ていかりうむけっしょう
低カリウム血症
血液中のカリウム濃度が何らかの原因により低下した状態
10人の医師がチェック 95回の改訂 最終更新: 2019.01.09

低カリウム血症の検査:血液検査、心電図など

低カリウム血症では問診、身体診察、血液検査、尿検査、心電図検査などを行い状態を把握していきます。これらの検査を低カリウム血症の原因の特定や治療方針の決定に役立てられます。

1. 問診

問診とは医師などの質問に答える形で身体の状態や生活背景につき確認することをいいます。低カリウム血症が疑われる場合、以下のポイントにつき確認していきます。

  • 何か症状があるか
  • 最近の生活状況について変化があったか
  • 最近の食事量は十分であったか
  • 飲んでいる薬は何かあるか
  • 日頃どれくらいお酒を飲むか
  • もともと持病があるか
  • 家族で何か病気を持っている人はいるか
  • アレルギーがあるか
  • 妊娠はしているか

これらの問診を通して生活背景を確認することは低カリウム血症の原因を特定するためにも役立ちます。生活背景の中に低カリウム血症の原因がある可能性があるためです。また妊娠している場合や、薬に対してアレルギーがある場合には治療薬の選択が限られることがあります。そのため、これらの問診内容は治療法を決める上でも大事な質問事項になります。わかる範囲で構いませんので、診察時に説明するようにしてください。

2. 身体診察

身体診察は病気の状況や原因を特定するために身体の状況を客観的に評価することをいいます。問診の次には身体診察を通して、低カリウム血症やその他の病気の可能性を吟味し、行うべき検査内容を決めていきます。例としては以下の診察が行われます。

  • バイタルサインのチェック
  • 心音や呼吸音の聴診

想定される低カリウム血症の原因に応じて、ここで述べていない診察が行われることもあります。ここでは上記二つについて詳しく説明していきます。

バイタルサインのチェック

医療現場では「バイタルサイン」という言葉がしばしば聞かれます。日本語に直訳すると「生命徴候」のことで、脈拍・血圧・呼吸・体温・意識の状態などを指します。バイタルサインを確認することで身体の状態を把握することができます。例えば、意識がはっきりしない状態や、血圧が測定できない状態というのは非常に危険な状態です。このようにバイタルサインは低カリウム血症の重症度を把握する上で重要です。

心音や呼吸音の聴診

聴診器を使って心臓や呼吸の音を確認することを聴診といいます。聴診することにより心臓や呼吸の状態を把握することができます。

3. 血液検査

血液検査も低カリウム血症の状態や原因を調べる上で重要です。まず、低カリウム血症の診断は血液中のカリウムの値によってなされるため、診断のためには血液検査が必要です。さらに血液検査によって原因を推定することもできます。ここでは低カリウム血症の原因や治療を考える上で重要な以下の項目につき説明していきます。

  • カリウム
  • マグネシウム
  • 血液ガス
  • 甲状腺ホルモン
  • コルチゾール
  • アルドステロン

実際の診察では想定される低カリウム血症の原因に応じて、ここで述べていない血液検査が行われることもあります。上で挙げたそれぞれの項目について、以下で詳しく説明していきます。

カリウム

低カリウム血症の診断は血液中のカリウムの値によって行われます。単位はmEq/L(メックパーリットル)です。検査値はカリウムを意味する「K」と書かれているところに記載されていることが多いです。カリウムの正常値は検査のキットなどにもよりますが、通常3.5から5.0mEq/Lであり、3.5mEq/L未満の時に低カリウム血症と呼びます。低カリウム血症の症状については「症状の章」で説明しています。

マグネシウム

マグネシウムの値が低いこと(低マグネシウム血症)が低カリウム血症と一緒に見つかることがあります。マグネシウムも身体にとって大切な物質なので低マグネシウム血症は見逃せません。

