性病
性病はナイーブな話ですのでなかなか人に相談できない病気です。それでいて放っておいても治ることは期待できません。また、ともすれば不妊症の原因になります。 性病を起こす原因や治療法について考えていきましょう。
最終更新: 2023.02.28

ある日突然排尿するときに痛みを覚えた

性病らしい症状があってもなかなか打ち明けられないものです。また、性病の中には症状の出にくいものもあり、実際にかかっていることに気づかないことも多いです。

しかし、治療しないと治らないのが性病です。性病を見つけて治療するまでにどんなハードルを越えればいいのか考えてみましょう。

1. おしっこを出す時の痛みが突然現れた

20代男性の佐藤さんは、会社に勤めてから丸5年が経ちました。それなりに仕事もできるようになり、後輩も増えてきました。新入社員が入ってくる季節になり、佐藤さんもなんだかフレッシュな気持ちになってきます。

新入社員の歓迎会の金曜日。後輩と楽しくお酒を飲んだ佐藤さんは、後輩たちと繁華街に繰り出す話で盛り上がっていました。

「先輩、良い店知ってるんで行きましょう。」

こうして連れていかれた風俗店で佐藤さんは楽しく過ごしました。

翌週の水曜日。朝起きた佐藤さんは、強い尿意に気づきます。慌ててトイレに駆け込んだところ、おしっこを出すのに痛みを覚えました。

ポイント1:性病の症状とは

性病で出やすい症状を知っていますか? 代表的な症状を挙げます。

  • 排尿時に痛みや違和感がある
  • 陰部に痛みや傷がある
  • 陰部以外に皮疹がある
  • 尿道からいつもと違うものが出てくる
  • 膣の分泌液に変化(色調、におい、量など)がある

上の症状に思いあたるものがある人は、性病にかかりそうなことがあったか思い出してみましょう。また、症状がなくても直近(特に1か月以内)で抗生物質を飲んでいる人は症状がわかりにくくなることがあるので注意が必要です。

ポイント2:おしっこの時の痛みや違和感だけでは性病とは限らない

おしっこの際に痛みや違和感を覚えるとドキッとします。性病にかかったかなと思うことでしょう。この直感は当たっていることも多いですが、性病以外でこうした違和感が出てくることも案外多いものです。

排尿のときに違和感を覚えたときは最近以下のことをしていないか振り返ってみましょう。

  • 風俗店に行ったか
  • 新しいセックスパートナーと性行為をしたか

上の2つのような性行為に心当たりがあれば性病の可能性が高いです。

しかし、性病以外にもほかの原因も考えられます。

  • アルコールを大量に飲んだか
  • カフェインの入っている飲み物を大量に飲んだか
  • アレルギーが出ていないか

これらの原因も陰部の違和感を引き起こすことがあります。

陰部の違和感が起こったときには、最近の自分の行動を振り返ることが重要です。

アレルギーが出ているかどうかを自分で判断することは難しいと思いますが、皮膚に赤みやかゆみが出ていないかをみてください。皮膚に症状がないのに陰部にだけアレルギーが出ることは珍しいので、性病らしいと考える材料になります。

ポイント3:性風俗店に行ったあとの陰部の違和感は性病の症状の場合が多い

おしっこの時に違和感を感じる自分が性病なのかどうか、正確には検査をしないとわかりません。しかし、症状が出る前の生活からある程度推測はできます。

特に性風俗店に行ったあとに陰部に違和感が出た場合は、性病にかかっていることを疑わなくてはなりません。

2. 性病かもしれないと思ったらどこに行けば良い?

