気管支喘息(喘息、ぜんそく)とは? 咳喘息、気管支炎とは違う?
喘息は日本の子どもの9%から14%ほど、成人(15歳以上)の6%から10%ほどがかかる、とても身近な疾患です。喘息がどのような病気か、ここでは説明していきます。
目次
1. 喘息はどんな仕組みで起こるの?
正常な肺は、木の枝のように細かく分かれる
喘息は、空気の通り道である気管支がしつこい
炎症が何年も続くうちに、気管支は破壊されたり分厚くなったりしていきます。この変化を気道リモデリングといいます。気道リモデリングが進むと、薬を使ってもなかなか気管支が広がらず、治りにくい喘息へと進行していくので、適切な時期に適切な治療をしていくことが大事になります。
参考文献
2. 喘息はアレルギーって本当?
喘息は
喘息にはさまざまな分類がありますが、環境中の物質に対するアレルギー反応が検出されるアトピー型喘息と、アレルギー反応が検出されない非アトピー型喘息の2つに分けるという分類が広く使われています。子どもの喘息、つまり小児喘息ではアトピー型が多く、成人の喘息では非アトピー型が多いと言われています。
アトピー型喘息では、具体的にはダニに対するアレルギーが最も多いとされており、カーペットなどはダニの温床になりやすいため注意が必要です。また、ネコ、イヌ、ハムスターなどの動物やカビ類、ゴキブリ等もアトピー型喘息の原因として重要です。屋外のアレルギー物質としてはスギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉などもありますが、屋内のアレルギー物質よりは喘息との関連は薄いです。その他、成人の場合には職業で頻繁に接する物質の影響で
参考文献
- 日本アレルギー学会喘息
ガイドライン 専門部会/編, 喘息予防・管理ガイドライン2015. 協和企画, 2015 - N Engl J Med. 1997 ; 336 : 1356-63.
- Am J Respir Crit Care Med. 2003 ; 167 : 787-97.
3. 小児喘息はどんな病気?大人と子供の喘息は違うの?
大人の喘息と同様に、子供の喘息(以下小児喘息)は空気の通り道である気管支がしつこい炎症を起こし、炎症が強いときには気管支が狭くなってしまうことにより咳や息苦しさが出てくるという病気です。小児喘息では、環境中の物質にアレルギー反応が検出されるアトピー型喘息が多いのが特徴です。アレルギーの原因物質としてはダニが最多です。
小児喘息は2-3歳までに60%から70%が、6歳までに80%以上が発症すると言われています。約50%から70%の患者さんは思春期にかけて喘息の症状が消失していきますが、そのうち30%弱は大人になってから再発してしまいます。また、小児喘息のうち約30%の患者さんは思春期にかけて軽くなるものの、症状は消失すること無く持続し、そのまま大人の喘息に移行します。
小児喘息は思春期にかけて良くなっていくことが期待はできますが、症状が持続したり再発したりすることはしばしばあります。このため、医療機関を受診する際には小児喘息であること、あるいは小児喘息であったことを忘れずにお医者さんや看護師さんに伝えるようにしてください。
参考文献
- 秋山一男, 他, わが国における成人気管支喘息の実態, 日胸疾患会誌 29: 984-991, 1991
- 福冨友馬, 他, 本邦における病院通院成人喘息患者の実態調査 ―国立病院機構ネットワーク共同研究―, アレルギー 59 : 37-46, 2010.
4. 咳ばかり出て苦しくなる喘息:咳喘息とは?
咳喘息は、原因としては喘息とほぼ同じと考えられますが、息苦しさやヒューヒューと苦しそうな呼吸の音を伴わないで、しつこい咳の出る病気です。8週間以上咳が続く状態を慢性咳嗽(まんせいがいそう)と呼びますが、慢性咳嗽のうち30%から40%は咳喘息が原因とされており、咳喘息はよくある病気と言えます。
痰はあまり出ず、寝るときや明け方に症状が出やすいのが咳喘息の特徴です。寒暖の差や、受動喫煙(副流煙)、会話、運動、飲酒、精神的緊張などが引き金となって咳喘息が悪化する場合もあります。治療としては軽症の喘息に準じて行うことが多く、うまく咳が治まれば継続的な治療は要らなくなることもよくあります。しかし約30%は本格的な喘息へと移行していくというデータもあり、しつこい咳を繰り返す場合にはかかりつけ医を作っておいた方が良いでしょう。
参考文献
5. 喘息と気管支炎は違うの?
喘息は空気の通り道である気管支がしつこい炎症を起こす病気なので、気管支の炎症ということで広い意味では「気管支炎」とも言えます。しかし、一般的には単に気管支炎と言った場合には、
6. 喘息で亡くなることはあるの?
喘息は日本の子どもの9%から14%ほど、成人(15歳以上)の6%から10%ほどがかかるという身近な病気ですが、十分な呼吸が出来なくなって亡くなることもある要注意の病気でもあります。戦後は毎年、日本国内で15,000人ほどが喘息により死亡していましたが、近年は治療薬の進歩などにより死亡数は減ってきています。2016年には日本国内で1,511人の死亡者数であったと発表されています。
喘息患者が死亡に至るほどの重症になってしまう引き金としては、風邪や肺炎などの
また、喘息死のうち90%前後が65歳以上の高齢者であり、高齢の喘息患者さんは特に注意が必要と言えるでしょう。
参考文献
- 日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会/編, 喘息予防・管理ガイドライン2015. 協和企画, 2015
- 厚生労働省:人口動態統計2016年