ていかりうむけっしょう
低カリウム血症
血液中のカリウム濃度が何らかの原因により低下した状態
10人の医師がチェック 95回の改訂 最終更新: 2019.01.09

低カリウム血症の治療:カリウム製剤など

低カリウム血症の治療は、偏った食事や嘔吐・下痢、ホルモンの病気などが原因としてある場合、根本原因の改善に努めます。また、足りなくなったカリウムを補充するために経口・点滴カリウム製剤を使用します。

1. 低カリウム血症の治療の考え方

低カリウム血症は血液中のカリウム濃度が低い状態です。低カリウム血症の治療はカリウム濃度を正常範囲にまで上げることが目的ですが、その方法は低カリウム血症の原因によって違います。そのため治療のためにはまず原因を見分ける必要があります。

低カリウム血症は偏った食事により体内に取り込まれるカリウムの量が少なかったり、嘔吐や下痢によって体外に排泄されるカリウムの量が多かったりすると起こります。また、他にもホルモンや一部の薬がカリウム濃度に影響を与えることがあり、ホルモンの異常や薬の副作用も原因として考えられます。

ここでは低カリウム血症の原因を以下のように分類し、それぞれの治療につき説明していきます。

このように分類することで、低カリウム血症の原因に応じて治療法を整理して考えることができます。以下で詳しく説明していきます。

2. カリウムの摂取不足が原因の場合の治療法

カリウムの摂取不足が原因で低カリウム血症が起きている場合には、食事の改善や経口カリウム製剤によるカリウムの補充を行います。以下で詳しく説明していきます。

食事の改善

カリウムはいろいろな食品に含まれているので、常識的な範囲の食事内容であれば、毎日の食事の中で十分量のカリウムを摂取できます。しかしながら、ダイエットで極端に偏った食事をした場合や、アルコールの依存症など食事から十分なカリウム摂取ができない場合に低カリウム血症を起こすこともあります。このような場合には、極端な食事制限をやめる、禁酒するといったことで、十分量のカリウムが摂取されるようになり、低カリウム血症の改善が見込めます。

カリウムの補充:経口カリウム製剤

食事のみで十分にカリウムを補うことが見込めない場合には、薬の形でカリウムを飲みます。これを経口カリウム製剤と呼び、具体的には以下のような薬があります。

  • アスパラギン酸カリウム錠(商品名:アスパラ®カリウム錠など)
  • 塩化カリウム錠(商品名:スローケー錠®など)

経口カリウム製剤は錠剤のほか散剤(粉薬)もあり、飲みやすさなどを加味して選択されます。経口カリウム製剤は大量に内服すると逆に高カリウム血症を起こすことがあるため、少なめの量から慎重に増量していきます。その他にも注意すべき副作用として嘔吐、吐き気、腹部不快感、下痢などの胃腸障害や、蕁麻疹じんましん)、発疹、かゆみなどのアレルギー反応などがあります。

3. カリウムの喪失が原因の場合の治療法

カリウムが失われる状況の代表的なものに、嘔吐や下痢があります。消化液にはカリウムが多く含まれているので、嘔吐や下痢が続くことで大量のカリウムが失われてしまいます。嘔吐や下痢が続く場合には、カリウムの入ったスポーツドリンクを飲むことで低カリウム血症の悪化を防ぐことができます。以下で詳しく説明していきます。

嘔吐、下痢への対応

急性胃腸炎などが原因で嘔吐や下痢が続いている時には、消化液とともにカリウムを失っていくことになるため、低カリウム血症を起こすことがあります。そのため、口から水分摂取が可能な場合には、カリウムが含まれているスポーツドリンクなどを摂取することで、カリウムを補うことができ、低カリウム血症になりにくくすることができます。ただしスポーツドリンクなどの水分を摂取する場合は、一度にたくさん飲むと嘔吐や下痢が悪くなることがあるので、少しずつ摂取することが望ましいです。

低カリウム血症が重症の場合などにはカリウム製剤を使ったカリウムの補充を行います。

カリウムの補充:点滴カリウム製剤

嘔吐や下痢による低カリウム血症で重症の場合ではカリウム製剤を使ってカリウム補充を行います。この際、経口カリウム製剤を使うこともありますが、腸から十分吸収されないことも多いので、必要に応じて点滴カリウム製剤を使います。点滴カリウム製剤には以下のものがあります。

  • アスパラギン酸カリウム注射液(商品名:アスパラ®カリウム注など)
  • 塩化カリウム注射液(商品名:KCL補正液など)

急速に点滴カリウム製剤を投与すると不整脈を誘発する危険性があるため、これらの点滴カリウム製剤は必ず他の点滴で薄めて投与します。その他にも点滴を投与した場所の血管痛や蕁麻疹、発疹、かゆみなどのアレルギー反応などに注意が必要です。

