まんせいふくびくうえん(ちくのうしょう)
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化したもの。一般的には蓄膿症と呼ばれることも多い
11人の医師がチェック 84回の改訂 最終更新: 2026.03.27

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の原因は?

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は、かぜなどをきっかけに起こる急性副鼻腔炎を繰り返すうちに、副鼻腔の粘膜の腫れや分泌物の停滞が続き、炎症が長引いた状態です。副鼻腔から分泌物がうまく排出されなくなると、炎症に関わる物質を含む分泌物がたまりやすくなり、症状が続く原因になります。慢性副鼻腔炎がどのような仕組みで起こるのかを整理します。

副鼻腔は、鼻の周囲にある骨に囲まれた空間です。鼻の中(鼻腔)とは小さな通り道でつながっており、この通り道を副鼻腔自然口と呼びます。正常では、副鼻腔の空気は鼻腔と行き来し、粘膜から出た分泌物も自然口を通って鼻腔へ運ばれ、排出されます。

慢性副鼻腔炎では、この「換気(空気の流れ)」と「排出」の仕組みが崩れることで、分泌物がたまりやすくなり、症状が続くようになります。

症状が持続する理由

かぜなどをきっかけに急性副鼻腔炎を繰り返すと、粘膜の腫れが残り、自然口が狭くなったり閉じたりして、分泌物の出口が作れなくなることがあります。さらに、粘膜の線毛(せんもう:分泌物を運ぶ仕組み)の働きが低下すると、分泌物を外へ運ぶ力も弱くなります。

換気(空気の流れ)が悪くなると、副鼻腔内の環境が悪化し、炎症が長引きやすくなります。分泌物には炎症に関わる物質が含まれているため、分泌物が排出されない状態が続くと、感染が落ち着いた後でも炎症が残り、症状が続く原因になります。

どのような症状が現れるのか

分泌物の停滞と粘膜の腫れによって、次のような症状が出ます。

  • 鼻水(ねばっこい/色がつく):たまった分泌物が鼻腔へ流れ出る
  • 鼻づまり:粘膜の腫れや分泌物で空気の通り道が狭くなる
  • 鼻づまり:粘膜の腫れや分泌物で空気の通り道が狭くなる
  • 鼻漏・咳:分泌物がのどへ流れ落ち、違和感や咳の原因になる
  • 痛み・頭が重い感じ:副鼻腔内の炎症や圧の影響で、部位に応じた痛みが出ることがある

つまり、慢性副鼻腔炎の症状は「分泌物がたまる」「出ていかない」「換気が悪い」という機能と構造の破綻から生まれます。

炎症が起こった場所と痛みの目安

副鼻腔は左右それぞれ4つあり、炎症がどこに強いかで痛みの出方が変わることがあります。

  • 前頭洞(ぜんとうどう):前額部の痛み、頭が重い感じ
  • 上顎洞(じょうがくどう):頬の痛み、歯の痛み
  • 篩骨洞(しこつどう):眉間や目の奥の痛みや頭が重い感じ
  • 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう):後頭部の痛み、頭が重い感じ

図:副鼻腔の解剖イラスト。前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞、上顎洞の位置を示す。

ただし、炎症部位と痛みの場所は一致しないこともあり、複数の副鼻腔に炎症がある場合は症状が混在することもあります。痛みの部位は手がかりにはなりますが、症状だけで炎症の場所を正確に決めることはできません。

慢性副鼻腔炎は「細菌感染だけ」で説明できる病気ではなく、排泄障害(分泌物がたまる)と粘膜の炎症が長引くことで慢性化します。そのうえで、病状によっては副鼻腔内や鼻腔内で細菌が関与していることもあり、培養検査などで菌が検出されることがあります。

原因菌(臨床分離菌)の全国サーベイランスとして、下記の報告があります(第4回 耳鼻咽喉科領域感染症 臨床分離菌 全国サーベイランス結果報告.日本耳鼻咽喉科感染症研究会会誌 2008; 26: 15-26)。そこで多かった菌の例は次のとおりです。

【慢性副鼻腔炎の原因菌】

  • 黄色ブドウ球菌
  • 肺炎球菌
  • インフルエンザ菌
  • モラキセラ・カタラーリス菌
  • 緑膿菌

これらは「慢性副鼻腔炎の背景で検出されやすい菌」の代表で、単独の場合もあれば複数の菌が関与している場合もあります。ただし、菌が検出された=それだけが原因とは限らず、炎症の程度や病型(鼻茸の有無、好酸球性副鼻腔炎など)によって、原因としての細菌の位置づけが変わります。

バイオフィルムと治りにくさ

黄色ブドウ球菌や緑膿菌などは、菌の周囲にバイオフィルム(抗菌薬が効きにくくなる構造)を作ることがあり、治りにくさに関与すると考えられています。こうした場合は、抗菌薬だけで解決しづらく、鼻洗浄・局所治療・手術などを組み合わせて管理することがあります。

特殊な副鼻腔炎では病原体が変わる

慢性副鼻腔炎には、原因や治療が異なるタイプがあります。代表例は次のとおりです。

  • 副鼻腔真菌症:カビ(真菌)が関与
  • 歯性上顎洞炎:歯が原因(虫歯、歯根の炎症、抜歯後、インプラント関連など)

特に歯性上顎洞炎では、口腔内由来の菌が関与し、その中でも嫌気性菌が問題になることがあります。嫌気性菌は酸素の少ない環境で増えやすい菌で、炎症や分泌物の停滞によって副鼻腔内の環境が悪化すると増殖しやすくなります。

慢性副鼻腔炎そのものが、周囲の人にうつる病気ではありません。家族と一緒に生活したり、通常の接触があったりしても、慢性副鼻腔炎が相手に「うつる」という形にはなりません。

