性病かもと思ったら誰に相談したら良い? 思い当たることのある人へ
性病かもしれないと思ったら、どこに相談すればよいのでしょうか? 性病が疑わしい状況と、相談に適した施設を説明します。
1. 思い当たることってなに?
性病かもしれないと思って心配になった人を想像してください。たとえばこんな状況です。
20代男性の佐藤さんは、金曜日に風俗店に行った翌週の水曜日に、排尿のときの痛みを感じました。「まさか性病?」と思ってドキッとしましたが、病院に行くべきかどうか迷っています。
性病が心配になって病院に行くと、「思い当たることはありますか?」と聞かれることがあります。感染した可能性があるか考えるために非常に重要な質問なのですが、あまり具体的ではありません。 何に思い当たるべきなのでしょうか?
特殊な症状が出てきた
性病になると性器を中心に症状が出てきます。医師向けのある教科書には、性病に特徴的な症状のリストが挙げられています。
- 排尿時に痛みや違和感がある
- 陰部に痛みや傷がある
- 陰部以外に
皮疹 がある - 今までに性
感染症 にかかったことがある - 最近(特に一ヶ月以内)
抗生物質 を飲んだことがある - 尿道からいつもと違うものが出てくる
- 膣の分泌液に変化(色調、におい、量など)がある
- 避妊をきちんと行っていない
- oral sexやanal sexを行う
(青木眞/著「レジデントのための感染症診療マニュアル第3版」医学書院, 2015より)
症状ではないものも含まれているので、あとで説明します。挙げられている症状の中で当てはまるものが多ければ、性病の検査をしましょう。
ただし、性病には
症状がなくても感染しているかもしれないので、以下に当てはまる人は症状がなくても検査をしてください。
風俗店で働いている
性産業に務めている人は、不特定多数の人と性行為を行うため性病にかかる危険性は高いです。ここでいう性行為は性器を挿入する行為だけではなく、オーラルセックス(フェラチオ、クンニリングスなど)やアナルセックスも含みます。あらゆる性行為は感染の原因になります。
お客さんの中には、自分が性病だとわかっているのに隠してお店に来る人もいるかもしれません。悪意がなくても気が付かないで性病を持ち込んでしまう人もいるかもしれません。
性産業に務めている人は定期的に医療機関で診察を受けてください。
風俗店に行った
風俗店には不特定多数の人が訪れます。誰かひとりでも性病を持っていれば、全員に広がってしまうかもしれません。風俗店で性交渉を行った場合は、やはり性病にうつっているリスクがあります。
風俗店に行った後は特に症状がなくても、心配になったら検査をしてください。
新しい相手と性交渉した
性病と聞くと、風俗店や不特定多数と関係を持つ人が思い浮かぶかもしれません。しかし、実は特定のパートナーとだけの関係を守って暮らしている人でも性病になる可能性はあります。
昔、公共広告機構の
新しい相手と性交渉した場合は、性病になる可能性が潜んでいるかも知れないと心づもりして、もし気になる症状が出れば検査をしてください。
性病を持った人の体液を傷がある皮膚で触ってしまった
性病のほとんどは手で触ってしまったくらいでは感染しません。
感染している人の血液、精液、膣分泌液、唾液などには性病の原因となっている微生物が含まれている可能性がありますが、手などの皮膚は性器の粘膜とは違って感染を防御する力があるので、性行為のように手から感染がうつる心配はありません。
ただし、傷がある皮膚で触ってしまった場合は、傷口から感染するリスクがあります。性病にかかっているとわかっている人の体液が、自分の傷口に触れることがあったら、症状がなくても検査をしてください。
前にも性病にかかった、抗生物質を飲んだ、避妊していない、オーラルセックスをする
性病の中でも性器ヘルペスは再発を繰り返します。また、一度性病にかかった人の行動パターンは、性病をもらいやすい可能性が高いです。性病をパートナーにうつしてしまい、一度は治してもパートナーからうつし返されてしまうこともあります。
抗生物質を飲んだあとは、健康な体に常に住み着いている
避妊しない、特にコンドームをつけない性交は、性病の面でも危険です。
オーラルセックスやアナルセックスは性器以外の場所に感染する原因になるため、性器を検査しても感染を見つけられないなどの危険につながります。
4つのうちどれかひとつにでも当てはまっていて症状が出たときは、早めに性病の検査をしてください。
2. 性病の相談先はどこ?