4. ホルモンの異常が原因の場合の治療法

ホルモンの異常により低カリウム血症が起きている場合には、ホルモンの正常化を目指します。ホルモンの異常により低カリウム血症を起こす病気には原発性アルドステロン症クッシング症候群甲状腺機能亢進症などがあります。ここではこの3種類の病気の治療法について説明していきます。

原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症は副腎という臓器でアルドステロンが大量に作られる病気です。原発性アルドステロン症の治療には手術療法と薬物療法があります。副腎は左右2箇所にありますが、アルドステロンを大量に作っている副腎が左右どちらかわかっている場合は、原因となっている副腎を切除する手術療法を行います。両方の副腎がアルドステロンを大量に作っている場合や、左右どちらの副腎が原因かわからない場合には薬物療法が選択されます。薬物療法ではアルドステロン拮抗薬を使います。

■アルドステロン拮抗薬

アルドステロンは副腎で作られるホルモンのひとつでカリウムを身体から排泄させる作用があります。アルドステロン拮抗薬はアルドステロンの作用を抑えることで、原発性アルドステロン症による低カリウム血症を改善します。具体的にはスピロノラクトン(主な商品名:アルダクトン®A)やエプレレノン(商品名:セララ®)などの薬があります。

アルドステロン拮抗薬で注意すべき副作用には高カリウム血症低血圧、めまいや頭痛などの精神神経系症状、吐き気などの消化器症状などがあります。

また女性化乳房や乳房の腫脹などの症状があらわれる場合があり、これはアルドステロン拮抗薬によって血液中の男性ホルモンテストステロン)が減少することなどが要因として考えられています。頻度は少ないとされていますが、胸の周囲に張りがあるなどの症状があらわれた場合には医師や薬剤師に相談するなど適切に対処することが大切です。エプレレノンはスピロノラクトンに比べると男性ホルモンへの影響が少なく女性化乳房の懸念がより少ないとされています。

クッシング症候群

クッシング症候群副腎皮質ホルモンが大量に作られる病気です。副腎皮質ホルモンには身体の中のカリウムを減らす作用があるため、クッシング症候群では低カリウム血症が起こります。

副腎皮質ホルモンの大量産生は副腎自体の問題によることもあれば、副腎以外が原因になっていることもあります。

副腎以外に原因になるものの一つが脳の下垂体(かすいたい)という場所です。下垂体は副腎皮質刺激ホルモンACTH)というホルモンを出して、副腎に副腎皮質ホルモンを作るよう司令し、副腎皮質ホルモンの量を調整しています。したがって下垂体の異常により副腎皮質刺激ホルモンが大量に作られる状況でも副腎からの副腎皮質ホルモンの産生が増してクッシング症候群になります。

また時に、がんが副腎皮質刺激ホルモンを作ることがあり、これもクッシング症候群の原因になります(異所性ACTH産生腫瘍と呼びます)。

クッシング症候群の治療も手術療法と薬物療法があります。手術療法はクッシング症候群の原因となっている場所により方法が異なります。例えば、副腎皮質ホルモンが大量に作られている原因が副腎にある場合には副腎を切除する治療を行います。下垂体で副腎皮質刺激ホルモンが大量に作られることが原因の場合には、下垂体に対する手術を行います。副腎皮質刺激ホルモンをがんが作っている場合にはがんの切除を検討します。

クッシング症候群で何らかの理由があり手術が難しい場合やクッシング症候群の原因となっている場所がわからない場合には、薬物療法を行います。具体的には治療薬の副腎皮質ホルモン合成阻害薬があります。

■副腎皮質ホルモン合成阻害薬

副腎皮質ホルモンの合成を抑えることでクッシング症候群などの治療に使われる薬です。

クッシング症候群ではなんらかの原因によって副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることで低カリウム血症などの様々な症状があらわれます。クッシング症候群では副腎皮質ホルモンを過剰にしている原因の場所を手術することが根本治療になりますが、手術ができない場合では薬物治療も考慮されます。

具体的にはメチラポン(商品名:メトピロン®)、ミトタン(商品名:オペプリム®)、トリロスタン(商品名:デソパン®)などの薬があり、これらの薬は副腎皮質ホルモンの合成を抑えることでクッシング症候群やそれに伴う低カリウム血症の改善効果が期待できます。

メチラポンは副腎皮質ホルモンの合成の過程で必要な物質である11β水酸化酵素を阻害することで効果を発揮します。メチラポンは使用開始後、比較的速やかに効果が期待できる薬剤で、次に述べるミトタンの飲み始めに併用されることもあります。メチラポンの注意すべき副作用にはめまいや頭痛などの精神神経系症状、吐き気や食欲不振などの消化器症状などがあります。

