大腸がんの転移とは?リンパ節転移と遠隔転移、ステージとの関係
1. リンパ節転移と血行性転移(遠隔転移)の違いとは
大腸がんに限らず、がんは
どうしてこういった違いが起こるのでしょうか。
リンパ行性転移とは
全身の臓器でリンパ液という液体が作られています。リンパ液には
リンパ液の流れの途中途中にリンパ節という塊が存在します。リンパ液に入っている細胞などはリンパ節で一度足止めされます。リンパ節はリンパ液に異物が侵入していないかをチェックする門番のような役割を果たしています。
大腸がんが大きくなると、大腸から出るリンパ液にも侵入していきます。リンパ液に侵入したがん細胞はリンパ節に流れ着いて増殖することがあります。これをリンパ節転移と言います。
正常なリンパ節は
リンパ節転移の特徴は、順々に隣のリンパ節に転移していくことです。遠くのリンパ節にいきなり転移することはあまりありません。そのため、がんからのリンパ液の流れが最初に流れ着くリンパ節(センチネルリンパ節)は、特に転移がないか注意して調べる必要があります。

血行性転移(遠隔転移)とは
血行性転移は、その名の通り血液の流れに乗って離れた臓器にがんが転移することを指します。がんがもとあった場所から離れた臓器に転移することを
大腸がんが進行すると大腸に流れる血液にがん細胞が侵入し、血流に乗って離れた臓器まで達します。離れた臓器に到達したがん細胞がそこで増殖すると遠隔転移となります。
遠隔転移はいきなり離れた臓器に転移が見つかることが特徴になります。大腸がんが遠隔転移しやすい臓器は肝臓や肺などです。
リンパ行性転移と血行性転移の比較
進行したがんはリンパ行性転移と血行性転移のどちらも起こします。また、リンパ行性転移と血行性転移のどちらかが起こっていればもう一方は起こらないわけではなく、両方起こることも少なくありません。
大腸がんでは、リンパ節転移があるとがんの進行度は
2つの転移の違いはどういったものがあるのかを下に示します。
【リンパ行性転移と血行性転移の比較】
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リンパ行性転移 |
血行性転移 |
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転移の性質 |
順々に隣のリンパ節へ転移することが多い |
いきなり離れた臓器へ転移する |
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がんの進行度 |
ステージ3以上 |
ステージ4 |
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治療法 |
手術した後に |
可能であれば手術を行う |
なお、大腸がんの治療に関しては「大腸がんの治療ではどんなことをする?」で説明していますので、詳しく知りたい方は参考にしてください。
2. 大腸がんの転移先:リンパ節、肝臓、肺など
大腸がんの転移はリンパ節への転移(リンパ行性転移)と離れた臓器への血液を介した遠隔転移(血行性転移)のいずれかに分類されます。遠隔転移では特に肺か肝臓への転移が多いことが分かっています。
大腸がんがリンパ節転移するとどうなる?
がん細胞がリンパ液に侵入してリンパ節転移を起こすと、リンパ節が大きくなってきます。リンパ節転移があると、CT検査や
大腸がんでリンパ節に転移があるとステージ3以上と診断されます。リンパ節転移の数によってステージがさらに分かれます。リンパ節転移が1-3個の場合はステージ3Aで、4個以上の場合はステージ3Bとなります。
ステージ3Aと3Bを比べるとリンパ節転移の多い3Bのほうが手術で切除することが難しくなります。以下に
【ステージ3Aと3Bにおける手術で切除可能な割合の表】
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ステージ3A |
ステージ3B |
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切除可能な割合 |
91.9% |
81.8% |
(大腸癌研究会・全国登録 2000-2004年症例を元に作成)
また、手術で切除できたからといって必ず治癒できるわけではありません。肉眼的に(目に見える限り)切除したと思われる状態でも、周辺の組織やリンパ液、血液中にがん細胞が潜んでおり、それが時間とともに増殖してまた
大腸がんが肝臓に転移するとどうなる?
