にょうろけっせきしょう
尿路結石症
尿の成分がかたまり(結石)を作り、尿路の中に存在している状態。結石が臓器を傷つけることによって、腰や背中に強痛みを起こす
14人の医師がチェック 235回の改訂 最終更新: 2024.04.26

腰が痛い! 尿管結石の症状、治療、予防について解説

尿管結石とは腎臓でできた結石が尿の流れとともに尿管に移動してきたものです。尿管は腎臓と膀胱をつなぐ管です。尿管にはもともと狭い場所があり、そこに結石が引っかかることで痛みが出ます。

尿管結石のイラスト

1. 尿管結石の症状は?

尿管結石の代表的な症状として背中から腰にかけての痛みがあります。痛む場所はどこに結石があるかで変わってきます。腹部痛を症状とすることもあります。加えて尿管結石は血尿も出ることが多いです。

臨床の現場では「背中から腰の痛みと血尿」という症状で受診された場合はまず尿管結石を疑われることが多いと思います。

尿管結石であれば痛みを薬などで抑えることで1か月以内に自然に排出(排石)されることがほとんどです。

痛みがあったら尿管結石か?

尿管結石は背中を中心に痛みがあることを特徴とします。痛みは、差し込むような痛みが典型的です。疝痛(せんつう)と表現されます。疝痛は尿管の壁の筋肉(平滑筋)が痙攣(けいれん)したり収縮したりすることによるものです。

突然の背中の痛みは、尿管結石を原因とすることが多いといえます。しかし背中が痛いときに考えられる原因は尿管結石だけではありません。

  • 骨や筋肉を原因とする痛み
  • 泌尿器系を原因とする痛み
  • 膵臓(すいぞう)など消化器を原因とする痛み
  • 大血管を原因とする痛み
  • 皮膚を原因とする痛み

排尿時の痛みは尿管結石ではない?

排尿時痛から尿管結石を疑うことはあまりありません。結石で排尿時に痛みがあるとすれば、尿管結石を治療してその後、結石が小さくなった場合などが考えられます。しかし、排尿時痛を訴えて来院した人はほかの原因のほうが疑わしいと考えられます。

頻度として多いのは尿道炎膀胱炎です。

尿道炎とは?

尿道炎は主に性行為により感染する病気(性感染症)を原因とすることが大半です。その他の原因としては尿道にカテーテルを挿入した後に尿道に傷がついてしまうことがあります。尿道炎の痛みは、排尿の最初に痛みがあること、が出ることを特徴とします。

尿道炎を起こす代表的な病原体は以下です。

尿道炎はパートナーにうつす可能性がある病気ですので、しっかりとした治療が必要になります。

膀胱炎とは?

膀胱炎は、女性に多く、排尿が終わる頃に痛む症状(終末時排尿痛)が特徴です。残尿感や血尿を伴うことがあります。

尿道結石とは?

尿道結石のイラスト

尿道に結石がある状態です。次の原因で起こります。

  • 結石が流れてきて引っかかった(嵌頓;かんとん)
  • 尿道に尿道憩室(けいしつ)というスペースがあり尿道憩室の中に結石が発生する。

尿道憩室はまれです。尿道結石のほとんどは流れてきた結石が引っかかった状態です。女性が尿道結石を発症することはまれです。詳しくは「尿道結石とは?」をご覧ください。

前立腺炎とは?

前立腺の画像

前立腺は男性だけにある臓器です。前立腺は膀胱の出口付近にあり、尿道を取り囲むように存在しています。役割としてはわかっていない部分も多くありますが、精液の一部を作っていることがわかっています。

前立腺炎は前立腺に細菌が感染した状態で、排尿時の痛みの原因になります。

間質性膀胱炎とは?

間質性膀胱炎は膀胱が萎縮する病気です。原因はわかっていません。膀胱に尿がたまると痛みなどの症状が出現します。排尿後に症状が軽減します。女性に多い傾向にあります。

間質性膀胱炎の詳細な情報は「間質性膀胱炎とは?症状、診断方法、原因、治療など」を参考にしてください。

2. 尿管結石の原因は?

結石の発生には、多くの原因が重なり合っていると考えられています。ここでは身近な体の問題が結石の原因になるかを解説します。

肥満と結石は関係ある?

