕁麻疹の原因としてよく知られているのは、「食物」と「汗(コリン性蕁麻疹)」です。他にも、ストレス、感染、疲労などさまざまなものが原因となります。

次の表は蕁麻疹の原因をまとめたものです。

蕁麻疹(じんましん)の原因

蕁麻疹の原因を挙げましたが、実は原因不明の蕁麻疹も多くあります。非常に多くのものが原因となり得るので、いくら調べても原因が特定できないことが多いのです。

原因が判明し原因を取り除くことができれば症状を楽にできます。一方、原因がわからなくても、抗ヒスタミン薬などの治療によって多くは改善します。

蕁麻疹の原因は1つとは限らない

原因は2種類以上混在することがあります。また、出ている蕁麻疹は1種類でも、その原因が複数存在することもあります。いずれにしても、まずは原因を取り除くことが最善の治療であり、最初に目指すステップになります。具体的には、疑わしいと思われる薬を中止したり、疲労があれば回復のため休息をとったりといったことです。

3. 主な蕁麻疹の原因①:食べ物(薬剤を含む)

蕁麻疹の原因となる主な食べ物は、エビ・カニなどの甲殻類や、魚類、卵、小麦、果物です。また、食べ物に含まれる防腐剤、人工着色物、薬物(抗生物質や鎮痛薬など)でも蕁麻疹は起こります。

次に、食べ物を摂取した後に蕁麻疹を発症するパターンをまとめてみます。

  • アレルギー性の蕁麻疹:即時型のアレルギーで、食後すぐに蕁麻疹の症状が現れます
  • 非アレルギー性の蕁麻疹:食品が直接アレルギーが起すわけではないのですが、食品を食べた影響で蕁麻疹が現れます
  • 食物依存性運動誘発アナフィラキシー:特定の食べ物を摂取した後、2−3時間以内に運動すると、蕁麻疹が生じます。蕁麻疹以外にもアナフィラキシーの症状も現れます
  • アスピリン蕁麻疹:非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)などの飲み薬や注射薬、塗り薬の使用によってアレルギーが引き起こされます。また、防腐剤や人工着色物などの化学物質でも蕁麻疹が誘発されることがあります

食べ物を摂取してから蕁麻疹の症状が出た場合、上記のどれに当てはまるのか判断するのは簡単ではありません。

例えば、食べて2-3時間以内に運動した時に蕁麻疹を発症したら、おそらく食物依存性運動誘発アナフィラキシーの可能性が高いと思われますが、実は非アレルギー性蕁麻疹であったり、コリン性蕁麻疹といった他の種類の蕁麻疹である可能性も考えられます。蕁麻疹を避けるために大切なことは、自己判断するのではなく、専門的な知識があるお医者さんに相談することです。

4. 主な蕁麻疹の原因②:汗(コリン作動性蕁麻疹など)

汗をかいた後に蕁麻疹が出ることがあります。これには、「汗をかいたこと自体によって蕁麻疹が出る場合」と、「汗をかくきっかけとなった運動や入浴によって蕁麻疹が出る場合」の2つの側面を考える必要があります。

コリン性蕁麻疹

入浴や運動、精神的な緊張によって汗をかいた後に、蕁麻疹を発症することがあります。実際に発汗しなくても、発汗を促すような刺激が加わって蕁麻疹が出た場合もコリン性蕁麻疹に当てはまります。

温熱蕁麻疹

体が温まることで起こる蕁麻疹のことを指します。運動や入浴など、温熱刺激の影響を受けて発汗する場合、コリン性蕁麻疹と見分けがつきにくくなります。

寒冷蕁麻疹

寒冷の刺激によって起こる蕁麻疹のことを指します。汗をかいた後に体が冷えてしまうことがあると思いますが、このように発汗と関連して寒冷蕁麻疹が起こった場合、コリン性蕁麻疹と見分けがつきにくくなります。

水蕁麻疹

水の刺激で起こる蕁麻疹です。汗の水分による刺激で蕁麻疹が出た場合は、コリン性蕁麻疹と見分けがつきにくくなります。

まとめ:汗を原因とするか体温の変化を原因とするかの見極めは難しい

実際はどのような原因で蕁麻疹を発症しているか判断することは非常に難しいのですが、発汗と蕁麻疹の関係(発汗してからの時間経過、どのような部位に蕁麻疹が見られるのか、など)を詳細に見ていくことで、原因に近づくことができます。