大腸がんの遠隔転移で一番多いのが肝転移です。大腸がんが遠隔転移しやすい臓器は以下になります。
【大腸がんの遠隔転移しやすい臓器】
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臓器 |
大腸がんが転移している割合 |
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肝臓 |
10.9% |
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腹膜 |
4.5% |
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肺 |
2.4% |
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その他 |
1.8% |
(大腸癌研究会・全国登録 2000-2004年症例を元に作成)
この表を見て分かる通り、大腸がんは肝臓・肺・腹膜に転移しやすいということがわかっています。肝臓が最も多くなります。その他には骨や脳などに転移することがあります。
肝臓に転移があった場合の治療はどうすればよいでしょうか?肝転移に対する治療は主に以下のものが選択されます。
- 手術(外科的治療)
- 全身化学療法(抗がん剤治療)
- 肝動注療法
- 熱凝固療法
ここで特筆すべきは手術が選択肢に挙がるということです。通常のがんの治療では転移があると手術が行えなくなることが多いのですが、大腸がんの肝転移では手術を行う場合があります。
大腸がんの根治を狙う治療では、手術が最も重要になります。手術が可能であれば手術を行うことになります。『大腸癌治療
- 耐術可能
- 手術に耐えられる体力がある
原発巣 が制御されているか制御可能- 大腸にあるがんを切除することでがんを残さず取り去ることができる
- 肝転移巣が遺残なく切除可能
- 肝臓の転移を切除することでがんを残さず取り去ることができる
- 肝外転移がないか制御可能
- 肝臓の他に転移がない、あるいはあっても切除できる
- 十分な残肝機能
- 肝臓を切除しても肝臓の機能を十分に残せる
これらを満たせば肝転移に対して手術を行います。肝臓を切り取る手術ではどうしても肝臓の機能が下がってしまうのですが、手術前に肝臓の状態が悪くなければ切り取っても問題ないことが予想できます。
大腸がんの肝転移に対して手術療法を行った場合の
手術を行えない場合は、全身化学療法(抗がん剤治療)を行います。全身化学療法を行えない場合は、肝動注療法や熱凝固療法を行います。
大腸がんが肺に転移するとどうなる?
大腸がんは肺にも転移しやすいがんです。肺に転移があった場合の治療は主に以下のものが選択されます。
- 手術(外科的治療)
- 全身化学療法(抗がん剤治療)
放射線治療
通常のがんでは肺転移があった場合に手術は行わないことが多いのですが、大腸がんの転移では肺転移でも手術を検討します。
手術を行える場合は以下のすべてを満たす場合です。
- 耐術可能
- 手術に耐えられる体力がある
- 原発巣が制御されているか制御可能
- 大腸にあるがんを切除することでがんを残さず取り去ることができる
- 肺転移巣が遺残なく切除可能
- 肺の転移を切除することでがんを残さず取り去ることができる
- 肺外転移がないか制御可能
- 肺の他に転移がない、あるいはあっても切除できる
- 十分な残肺機能
- 肺を切除しても呼吸機能を十分に残せる
これらを満たせば肺転移巣の切除を行います。大腸がん研究所プロジェクト研究のデータでは、肺切除後の5年生存率は46.7%で、切除しなかった場合の5年生存率3.9%よりも好成績です。このデータは患者さんの状態が異なる集団を比べているので、単純な数字比較はできませんが、手術が可能な状態であれば手術を行ったほうが良い成績が期待できることが示唆されます。また、肺転移のある大腸がんに対して手術を行ってから5年以内に33.7%が再発するともされています。
また、手術後の肺に再発が出現した場合も、可能であれば手術治療が検討されます。
手術が行えない状況であれば、全身化学療法や
大腸がんが脳に転移するとどうなる?
非常にまれではありますが、大腸がんは脳に転移します。脳転移がある場合は手術や放射線療法を検討します。『大腸癌治療ガイドライン2019』によると、手術を行う条件は以下の基準を全て満たした場合になります。
- 数ヶ月以上の生命
予後 - 余命が数ヶ月以上あると予想される
- 切除により重大な神経症状をきたさない
- 腫瘍を切除しても大事な神経を損傷しない
- 多臓器の転移がないか、制御可能
- 脳以外の臓器に転移していない、あるいは転移があっても切除できる
手術できるかどうかは、これ以外に脳転移巣の大きさや数、位置などを見ながら総合的に判断されます。また、脳転移巣があると多くの場合は他の臓器にも転移があるため、手術が可能かどうかは慎重に見定める必要があります。『大腸癌治療ガイドライン2019』によると脳転移巣を手術で切除した後の平均生存期間は30-40週程度と報告されています。
一方で、脳転移巣に対して手術が行えない場合は放射線治療が検討されます。放射線治療では、主に定位放射線照射術と全脳照射術がありますが、脳転移巣の大きさが3-4cm以下で個数が3個以下であれば定位放射線照射術が選択されることが多いです。
大腸がんが胃や腎臓に転移することはある?
大腸がんが胃や腎臓に転移することは実際には非常に少数です。
しかし、血行性転移(遠隔転移)とは、血液中にがん細胞が侵入し血流に乗って離れた臓器でがん細胞が大きくなることを指しますので、理論上すべての臓器でがんの転移は起こります。そのため胃や腎臓への転移は起こらないと考えるのは早計です。
腹膜播種とは?

