きかんしぜんそく
気管支喘息
アレルギーなどで空気の通り道(気道)に炎症が起こることで、気道が狭くなってしまう病気
25人の医師がチェック 244回の改訂 最終更新: 2020.04.06

気管支喘息はどうやって治療するのか:吸入薬?内服薬?入院は必要?

気管支喘息は早期に適切な治療を開始することで、呼吸機能を維持して、症状をコントロールできます。一方で、治療の遅れは呼吸機能に大きなダメージをもたらすことがあります。喘息治療の基本的な考え方や治療薬について説明します。 

喘息は日本の子どもの9%から14%ほど、成人(15歳以上)の6%から10%ほどがかかる、とても身近でありふれた病気です。

中には多少の咳や息苦しさがあってもそれほど困っていない、病院に通う時間が無い、面倒だという理由で、本当にひどい発作を起こした時にしか病院にかからない患者さんもいます。どのようなスタンスで喘息治療を考えて、病院に行けば良いのか、解説していきましょう。

喘息の治療を考えるうえで必ず理解しておきたい考え方が、気管支の「リモデリング」です。喘息では主にアレルギーを原因として、空気の通り道である気管支が炎症を起こします。気管支が炎症を起こすと、気管支の壁は分厚くなり、空気の通り道は狭くなります。こうして、息苦しさや呼吸のしづらさ、咳などの症状が出てくるわけです。喘息の初期にはこの炎症は自然に治まることも多いですが、炎症を繰り返した気管支は壁が分厚いままになり、元の厚さには戻らなくなっていきます。これを気管支の「リモデリング」といいます。リモデリングが進むと、喘息も自然には治まらなくなっていきます。つまり、喘息症状を放置すると、喘息は次第に治りにくい病気へと進んでしまうのです。

では、気管支の炎症を抑えて、リモデリングを予防するためにはどうしたら良いのでしょうか?ここで中心的な役割を果たすのが吸入ステロイド薬です。

ステロイドと聞くと、副作用が多そうだとか、怖い薬だというイメージを持たれる方も多いかもしれません。実際に、飲み薬や点滴のステロイドは量にもよりますが、長期に使用する場合は様々な副作用に十分注意する必要がある薬です。

しかし、吸入ステロイドは薬剤を吸い込むことで直接肺にステロイドを届けるので、全身に与える影響は非常に少なく、効果の面で優れている安心な薬と言えるでしょう。吸入ステロイドの副作用を敢えて挙げると、声がれしやすいこと、口の中にカンジダというカビの一種が生えやすい(多くの場合、容易に治療できます)ことなどがあります。よほど多い用量で長い期間にわたって使用しなければ、全身的な副作用はさほど気にしなくてよいです。

ただし、小児が使用する場合には、使用開始後1年間で1cmから2cmほど身長が伸びにくくなる可能性が高いとされています。この身長が伸びにくくなるという現象はずっと続くわけではなく、大人になってからの最終身長を検討すると特に変わらないと報告されています。

このように、喘息の治療においては吸入ステロイドが軸になります。また、症状に応じて他の薬剤を追加したり、本当に安定していれば吸入ステロイドを休薬したりします。
 

副作用が気になるのは正しいことです。しかし吸入ステロイドの副作用は限られています。吸入ステロイドには、気管支のリモデリングを食い止め、喘息が治りにくくなることを防ぐ役割があります。不安なことがあれば医師に質問して、納得できるまで相談してください。

喘息の治療薬は大きく分けて、コントローラーとレリーバーの2種類があります。

コントローラーとは症状の有無に関わらず毎日あるいは定期的に使用する薬剤の総称です。苦しい症状が出ないように予防しておく意味合いと、気管支のリモデリングを予防する意味合いがあります。コントローラーを使用する場合には、気管支のリモデリング予防を狙って吸入ステロイドを軸として以下のような種類の薬剤を使用します。

・吸入ステロイド薬(ICS: inhaled corticosteroid)

・長時間作用型β2刺激薬(LABA: long-acting beta2 agonist)

・ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA: leukotriene receptor antagonist)

・テオフィリン徐放製剤(SRT: sustained released theophylline)

・長時間作用性抗コリン薬(LAMA: long-acting muscarinic antagonist)

・クロモグリク酸ナトリウム(DSCG: disodium cromoglycate)

・内服ステロイド薬(OCS: oral corticosteroid)

・抗アレルギー薬(LTRAを除く)

・抗IgE抗体

・抗IL-5抗体

ただし、子どもでの吸入ステロイドは、使用量が増えてくると、成人で起こる副作用に加えて、わずかに身長が伸びにくくなると言われています。そのため子どもでは吸入ステロイドの量が多くなるならば他の薬を組み合わせることで少なめのステロイド量で済むように特に工夫したり、軽症喘息であれば吸入ステロイドの使用を避けることもよくあります。

成人では吸入ステロイドを柱としたコントローラーが原則なのですが、ご高齢で吸い込む力がとても弱かったり、認知症があって上手く吸い込めなかったり、 あるいはどうしても飲み薬がよい方の場合など、特別な事情があれば飲み薬をコントローラーにします。