男性の尿管結石患者さんのうち40.3%に肥満がみられたという報告があります。さらに男性患者さんの尿からは尿酸が多い傾向があったとされています。

女性患者さんの場合は肥満と結石の発生について明らかな関係性は指摘できなかったとされています。

男性患者さんの尿で以下の検査値に高い数値がみられています。

  • 尿酸
  • シュウ酸
  • カルシウム

いずれも尿管結石の原因となるものです。逆に結石の形成を抑える尿中のクエン酸は低い値であったことも指摘されています。

結石は遺伝する?

いくつかの遺伝性疾患は結石を発症することが知られています。

遺伝性疾患に絞らず、日本における全国調査の結果では結石患者さんの中で二親等以内に結石を発症したことがある割合は14.8%でした。

家族が結石を経験していて、自分も結石を発症した人には次の傾向が見られています。

  • 結石を発症する年齢が若い
  • 男性より女性の方が家族に結石患者がいる割合が多かった

3. 結石の種類とは?

尿管結石は成分によっていくつかの種類に分けられます。代表的な種類を表に示します。

結石の成分 頻度 レントゲン写真への写りやすさ(結石密度) 特徴
シュウ酸カルシウム結石(リン酸カルシウムとの混合も含む) 約90% 濃い  
リン酸カルシウム結石 リン酸カルシウムのみの結石はまれ

最も濃い

 
リン酸マグネシウムアンモニウム 約5% 淡く写る 尿路感染に合併
尿酸 約5% 写らない 男性に多い、痛風に合併
シスチン 1-2% 淡く写る 遺伝性

結石の種類は、他にもまれなものはありますが、大部分が表に示したものです。最も多いのがシュウ酸カルシウム結石(リン酸カルシウム結石の混合を含む)です。

どのような結石であったかを確認することは再発を予防するために非常に重要です。

再発予防については「尿管結石の再発は予防できる?」で解説しています。

4. 尿管結石と食事は関係ある?

尿結石の発生には食事が大きく関わっています。尿管結石のリスクになるものとして以下が指摘されています。

  • 肥満
  • 肉中心の食事
  • 塩分の過剰摂取

尿路結石に悪影響を及ぼす食事は欧米化した食事と言えるかもしれません。肉中心でカロリーの多い食事は尿管結石のみならず、他の生活習慣病にもつながりますので、偏りのない食事をとることが重要です。

5. 尿管結石が多いのは男性?女性?

尿路結石全て(腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石)の発症を集めた男女別生涯罹患率(一生に一度以上発症する確率)のデータがあります。

  • 男性:15.1%
  • 女性:6.8%

男性の方が尿路結石を発症する確率は明らかに高いとされています。男性は7人に1人、女性では15人に1人が結石に苦しむことになります。

6. 尿管結石の治療

尿管結石の治療は大きく2つに分けることができます。

  • 痛み発作時の治療
  • 結石が自然に出ない場合の手術

結石はひとまず痛みをとり、その後自然に排石されるのを待つことになります。自然に排石しない場合は、結石を体の外に出すために手術などの方法をとることになります。

尿管結石の痛みを和らげる治療

尿管結石の痛みはとても激しいものがあり、人生最悪の痛みと表現されることもあります。痛みのために身動きが取れなくなり、救急車を呼ばなければ歩いて病院にも行けないことも珍しくはありません。

痛みを和らげる治療に以下のものがあります。

  • 鎮痛剤
    • NSAIDs
    • 中枢神経作用薬
  • 鎮痙薬
  • 局所のブロック

結石の痛みにはNSAIDs(エヌセイズ)という種類の薬が効果的です。NSAIDsという名前はNonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)の略です。市販薬でもNSAIDsに分類される薬剤は「痛み止め」の成分として一般的に使われています。

尿路結石に対しては特にNSAIDsの座薬がよく使われます。

座薬で効果がないときは中枢神経に作用し痛みをとる注射薬などを用いることがあります。

尿管結石の痛みは激しいものがあります。尿管結石の痛みの原因は、尿管の壁の筋肉(平滑筋)が痙攣(けいれん)したり収縮したりすることによるものです。尿管の痙攣を取ることで痛みが改善することがあります。

それでも効果がない場合の対処法として、痛みが最も強い部位に針を刺して局所麻酔薬を注入して痛みを抑える方法があります。効果が強く出る場合とあまり出ない場合があります。結石を超える痛みはこの世に少ないと言われています。なんとかして痛みを抑えるために医師もあの手この手を尽くしています。

尿管結石で手術は必要?

