じんましん
じんましん(蕁麻疹)
皮膚が赤く腫れ、短時間で消える症状。原因はアレルギー、物理的刺激、発汗など。市販薬にもある抗ヒスタミン薬の飲み薬が有効。原因不明で長引く場合もある
16人の医師がチェック 249回の改訂 最終更新: 2024.10.25

蕁麻疹使われる抗ヒスタミン以外の薬

蕁麻疹の治療では抗ヒスタミン薬という種類の薬が中心となります。しかし、これだけでは十分に効果が得られない場合もあります。そのようなときは、補助的治療薬と呼ばれる薬が追加されたり、ステロイド薬を使うこともあります。

1. 蕁麻疹で抗ヒスタミン薬以外の薬を使う場合

ある一つの抗ヒスタミン薬を通常の量を使った上で十分に効果が得られない場合には、次のように、まずは抗ヒスタミン薬の使い方を工夫します。

  • すでに飲んでいる抗ヒスタミン薬を増量する
  • 他の抗ヒスタミン薬に変更する
  • すでに飲んでいる抗ヒスタミン薬に違う抗ヒスタミン薬を追加する

それでも効果が十分に得られない場合には、抗ヒスタミン薬以外の薬が追加されることがあり、追加する薬をまとめて便宜上「補助的治療薬」と呼ぶことがあります。

ここではその「補助的治療薬」としてどのような薬が使われているかを解説します。

2. H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)

通常は「胃酸を抑える薬」として、逆流性食道炎や消化性潰瘍などの治療薬として使われている薬です。胃薬がなぜ蕁麻疹に効くの? と疑問に思うかもしれないので、この薬の仕組みを少し詳しく説明していきます。

H2受容体拮抗薬はヒスタミンの作用を阻害する

胃酸の分泌には分泌を促進させる体内の神経伝達物質が関係しています。主にヒスタミン、アセチルコリン、ガストリンの3種類であり、これらの物質が胃の壁細胞に指令を伝えることで胃酸が分泌されます。

H2受容体拮抗薬はこの中のヒスタミンの作用を阻害することで、逆流性食道炎や消化性潰瘍などを悪化させる胃酸の分泌を抑えます。「ヒスタミン」という言葉にピンときたかもしれませんが、蕁麻疹の多くはなんらかの原因によって体内物質ヒスタミンが放出されて起こるため、この薬が有用になります。

アレルギー薬である抗ヒスタミン薬ほどではないにしろ、H2受容体拮抗薬もアレルギー反応に関与するヒスタミンの働きを抑えます。抗ヒスタミン薬に加えてH2受容体拮抗薬を重ねて使うことで、蕁麻疹の症状を和らげる効果が期待できるのです。ちなみに名前にある「H」とは「ヒスタミン(Histamine)」の頭文字を取ったものです。

H2受容体拮抗薬の副作用

H2受容体拮抗薬を使った場合、胃酸分泌が抑えられますので消化不良、便秘などの消化器症状があらわれることがあり注意が必要です。蕁麻疹の治療ではファモチジン(商品名:ガスター®など)やラニチジン塩酸塩(商品名:ザンタック®など)、シメチジン(商品名:タガメット®など)といったH2受容体拮抗薬が一般的に使われています。

3. 抗ロイコトリエン薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬)

アレルギー反応に関係する体内物質はヒスタミン以外にもあり、ロイコトリエンもその一つです。蕁麻疹の主な原因はヒスタミンですが、ロイコトリエンなどのアレルギー反応を引き起こす化学物質(ケミカルメディエーターと呼ぶこともあります)も関係するとされています。

モンテルカストナトリウム(商品名:キプレス®、シングレア®)やプランルカスト水和物(商品名:オノン®など)といった抗ロイコトリエン薬は通常、気管支喘息アレルギー性鼻炎の治療に使われていますが、抗ヒスタミン薬と一緒に使うことで蕁麻疹にも効果が期待でき、特に慢性蕁麻疹やアスピリン蕁麻疹などに対しての効果が期待できるとされています。