佐藤さんは性病が心配になってインターネットで調べたところ、当てはまることが多いので「どうやら性病かもしれない」と思い始めました。検査をしようかと思うのですが、どこに行けばいいのかわかりません。性病の相談にはどこに行くのがいいのでしょうか?
一人で悩んでいても性病は治りません。しかし、性病かもしれないと思ったときこそ、なかなか周りに相談できないものです。相談できる場所を説明します。
病院(性病科、泌尿器科、婦人科、感染症科)
はっきりとした症状があるときは病院に行きましょう。病院では検査をしたうえ、結果を見て迅速に治療を始められます。原因が性病以外だったとしても対応できます。
ただし、性病を専門に診ている科がある病院は限られています。また、性病を相談する窓口のある病院はありますが、はっきりしない心配事の相談には強くないかもしれません。
保健所
保健所でHIV・クラミジア・淋菌・梅毒の検査を行っているところがあります。検査は無料で、匿名でできます。性病の相談を受けている保健所もあり、相談に慣れた人が対応してくれるので、利用する価値は高いです。
なんとなく性病が心配になったとき、近くに保健所があれば、性病の検査ができるか、相談窓口はあるか問い合わせてみましょう。
ただし、保健所の検査は検査日や定員が限られていて、予定を合わせられない人には利用しにくいです。
クリニック(医院)
クリニックの役割は病院と保健所の中間に位置していると考えて良いかもしれません。性病の診療を掲げているクリニックには、性病を専門に診ているお医者さんがいます。豊富な経験に基づいたアドバイスを貰える可能性があります。
ただし、医療保険の効かない検査や治療をすると、費用が高くなります。
「献血所で検査」はNG!
HIVなどの感染症がないかを調べる目的で献血しようとするのは絶対にやめてください。検査したければ保健所の検査を利用するか、病院やクリニックに行きましょう。
万が一、HIVに感染している血液が輸血製剤として使われてしまった場合、まず間違いなく相手もHIVに感染してしまい、多くの人の人生を狂わせることになります。
現在の医療では献血が輸血されるまでに何重もの防御策が打たれていますが、故意に間違った献血をするのは、輸血を必要とする人に危険を与える行為です。場合によっては罪に問われます。
3. 絶対に忘れてはいけない相談先。パートナーという存在
佐藤さんは病院で相談したところ、「多分性病だね。」と言われました。
自分が性病になってしまったとき、パートナーには相談しにくいものです。相手を疑いたくない気持ちも、ほかの人からうつったとは言いにくい気持ちもあるでしょう。
しかし、パートナーには必ず相談してください。
性病を治すには自分一人の力では不十分で、パートナーの協力が不可欠です。
性病にいつから感染していたのかは判断が難しいです。つまり、自分が性病に気づいた時にはもう相手にうつしてしまっているかもしれません。
もしパートナーが感染していれば、自分が性病の治療をしても、パートナーからまたうつされてしまいます。パートナーとの間でうつしあってしまうことをピンポン感染といいます。せっかく治療しても延々とうつしあってしまうことは現実に起こっています。
もしパートナーにまだ症状が出ていなければ、症状が出る前に治せるチャンスかもしれません。自分が性病にかかったとパートナーに告げるのは心苦しいことですが、黙っていればパートナーを危険にさらし、自分自身にも危険が返ってくることになります。
パートナーが感染していないかもチェックして、2人同時に治療してください。