マグネシウムも血液検査で調べることができます。検査値はマグネシウムを意味する「Mg」と書かれているところに記載されていることが多いです。単位はmg/dLを使います。マグネシウムの正常値は検査のキットなどにもよりますが1.8から2.4mg/dLで、1.8mg/dLを下回る時に低マグネシウム血症と判断されます。

また、低マグネシウム血症を伴う低カリウム血症では、低マグネシウム血症を改善しないと、カリウムを補充しても低カリウム血症はよくならないことがわかっています。そのため、低マグネシウム血症がある場合には、まずマグネシウムの補充を行わなければなりません。

血液ガス

血液中には酸素や二酸化炭素などの空気中の物質(ガス)が溶けています。血液ガス分析は血液中に溶けている酸素や二酸化炭素の濃度を調べる検査です。血液ガス分析ではさらに、血液が酸性かアルカリ性かも調べることができます。酸性・アルカリ性がなぜ関係するのかというと、二酸化炭素は酸性のもとになる物質で、血液は二酸化炭素の量によって酸性にもアルカリ性にもなるからです。

血液ガス分析は低カリウム血症の原因を調べるために行うことがあります。血液をアルカリ性にするような要素がある状態(専門的にはアルカローシスと呼びます)では、低カリウム血症を起こしやすいためです。アルカローシスの原因はいくつかありますが、代表的には利尿剤の内服や、過換気などが挙げられます。アルカローシスが見つかった場合には、その原因に応じた対応を行います。

甲状腺ホルモン

低カリウム血症の原因の一つに甲状腺機能亢進症があります。甲状腺機能亢進症を調べるためには甲状腺ホルモンの量を検査する必要があります。甲状腺ホルモンは血液検査の項目で言うとfT3(free T3、フリーT3)、fT4(free T4、フリーT4)があります。甲状腺機能亢進症ではfT3やfT4の値が基準値より高くなります。

また、甲状腺機能亢進症の原因を考える上でTSH(甲状腺刺激ホルモン)も重要です。TSHは脳から甲状腺へ甲状腺ホルモンを作るよう指令を伝える物質です。脳からTSHが出ると甲状腺がTSHを受け取って、甲状腺ホルモンをたくさん作るようになります。甲状腺機能亢進症の原因には、TSHをたくさん作るTSH産生下垂体腺腫と、甲状腺自体に問題があるバセドウ病などがあります。そのため、TSHを計測することで甲状腺機能亢進症の原因を探るのに役立てることができます。

コルチゾール

低カリウム血症の原因の一つに副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される病気があります。これは副腎皮質ホルモンには血液中のカリウム濃度を下げる作用があるためです。副腎皮質ホルモンが過剰になって症状が出ている状態を、総称でクッシング症候群と言います。コルチゾールは副腎皮質ホルモンの一つであり、クッシング症候群ではコルチゾールの値が高くなります。そこでコルチゾールの値を調べることで、クッシング症候群の可能性があるかを調べることができます。

また、クッシング症候群が疑われる場合には、コルチゾールを作る指令を出すホルモンである副腎皮質刺激ホルモンACTHとも呼ばれます)の過剰分泌が原因でないかを見極めるために、副腎皮質刺激ホルモンの値も測ります。さらに副腎皮質ホルモンを減らすような物質を身体に投与して、副腎皮質ホルモンの値の変化を見ることもあります。

クッシング症候群については「原因の章」でも詳しく説明しています。

アルドステロン

アルドステロンも血液中のカリウム濃度を低下させるホルモンの一つです。低カリウム血症を起こす病気の一つの原発性アルドステロン症は、アルドステロンが大量に作られる病気です。そのため、血液中のアルドステロンの量を測定することで、原発性アルドステロン症の可能性を調べることができます。他にも、原発性アルドステロン症の診断を正確にするために、アルドステロンを作らせるホルモンであるレニンの量を調べたり、特定の薬の注射した状態でのアルドステロンの値を計測することもあります。