佐藤さんは性病の検査を行いたいのですが、どこでやってもらえるのかがわかりません。インターネットを使って調べたところ、保健所でも病院でもやっていると書いてあります。どちらに行けばよいのでしょうか。

ポイント1:性病は保健所でも医療機関でも検査できる

保健所での性病検査は検査できる日時が決まっているので、仕事の都合でいけないことがあります。また、検査できる性病は4種類だけで、ほかの性病は調べられません。

その一方で、保健所で検査すると費用は原則無料です。医療機関にかかると検査料や診察料はかかりますので、費用の面では差があります。

性病の検査をするときの保健所と医療機関の違いを表にまとめます。

表 保健所と医療機関の性病検査の比較

保健所

医療機関

原則無料

有料

検査の種類が
少ない

幅広い検査が
できる

匿名可

匿名不可

検査日が
少ない

診療日が
多い

治療は
医療機関で

すぐに
治療できる

ポイント2:性病検査キットを使えば自宅でも検査できる

性病の検査は自宅でも行うことができます。性病の検査キットというものを取り寄せて、自分の尿や血液などを使って検査します。検査キットの結果は郵送で返してもらえますので、特に人に性病の検査をしていることを知られる心配はありません。

ただし、お医者さんに診察してもらうわけではないので、性病があるのに見落とすことがあります。また、性病にかかっていると分かったら、結局医療機関にかからなくてはなりません。そのため、明らかに症状の出ている人は、検査キットを使ってチェックするよりは最初から医療機関にかかるほうが良いでしょう。

3. 医療機関で性病を調べてみた

インターネットを調べた結果、医療機関にかかろうと決心した佐藤さんはとなり町の泌尿器科のクリニックに行きました。

お医者さんは話を聞いて「ちょっとおちんちんをみさせてね」といい、ペニスを一度しごきました。すると、ペニスの先から通常は出てこない透明な液が出てきました。それを見たお医者さんは「これは多分性病だね。」と言いました。その後採血がありました。

ポイント1:性病の診察では性生活に関してくまなく聞かれる

医療機関にかかって性病の診察を受けると、いろいろと性生活に関して聞かれることになります。どういった性生活を送っているかで、性病になりやすいかが分かりますので、聞かれたことに正直に答えてください。

性生活に関して聞いてくるポイントは以下のものになります。

  • 最後の性交から症状が出てくるまでどのくらいの期間があるか
  • いままで性病にかかったことがあるか
  • コンドームをつけないことがあるか
  • オーラルセックスやアナルセックスをするか
  • 最近抗生剤を飲んだか
  • 性行為の相手は男性か女性か両方か

病院に行くときには答えを考えておきましょう。

ポイント2:性病の診察では性器を触ってくまなく調べられる

性病の検査を前に症状がどういったものなのかを調べることになります。つまり、性器の状態がどういったものなのかをくまなく観察され、時には性器に触られます。不快な気持ちになるかもしれませんが、性病を診断するうえでどうしても必要なことです。性病を治すためと思ってぜひチェックを受けてください。

4. 一緒に行った人には症状が出ていない

お医者さんに性病だろうと言われた佐藤さんは、一緒に風俗店に行った仲間におそるおそる聞いてみました。

「なんかおしっこの調子が悪いんだけど、そんなことない?」

同僚はみんな「いやそんなことはない。」と言います。

同僚の話を聞いて、佐藤さんは自分だけ運が悪かったのかなと思いましたが、もし同僚にも感染していたら大変だと思って、「実は俺、病気もらっちゃったみたいなんだよね。」と打ち明けました。

ポイント1:症状の出ない性病は多い

実はまったく症状の出ない性病も多いです。特に、淋菌クラミジアHIV感染症では症状の出ないものが問題となっています。症状が出ないことで、治療が遅れる、気づかないうちに周りにうつしてしまうことが起こりえます。

症状がなくても、性病をうつされる可能性の高い行為をしている人は一度性病のチェックをしましょう。

  • 性風俗店によく行く
  • 不特定多数と性行為を行う
  • コンドームを使わないことがある

これらが性病をうつされやすくなる行動になります。佐藤さんの同僚の中にも、症状がなく気付いていないだけで実は感染している人がいるかもしれません。

ポイント2:性病はうつされてからしばらくは症状が出ない

性病に感染してすぐの時期は症状がありません。うつされても症状の出ない期間を潜伏期間といいます。主な性病の潜伏期間は表の通りです。

表 性病の潜伏期間

原因微生物

潜伏期間

淋菌

3-7日間

クラミジア

7-20日間

梅毒

10−90日間

HIV

10-40日間

佐藤さんが性風俗店で性病をうつされたとして、金曜日に風俗店に行ってから翌週の水曜日に症状が出るまでは、潜伏期間だったと考えることができます。同僚の中にもまだ潜伏期間の人がいるかもしれません。