ミトタンは副腎皮質に対して毒性を示すことで副腎皮質ホルモンの合成を阻害します。そのためミトタンはクッシング症候群の他、副腎がんの治療に対しても承認されています。

ミトタンは作用発現が比較的ゆっくりであるため、飲み始めて数週間程度はメチラポンの併用が考慮される場合もあります。ミトタンの注意すべき副作用には食欲不振や吐き気などの消化器症状、めまいや頭痛などの精神神経系症状などがあります。また肝機能障害や脳の機能障害などがあらわれる可能性もあるため、定期的な肝機能などの検査の実施がより大切です。

トリロスタンは副腎皮質ホルモンの合成の過程で必要な物質である3β-hydroxysteroid脱水素酵素を阻害することで効果を発揮します。トリロスタンの作用はメチラポンやミトタンといった薬とは異なる作用であり、比較的副作用の懸念が少ないです。ただし、吐き気などの消化器症状、発疹などの皮膚症状などには注意が必要です。

この他、副腎皮質ホルモンの産生を促すホルモンである副腎皮質刺激ホルモンを抑えることも治療法になります。具体的にはカベルゴリン(主な商品名:カバサール®)やパシレオチド(商品名:シグニフォー®)が使われることも考えられます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症では時に低カリウム血症が起こることがあります。甲状腺機能亢進症が起こる原因はいくつかありますが、代表的な原因にバセドウ病という病気があります。バセドウ病甲状腺を刺激するTRAbやTSAbといった物質が作られる病気です。バセドウ病ではTRAbやTSAbにより持続的な甲状腺への刺激が起こり、甲状腺ホルモンが大量に作られることで、甲状腺機能亢進症による低カリウム血症を起こすこともあります。

バセドウ病の治療は抗甲状腺薬の内服、手術、アイソトープ治療などがあります。抗甲状腺薬と呼ばれる甲状腺が甲状腺ホルモンを作るのを抑える薬です。アイソトープ治療は放射線を使って甲状腺を弱くする治療法です。どの治療法を選ぶかはやや専門的な話になりますが、バセドウ病の状況や妊娠をしているかなど様々なことを踏まえて考えます。抗甲状腺薬の内服、手術、アイソトープ治療のそれぞれのメリット、デメリットに関してはバセドウ病の手術のページ抗甲状腺薬・アイソトープ治療などのページでも詳しく説明しています。ここでは抗甲状腺薬に関して説明します。

■抗甲状腺薬

甲状腺ホルモンには血液中のカリウムを減らす働きがあるため、甲状腺ホルモンが大量に作られる状況は低カリウム血症の原因になります。抗甲状腺薬は甲状腺が甲状腺ホルモンを作るのを抑える作用があり、甲状腺機能亢進症による低カリウム血症に対しても効果があります。

抗甲状腺薬には主にチアマゾール(商品名:メルカゾール®)とプロピルチオウラシル(商品名:チウラジール®、プロパジール®)という2種類の薬があり、症状や体質、妊娠をする予定があるかなどを考慮して使い分けがされています。

チアマゾールは抗甲状腺薬の中でも特に高い効果がある薬です。一方で妊娠中に内服すると薬の成分の一部が赤ちゃんへ移行することがわかっています。そのため、妊娠中にチアマゾールを使用すると、赤ちゃんの甲状腺が十分働かなくなったりすることがあります。また、チアマゾールは母乳に移行することもわかっており、チアマゾールを使用中は授乳を避ける必要があります。

プロピルチオウラシルは、チアマゾールほど効果が高くないものの、妊娠中に内服しても赤ちゃんへの移行は少ないとされているので、妊娠を予定している女性にはプロピルチオウラシルの方が使いやすい薬剤と言えます。授乳はできれば避けたほうがいいのですが、希望するときは処方した医師とも相談ください。

また、チアマゾール、プロピルチオウラシルの大事な副作用としては、無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)があります。無顆粒球症は、顆粒球と呼ばれる細菌を退治する細胞が無くなり、細菌などに対する抵抗力が弱くなってしまう病気です。無顆粒球症はまれにしか現れませんが、危険な副作用なので、もし現れた時には緊急で対応する必要があります。チアマゾールやプロピルチオウラシルを使っているときに発熱や寒気を感じたら、すぐに担当の医師や薬剤師に知らせるようにしてください。

5. 薬剤が影響が原因の場合の治療法

低カリウム血症で薬剤が原因の場合は薬を中止することで改善を見込めます。ただし、もともとの病気の関係上、薬を中止できない場合も多く、カリウム製剤を内服・点滴し、カリウムを正常値に保ちながら薬の継続をすることも多いです。そのため、対応については担当の医師との相談が必要となります。