きかんしぜんそく
気管支喘息
アレルギーなどで空気の通り道(気道)に炎症が起こることで、気道が狭くなってしまう病気
25人の医師がチェック 272回の改訂 最終更新: 2024.10.23

気管支喘息の検査で何がわかる?

喘息はとても多くの人がかかる病気であり、症状の様子や出たときの状況だけで喘息と考えても問題ないケースは多々あります。他の病気が隠れていないか、喘息としての重症度はどれくらいか、などを知るには検査が役に立ちます。 

「しつこい咳をしている」、「ゼーゼーしている」、「息苦しいあるいは息苦しそうな状態が続いている」、など喘息かもしれないと思ったときにどこを受診したらよいでしょうか?

■子供の場合

喘息は日本の子どもの9%から14%ほど、成人(15歳以上)の6%から10%ほどがかかる、とても身近でありふれた病気です。したがって小児科医なら子どもの喘息にもよく出会うはずです。子どもの場合には基本的に小児科を受診すれば問題ないでしょう。

■大人の場合

大人の場合でも喘息はありふれた病気なので、内科を標榜しているクリニックや病院であればどこでも診てもらえると考えられます。

ただし、初めて喘息の診断をするには専門的な知識や経験が必要になる場合もあり、専門の内科を受診することでより適した評価や処方をしてもらえることがあります。喘息についての専門科としては呼吸器内科が一般的です。場合によってアレルギー内科(リウマチ内科)などが専門的な役割を果たしていることもあります。

喘息が疑わしい患者さんに行われる検査の例を挙げます。

  • 呼吸機能検査
  • 気道可逆性試験
  • 気道過敏性試験
  • 呼気一酸化窒素検査

喘息の診断にはさまざまな検査があり、それぞれには特徴があります。以下ではそれぞれの検査について説明します。

呼吸機能検査は、肺機能検査スパイロメトリースパイログラムなどと呼ばれることもあります。

マウスピースをくわえて口呼吸をし、「吸って」「吐いて」「思いっきり吸って」「勢い良く吐いて」などの指示に従って呼吸をすることで、空気を吸う能力、吐く能力、酸素の取り込み能力などをチェックする検査です。

空気の通り道である気管支が、喘息の場合には炎症を起こすことによって腫れたり傷ついたりした状態となることで、空気の通り道が狭くなりがちです。したがって、空気を吐き出す勢いが弱くなってしまい、呼吸機能検査では「閉塞性障害」と呼ばれるタイプの異常が見られることがあります。

ただし、閉塞性障害が無いからといって喘息でないとは言えません。また閉塞性障害はCOPDなど他の病気でも見られます。そのため呼吸機能検査だけで喘息を診断することはできません。

気道可逆性試験は呼吸機能検査に薬を組み合わせる検査です。空気の通り道を広げる薬を使います。

喘息は空気の通り道が狭くなっている状態です。また、β2刺激薬という薬で空気の通り道が広がることが特徴です。このことを気道可逆性と言います。気道可逆性があれば喘息らしさがより強いと言えます。

気道可逆性を知るには、β2刺激薬を使う時と使わない時で呼吸機能検査の結果を比べます。

呼吸機能検査において、思いっきり息を吸ってから勢い良く息を吐き出した時に最初の1秒間で吐ける空気の量を1秒量(FEV1: forced expiratory volume in 1 second)と呼びます。β2刺激薬を吸う前後でFEV1が12%以上増加し、かつFEV1が200ml以上増加している場合に気道可逆性があると判断します。

気道可逆性試験と呼吸機能検査を組み合わせることで喘息の診断により近づきますが、気道可逆性の乏しい喘息もありますし、他の病気で気道可逆性があることもあります。気道可逆性試験だけで喘息を診断することはできません。

気道過敏性試験は、気道可逆性試験と同様に、薬剤に反応してFEV1がどの程度変化するかをみる検査です。ヒスタミンアセチルコリン、メサコリンなどの気管支収縮薬を使います。気管支収縮薬を吸い込んでFEV1低下の程度を調べます。

気道可逆性検査と比べると気道過敏性試験を行う医療機関は少ないですが、気道可逆性試験で気道可逆性が検出されない喘息を診断する時などで役立つことがあります。ただし気道過敏性試験でも、単独では喘息の診断をすることも否定することもできません。また、気管支収縮薬は呼吸状態の悪い方が使用するには危険なので、ある程度以上に呼吸機能が良好な方にしか気道過敏性試験は行うことができません。

呼気一酸化窒素検査はFeNO(fraction of exhaled nitric oxide)検査とも呼ばれ、2013年に保険適用となった比較的新しい検査です。

専用の測定機器に一定の勢いで息を吹きかけ、息の中に含まれる一酸化窒素濃度を測ると、患者さんの空気の通り道においてどれくらいのアレルギーによる炎症が起きているかが推定できる検査です。一酸化窒素の濃度は息の中の割合で表現します。一酸化窒素はごく微量にしか存在しないので%(100分の1)で表すには桁が合わず、ppb(ピーピービー; 10億分の1)という表記を使います。1,000万ppb=1%です。

呼気一酸化窒素検査の結果が37ppb以上であれば、喘息の可能性が高いとされています。逆に、喘息の治療薬を使用していないときに22ppb以下であれば喘息の可能性が低いとされています。

呼気一酸化窒素検査は簡単にできるという利点があるので、今後、呼気一酸化窒素検査ができる医療機関が増えていくことが期待されています。

しかし、呼気一酸化窒素検査でも、単独では喘息の診断をすることも否定することもできません。

喘息の診断以外にも、呼気一酸化窒素検査の検査値が低い値に抑えられているかどうかで、喘息の治療がうまくいっているかどうかを見る、というような使い方がされることもあります。