お腹の臓器を囲むような形で腹腔(ふくくう)という空間があります。臓器の表面には腹膜という薄い膜があります。腹腔に大腸がんのがん細胞が飛んで行くと腹膜にへばりついて腹膜播種(ふくまくはしゅ)という状態になります。

大腸がんがこうした腹膜播種の状態になるとステージは4になります。腹膜播種が起こると腹膜にがん細胞が付着して
腹膜播種に対する治療は可能であれば手術を行います。特に播種が限局して(一部にとどまって)いれば、大腸と同時に腹膜播種のある部分を切除します。
3. 大腸がんが転移すると手術はできるのか
大腸がんは遠隔転移があっても手術できる場合があります。がんの中でも珍しい特徴です。
がんには細かく分けると数百の種類があります。がんの種類ごとに危険性などの特徴は大きく違います。多くの場合で、リンパ節転移があるがんでも遠隔転移がない状態であれば手術は可能です。遠隔転移がある場合は手術ができないことがほとんどです。対して、大腸がんは遠隔転移があっても手術できる場合があることがほかのがんと違っています。
大腸がんのリンパ節転移がある場合と遠隔転移がある場合の治療を詳しく見ていきましょう。
リンパ節転移の際の手術
リンパ節転移があっても大腸がんの手術はできます。
リンパ節に転移した大腸がんはステージ3以上になります。細かく見ると転移したリンパ節の数でステージが以下のように分かれます。
- リンパ節転移が3個以下の場合:ステージ3A
- リンパ節転移が4個以上の場合:ステージ3B
ステージ3であると
リンパ節を切除することをリンパ節郭清(かくせい)と言います。リンパ節郭清には3段階あり、その程度は以下のとおりです。
- D1郭清
- 大腸の近くにあるリンパ節(腸管傍リンパ節)を切除
- D2郭清
- がんのある大腸に入ってくる血管(栄養血管)に沿ったリンパ節も切除
- D3郭清
- 栄養血管の根元にあるリンパ節も切除
上の表に示したリンパ節郭清のうちD3郭清が最も多くのリンパ節を切除します。大腸がんのリンパ節転移がある場合はD3郭清が選択されます。つまり、転移しているリンパ節の周囲のリンパ節も転移している可能性があるので疑わしい部分を全て切除するような形になります。
また、ステージ3の大腸がんの手術では手術の後に化学療法(抗がん剤治療)も行うことがほとんどです。目に見えるがん細胞を手術で取り去った後にリンパ液や血液などの中に目に見えない形で潜んでいるがん細胞を治療するのが術後の化学療法の狙いになります。大腸がんの手術後に使用される抗がん剤は以下が主なものになります。
- 5-FU+LV療法
- UFT+LV療法
- Cape療法
- FOLFOX療法
- CapeOX療法(XELOX療法)
- S-1療法
これらを手術後4週から8週で投与開始して、6ヶ月投与するのが原則になります。これらの薬について詳細に知りたい方は「大腸がんの手術後に行う化学療法(補助化学療法について)」をご覧ください。
遠隔転移の際の手術
大腸がんの遠隔転移が起こりやすい臓器は、肝臓や肺、腹膜です。通常のがんであれば遠隔転移が起こると手術することが難しくなりますが、大腸がんの場合は遠隔転移が起こっても手術が検討されます。
手術を行える場合は、要約すると以下のような場面に限られます。
- 手術に耐えられる体力がある
- 大腸にあるがん(原発巣)を切除することでがんを取り去ることができる
- 転移したがん(転移巣)を切除することができる
- 切除した後も身体機能に問題がない
- 切除した後に数ヶ月以上は寿命が残っていると予想される
- 手術によって大きな身体的異常が現れないと予想される
これらをすべて満たしたときには、腫瘍の状態を考えながら手術の可否が判断されます。
4. 大腸がんが転移した時の余命はどれくらいか
大腸がんが転移した場合は、「進行がん」という診断になりますのであまり寿命が残されていないと思われがちです。しかし、大腸がんは進行していても適切な治療を行うことで寿命はある程度保たれます。
転移の中でもリンパ節転移と遠隔転移をわけて考えていきましょう。
リンパ節転移があった場合の余命
リンパ節転移が起こった場合はステージ3以上になります。ステージ3の治療では手術が可能であれば手術を行います。手術を行った場合でも行えなかった場合でも、5年実測生存率はおおよそ7割強です。「転移がある」と言われると動揺してしまうかと思いますが、ステージ3の大腸がんと診断されても治療によって7割以上の人が5年以上生存しているのです。気持ちを落ち着けて、しっかり治療を受けられるように準備しましょう。
詳しい数字は「大腸がんの統計①:大腸がんが転移した時の生存率」をご覧ください。
遠隔転移があった場合の寿命
大腸がんは遠隔転移が存在するステージ4の状態でも条件に合えば手術することができます。体力が落ちている人やがんが多数の臓器に転移している人は手術ができません。しかし、手術が可能であれば基本的には手術を行ってがんの根治を目指すことが勧められます。
手術を行えない場合は手術を行えた場合よりもやや生存率は低くなりますが、ステージ4の大腸がんと言われても、5年以上生存できる人が2割以上います。これは、他のステージ4のがんの5年生存率よりは高い水準です。まずは自分に最も適した治療を探すべく主治医と相談してください。
詳しい数字は「大腸がんの統計①:大腸がんが転移した時の生存率」をご覧ください。