◆アナフィラキシーになるとどうなってしまうのか
アナフィラキシーとは、激しいアレルギー反応が全身に起きた状態のことです。はじめは軽い症状であったとしても、急速に悪化し、気道が狭くなって息ができなくなったり、血圧が下がってショック状態(酸素や栄養を含む血液が全身に適切な形で届かなくなってしまう状態)になって、短時間のうちに命が脅かされることがあります。そのため、アナフィラキシーを疑う症状が少しでもみられたら、迅速に治療を開始しなくてはなりません。映画やドラマのシーンでたまに見られますが、まずはアドレナリンという特効薬を筋肉注射して重症化を食い止めます。
◆救急要請したほうがよい症状とは
アナフィラキシーのときに最初に見られることが多いのが皮膚の変化です。皮膚の一部が赤くなったり腫れ上がったりして、痒みを伴うこともあります。この変化の中には冒頭で触れた蕁麻疹も含まれます。症状が皮膚にだけ見られる場合には、アナフィラキシーとは診断されず、命にかかわることはほとんどありません。しかし、アナフィラキシーの緊急サインであれば皮膚症状に加えて急速に下記のような異変が起こります。
【緊急で受診が必要な症状】
- ぐったりしている
- 意識がもうろうとしている
- 尿や便をもらす
- 脈が触れにくい、または不規則である
- くちびるや爪が青白い
- のどや胸が締め付けられる
- 声がかすれる
- 犬が吠えるような咳が出る
- 息がしにくい
- 持続する強い咳込みがある
- 息をするとゼーゼー ヒューヒュー音がする
- 繰り返し吐き続ける
- 我慢出来ないくらい強い腹痛がある
- まぶたや口の中がひどく腫れている
このような症状が一つでも現れたら救急受診が必要です。
とはいっても、上記に当てはまるかどうか判断しづらいこともあると思います。特に言葉の話せない乳幼児では、息苦しさや腹痛などを周りの人に伝えるのは困難です。このため、保護者が子どもを見て判断する場合には、「ぐったりしているかどうか」という項目が重要になります。判断に迷う場合は重篤な状態である可能性を考慮して、医療機関に電話で相談してください。明らかに日頃と違う様子が見られる場合には、救急要請をしても構いません。
◆まとめ
今回のコラムでは、すぐに救急車を呼ぶべきアナフィラキシーの症状について説明をしました。上記の症状に正確に当てはまらなくても、蕁麻疹を含む皮膚の変化が短時間で全身に広がったり、他の症状が伴ったりしているときは急いで受診することをお勧めします。一人でも多くの人がアナフィラキシーで重篤になる前に治療できることを願っています。
執筆者
・厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン 2019」
・日本皮膚科学会 「蕁麻疹診療ガイドライン2018」
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。