尿管結石で手術が必要になるのは以下の場合です。

  • 結石の大きさが1cm以上で自然排石する可能性が低い
  • 症状があって1ヶ月経過した後も排石されない

尿管は細かく言うと3つの部分に分けられます。

  • 上部尿管:腎盂尿管移行部から腸骨稜上縁まで
  • 中部尿管:腸骨に重なる部位
  • 下部尿管:腸骨に重ならず尿管膀胱移行部まで

どの部分に尿管結石があるかによって治療方針が変わります。

下の図に示すように治療方針が決まります。

図:尿管結石の治療方針の選び方。

TUL(経尿道的尿管結石破砕術)

TULは手術室で行う内視鏡手術です。体に傷をつけることなく、尿道から尿管鏡という内視鏡を入れて治療します。使用する尿管鏡は硬性鏡と軟性鏡があります。

レントゲンで位置を確かめながら、結石のある側の尿管へ尿管鏡を挿入し、砕石装置で結石を破砕したり、カテーテルを用いて結石を掴んで体の外に出します。

手術時間は1-2時間程度です。

手術の後、尿管が狭くなり尿の流れが悪くなることがあるので、尿管ステントを一定期間留置することがあります。尿管ステントは入院中や通院中に抜去します。術後に血尿が現れますが、ほとんどが自然消失します。

TULの合併症

  • 尿管穿孔(せんこう)・尿管断裂
    • 尿管結石を破砕している最中に破砕装置が尿管の壁を損傷してしまうことがあります。穿孔とは穴が開くことです。尿管穿孔などが起こった場合には安全性を考え手術を中止します。
  • 腎盂腎炎
    • 腎盂で細菌が増殖して感染を起こすことです。腎盂腎炎は重症になりやすいので、抗菌薬をしっかりと使った治療が必要になります。

ESWL(体外衝撃波結石破砕術)

ESWLは1980年にドイツで開発されました。体外で衝撃波を発生させて体内まで届かせることで結石を細かく砕き、結石を排出させやすくする治療法です。一回の治療に1時間ほどかかります。治療中は衝撃波を発生させるために大きな音がします。痛みが我慢できる範囲に出力を調整します。

結石によっては1回の治療では効果が不十分なことがあります。この場合は後日再びESWLを行うか、内視鏡手術など他の治療を行うことが必要になります。砕石した破片が尿管内に詰まり痛みや発熱を来たした場合、対処のため尿管の中に細い管(カテーテル)を留置することがあります。

ESWL(体外衝撃波結石粉砕術)

ESWLの合併症

  • 血尿
    • 尿に血が混ざりますが、通常数日で軽くなります。
  • 疼痛(痛み)・吐き気
    • 通常、時間とともに和らぎます。
  • 下血
    • 衝撃波の当たった皮膚が赤くなることがありますが、自然に消失します。
  • 腎被膜下血腫
    • 腎結石の治療後、まれに腎臓内に血の塊ができることがあります。発熱や疼痛を伴いますが、ほとんどが保存的に(手術などをせず)様子を見るうちに改善します。

7. 結石性腎盂腎炎とは?

結石が詰まってしまい、腎盂(じんう)とよばれる場所に細菌が定着して発熱の原因になる場合があります。腎盂腎炎(じんうじんえん)といいます。腎盂腎炎は汚れた尿が溜まっていることが原因です。結石がない人でも腎盂腎炎はよくある病気です。結石を原因とする腎盂腎炎を結石性腎炎ということがあります。

腎臓の解剖イラスト

腎結石がある人が必ず腎盂腎炎を起こすわけではありません。糖尿病などでもともと免疫力が落ちている場合などは、持病がない人よりも腎盂腎炎を起こす可能性が高いです。

診断・検査

腎盂腎炎でポイントになるのは、重症度です。腎盂腎炎は菌血症に移行しやすい傾向があります。菌血症とは細菌が血液に回って全身に広がった状態です。菌血症は重い感染症であり、危険な状態です。結石を治療する医師は結石による痛みをとりつつ、発熱など全身の状態を注意深く観察しています。

