しんぼうさいどう
心房細動
本来一定のリズムで拍動する心房が、ぶるぶると不規則に震えることで生じる不整脈。血流が滞り心臓内に血栓を作ることで脳梗塞などの原因となる
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最終更新: 2024.07.24
心房細動の基礎知識
POINT 心房細動とは
心房細動は心臓の中でも心房という部位で異常な電気信号が起こることが原因で生じる不整脈です。加齢や肥満、弁膜症、高血圧症などが心房細動の原因となります。主な症状は動悸・ふらつき・失神などですが、症状が続いて心不全になると息切れやむくみなどが出現します。 症状や身体診察に加えて、心電図検査や心臓エコー検査を用いて診断されます。治療は薬物療法がメインですが、血圧が下がったり失神したりした人には電気的除細動が行われる場合もあります。また根本的に不整脈が出なくなるように、カテーテルアブレーションという治療もあります。心房細動が心配な人や治療したい人は、循環器内科を受診して下さい。
心房細動について
- 不整脈の一種。心房が異常に細かく動くことで、血液を全身に送り出す効率が悪くなってしまう
- 初めて心房細動と診断された場合には、すぐに治療とならずに様子を見ることがある
- 初めて心房細動と人の半数が再発し、残りの半数は再発しないとするデータがある
左心房 (心臓の部屋の一つ)と肺静脈(肺から心臓に戻る血管)の境に不整脈が生じる起源があると考えられている- 持続時間により
発作 性心房細動、持続性心房細動、慢性心房細動に分けられる- 発作性心房細動
- 発作のように一時的に心房細動が出現する
- 7日以内に自然停止する
- 持続性心房細動
- 7日以上持続して不整脈が続くが1年以上は持続していない
- 慢性心房細動
- 1年以上心房細動の状態が続いている
- 適切な治療をしないと、徐々に発作性心房細動→持続性心房細動→慢性心房細動と変化していくことが多い
- 発作性心房細動
- 主な原因
- 高齢者に多く見られる不整脈であり、80歳以上では10人に1人が罹患していると言われている
- 心房細動自体で命に関わることは少ない
- 心房細動によって心臓の中にできた血のかたまり(
血栓 )が脳梗塞を起こすことがあるため、血栓を作らないように予防する治療が重要
心房細動の症状
心房細動の検査・診断
心電図 :心臓の電気の流れに異常がないかなどを調べる- 数分で測定が終わる一般的な心電図に加えて、必要に応じて
ホルター心電図 (24時間型心電図)を行う
- 数分で測定が終わる一般的な心電図に加えて、必要に応じて
心臓超音波検査 :主に以下を調べる- 心臓の中の血のかたまりや弁膜症の有無を確認する
- 左房の拡大の有無を確認する
- 心機能を測定する
経食道心臓超音波検査 - 心臓の中の血のかたまりがあるかどうかを詳しく調べる必要がある場合に行う
- 食道に
内視鏡 を入れて検査を行う - 肋骨が邪魔しないので通常の
超音波検査 よりも調べやすい
心房細動の治療法
- 心房細動自体は、
症状 がなければ治療しなくても問題ないが心不全や脳梗塞のリスクになり得る - 心房細動の治療の目的は大きく3つに分類される
- 心房細動を止める、出にくくする治療
- 心房細動が出ても症状が出にくくする治療
- 脳梗塞などの
血栓 塞栓 症の予防のために抗凝固薬 を使った治療(血液を固まりにくくする治療)
- 心房細動を止める、出にくくする治療:特に心房細動の持続期間が短いときに行う
- 心房細動が出ても症状が出にくくする治療:特に心房細動の持続期間が長いときに行う
- 抗凝固薬を使った治療:心房細動の持続期間にかかわらず行うことを考える
- ワーファリンという薬が昔から使われている
- ワーファリンは値段が安いが、適切な使用量を保つために定期的な採血(PT-INR値を見る)が必要
- 飲み始めは1週間に1回の採血、その後も1-2ヶ月ごとの採血が必要となる場合が多い
- また薬を毎日飲まないと治療の効果が極端に落ちてしまう
- ワーファリンは納豆やクロレラなど、
ビタミン Kが含まれた食べ物を食べると効き目が落ちてしまう
- 最近は定期的な採血が不要な抗凝固薬(Direct Oral Anti Coagulants:DOAC、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナなど)が登場し、治療の幅が広がっているが、以下の特徴には留意が必要である
- 食事制限をしなくて済む
- 値段が高い
- どのくらい薬が効いているのかを客観的に評価しづらい(ワーファリンはPT-INRという血液検査項目を見れば評価できる)
抗血小板薬 であるアスピリンは、心房細動の血栓予防には通常用いない- 抗凝固薬は血栓ができにくい反面、出血しやすくなり止血しにくくなるという副作用がある
心房細動に関連する治療薬
FXa阻害薬(抗凝固薬)
- 体内の血液が固まる作用の途中を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞や心筋梗塞などを予防する薬
- 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
- 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)が必要である
- 本剤は血液凝固因子の因子Xa(FXa)を阻害し、抗凝固作用をあらわす
クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)
- ビタミンKが関与する血液凝固因子の産生を抑え、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ薬
- 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
- 体内で血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)の中にビタミンKを必要とするものがある
- 本剤は体内でビタミンKの作用を阻害し、ビタミンKを必要とする血液凝固因子の産生を抑えることで抗凝固作用をあらわす
- ビタミンKを多く含む食品などを摂取すると薬の効果が減弱する場合がある
- 納豆、クロレラ、青汁などはビタミンKを多く含む
- 本剤を服用中は上記に挙げた食品などを原則として摂取しない
β遮断薬
- 交感神経のβ受容体への遮断作用により血圧や心拍数などを抑えることで高血圧、狭心症、頻脈性不整脈などを改善する薬
- 心臓の拍動が過剰だと高血圧、狭心症、頻脈性不整脈などがおこりやすくなる
- 心臓においては主に交感神経のβ1受容体が心臓の機能に関与し、β1受容体を遮断すると心機能の過度な亢進が抑えられる
- 本剤は主に交感神経のβ1受容体遮断作用をあらわす
- β1受容体に選択的に作用するβ1選択性薬剤とβ1以外のβ受容体にも影響を及ぼしやすいβ1非選択性薬剤がある
心房細動の経過と病院探しのポイント
心房細動が心配な方
動機が止まらくてお悩みの人は循環器内科を受診することをお勧めします。特に症状を最近になって感じ初めた人ほど、アブレーション治療で根治が望める可能性が高くなります。一方で、アブレーション治療で100%心房細動を治せるわけではありません。循環器内科の中でも不整脈の専門とする医師から説明を受け、合併症についてもご理解いただいたうえで治療をご検討されるとよいと思います。心房細動の期間が長い場合や80歳を超えるようなご高齢の場合には、合併症のリスクを鑑みてアブレーションでの治療よりも薬物治療を勧められることが多いです。薬物治療においても、良い面と悪い面があるので、医師とよく相談されることをお勧めします。