また、喘息の症状が月に1回も無いような非常に軽症の喘息であれば、後述するレリーバーのみを使って、コントローラーを使わないこともあります。この程度の発作頻度であれば、コントローラー無しでも気管支のリモデリングはさほど進まないと想定されるからです。

レリーバーとは喘息の発作が起きて、息苦しさや咳などが出現した時に使用する薬です。使ってから速やかに効果が出てくるので、患者さんはコントローラーよりもレリーバーの方を好む傾向があります。コントローラーは使用しても即効性は乏しいものが多く、使っていても短期的には効果を自覚し難いからです。しかし前述の通り、コントローラーを普段から使用して、そもそも気管支の炎症が起こらない状態にし、気管支のリモデリングを進行させないことが喘息では大きな治療目標となります。コントローラーの使用をおろそかにしてレリーバーを多用し、その場しのぎの喘息治療になってしまう、という事態はしばしば起きてしまう間違いなのです。上述の通り、月に1回も症状が出ないほどの軽症喘息であればレリーバーのみでの対応が可能ですが、そうでなければコントローラーを毎日しっかり使うことがとても重要であることをぜひ知っておいてください。

【参考文献】
N Engl J Med. 2000 ; 343 : 1054-63.
喘息予防・管理ガイドライン2015

喘息はありふれた病気であり、その治療方針に関してはある程度確立されている部分も多いです。その治療方針を示したものがガイドラインであり、日本の多くの医療機関では基本的にこのガイドラインに準拠した治療を行っています。

大人の喘息に関しては、日本アレルギー学会が監修の「喘息予防・管理ガイドライン」が、子供の喘息に関しては、日本小児アレルギー学会が作成の「小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン」があります。これらは3-5年ごとくらいで改訂を繰り返しており、日々進歩する喘息治療に対応していると言えるでしょう。

また、世界的には米国を中心に1993年に設立されたGINA(global initiative for asthma)という組織があり、こちらからもガイドラインが出ています。

世界標準の治療が示されていることには大きな意義がありますが、やはり人種や地域、文化などによっても喘息に対する考え方・アプローチは変わってくるので、日本独自のガイドラインがしっかりと整備されていることは素晴らしいことですね。

喘息の治療薬には非常に多くの種類があります。まずは日頃の喘息症状をコントロールし、喘息発作を起こさないようにするための薬剤の種類を列挙します。

・吸入ステロイド薬(ICS: inhaled corticosteroid)

・長時間作用型β2刺激薬(LABA: long-acting beta2 agonist)

・ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA: leukotriene receptor antagonist)

・テオフィリン徐放製剤(SRT: sustained released theophylline)

・長時間作用性抗コリン薬(LAMA: long-acting muscarinic antagonist)

・クロモグリク酸ナトリウム(DSCG: disodium cromoglycate)

・内服ステロイド薬(OCS: oral corticosteroid)

・抗アレルギー薬(LTRAを除く)

・抗IgE抗体

・抗IL-5抗体

次に、発作の際に使用する治療薬の種類を列挙します。多くの薬剤は病院で使用するものになります。

・短時間作用型β2刺激薬(SABA: short-acting beta2 agonist)(自宅でも使用可能)

・ブデソニド/ホルモテロール吸入薬(シムビコート®)の追加吸入(自宅でも使用可能)

・SABAネブライザー吸入の反復

・テオフィリン製剤の点滴静注

・ステロイド薬の点滴投与

・抗コリン薬の吸入

アドレナリンの皮下注射

・イソフルラン、セボフルラン等による全身麻酔

 喘息患者さんは数時間から数日単位程度で症状が急激に悪化する「喘息発作」を起こすことがあります。ほとんど自覚しない僅かな胸苦しさや咳から、会話や歩行ができなくなるほどの高度発作まであり、喘息発作の重症度は様々です。どのような状況になったら救急外来を受診すべきかというのは患者さんによって異なるので、日頃から主治医に聞いておくのがベストでしょうが、喘息治療のガイドラインでは以下のような状況のとき受診することを目安としています。

・手持ちの短時間作用型β2刺激薬(SABA)の吸入を1時間から2時間おきに必要とするとき

・手持ちの気管支拡張薬で3時間以内に症状が改善しないとき

・症状が次第に悪化していくとき

・中等度以上の喘息症状のとき

ここでいう中等度の喘息発作とは、苦しくて横になれないだとか、かろうじて歩ける程度の息苦しさ、を目安としています。またパルスオキシメーターという酸素濃度測定器を持っている患者さんの場合にはSpO2が95%以下の場合、ピークフローメーターを持っている患者さんの場合には普段の80%以下の値しか出ない場合、というのが目安になります。