5. 主な蕁麻疹の原因③:皮膚への直接的な刺激

皮膚に対する直接的な刺激で蕁麻疹が出現することがあります。刺激によって蕁麻疹のタイプが異なりますので、その代表例を挙げていきます。

機械性蕁麻疹

皮膚の表面に物理的にこする刺激が加わった時、こすられた部位に一致してあらわれる蕁麻疹のことです。通常は数時間以内に蕁麻疹は消えていきます。

遅延性圧蕁麻疹

下着の締め付けのように、圧力がかかった部分の皮膚にあらわれる蕁麻疹を遅延性圧蕁麻疹と言います。圧力がかかったあと数時間以上経ってから蕁麻疹が出現し、数日程度残ることが多いです。

日光蕁麻疹

日光に当たって数分から数十分程度で、当たった部位にあらわれる蕁麻疹のことを日光蕁麻疹と言います。日光に当たらないようにすれば数時間以内に蕁麻疹は消えていきます。

接触性蕁麻疹

ゴムの成分であるラテックスのアレルギーに代表されるように、アレルギーを起こすものと接触した部位に蕁麻疹が見られます。大抵の場合、蕁麻疹は接触してから数分から数十分程度であらわれますが、その後数時間以内に症状は消えていきます。

振動蕁麻疹

振動を受けた皮膚に起こる蕁麻疹です。症状は通常数時間以内に消えていきます。

まとめ:直接的な刺激の蕁麻疹は原因を絞りやすい

皮膚への直接的な刺激で起きる蕁麻疹は比較的原因を特定しやすいと言えます。ただし、複数の原因が絡み合っていることもあるので、蕁麻疹が出た時の状況や皮膚の症状をしっかりと確認することが大切です。できれば忘れないうちにメモをとることをお勧めします。

6. 蕁麻疹になりやすくなる状況、生活習慣、体質など

ここまで蕁麻疹の直接的な原因について説明してきましたが、間接的に蕁麻疹を起こしやすくするもの(背景因子)があります。蕁麻疹の背景因子として次のものが知られています。

【蕁麻疹の背景因子】

  • 感染
  • 疲労・ストレス
  • 薬剤
  • 基礎疾患(持病)

以下ではそれぞれの内容について説明します。

感染

ウイルス細菌に感染をすると、しばしば蕁麻疹が症状として現れます。例えば、B型肝炎ウイルスC型肝炎ウイルスに持続感染している人は蕁麻疹が現れやすいことが知られています。その他の風邪やお腹をこわしたりする感染症でも蕁麻疹をともなうことがあります。

疲労・ストレス

「蕁麻疹診療ガイドライン」には疲労やストレスが背景因子として記載されています。疲労やストレスは数値で推し量ることができないものではありますが、疲れやすさや精神的な抑圧の自覚がある人は、適度な休息が蕁麻疹の予防にもつながるかもしれません。また、慢性的に疲労やストレスを感じている人は、休息に加えて、生活習慣の見直しも必要かもしれません。睡眠時間や食事の栄養バランスなどを振り返ってみると良いです。

薬剤

薬は蕁麻疹の直接的な原因になりますが、間接的な原因になることもあります。アスピリンやNSAIDs、ACE阻害薬(降圧薬の一種)などを飲んでいる人は、飲んでいない人に比べて蕁麻疹が出やすいとされます。ただし、薬は蕁麻疹の間接的な原因だけではなく、直接的な原因にもなり得るので、どちらの作用で蕁麻疹が出ているのかを詳しく調べる必要があります。薬を常用している人が、蕁麻疹で診察を受ける際には、お薬手帳などを使ってお医者さんに飲んでいる薬を漏らさずに伝えるようにしてください。 薬と蕁麻疹の関係については「こちらのコラム」で詳しく説明しています。

基礎疾患(持病)

全身性エリテマトーデスシェーグレン症候群といった膠原病や、それに近い病気がある人は、蕁麻疹が出やすいことが知られています。また、夕方から夜にかけて蕁麻疹が悪化しやすいことも分かっています。蕁麻疹がよく出て持病がある人は、主治医の先生と蕁麻疹が出た時の対処について話し合っておくと良いです。

参考文献

日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会, 蕁麻疹診療ガイドライン 2018, 日皮会誌:128(12),2503-2624,2018