抗ロイコトリエン薬の副作用

頻度は非常に稀ですが、頭痛や眠気などの精神神経系の症状や下痢などの消化器症状などがあらわれることがあり注意が必要です。

4. グリチルリチン製剤

グリチルリチン酸は植物の甘草(カンゾウ)に含まれる成分で、抗アレルギー作用や解毒作用などが期待できる薬です。グリチルリチン製剤はこのグリチルリチン酸を主成分とする薬で、皮膚炎口内炎円形脱毛症、慢性肝疾患(肝炎など)における肝機能異常の改善などに対して使われています。

蕁麻疹診療ガイドラインによると、抗ヒスタミン薬のみでは効果不十分な慢性蕁麻疹に対して補助的治療薬として効果が期待できると記載されていて、本剤の高い安全性と比較的安価な薬価(例として、グリチロン®配合錠の基本情報)であることからも試してみる価値はあると言えます。

グリチルリチン製剤の副作用

安全性は高く副作用が見られることは非常に稀ですが、グリチルリチン酸を過剰に摂取した場合などで偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)などの症状があらわれる場合があります。グリチルリチン酸の元になった甘草は多くの漢方薬の構成生薬となっているため、甘草を含む漢方薬を服用している場合は特に注意が必要です。

5. 漢方薬

蕁麻疹の原因の多くは不明ですが、ストレスや疲労など人それぞれ多様であるとも言えます。漢方医学ではある場所で起こっている症状においても全身の状態から診断し、人が本来持っている自然治癒力を高めることにより症状の改善を目指します。

東洋医学では患者個々の症状・体質などを「証(しょう)」という言葉であらわし、一般的にそれぞれの証に合わせた漢方薬を選択します。詳しくはコラム「漢方薬の選択は十人十色!?」で解説しています。

蕁麻疹に適した漢方薬は?

蕁麻疹の効能・効果の期待できる漢方薬は十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)、茵蔯五苓散(インチンゴレイサン)などがありますが、蕁麻疹の種類によってもどの漢方薬が有効かは分かれます。

たとえば、熱を持つような蕁麻疹には黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)などが適したり、ストレスが原因となっているような蕁麻疹に加味逍遙散(カミショウヨウサン)などが効果を発揮する場合も考えられます。

これらの漢方薬が必ずしも有効であるとは言えませんが、抗ヒスタミン薬など他の薬で効果が不十分である場合や薬に対してアレルギーの出やすい方には、漢方薬が有用であることも考えられます。抗ヒスタミン薬などで起こりやすい眠気などがあらわれにくいのも、漢方薬のメリットの一つです。

もちろん副作用が全く無いわけではなく、多くの漢方薬に含まれる甘草(カンゾウ)による偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)などの副作用には注意が必要です。

6. その他:抗不安薬、トラネキサム酸など

この他の補助的治療薬として、抗不安薬および抗うつ薬、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(商品名:ノイロトロピン®)、トラネキサム酸(商品名:トランサミン®など)、ジアフェニルスルホン(商品名:レクチゾール®)などが使われています。

補助的治療薬はどれもが確実に効くというわけではありませんが、有効である場合も少なくありません。抗ヒスタミン薬と一緒に使うことで、抗ヒスタミン薬だけでは効果が不十分な蕁麻疹に対しても改善が期待できます。

7. ステロイド薬

蕁麻疹(じんましん)の症状である赤い発疹にはステロイド薬が処方されることがあります。市販のステロイドの塗り薬を自己判断で使うのはお勧めできません。蕁麻疹に対するステロイド薬の効果と注意点について解説します。

ステロイドとは?

