ていかりうむけっしょう
低カリウム血症
血液中のカリウム濃度が何らかの原因により低下した状態
10人の医師がチェック 95回の改訂 最終更新: 2019.01.09

低カリウム血症とは?症状、原因、検査、治療など

低カリウム血症は血液のカリウム濃度が低くなり、筋力低下、動悸などが起こる病気です。持続すると突然死の原因になることもあります。原因を調べるため問診、血液検査などを行います。治療はカリウムの補充などを行います。

1. 低カリウム血症とはどんな病気か?

低カリウム血症は血液中のカリウム濃度が低い状態です。血液中のカリウムが薄い状態とも言いかえることができます。血液中のカリウム濃度が低いことにより、身体に力が入りにくくなったり、動悸の原因になります。

カリウムとは?

カリウムは筋肉を動かす時などに身体の中で使われる物質です。そのため、私達の身体が正常に機能するために、カリウムは必要なものであると言えます。低カリウム血症になると、カリウムを使うことができなくなりさまざまな体調不良を自覚します。

低カリウム血症の定義:カリウムの基準値など

血液中のカリウム濃度はmEq/L(メック・パー・リットル)という単位で表します。血液検査ではカリウムを意味する「K」と書かれている欄に数値が記載されていることが多いです。カリウムの正常値は検査のキットなどにもよりますが、通常3.5から5.0mEq/Lです。血液中のカリウム濃度が3.5mEq/L未満の時を低カリウム血症と言います。低カリウム血症は血液検査で診断がつけることができます。

2. 低カリウム血症の症状

カリウムは筋肉が正常に働くために重要な物質です。私たちの身体は筋肉を使って、例えば以下のようなことをしています。

  • 骨に付着した筋肉(骨格筋)を使って手足を動かす
  • 腸の筋肉(平滑筋)を使って食べ物を腸の中で進めていく
  • 心臓の筋肉(心筋)を使って全身に血液を送リ出す

カリウムが不足するとこれらの筋肉が正常に動かせなくなります。例えば、骨格筋が動かせなくなると力の入りにくさの原因になり、ひどい場合には筋肉が壊れてしまいます。平滑筋が動かなくなると、腸の中で食べ物やガスなどの内容物がたまります。また、低カリウム血症により心筋が正常に動かなくなると、不整脈を起こします。これらは以下のような症状として現れます。

  • 力が入りにくくなる
  • 筋肉に痛みを覚える
  • 腸の動きが悪くなる、お腹が強く張る
  • 心臓がばくばくする(動悸がする)
  • 意識を失う

強い筋肉の痛みがある、動悸が続く、意識を失うなどの症状がある場合には、特に重症な低カリウム血症が疑われます。このような症状があれば原因がわからなくてもすぐに医療機関を受診するようにしてください。低カリウム血症の症状について「症状の章」で詳しく説明しています。

3. 低カリウム血症の原因

食べたものに含まれるカリウムは体内に取り込まれます。一方で身体の中にある余分なカリウムは尿などを通じて体外に排出され、身体の中のカリウムの量は一定になるよう調整されています。しかし、偏った食事などで体内に取り込まれるカリウムの量が少なかったり、嘔吐や下痢などで体外に排泄されるカリウムの量が多かったりすると身体の中のカリウムの量が不足し、低カリウム血症が起こります。

また、身体の中で出ているホルモンの異常や薬の副作用が原因で低カリウム血症が起こることがあります。これらに対してはホルモンを正常にする、薬を中止するといったように、治療が異なるため、カリウムの摂取不足やカリウムの喪失とは分けて考えます。まとめると低カリウム血症の原因は以下のように分類されます。

低カリウム血症が見つかった場合、こうしたもののうちどれが原因になっているかを突き止めることで、原因に対応した治療につなげることができます。それぞれの原因について詳しくは「原因の章」で説明していきます。ここでは簡単に説明します。

カリウムの摂取不足

ダイエットやアルコールの依存症などにより極端に偏った食事をした場合、カリウムの摂取不足が起こる可能性があります。カリウムは多くの食品に含まれているので、常識的な食事内容に戻すことで十分なカリウムが摂取でき、低カリウム血症の改善が見込めます。

