かふんしょう
花粉症
植物の花粉に対するアレルギー反応。症状として、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの症状が起こる。
12人の医師がチェック 257回の改訂 最終更新: 2025.07.10

花粉症とはどのような病気か:季節・症状・治療とアレルギーとの関係

春になるとスギ花粉症で気が重くなる人もいるかもしれません。日本では全国で約40%の人が花粉症を持っているとされています。花粉症のシーズンを上手に乗り切るために、花粉症のポイントについて説明していきます。

1. 花粉症はどんな病気か

花粉症は花粉に対するアレルギー反応です。花粉を異物と認識して引き起こされたアレルギー反応によってさまざまな症状が起こります。花粉によるアレルギーが起こる部位は主に鼻と目です。また、スギによる花粉症は有名ですが、スギだけではなくさまざまな花粉が原因になります。

日本で最も多い花粉症はスギ花粉が原因です。スギ花粉が風に乗って飛散するため、スギ花粉症が広範囲で起こります。

主な症状は次のとおりです。

【花粉症の主な症状】

  • 鼻の症状
    • サラサラした鼻水
    • 鼻づまり
    • 発作的に起こる止まりにくいくしゃみ
  • 目の症状
    • 違和感
    • 充血
    • かゆみ

その他に、のどのいがらっぽさ、咳、皮膚のかゆみなどの症状が出る人もいます。

花粉の飛ぶ季節に上のような症状がある人は花粉症の可能性があります。困っている人は症状に合わせて耳鼻咽喉科、眼科、内科などを受診してください。どの種類の花粉にアレルギーがあるかについては、血液検査で種類別のアレルギー値(RAST:radioallergosorbent test、CAP:capsulated hydrophilic carrier polymerなど)を測定してもらうと参考になります。

花粉症の治療の基本は花粉の回避です。マスクやメガネを装着したり、衣類を室内干しにしたりなど自分でできる対処法を取り入れて、花粉を避けることが重要です。

それでもつらい症状に対しては症状を抑える薬を使います。花粉症の薬は医療機関で処方してもらえますし、最近では処方薬と同成分が入った市販薬もあります。その他の花粉症の治療としては、レーザー治療や、減感作療法(アレルゲン免疫療法)などがあります。

2. 花粉症の原因となる花粉と飛散時期

花粉が多く飛散する時期に一致して花粉症の症状が出やすくなります。季節によって花粉症の原因になる植物が変わります。花粉が飛散する時期は地域によって異なるので、天気予報の花粉情報にも注目するとよいです。

最も多いスギ花粉症は、東京では2月から4月がピークとなります。ちなみに、沖縄や北海道ではスギがないため、スギ花粉症の心配はほとんどありません。
スギ花粉の飛散が終わりに近づくと、ヒノキ花粉が飛散し始めます。ヒノキもスギと同様に大量の花粉を遠くまで飛ばす性質があるため、ヒノキの花粉症を持つ人も多くいます。

しばしば夏の花粉症の原因になるのはイネ科の植物です。イネ科の植物は、カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリなどが代表です。イネ科の花粉の飛散時期は長く、春から秋(4-10月)にかけて飛散しています。これらの植物は牧草として栽培されることが多く、河川敷などに存在します。イネ科の花粉はスギ・ヒノキと違って、遠くへは飛散しないため、生息地域に近づかないことが花粉を回避する方法として有効です。

秋の花粉症で問題となりやすいのはブタクサです。ブタクサと同じキク科のヨモギや、クワ科のカナムグラ、イラクサ科のイラクサなども秋に花粉が飛散し、花粉症の原因となります。

詳しくは「花粉症の原因」に書いてありますので、見てみてください。

3. 花粉症の症状:くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、咳など

花粉症の主な症状は鼻と目に起こりますが、他にも全身にさまざまな症状を起こします。下記は花粉症の症状を網羅的に記したものです。

    • サラサラした鼻水
    • 突発的に繰り返すくしゃみ
    • 鼻閉感
    • かゆみ
    • かゆみ
    • 異物感
    • 目やに
  • のど
    • かゆみ
    • 痛み
    • 違和感
  • 皮膚

花粉が鼻や目につきアレルギー反応が起こると症状が出ます。鼻づまりで口呼吸になると、のどにも花粉が付着しやすくなり、のどのかゆみなどを生じることがあります。花粉が皮膚につくことで、肌荒れや湿疹を起こすこともあります。

その他にも、花粉症によって次のような症状が出ることがあります。

  • 眠気
  • 頭痛
  • 日中の眠気
  • だるさ

花粉症ではひどい咳が出ることがあります。花粉症の咳はのどのアレルギー(喉頭アレルギー;こうとうあれるぎー)や、鼻水がのどをつたって落ちること(後鼻漏;こうびろう)で起こり、ひどい人では風邪喘息などと見分けづらい程になります。

症状については、「花粉症の症状」のページに詳しく書いてありますので、参考にしてください。

4. 花粉症の治療:花粉を避ける、内服薬、点鼻薬、目薬、舌下免疫療法など

花粉症の治療は、「花粉の回避」と「症状を和らげる薬」の2点が広く行われています。その他に、2014年から行われるようになった舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)は、花粉症を根本から改善できる治療です。

花粉の回避

花粉を避けるには、マスクやメガネなどの予防グッズが有効です。また、居宅内に花粉を持ち込まないように、玄関先で衣服をはらってから家に入るといいです。

症状を和らげる薬

花粉症の薬には抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬があります。これらは医療機関で処方を受けることができます。

医療機関で処方される薬ではなく市販薬(OTC医薬品)で対応する方法もあります。最近では処方薬と同成分の内服薬や目薬も市販されており、それらを上手く利用することで花粉症の症状が出た時にすぐに対応できると考えられます。医療機関に受診する時間がない場合は、花粉症の症状が出たら、まずは薬局の市販薬を飲み始めて、時間がある時に医療機関で処方してもらうという方法も可能です。

症状が強い場合は、医療機関を受診すれば症状に合わせた薬を処方してもらえます。コラム「花粉症の時期到来:受診しますか?市販薬を使いますか?」も参考にしてみてください。

舌下免疫療法

スギ花粉症の人には舌下免疫療法という選択肢があります(2025年1月現在)。これは、少量のアレルゲン(アレルギーを起こす物質。この場合はスギの花粉)を身体に取り込んで徐々に身体に慣らすことで、スギ花粉症を根本的から治すことを狙った治療法です。

以前は皮下注射による方法が主流でしたが、アナフィラキシーショックなどの重い副作用が出ることや、頻繁に通院しなければならないことから、広く普及していませんでした。

舌下免疫療法では舌の下にある粘膜から薬を吸収させる方法です。重い副作用が少なく、1か月に1回程度の通院で治療できるという利点があります。詳しくは、コラム「花粉症は治せるの? 症状がおさまった今こそ始めたい舌下免疫療法の効果と費用とは」を参考にしてみてください。