参考文献

喘息の診断をするうえで血液検査は必須ではありません。

ただし、喘息以外の病気が隠れていないかをチェックする目的や、喘息の治療薬を決定する目的、どのような物質にアレルギーがあるかを調べる目的などで、採血検査はよく行われます。

採血では様々な項目を調べますが、しばしば調べられる重要なものとしては、血液中好酸球数、血清総IgE抗体特異的IgE抗体などがあります。

血液中好酸球数はアレルギーによる炎症がどの程度あるかの参考になります。ただし、血液中好酸球数が低いから喘息では無い、あるいは軽症であるということは言えず、逆に高いから重症ということもありません。また、血液中好酸球数があまりにも高い場合には、好酸球性白血病好酸球性肺炎好酸球性肉芽腫性多発血管炎薬剤アレルギー、寄生虫感染などの他の病気ではないかを考えることもあります。なお、血液中好酸球数はメポリズマブ(商品名ヌーカラ®)という治療薬を使用するのに適しているかどうかを判断するうえで必要な検査となります。

血清総IgE抗体もアレルギーによる炎症がどの程度あるかの参考になります。ただし、これも低いから喘息では無い、あるいは軽症であるということは言えず、逆に高いから重症ということもありません。血清総IgE値はオマリズマブ(商品名ゾレア®)という治療薬を使用するのに適しているかどうか判断し、薬の使用量を決定するうえで必須の検査となります。

特異的IgE抗体は例えばダニだとか、スギ花粉といったそれぞれの物質に対するアレルギー反応がどの程度あるかの参考になる検査です。特異的IgE抗体を手がかりにアレルギーの原因物質を調べて、その物質との接触や吸入をなるべく避けるなどしていくことになります。

喘息の診断や治療を進めていくうえで、胸部レントゲン胸部CTといった画像検査は必須の検査ではありません。しかし、喘息以外の病気でないかどうかをチェックするために画像検査はしばしば行われます。特に高齢の患者さんの喘息を初めて診断する場合などでは他の病気が隠れていることも多いので、画像検査はより多く行われる傾向にあると言えるでしょう。

痰の検査というのはあまり聞き慣れないものかもしれません。喘息の場合には痰の中にある自分の細胞を調べます。好酸球という細胞が手がかりになります。

好酸球は白血球の一種です。アレルギー反応に関連して好酸球が作られます。好酸球が痰の中にどれくらいあるかで、どのくらいアレルギー性の炎症が起きているかを調べます。

風邪をひいているわけでもないのに痰を出せと言われても難しいでしょうから、なかなか痰が出ない場合には食塩水を霧状にして吸い込むことによって痰が出やすくすることがあります。

痰の中に好酸球が多く見つかれば喘息の診断に近づきます。また喘息の治療中に痰の検査をして、好酸球が多いか少ないかをみることで治療が上手くいっているかどうかの参考にすることがあります。

しつこい咳をしている、ゼーゼーしている、息苦しいあるいは息苦しそうな状態が続いている、など喘息かもしれない症状が出たとき、これは本当に喘息なのでしょうか?

例えば「何年か前から風邪をひいた時とか、季節の変わり目、花粉の時期なんかに咳がしばらく続いていたけれども、病院へ行かないでも自然に治ってきた。そういえば母親も喘息で、自分も小児喘息持ちだった。」などは喘息患者さんの典型的なエピソードです。「繰り返し起こっていること」、「(自然に)良くなっていること」が最大のポイントです。

喘息の診断に関しては、大人のものでは日本アレルギー学会が監修の「喘息予防・管理ガイドライン」が、子どものものでは日本小児アレルギー学会が作成した「小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン」があります。これらに診断の目安は記載されていますが、実際の診断では様々な要素を考慮した総合的な判断が必要になります。

成人の喘息では、ほかの病気ではないことが確かめられている条件のもとで以下のような項目が診断の目安になります。

発作的に息が苦しくなる。咳、胸苦しさなどが繰り返し起こる。

・これらの症状が夜中や明け方に起こりやすい。

・気道可逆性試験陽性であり、息の吐き出しづらさがある。

・空気の通り道である気管支が過敏になり、狭くなりやすい状態になっている。

・アレルギー体質である。

・空気の通り道である気管支が炎症を起こしている。(呼気一酸化窒素検査や痰の検査、胸部CTなどを参考にします。)

ただし、上に挙げた目安のうちいくつかが当てはまらない気管支喘息もありますので、絶対的な診断基準というものはありません。また、実は「ほかの病気ではない」という部分が診断において一番難しいところなので、患者さんそれぞれの背景によって診断のために行なうべき検査の種類や量は変わります。

参考文献:喘息予防・管理ガイドライン2015

年齢にもよりますが、子供は大人と違って、喘息診断の目安となる各種検査を正確に行えず、症状に関しても自分で正確に表現出来ないものです。したがって、年少児での喘息の診断は大人よりも難しいです。実際の診断に関しては、呼吸が苦しくなるエピソードに関して詳細に確認する、アレルギー体質や家族のアレルギー有無に関して確認する、よく聴診する、胸部レントゲンを撮る、採血検査をする、鼻水や痰の中に含まれる好酸球の多寡を調べる、喘息治療薬の反応性を見てみる、などして総合的に判断されます。喘息以外の病気が隠れているかどうかを考える際には、子供に多い生まれつきの心臓や肺の病気などもあるので、それらに留意して喘息の診断は進められます。