カリウムの喪失

カリウムの喪失の原因には嘔吐・下痢などがあります。胃液や腸液などの消化液はカリウムを含んでいるため、急性胃腸炎などの病気で嘔吐や下痢を起こし大量の消化液が出ていくと、失われるカリウムの量が増え、低カリウム血症の原因になります。もし、嘔吐・下痢を繰り返している状況で全身の力の入りにくさなどがある場合は、低カリウム血症を起こしている可能性があるので、病院で調べてもらうことをお勧めします。

ホルモンの異常

カリウムは身体の中のさまざまなホルモンにより調整されています。ホルモンの中にはカリウムの濃度を下げるものもあります。カリウムの濃度を下げるホルモンが大量に作られると低カリウム血症が起こることがあります。具体的にカリウムの濃度を下げるホルモンが大量に作られる病気には以下のものがあります。

そのため、低カリウム血症がある場合はこれらの病気が隠れていないか血液検査で調べることがあります。どの病気も聞き慣れないかもしれませんが、それぞれの病気については「原因の章」で詳しく説明します。

薬の影響

低カリウム血症は薬の副作用としてあらわれることがあります。薬が原因の低カリウム血症では薬を中止することで改善が見込めます。ただし、もともとの病気の関係で薬を中止できないことも多いので、薬の中止は自分で判断せず、担当の医師と相談するようにしてください。低カリウム血症を起こすことがある薬の例を以下に挙げます。

  • 利尿薬
  • 抗菌薬・抗真菌薬
  • 不整脈
  • インスリン製剤
  • 漢方薬

それぞれどのような薬で、どんな場合に注意するべきかについては「原因の章」で詳しく説明します。

4. 低カリウム血症の検査

低カリウム血症が疑われる場合は問診、身体診察、血液検査、尿検査、心電図検査などを行い状態を把握していきます。これらの検査は低カリウム血症の原因や重症度の把握だけでなく、治療方針の決定にも役立てられます。詳しくは「検査の章」で説明していきます。ここでは簡単に説明します。

問診

問診とは医師などの質問に答える形で身体の状態や生活背景につき確認することをいいます。低カリウム血症が疑われる場合には、以下のポイントにつき確認していきます。

  • 何か症状があるか
  • 最近の生活状況について変化があったか
  • 最近の食事量は十分であったか
  • 飲んでいる薬は何かあるか
  • 日頃どれくらいお酒を飲むか
  • もともと持病があるか
  • 家族で何か病気を持っている人はいるか
  • アレルギーがあるか
  • 妊娠はしているか

これらの問診事項は低カリウム血症の原因を特定する際や治療法を決める上で大事な質問事項です。わかる範囲で構いませんので、診察時に説明するようにしてください。

身体診察

身体診察は病気の状況や原因を特定するために身体の状況を客観的に評価することをいいます。問診の次には身体診察を通して、低カリウム血症やその他の病気の可能性を吟味し、行うべき検査内容を決めていきます。具体的には低カリウム血症の重症度を見極めるために脈拍・血圧・呼吸・体温・意識の状態などのチェックや心音・呼吸音の聴診などが行われます。

血液検査

血液検査も低カリウム血症の状態や原因を調べる上で重要です。低カリウム血症の診断は最終的には血液中のカリウムの濃度を測定する必要がありますし、低カリウム血症の原因に関しても血液検査をしないとわからないものもあります。詳しくは「検査の章」で説明しています。

尿検査

尿検査も重要な検査です。具体的には尿中カリウム検査や尿中コルチゾール・尿中アルドステロン検査などがあります。尿中カリウム検査は尿の中のカリウムの量を測る検査です。尿の中のカリウムの量を調べることで、利尿剤などにより尿からカリウムが失われることが低カリウム血症の原因になっているかを判断することができます。また尿中コルチゾール・尿中アルドステロン検査はホルモンの異常が低カリウム血症の原因になっているかの判断に役立ちます。詳しくは「検査の章」で説明しています。

心電図検査

低カリウム血症では不整脈が起こることがありますが、心電図検査を行うことで、不整脈を見つけることができます。低カリウム血症で動悸などの症状がある場合は必ず心電図検査が行われます。動悸の症状がない場合でも何らかの理由で不整脈を起こす危険性が高いと判断された場合には心電図検査を行います。

低カリウム血症で不整脈が持続すると全身に血液が送れなくなる危険性があります。心臓は一定のリズムで収縮することで全身に血液を送っていますが、不整脈があると、このリズムが乱れてしまうためです。不整脈が続くと命に関わる可能性もありますので、低カリウム血症の不整脈は早急に治療が必要です。心電図検査について詳しくは「検査の章」で説明しています。