 救急外来を受診すると、重症度に応じて以下のような処置が行われます。

・酸素吸入

・SABAネブライザー吸入の反復

・ステロイド薬の点滴投与

・テオフィリン製剤の点滴静注

・抗コリン薬の吸入

・アドレナリンの皮下注射

 これらの治療を行えば、通常は1時間から数時間以内に反応が得られてきます。これらの治療に反応が乏しく、症状が残存してしまうようなケースでは入院が考慮されます。それ以外にも、肺炎を併発している、家に帰ると1人になってしまい危険、今までに入院を繰り返している、など様々な条件を勘案して総合的に入院が必要かどうかを判断します。

入院した場合の入院期間は、重症度と治療反応性によって様々であり、数日で退院できる方がいる一方、数週間から月単位になる方もいます。

【参考】

喘息予防・管理ガイドライン2015

喘息と外科治療には大きな関わりがあります。

喘息の治療の中には気管支サーモプラスティという特殊な内視鏡治療もありますが、喘息そのものを外科手術で治療する、ということは現時点ではできません。他の病気で手術が必要になった場合に、全身麻酔をするうえで喘息の方は特段の注意が必要になります。

なぜ注意が必要かというと、全身麻酔・手術という体への大きな負担が加わることによって、それをきっかけとして喘息発作を起こしてしまうことがあるからです。したがって、手術は喘息の状態が安定しているときに行うのが鉄則です。また、一時的に喘息の状態が安定していても、しばしば喘息発作を起こすような患者さんでは予防的に点滴ステロイド薬を手術前後に使用することが多いです。喘息患者さんが手術を受ける場合には、必ず担当の外科医、麻酔科医、呼吸器内科医などにその旨を伝えてください。

 またアスピリン喘息と呼ばれるタイプの喘息の方は、様々な鎮痛薬に反応して喘息発作を起こしてしまうことがあります。手術の後は鎮痛薬をしばしば使用するので、アスピリン喘息の可能性を指摘されている患者さんは、その旨を必ず担当医に伝えてください。

喘息が完治する病気なのかどうか、喘息患者さんやそのご家族にとっては非常に気になるところだと思います。何をもって「完治」とするのかは難しいところですが、治療薬無しで症状を自覚しなくなることを「完治」とするのならば、小児喘息患者さんの約50%から70%は思春期にかけて喘息は「完治」するとされています。ただし、そのうち30%弱は成人してから再発してしまいます。また、小児喘息のうち約30%の患者さんは思春期にかけて軽快はするものの、症状は消失すること無く持続し、そのまま成人喘息に移行します。成人喘息患者さんの場合には小児よりも自然に「完治」する割合は少なく、その割合は10%以下と言われています。

このように、喘息は「完治」する割合が必ずしも多くない病気です。しかし、年に数回くらいしか症状の出ないような軽症の患者さんも多くいますし、大事なことは喘息を放置して気管支の破壊(リモデリング)が進んだ状態にしないことであると言えるでしょう。完治しない喘息に嫌気がさしてしまう患者さんも多いと思いますが、ご自身の体質の1つと考えて、主治医とともに気長に喘息と付き合っていきましょう。

参考文献:
日胸疾患雑誌 29 : 984-991, 1991.
アレルギー 59 : 37-46, 2010.

喘息は長期的な治療が必要になることも多い病気なので、治療費の問題が気になると思います。例えば、成人喘息治療の軸となる吸入ステロイド/長時間作用型β2刺激薬 配合剤の薬価を考えてみると、少ない用量でも月に6,000円ほど、高用量になると1万円以上するものもあります。もちろん、医療保険が適用されるので自己負担は3割や1割などに軽減されますが、吸入薬に加えてロイコトリエン受容体拮抗薬などを併用する場合もあり、決して安い値段とは感じない方が多いかもしれません。

 これらの治療費に関して、使える可能性がありそうな補助の制度に関して簡単にご説明します。実際にどの制度に当てはまるかはケース・バイ・ケースなので、医療機関の相談窓口でどんな制度を使えるかを確認して下さい。

■ 各自治体による補助制度 (例:東京都における大気汚染医療費助成制度)

 公害の関与が考えられるなどの喘息治療費や小児喘息の治療費に関して、自治体が一部または全部を負担してくれる制度です。補助される金額が大きいケースも多いので、在住の自治体での補助制度に関して調べ、主治医に相談してみましょう。
 

■ 高額療養費制度

 同一月に高額の治療費を支払った場合に、所得に応じて自己負担の上限額が決められている制度です。自己負担上限額を超える支払い分に関しては払い戻しがあります。所得の少ない方や、ゾレア®、ヌーカラ®といった高額治療薬を使用している方、入院治療をした方などは対象となるか調べてみましょう。
 

■生活保護制度

 医療費の自己負担なく治療を受けることができます。
 

■介護保険制度

 喘息そのものとはあまり関係ないかもしれませんが、65歳以上の患者さんでは介護が必要になるほどの状態であれば申請してみましょう。
 

■身体障害者福祉関係の諸制度

 かなり進行してしまった喘息患者さんや、COPDなど他の肺の病気が合併している方では、常に体内の酸素が足りないほど重症になっている場合があります。そのような場合には障害者手帳や障害年金を受け取れる可能性があるので、主治医に相談してみましょう。