腎盂腎炎の重症度の評価や治療方針の決定に必要な検査などは以下のものです。

  • バイタルサインの測定(体温、血圧、脈拍、呼吸数など)
  • 血液検査、尿検査 
  • 超音波検査 
  • CT検査
  • 細菌検査(尿培養、血液培養)

腎臓では尿の流れが滞っているので、腎盂が拡張してきます。この状態を水腎症といいます。水腎症の状態が続き腎盂の圧が上昇することで、腎臓の中へ感染が広がると考えられています。

腎臓は血流の非常に多い臓器です。そのために、腎臓へ感染した細菌が血液にのって全身にまわる菌血症に進行しやすい傾向にあります。菌血症は命に影響を及ぼすことがあり注意が必要です。

治療

結石性腎盂腎炎の治療は2種類あります。

  • 抗生物質(抗菌薬)
  • ドレナージ(尿管ステント、腎

結石性腎盂腎炎は菌血症に発展して危険な状態に陥ることがあります。抗生物質(抗菌薬、抗生剤)による治療を行いますが、結石によって汚れた尿が体の外に出る見込みがない場合や抗生物質の効果がない場合は、尿を体の外に出す手段をとる必要があります。汚れたものを体の外に出すことをドレナージといいます。

ドレナージの方法には2つあります。尿管ステント留置術と腎瘻(じんろう)造設術です。

経皮的腎瘻造設術(けいひてきじんろうぞうせつじゅつ)

腎臓は背中側にある臓器です。背中に針を刺して腎臓に直接届く穴(腎瘻)を開け、カテーテルという細い管を入れることで尿を体の外に出すことができます。

  • 利点
    • 腎臓に直接管を挿入するので、確実に尿を体外に出すことができる。
  • 欠点
    • 全身の状態が悪い場合や、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合には行えない場合がある。
    • 腸や太い血管に傷がついてしまう合併症がまれにある。

腎瘻を増設して、感染が落ち着き結石の治療を行った後に腎瘻カテーテルを抜去します。感染が治っていれば、カテーテルを抜くだけで体の穴は自然に閉鎖します。

尿管ステント留置術

ステントというのは長い管です。狭くなった尿管にステントを入れることで、尿はステントの中を流れることができ膀胱へ出て行くことができます。

ステントを入れるためには内視鏡を使います。尿道から内視鏡を入れて尿管が膀胱に開口している部分(尿管口)まで内視鏡を進めます。内視鏡は道具を送り込めるようになっているので、ステントを尿管に挿入し腎臓まで届かせることができます。腎臓まで管が通れば管の中を汚れた尿が排出されます。

  • 利点
    • 針を体に刺すなどの必要がなく腎瘻に比べると体への負担は少ないと考えられる。
  • 欠点
    • 挿入できたとしても、ステントが詰まり他の方法に変更が必要になる場合がある。
    • ステントは腎瘻に比べると細いので汚れた尿を体の外に出すことに不十分な場合があり、腎瘻増設が追加で必要な場合がある。

8. 菌血症とは?

結石性腎盂腎炎が重症化すると菌血症になる場合があります。菌血症は全身に細菌が回っている状態です。菌血症は全身に炎症を起こし血圧の急激な低下や呼吸状態の悪化の原因になります。

強力な抗生物質による治療とドレナージが必要になります。ドレナージの方法は、腎瘻造設術と尿管ステント留置術です。全身状態を考慮しながら最適な方法でドレナージを行います。

菌血症は呼吸状態や循環状態(血圧、脈拍など)が悪化することもある重症であり、集中治療室での治療が必要になります。

9. DIC(播種性血管内凝固症候群)とは?

結石性腎盂腎炎が菌血症を起こしてさらに重症になると、播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)という状態が引き起こされることがあります。

播種性血管内凝固症候群は、英語のDisseminated Intravascular Coagulationを略してDICと呼ばれることもあります。DICは全身の血管の中で血栓(血の塊)ができる状態です。血栓がいろいろな臓器の血管を塞いでしまい、臓器にダメージを与えます。さらに、大量の血栓ができることにより、血液が固まるために必要な物質が消費されて少なくなってしまいます。すると逆に血液が固まりにくくなる場合もあります。

DICが改善しないと、いろいろな臓器で血栓により血流が失われてしまい、多臓器不全という状態に発展します。多臓器不全は「多くの臓器が機能を失う」という状態です。

DICの状態を改善するには血栓ができるのを極力防ぐための薬を投与しつつ、原因である感染症を強力な治療により改善することが重要です。

10. 尿管結石の再発は予防できる?

