きのうせいにょうしっきん
機能性尿失禁
膀胱や尿道に異常がなくても、他の身体の問題や環境の問題で尿失禁が生じる状態
1人の医師がチェック 11回の改訂 最終更新: 2026.06.26

機能性尿失禁の基礎知識

POINT 機能性尿失禁とは

膀胱や尿道の働きそのものに大きな異常がなくても、認知機能の低下や、歩行障害、衣服の着脱困難、トイレ環境の問題などにより、トイレに間に合わず尿が漏れてしまう状態です。高齢者や介護が必要な人、認知症や脳卒中後遺症、パーキンソン病、関節疾患などがある人で問題になりやすい尿失禁です。尿漏れの場面や、尿意の有無、移動能力、認知機能、薬剤、生活環境などを確認し、総合的に診断を行います。必要に応じて尿検査や残尿測定を行い、膀胱や尿道に異常がないことも確認します。治療については、排尿誘導や、トイレ環境の整備、衣服の工夫、リハビリテーション、薬剤の見直し、皮膚ケアなどを組み合わせます。機能性尿失禁が心配な人は泌尿器科や内科、リハビリテーション科で相談してください。

機能性尿失禁について

  • 尿をためる機能や尿を出す機能そのものに大きな異常がなくても、トイレまで間に合わず尿が漏れてしまう状態
  • 認知機能、移動能力、衣服の着脱、トイレ環境などの問題によって起こる尿失禁
  • 「尿意はあるがトイレに行けない」「トイレに行く判断や動作が間に合わない」タイプの尿失禁
  • 主な原因
    • 認知機能低下
    • 移動能力の低下
    • 衣服の着脱困難
    • 薬剤・全身状態の影響
  • 疫学
  • 高齢者、認知症のある人、歩行障害のある人、介護を必要とする人で多い尿失禁
  • 在宅介護、介護施設、入院中の高齢者で問題になりやすい状態
  • 腹圧性尿失禁切迫性尿失禁など、他の尿失禁と併存することも多い状態

機能性尿失禁の症状

  • トイレに間に合わない尿漏れ
    • 尿意を感じても、移動や準備が間に合わず漏れる状態
    • トイレに向かう途中、衣服を下ろす途中、夜間の移動中などで発生
  • 尿意の訴えが不明瞭
    • 尿意をうまく言葉にできない状態
    • 落ち着きがない、そわそわする、トイレ以外の場所で排尿するなどの行動変化
  • トイレ動作の遅れ
    • 立ち上がり、歩行、方向転換、衣服の着脱、便座への移乗に時間がかかる状態
    • 排尿機能よりもADL低下が中心となる尿失禁
  • 夜間の尿失禁
    • 夜間にトイレまで移動できず漏れる状態
    • 暗さ、眠気、ふらつき、転倒不安、夜間頻尿の関与
  • 皮膚トラブル
    • 尿による皮膚のかぶれ発赤びらん、においの問題
    • 長時間濡れた状態が続くことによる失禁関連皮膚炎のリスク
  • 生活・介護への影響
    • 外出控え、活動量低下、転倒リスク、介護負担の増加
    • 本人の羞恥心、家族の負担感、施設でのケア量増加
  • 機能性尿失禁だけでなく、切迫性尿失禁溢流性尿失禁が重なっていることもある

機能性尿失禁の検査・診断

  • 問診
    • 尿漏れの場面、時間帯、尿意の有無、トイレまでの移動状況の確認
    • 認知機能、歩行能力、転倒歴、介護状況、生活環境の確認
    • 使用中の薬剤、水分摂取、便秘夜間頻尿の確認
  • ADL評価
    • 立ち上がり、歩行、移乗、衣服の着脱、トイレ動作の評価
    • 杖、歩行器、車椅子、手すりなどの必要性の確認
  • 認知機能評価
    • 認知症せん妄、高次脳機能障害などの評価
    • トイレの場所の理解、排尿の意思表示、介助への反応の確認
  • 排尿日誌
    • 排尿時刻、尿漏れのタイミング、水分摂取量、夜間排尿回数などの記録
    • 介助のタイミングや排尿誘導の計画に有用
  • 尿検査
    • 膀胱炎血尿糖尿病などの確認
    • 急な尿失禁の悪化、発熱、排尿時痛、尿のにごりがある場合に重要
  • 残尿測定
  • 環境評価
  • トイレまでの距離、段差、照明、手すり、便座の高さ、衣服の確認
  • 夜間動線、ベッドからトイレまでの安全性、ポータブルトイレの必要性の評価
  • 在宅や施設でのケア体制の確認

機能性尿失禁の治療法

  • 原因・背景に応じた対応が必要になる
    • 認知機能低下、歩行障害、薬剤、便秘夜間頻尿、環境要因などの整理
    • 膀胱や尿道の治療だけでなく、生活全体を含めた対応
    • 他の尿失禁合併している場合は、それぞれに応じた治療
  • 排尿誘導
    • 時間を決めてトイレに誘導する方法
    • 排尿日誌をもとに、漏れやすい時間帯の前に介助
    • 認知症や介護が必要な人で有用な対応
  • トイレ環境の整備
    • トイレまでの動線改善、段差解消、手すり設置、照明改善
    • ポータブルトイレ、尿器、移動しやすい便座環境の活用
    • 夜間の転倒予防を含めた環境調整
  • 衣服の工夫:排尿準備にかかる時間を短くする工夫
    • 脱ぎ着しやすい衣服、ウエストゴム、マジックテープなどの活用
  • リハビリテーション:本人の自立度を保つための調整
    • 立ち上がり、歩行、移乗、バランス、筋力の改善
    • トイレ動作の練習、福祉用具の調整
    • 転倒予防と活動性維持を含めた介入
  • 薬剤の見直し
    • 眠気、ふらつき、尿量増加、認知機能低下を起こし得る薬剤の確認
    • 睡眠薬、抗不安薬利尿薬などのタイミングや必要性の検討
  • 皮膚ケア
    • 尿によるかぶれや失禁関連皮膚炎の予防
    • こまめな衣服の交換、洗浄、保湿、皮膚保護剤の使用
    • パッドやおむつの適切な選択
  • 介護支援
  • 本人の尊厳を保ちながら、介護負担を軽くするケア設計
  • 排尿パターンに合わせた声かけ、介助、パッド選択
  • 家族や介護スタッフとの情報共有と継続的な調整

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