佐藤さんの話を聞いた同僚はびっくりして一斉に検査に行きました。すると案の定、同僚の1人は感染していたことがわかりました。

5. どんなに言いたくなくてもパートナーには伝えなくてはならない

さて、佐藤さんは最初の診察のときに、お医者さんから困ったことを言われています。

「検査結果は1週間後に説明します。次の外来のときには彼女さんも連れて来てください。」

こう言われた佐藤さんは困ってしまいました。なぜなら、風俗店で性病をもらった自覚のある佐藤さんは、彼女にだけはバレないようにしなければと思っていたからです。

「どうしても連れてこなきゃダメですか?」と言うと、

「うつしちゃってるかもしれないでしょ。女性の性病は早く見つけないと不妊症になったりするからね。」と言われてしまいました。

お医者さんは診察の最後に「わかってると思うけど、来週までセックスはしないでね。」と言いました。

ポイント1:自分だけ治療してもパートナーも治療しなければ治らない

性病は性行為でうつる病気です。自分が性病になったら、パートナーも性病になっている可能性が高いです。そのため、検査も治療もパートナーと一緒にしなくてはなりません。自分だけ治療しても、パートナーの性病は治りませんので、自分にまたうつされてしまいます。つまり、セックスパートナーの片方だけ性病の治療をしても、いつまで経っても性病は治らないということが起こります。これをピンポン感染といいます。

ピンポン感染を防ぐために、治療はパートナーと同時にしてください。また、検査結果を聞くまでの間や治療をしている間は性行為は行わないようにしてください。

ポイント2:治療が遅れると不妊症の原因となる

特に淋菌クラミジアによる性病の場合に多いのですが、女性の性病を治療しないままにしておくと不妊症の原因となります。詳しくは「症状の現れにくい性病は要注意!不妊の原因、子供への感染も」の項で説明します。

女性の性病は症状の出ないことが多いです。不妊症になってしまってからでは遅いので、疑わしい要素があれば症状がないうちから対応するべきです。性病らしい症状が出たときはもちろん、性病をうつされやすい行為をしている人は、ぜひ性病の検査をしてください。

6. 彼女は性病ではなかったが肝を冷やす

佐藤さんは彼女に説明し、黙って風俗に行ったことをひどく責められましたが、危険性を理解してもらうことができました。

翌週になって検査結果を聞きに行きました。お医者さんは「検査の結果、佐藤さんはクラミジア感染とわかりました。今日から治療を開始しましょう。彼女も検査しましょうね。」と言いました。彼女は「私は特に症状がないのですが検査したほうがいいですか?」と聞きましたが、「症状の出ない性病も多いので検査しましょう。」と言われました。

検査の結果、彼女は性病でないと分かりました。佐藤さんは彼女に対して非常に気まずい思いをしましたが、性病ではないことが分かったので少しだけほっとできたのでした。

佐藤さんは正直に彼女に説明したので、彼女にはうつしていないことを確かめられました。黙っていたら、ずっと隠し事を続けることになります。一番ひどい未来は、実はうつしてしまっていたのに黙っていたので気が付かず、不妊症になってしまったことですべてが明らかになるということです。たとえ一度は気まずい思いをするとしても、最悪の結果だけは避けなければいけません。

7. 性病の知識をつけて健康な性生活を楽しもう

性病になってしまった佐藤さんを例に、性病の典型的なイメージを説明しました。佐藤さんがかかったクラミジア感染のほかにもいろいろな性病があり、個別の対策もあります。

このサイトでは代表的な性病の見つけ方や対策について詳しく解説しています。ぜひページを巡回して性病に詳しくなり、安全で健康な性生活に役立ててください。



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