尿路結石症の痛みは辛いものがあります。できれば再発は避けたいものです。尿路結石の再発を予防する方法は、日常生活で気を付けることと薬があります。

飲水で再発は防げるか?

飲水をしっかり行うことで、結石の再発を予防することは可能です。

結石は尿の成分を元に形成されます。尿が濃い状態では結石ができやすくなることが想像できます。飲水量は1日あたり2000mLを超えることが望ましいとされています。

尿路結石の原因、シュウ酸とは?

尿路結石の種類で最も多いものは、シュウ酸カルシウム結石です。食事でシュウ酸を多く摂取するとその分、尿からもシュウ酸の排泄が多くなり、尿路結石ができやすくなることは想像できます。シュウ酸をできるだけとらないようにすることが望ましいと考えられます。

シュウ酸はどんな食事に多いか?

シュウ酸が多く含まれる食品の例を挙げます。

  • 葉菜類の野菜
  • 紅茶、コーヒー、お茶(特に玉露・抹茶)
  • バナナ
  • チョコレート、ココア
  • ピーナッツ、アーモンド

解説します。

野菜やお茶類は健康に良い食品というイメージがありますが、シュウ酸の含有量は多い傾向にあります。

野菜100gあたりのシュウ酸含有量

野菜の種類 シュウ酸の含有量(mg)
ほうれん草 800
キャベツ、ブロッコリー、レタス 300
さつまいも 250
なす 200
大根、小松菜 50



お茶類100gあたりのシュウ酸含有量

お茶の種類 シュウ酸の含有量(mg)
玉露 1350
抹茶、煎茶 1000
番茶 670
ほうじ茶 286

シュウ酸を減らす工夫は?

シュウ酸は体にとってよさそうな食べ物にも多く含まれています。シュウ酸は調理法などで大きく摂取量を減らすことが可能です。

  • 茹でて食べることで半分程度の摂取量になる
  • カルシウムと同時に摂取することでシュウ酸の尿中への排泄が減る

プリン体は制限するべきか?

結石の中には尿酸結石というものがあります。尿酸はプリン体の最終的な形であるので、尿酸のもとになる食べ物を制限しようとするならば、プリン体を制限することになります。

プリン体の多い食品の例を挙げます。

  • 肉類
    • 特にレバー
  • 魚類
    • かつお
    • エビ
    • 白子
    • あんこうの肝
  • 調味料
    • だしの素

プリン体が多いとよく例にあがるイクラやカズノコなどは意外にもプリン体は少ないとされています。

ただし、プリン体の多い食事が尿酸値や尿酸結石の発生頻度にどの程度影響するかは明確になっていません。

ビールなど酒類に含まれているプリン体はごくわずかです。ただ、飲酒により尿酸値が上昇することも明らかになっているので、飲酒は控えめにしたほうがいいでしょう。一般的にはアルコール量として1日あたり20g程度までが適量とされます。飲み物に換算すると、アルコール度数5%のビール500mlには500ml×0.05×0.8g/ml=20gのアルコールが含まれています。

塩分のとりすぎはよくない?

塩分の過剰摂取は多くの病気と関連していると考えられています。

尿路結石の場合はどうでしょうか?

塩分の過剰な摂取は、尿中に排泄されるカルシウムの量を増加させることがわかっています。その理由については、明らかにはなっていませんが、塩分の過剰な摂取は他の病気とも関連が強いので過剰な摂取は避けたほうがいいでしょう。

野菜の摂取は結石の再発を予防できるか?