原発性アルドステロン症については「原因の章」でも詳しく説明しています。

4. 尿検査

尿検査も低カリウム血症の原因を調べる上で重要な検査です。ここではよく使われる以下の項目について説明していきます。

  • 尿中カリウム
  • 尿中コルチゾール・尿中アルドステロン

それぞれの検査でわかることなどについて以下で詳しく説明していきます。

尿中カリウム

尿中カリウム検査は尿中のカリウムの量を測る検査です。

尿中カリウム検査は低カリウム血症の原因を調べるのに役立ちます。例えば、カリウム摂取不足が原因で低カリウム血症が起きている場合には、身体の中のカリウムが少ないため、尿中に出ていくカリウムの量も少なくなります。

一方で、利尿剤は身体の中のカリウムが少なくても尿と一緒にカリウムを多く排泄させてしまうことがあります。このため利尿剤が原因の低カリウム血症が起こります。この場合は尿中のカリウムの量は多くなっています。

このように尿中カリウム検査をすることで低カリウム血症の原因予測に役立てることができます。

尿中コルチゾール・尿中アルドステロン

低カリウム血症はクッシング症候群原発性アルドステロン症などホルモンが過剰に作られる病気で起こることがあります。クッシング症候群原発性アルドステロン症を調べる血液検査にはコルチゾール測定やアルドステロン測定がありますが、血液ではなく尿中のコルチゾールやアルドステロンを測定して診断に役立てることもあります。

尿中コルチゾール・アルドステロン検査は1日ためた尿で行うことが多いです。これは、コルチゾールやアルドステロンの分泌量はストレスなどで簡単に変動するため、血液検査では計測するタイミングに気をつける必要があるのに対し、1日ためた尿の場合は1日に分泌されたコルチゾールやアルドステロンの総量を反映するため、計測するタイミングの影響が小さいと考えられるためです。

5. 心電図検査

低カリウム血症では不整脈がないか確認するため、心電図検査が行われることがあります。

心電図検査は心臓が動くために発する電気信号を調べる検査です。電気信号は機械の画面上や紙の上に折れ線の心電図として表されます。不整脈があれば異常な電気信号として見つけられます。

低カリウム血症で動悸などの症状がある場合は必ず心電図検査が行われます。動悸の症状がない場合でも不整脈を起こす危険性が高いと判断された場合には心電図検査を行います。

低カリウム血症で不整脈が持続すると全身に血液が送れなくなる危険性があります。心臓は一定のリズムで収縮することで全身に血液を送っていますが、不整脈があるとこのリズムが乱れてしまうためです。不整脈が続くと命に関わる可能性もありますので、低カリウム血症で不整脈が続いている場合は早急に治療を行う必要があります。そのため、心電図検査によって不整脈を早く見つけることが大切です。

低カリウム血症で起きる不整脈には種類がいくつかあり、種類によって治療も違います。そのため不整脈の種類を見分けられるよう、検査を使い分けます。

低カリウム血症で行われる心電図検査にはモニター心電図検査というタイプと12誘導心電図検査というタイプがあります。

モニター心電図検査は胸3カ所に測定器を装着することで心臓の電気信号を拾うものです。モニター心電図検査の測定器は1日中身体に貼ったままにしますが、その状態でも普通に身動きして生活することができます。そのため、1日の中で不整脈が起きているか、起きていないかということを判断するためには便利です。一方で、モニター心電図検査では測定器の数が少ないため、詳細な情報を得ることはできません。不整脈の種類を見分けるには12誘導心電図検査でわかる詳細な情報が必要です。

12誘導心電図検査は胸6カ所と手足に1か所ずつ合計10か所に測定器を装着する心電図検査です。測定器の数が多いのでモニター心電図検査より詳細な情報を得ることができます。ただし、測定器の数が多い分、24時間装着するには向いていません。そのため、モニター心電図検査により「不整脈が起きているか起きていないか」を調べ、不整脈が見つかったタイミングで12誘導心電図検査を使って「不整脈の詳細な情報を得る」という方法が取られることが多いです。