5. 低カリウム血症の治療

低カリウム血症は原因に応じて治療法が決められます。具体的には「低カリウム血症の原因」で紹介した分類を参考に、治療法を分けて考えていきます。

それぞれの分類ごとの治療を以下で簡単に説明していきます。詳しくは「治療の章」で説明しています。

カリウムの摂取不足が原因の場合の治療法

カリウムの摂取不足が原因で低カリウム血症が起きている場合には、食事の改善や経口カリウム製剤によるカリウムの補充を行います。

カリウムはいろいろな食品に含まれているので、常識的な範囲の食事内容であれば、毎日の食事の中で十分量のカリウムを摂取できます。しかしながら、ダイエットで極端に偏った食事をした場合や、アルコールの依存症などがある場合には、食事から十分なカリウム摂取ができずに低カリウム血症を起こすこともあります。このような場合には、極端な食事制限をやめる、禁酒するといったことで、十分量のカリウムが摂取されるようになり、低カリウム血症の改善が見込めます。

また、食事のみで十分にカリウムを補うことが見込めない場合には、薬の形でカリウムを飲みます。これを経口カリウム製剤と呼びます。経口カリウム製剤は大量に内服すると逆に高カリウム血症を起こすことがあるため、少なめの量から慎重に増量していきます。

カリウムの喪失が原因の場合の治療法

カリウムが失われる状況の代表的なものに、嘔吐や下痢によってカリウムを含む消化液が出て行くことがあります。この場合、口から水分摂取が可能な場合には、カリウムが含まれているスポーツドリンクなどを摂取することで、カリウムを補うことができ、低カリウム血症になりにくくすることができます。

低カリウム血症が重症の場合にはカリウム製剤を使ったカリウムの補充を行います。この場合、経口カリウム製剤を使うこともありますが、腸から十分吸収されないことも多いので、必要に応じて点滴カリウム製剤を使います。

ホルモンの異常が原因の場合の治療法

身体の中のカリウムは様々なホルモンによってコントロールされています。低カリウム血症を起こすホルモンの異常の病気にはいくつかあります。血液中のカリウム濃度を下げる作用のあるホルモンが過剰に産生されると低カリウム血症が起こります。治療は過剰に産生されたホルモン量を正常化することを目指します。ホルモンを正常化するには、ホルモンを産生している臓器を手術で取り除いたり、薬物を用いたりしますが、どのような治療法を行うかは個々の病気によっても異なります。詳しくは「治療の章」で説明しています。

薬剤が原因の場合の治療法

低カリウム血症で薬剤が原因の場合は薬を中止することで低カリウム血症が改善します。ただし、もともとの病気の関係上、薬を中止できない場合も多く、カリウム製剤を内服・点滴し、カリウムを正常値に保ちながら薬の継続をすることもあります。そのため、対応については担当の医師との相談が必要となります。

6. 低カリウム血症の注意点

低カリウム血症を経験したことがある人は低カリウム血症を起こしやすい原因があることが多いです。例えば、低カリウム血症を起こしやすい持病があったり、低カリウム血症を起こす薬を飲んでいたりします。そのため、過去に低カリウム血症の経験がある人は、低カリウム血症の再発を予防するための注意が大切です。具体的には以下の2点があります。

  • 偏った食事を避ける
  • 以前と同じ症状が出たら病院を受診する

他にも低カリウム血症を起こしやすい状況の例と、それぞれに対する注意について「注意点の章」で説明しています。ここでは上記2点について説明します。

偏った食事を避ける

過去に起こした低カリウム血症の原因がどのようなものであったとしても、偏った食事によるカリウム摂取の不足は低カリウム血症を再度起こす原因になります。そのため、過去に低カリウム血症を起こした人は偏った食事をしないように注意する必要があります。

常識的な範囲の食事内容であれば、カリウムの摂取不足になることはほとんどありません。しかし、ダイエットで極端に偏った食事をすることや、アルコールの依存症などによって、食事から十分なカリウム摂取ができずに低カリウム血症を起こすこともあります。

以前と同じ症状が出たら病院を受診する

過去に低カリウム血症の経験がある人が再度同じ症状を自覚した時は、低カリウム血症が原因の可能性があります。病院を受診して、低カリウム血症を起こしていないか調べてもらうようにしてください。