野菜には食物繊維が多く含まれています。食物繊維は結石の原因となるカルシウムの吸収をおさえることが期待され、結石の再発の予防効果を期待されていました。しかし、結論としては明らかに再発が抑制できるとは証明できていません。

野菜にはシュウ酸が多く含まれているのでシュウ酸カルシウム結石の発症は予防できないのかもしれません。野菜に限らず大きく偏った食事では結石の再発を予防はできないと考えられています。

カルシウム結石の再発の予防には逆にカルシウムを摂取すべき?

カルシウム結石の予防にはある程度のカルシウムを摂取するべきとの意見があります。ちょっと意外な話です。カルシウムが原因ならばカルシウムの摂取を少なくすることで結石の予防になりそうなものです。

尿路結石はカルシウムとシュウ酸が結合してできるシュウ酸カルシウム結石が多くを占めます。カルシウムを食べ物から摂取するとシュウ酸を便として排泄することができます。つまり腸から血液に吸収されるシュウ酸を減らすことになり、尿中のシュウ酸排泄量は減ります。カルシウムの摂取を制限すると腸からのシュウ酸の吸収が多くなり、尿中からの排泄も増加します。

カルシウムを十分に摂取することでシュウ酸の尿中への排泄が抑制されると考えられています。つまりシュウ酸カルシウム結石の発生を抑えることが期待されます。

一方でカルシウムの過剰な摂取は尿管結石の発生と関連するとの意見もあります。

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、カルシウムの推奨量を18歳から29歳の男性で1日あたり778mg、耐容上限量を2,500mgとしています。日本人のカルシウムの摂取量は少なく1日あたり700mg程度と言われています。つまり、もともとカルシウムがやや不足している人もかなりいると思われます。

カルシウムは意識して多めに摂ったほうがいいでしょう。カルシウムサプリメントを大量に飲んだりしない限り、食事からの摂取量が多すぎになる心配は大きくありません。

フルーツジュースの摂取は尿路結石再発の予防になるか?

クエン酸という物質はレモン、オレンジに含まれる物質です。クエン酸が尿路結石を防ぐように働くという考えがあります。

クエン酸の化学的性質から考えると、次のような働きによって尿路結石を防ぐのではないかと想像できます。

  • 尿中でクエン酸がカルシウムと結合して、シュウ酸カルシウム結石を抑制する 
  • 尿をアルカリ性にして尿酸を溶かす

尿路結石はほとんどが、シュウ酸カルシウム結石です。シュウ酸はカルシウムと尿中で結合することにより結石を形成していきます。クエン酸が尿中でカルシウムと結合し、シュウ酸がカルシウムと結合することを防ぐならば、シュウ酸カルシウム結石を防ぐことにもつながるかもしれません。

クエン酸はさらに尿をアルカリ性にして尿酸を溶かしやすくするという考えもあります。

このように理論上はクエン酸を含むフルーツジュースは結石再発の予防になりそうに思えますが、実際に結石再発を予防したという事実は示されていません。

現時点では尿路結石の再発を防ぐ目的でフルーツジュースを積極的に勧められるだけの根拠はありません。

結石を予防するマグネシウム製剤は効果があるのか?

マグネシウムは腸でのシュウ酸の吸収を抑制することで尿中のマグネシウムを低下させる働きが注目され、尿管結石の形成を抑制すると考えられてきました。

大規模な調査では、マグネシウムの摂取量が低い場合、尿路結石を発症する危険性が高いことがわかりました。しかしながら実際にはマグネシウムの摂取量が低いことにより尿路結石症を発症する人は少ないことから、全ての人にマグネシウムの補充が必要ではないとも考えられています。

また本当にマグネシウム補充の効果があるのかを調べた研究も少数です。マグネシウムの内服は確実に行うべきとは言えないのが現状です。

血液検査の尿酸値は下げたほうがよいのか?

血液検査で尿酸値が高い状態が続くと尿中の尿酸値も上昇し尿酸結石が発生しやすくなります。尿酸結石の形成に対して、尿酸が体で作られることを防ぐ治療は有効です。

尿中の尿酸を減らすことで、尿路結石でもっとも多いシュウ酸カルシウム結石の発生も抑制できることがわかっています。

尿酸値が高い状態では痛風などの症状が出現しやすくなります。頻発する痛風発作の再発予防などにおいて薬により尿酸値を下げる治療は有効であるといえます。加えて、生活習慣を見直すことも考えてよいでしょう。

参考文献