慢性副鼻腔炎は、かぜなどをきっかけに副鼻腔の炎症が長引いた状態で、症状の中心は「分泌物の停滞」と「粘膜の長引く炎症」です。慢性副鼻腔炎だからといって、感染症として周囲に広がるわけではありません。

慢性副鼻腔炎が他人にうつることはないため、慢性副鼻腔炎そのものが原因で周囲の人がかぜになることもありません。

ただし、慢性副鼻腔炎の人が別のかぜ急性上気道炎)にかかっている場合は、そのかぜは一般の感染症と同様に周囲へうつる可能性があります。「慢性副鼻腔炎」と「かぜ」は別のものとして考えると整理しやすくなります。

急性副鼻腔炎は、多くの場合、ウイルス性の上気道炎かぜ)に続いて起こります。この段階では、くしゃみや咳などを介してウイルスが周囲にうつる可能性があります。

急性副鼻腔炎に細菌感染が加わる場合、原因菌として肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス菌などが関与することがあります。これらの菌が飛沫などを介して人から人へ移ることはあり得ますが、移った人が必ず急性副鼻腔炎発症するわけではありません。発症するかどうかは、体調や鼻の状態などの条件によって変わります。

ウイルスや細菌は、空気中の飛沫や手指を介して鼻に入り、鼻の粘膜に感染を起こすことがあります。急性副鼻腔炎は、こうした上気道炎かぜ)に続いて、副鼻腔の粘膜にも炎症が広がって起こることが一般的です。

その後、炎症が長引いたり、同じような炎症を繰り返したりすると、副鼻腔の換気や分泌物の排出がうまくいかない状態が続き、慢性副鼻腔炎へ移行することがあります。

ただし、鼻に入ったウイルスや細菌が必ず感染を起こすわけではありません。発症するかどうかは、体調、鼻粘膜の状態、アレルギーの有無、生活環境などによって変わります。

慢性副鼻腔炎が再発しやすい背景には、いくつかのパターンがあります。代表的な原因は次のとおりです。

  • 治りきっていない状態で治療を中断
  • 歯が原因の慢性副鼻腔炎
  • 特殊な慢性副鼻腔炎

再発を減らすには、「治療が足りていない」のか「そもそも原因が別に残っている」のかを切り分けるのがポイントです。

■治りきっていない状態で治療を中断

慢性副鼻腔炎では、副鼻腔の換気や分泌物の排出が悪くなり、分泌物がたまりやすい状態になっています。治療で症状が軽くなっても、粘膜の腫れや排出障害が十分に改善していない段階で中断すると、分泌物が再び停滞しやすくなり、症状がぶり返すことがあります。

■歯が原因の慢性副鼻腔炎

上の歯(上顎歯)の虫歯や歯根の炎症などが原因で、頬の奥の上顎洞を中心に炎症が続くタイプがあります。この場合、副鼻腔側の治療で一時的に良くなっても、歯の原因が残っていると再発しやすくなります。再発を避けるには、原因となっている歯の評価と治療が重要です。

■特殊な慢性副鼻腔炎

好酸球性副鼻腔炎喘息を併存しやすい)、副鼻腔真菌症、アレルギー性真菌性副鼻腔炎などは、一般的な慢性副鼻腔炎より再発しやすいことがあります。病型によって治療の軸が変わるため、「どんなタイプか」を最初に整理することが再発対策になります。

慢性副鼻腔炎の治療は、症状の強さと病型に合わせて、次の3つを組み合わせます。

  1. 薬物治療
  2. 局所療法
  3. 手術治療

治療の目的は、分泌物がたまりにくい状態を作り、炎症を落ち着かせて、症状と再発を減らすことです。

①薬物治療

よく用いられる薬として、次のようなものがあります。

  • 気道粘液調整薬・粘液溶解薬(例:カルボシステインなど) 
  • 点鼻ステロイド(鼻の炎症を抑える目的)

日本では、特定のタイプ(とくに鼻茸の目立たない慢性副鼻腔炎)で、少量マクロライド療法が選択されることがあります。一般的には、14員環マクロライド(例:クラリスロマイシン)を少量で8〜12週間内服します。

ただし、効果には個人差があり、報告も一様ではありません。下痢などの副作用や、耐性菌の問題もあるため、症状の強さや病型、得られそうなメリットとリスクを踏まえて選択します。抗菌薬は「とりあえず使う薬」ではなく、目的を明確にして使う薬です。

②局所療法

局所療法には、家庭でできる方法と医療機関で行う処置があります。

  • 鼻洗浄(鼻うがい):後鼻漏などの症状軽減に役立つことがある 
  • 鼻水の吸引(耳鼻咽喉科などで行う)
  • 鼻粘膜を収縮させて通り道を確保する処置(自然口の通気改善を目的)
  • ネブライザー療法(施設により実施)

局所療法は「分泌物を減らし、排出を助ける」ことで症状を軽くする位置づけです。投薬と組み合わせると効果が出やすくなります。

③手術治療

薬物療法や局所療法で十分に改善しない場合、手術が選択肢になります。手術は必須ではなく、症状が強く日常生活に支障がある場合などに検討されます。

一方で、副鼻腔真菌症のように、内服だけでの改善が難しく手術が重要になる病態もあります。好酸球性副鼻腔炎など難治性のタイプでも、治療の一部として手術が組み込まれることがあります。

東洋医学の治療で代表的なものは漢方薬による治療です。慢性副鼻腔炎(蓄膿症)で保険適用がある漢方薬は下記です。

  • 葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
  • 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
  • 辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)

漢方薬は細菌の増殖をおさえるより、副鼻腔炎になりやすい体質を改善する目的で使用します。個々の体質(証)によって、効果的な薬は異なります。体質にあわせて使用してみてもいいでしょう。