あーるえすういるすかんせんしょう
RSウイルス感染症
RSウイルスの感染による呼吸器の感染症。2歳までにほぼ全ての子どもが1回は感染する
12人の医師がチェック 136回の改訂 最終更新: 2023.10.23

RSウイルス感染症の基礎知識

POINT RSウイルス感染症とは

RSウイルスによる感染症です。小さい子供の風邪の原因になることが多く、2歳までにほぼ全員がこの感染症を経験します。主な症状は、鼻水・咽頭痛・咳・喘鳴・呼吸困難などです。症状から診断することも可能ですが、RSウイルスの抗原をチェックする簡易検査があり、広く普及しています。また、補助的に血液検査や画像検査を行う場合もあります。治療には特効薬がありませんが、症状を和らげる治療(対症療法)を行うことができます。特に息苦しさが出ている場合には、吸入薬や去痰薬を用いて呼吸を楽にしてあげることが大切です。RSウイルス感染症が心配な人や治療したい人は、小児科を受診して下さい。

RSウイルス感染症について

  • RSウイルスの感染による呼吸器の感染症
    • かぜ急性中耳炎細気管支炎肺炎などを起こすが、細気管支炎が主な病態
    • 生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の乳幼児がRSウイルスに少なくとも1度は感染するとされている
    • 何度でも感染するが、2回目以降は症状が軽くなる
  • 以下のように感染する
    • 飛沫感染
      • RSウイルス感染者が話したり、咳やくしゃみをした際に飛んだ細かい唾液を介して感染する
    • 接触感染
      • ウイルスが付着したものに触れた手からウイルスが口や眼などの粘膜に入ることで感染する
      • ドアノブ、パソコンのキーボード、スイッチなど日常生活で触れる様々なところが感染源となる
  • RSウイルスに感染してから約5日の潜伏期間を経て発症する
  • 年長児や成人では軽いかぜで終わることが多いが、生後数週から数ヶ月の新生児・乳児、免疫不全や基礎疾患がある場合、施設入所中の高齢者などでは重症化しやすい
    • 60歳以上の成人では予防接種が可能(アレックスビー®)
  • 通常11月-翌年1月にかけて流行する  ※近年は8,9月頃からみられ、季節性がなくなりつつある
  • RSウイルス感染症に細菌感染(特に肺炎)が合併するか否かについて結論はでていない
    • 特に重症例では細菌感染の合併が示唆されている

RSウイルス感染症の症状

  • 軽症の場合
    • 鼻みず
    • のどの痛み
    • くしゃみ
    • 微熱  などの症状が数日続く
  • 重症の場合の症状
    • 強い咳
    • 喘鳴(呼吸をするとゼーゼー・ヒューヒューと聞こえる)
    • 多呼吸
    • 肋骨の下や鎖骨の間がへこむような呼吸、体全体を使った「肩で息をする」ような呼吸
    • 鼻がひくひくするような呼吸(特に乳児)
    • うーうーとうなるような呼吸(特に乳児)
  • 重篤な合併症として注意すべきもの
    • 無呼吸発作(特に乳児)
      • 最初の症状が無呼吸発作のこともある
    • 脳症

RSウイルス感染症の検査・診断

  • 症状や流行状況から診断する
    • 特効薬があるわけではないので、軽症であれば診断を確定させることなく、通常のかぜと同様の対応を(RSウイルス感染症の可能性を念頭に置きながら)行う
    • 入院中の患者や乳児など、特定の場合にのみ抗原検出診断キットを用いた検査が行なわれることがある
      • 鼻の奥に細い綿棒を入れてぬぐう
      • 抗原検出キットでおよそ80-90%が診断できる
  • 細気管支炎肺炎の可能性がある場合には胸部X線レントゲン)写真を撮影する
  • 脱水などの評価のために血液検査をすることもある

RSウイルス感染症の治療法

  • 特別な治療はなく、対症療法(症状を和らげる治療)が中心
  • 高張食塩水の吸入は効果があると言われている
  • それ以外の治療の効果については諸説あるが、症状にあわせて使い分ける
    • β刺激薬やアドレナリン吸入
    • 痰をきる飲み薬(去痰薬)
    • 鼻吸引
  • 入院が必要な場合には適宜輸液をして水分を補う
    • 呼吸障害の程度が強い場合には口から飲んだり食べたりすることを控えることもある
    • 乳児であれば、鼻から細い管を入れてミルクや母乳を直接胃内へ入れる方法もある
  • 呼吸障害が強い場合には呼吸の補助をする
    • 体の中の酸素の値(SpO2)が下がっている場合には酸素投与をする
    • 呼吸が十分にできていない場合には人工呼吸が必要になることもある
      • 経鼻的陽圧換気:鼻(と口)にマスクを当てて圧をかける
      • 挿管人工呼吸管理:口に管を入れて機械で呼吸を手助けする
  • 感染の予防につとめる
    • 手洗い
    • 咳エチケット(咳が出る時にはマスクをして周りの人に移さないように心がける)
    • 成人や年長児ではかぜで終わることが多く、RSウイルス感染症と気づかないこともある:新生児・乳児はかぜをひいている人にはできるだけ近づけない/人混みを避ける
  • RSウイルスワクチン開発への取り組みは行われているが、まだ利用できるものはない
  • RSウイルス感染が命に関わるような特定の乳幼児についてのみ、抗体製剤(パリビズマブ:商品名シナジス)の使用が保険で認められている
  • RSウイルス感染による細気管支炎を起こした子どもでは、将来的に喘鳴を繰り返したり、気管支喘息発症する確率が高くなる
    • 因果関係は明らかではなく、将来的な気管支喘息の予防なども現時点では困難

RSウイルス感染症の経過と病院探しのポイント

RSウイルス感染症が心配な方

RSウイルス感染症では発熱や鼻汁、咳など、風邪を含めた他の病気でもよく見られる症状が出現します。しかし重症化すると呼吸がゼエゼエ、ヒューヒューと苦しそうになり、呼吸が上手くできない危ない状態になります。また原因はよくわかっていませんが、稀に無呼吸の発作を起こすことが知られていて、そのような状態になると非常に危険です。

お子さんがRSウイルス感染症ないかと心配になった時、受診の候補としては小児科のクリニックや病院が適しています。

RSウイルス感染症の診断は問診と診察で行われます。小児科医の役割として大切なのは、入院治療が必要な重症のRSウイルス感染症の子供を見分けることです。免疫不全など重症化の危険性が高い子供や、元々入院中で周りにうつると良くないなど限られた状況でのみ、抗原検出診断キットが用いられます。

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RSウイルス感染症でお困りの方

RSウイルス感染症の治療はそれぞれの症状に対する対症療法が中心となります。重症化しなければ、一般的な風邪と同じように自宅で様子を見れば自然に治ります。

感染が拡大しないように予防することが大切なので、手洗いやマスクをしましょう。

呼吸がゼエゼエ、ヒューヒューと苦しそうな場合、入院治療が必要となりますので、かかりつけのクリニックに入院できる病院の小児科を紹介してもらいましょう。また無呼吸の症状が見られた場合も、入院治療が必要となります。

RSウイルスに対する抗体もありますが、有効性ははっきりと示されていません。早産、ダウン症候群、免疫不全、先天性心疾患など、重症化しやすい特定の乳幼児に関してのみ、抗体製剤の使用が保険で認められています。

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