医療用で使われているステロイドの薬の多くは私たちの体内の副腎という臓器から分泌されるコルチゾールというホルモンを元に造られたものです。

ステロイド薬は、抗炎症作用など多くの作用を持っていて、アレルギー性疾患、免疫疾患など多くの病気や症状に対して使われ、蕁麻疹においても治療の選択肢とされています。

蕁麻疹に対するステロイド薬の使い方

急性蕁麻疹においては、ステロイド薬を抗ヒスタミン薬と一緒に使うことで症状を抑えることが期待でき、特に症状が重く抗ヒスタミン薬や補助的治療薬だけでは効果が不十分な場合に有用とされています。

慢性蕁麻疹においても、症状が重い場合や抗ヒスタミン薬と補助的治療薬を使ってもまだ強い症状が続く場合では、ステロイドの使用により症状を抑えられる場合が多いです。

蕁麻疹に対してステロイド薬を使う場合、症状によって注射、内服薬(飲み薬)が使い分けられます。

ステロイド外用薬は効く?

蕁麻疹で病院に行くと、治療の中でステロイドの外用薬(塗り薬)を処方されることがあります。適切に使えば効果が期待できるのですが、専門的な判断が必要とされるため、蕁麻疹に市販のステロイド外用薬を自己判断で塗るのはお勧めできません。

ステロイド外用薬の副作用として、皮膚の色素消失、皮膚萎縮酒さ様症状、ざ瘡にきび)などが出ることがあります。副作用の面からステロイド外用薬を避けたほうが良い場合もありますので、医師や薬剤師に塗り方を相談してください。

ステロイド外用薬の強さや副作用についての詳細はコラム「ステロイド外用剤の"強さ"って?」「ステロイド外用剤の“副作用”って?」をご覧下さい。

副作用は?

ステロイドは高い有効性をもつ薬である反面、その副作用に注意しなくてはいけません(ステロイドの副作用については、コラム「ステロイド内服薬の副作用とは」で詳しく解説しています)。

蕁麻疹治療においても同様で、皮疹が抑えられるからという理由だけで漫然とステロイドの服用を続けるべきではないと考えられています。

ステロイドを使った治療中に体調の変化を感じたときは、早めに処方した医師に知らせてください。

また、ステロイド(特に飲み薬)が処方された場合、自己判断で中止したり量を変えて飲んだりすることは止めましょう。これは蕁麻疹に限ってではなく他の病気であっても同様で、かえって病気が悪化したり治りが遅くなる場合もあります。服用期間や服用中の注意点など、処方医や薬剤師からよく話を聞いておき適切に治療していくことが大切です。

8. 難治性蕁麻疹への免疫学的治療

蕁麻疹(主に慢性蕁麻疹)の中には、抗ヒスタミン薬にステロイドの飲み薬を併用した場合でも症状の改善が十分でないものもあります。このような症状の重い難治性蕁麻疹には免疫へ作用する薬を使った治療が有効である場合もあります。

蕁麻疹に対する免疫抑制薬

免疫抑制薬のシクロスポリン(商品名:ネオーラルなど)はその代表的な薬です。症状の重い難治性蕁麻疹では体内の免疫反応において重要な働きをする免疫グロブリンE(IgE)という物質が大きく関与していることがあり、このケースではシクロスポリンによる治療によって症状の改善が期待できるとされています。

免疫抑制薬以外の免疫学的治療

シクロスポリン以外では、免疫グロブリンの注射、メトトレキサート、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、オマリズマブ(抗IgE抗体)などが免疫学的治療として使われ、蕁麻疹の症状を改善したという報告もあります。

免疫学的治療のデメリットは?

しかし、これらの治療が必ずしも功を奏さない場合もありますし、免疫を抑えるような治療では易感染性(免疫が抑えられることで感染症にかかりやすくなること)などのデメリットもあります。またシクロスポリンなどの免疫抑制薬の薬価(薬の値段)は高価であることが多く、治療にかかる費用面での負担も大きくなりがちです。

以上のことを踏まえて、免疫学的治療はほかの治療によって症状が改善しないような重症の蕁麻疹の人にだけ勧められます。

参考文献

・秀 道広, 他, 蕁麻疹診療ガイドライン, 日皮会誌:121(7),1339―1388,2011