花粉症の原因②:スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなど
花粉症というと春の印象が強いですが、実は1年中あります。花粉症を引き起こす花粉は約60種類もあると言われています。どの花粉がどの時期に飛ぶのか知っておくと予防や対処がしやすいです。このページでは花粉のシーズンについて説明します。
目次
1. スギ花粉の地域ごとの飛散時期

(『鼻
スギ花粉の飛散は東京では2月から4月がピークになります。スギは北海道や沖縄には少ないため、スギ花粉症は北海道や沖縄ではあまり起こりません。
地域別の主な飛散時期は下記です。
- 北海道:3-5月(飛散量は全体的に少ない)
- 東北:2-6月(2月中旬-4月は飛散量増加)
- 関東:1-5月(2-4月は飛散量増加)
- 東海:1-4月(2月中旬-3月中旬は飛散量増加)
- 関西:1-4月(2-3月は飛散量増加)
- 九州:1-5月(2-3月は飛散量増加)
スギ花粉の主な飛散時期は上にある通りですが、実は秋から少しずつ飛びはじめています。雄花の中で花粉が作られ、10月頃には完成し、少しずつ飛び始めます。この時期のスギの成長度合いと、雄花の量から翌シーズンのスギ花粉の飛散予想がたてられます。秋にスギ花粉飛散量が多いと、翌年の春もスギ花粉の飛散量が多いことが知られています。春が近づき暖かくなると、雄花が開花して、花粉が一斉に飛び始めます。
スギは風に受粉を頼る風媒花(ふうばいか)です。花粉をたくさん作り、風に乗せて花粉を飛ばします。日本ではスギの植林面積が多いことに加えて、スギは多くの花粉を広い地域に飛ばすため、国内では最も多い花粉症の原因です。
2. スギ以外で花粉症の原因となる植物
春が過ぎたのにまだ花粉症の症状が続く人や、秋にも症状が出る人もいるかもしれません。この場合、他の種類の花粉による花粉症の可能性が考えられます。
季節ごとの代表的な花粉は下記です。
【主な季節ごとの飛散する花粉】
- 春:スギ、ヒノキ
- 夏:シラカンバ、カモガヤ(イネ科)
- 秋:ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ
- 冬:スギ
このように花粉症の原因となりうる花粉は1年中飛んでいるので、春以外でも花粉症に悩まされる可能性があります。また、地域によって花粉の飛散時期にズレがあります。この現象は地域によって気温が違うことによって生じます。
スギを除いた代表的な花粉と、それぞれの飛散時期を説明していきます。
3. ヒノキ花粉の地域ごとの飛散時期

(『鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版』をもとに編集部作成)
ヒノキはスギとほぼ同じ時期に飛散しますが、スギよりも少し遅れます。4月上旬から下旬がピークです。飛散距離が長く、広範囲に及ぶため、スギと同様に花粉症の原因となります。
【各地でのヒノキ花粉の飛散時期】
- 北海道:5-6月
- 東北:3-5月(4月に特に飛散量増加)
- 関東:2-6月(3-4月は飛散量増加)
- 東海:3月中旬-4月(4月は飛散量増加)
- 関西:2-4月(4月は飛散量増加)
- 九州:3-5月(3-4月上旬は飛散量増加)
ヒノキの植林面積はスギの約半分です。スギは昭和40年代まで植林が盛んで、昭和50年以降はヒノキの植林が盛んになりました。樹齢25-35年に花粉の生産量がピークとなるため、今後、ヒノキ花粉症の増加が予想されています。
なお、ヒノキ花粉の飛散量は、スギ花粉の飛散量とほぼ同程度とされており、スギ花粉が多く飛散した年は、ヒノキ花粉も多く飛散する傾向にあります。
4. ハンノキ花粉の地域ごとの飛散時期

(『鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版』をもとに編集部作成)
ハンノキの飛散時期は1-5月でスギ・ヒノキの時期と重なりがあります。飛散地域に注目すると、北海道と、本州では北陸地方に多いとされています。
北海道でのハンノキ花粉の飛散開始時期は、本州のスギ花粉飛散時期と同じです。北海道にはスギはほとんど生えていないため、この時期の花粉症の原因としてはハンノキが疑われます。
【各地でのハンノキ花粉の飛散時期】
- 北海道:3-5月
- 東北:2-6月
- 関東:1-5月(3月下旬-4月中旬は飛散量増加)
- 東海:1月-4月
- 関西:1月-4月(3月中旬に飛散量増加)
- 九州:1月-4月上旬
5. 白樺(シラカバ、シラカンバ)花粉の地域ごとの飛散時期

(『鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版』をもとに編集部作成)
白樺(シラカバ、シラカンバ)は北海道の代表的な春の花粉症を起こす原因です。北海道ではスギ・ヒノキは少ないためこれらの花粉症になることはほとんどありませんが、シラカバ花粉症があります。
【各地でのシラカバ花粉の飛散時期】
- 北海道:4-6月(4月下旬-6月上旬は飛散量増加)
- 東北:4-6月(5月下旬に飛散量増加)
白樺やハンノキの花粉症の特徴は、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)を
6. ヨモギ花粉の地域ごとの飛散時期


(『鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版』をもとに編集部作成)
ヨモギは秋にかけて花粉を多く飛散します。風に乗りにくく、飛散距離が短いので、ヨモギが生えている場所に近づかないことで予防ができます。
【各地でのヨモギ花粉の飛散時期】
- 北海道:8-9月
- 東北:8-9月(9月初旬に飛散量増加)
- 関東:7-12月(8月中旬-9月は飛散量増加)
- 東海:8月中旬-10月中旬
- 関西:8月下旬-11月中旬(9月中旬に飛散量増加)
- 九州:8月-11月中旬(9月下旬は飛散量増加)
7. カモガヤ(イネ科)花粉の地域ごとの飛散時期


(『鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版』をもとに編集部作成)
イネ科の植物は夏から秋にかけて花粉を多く飛散します。草本花粉の代表です。スギ・ヒノキ花粉の飛散終了後も花粉症の症状が続く場合は、イネ科の花粉症を疑います。
イネ科の植物は、カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリなどが代表です。
イネ科花粉の飛散時期は最も長く、春から秋(4-10月)です。二峰性の(ピークが2回ある)飛散パターンで、春から梅雨にかけてのピークと、晩夏から秋にかけてのピークがみられます。スギ・ヒノキ花粉の飛散終了後も花粉症の症状が続く人は、カモガヤや他のイネ科の花粉が原因となっているかもしれません。
【各地でのイネ科花粉の飛散時期】
- 北海道:5-9月
- 東北:4-10月(5月中旬頃は特に飛散量増加)
- 関東:2-12月(5-6月は飛散量増加)
- 東海:3月下旬-10月
- 関西:2-11月
- 九州:2-11月
スギと似たような鼻や目の症状に加えて、皮膚のかゆみなどが出やすいのも特徴です。スギ・ヒノキなどの木本花粉より、若い年齢での
日本では花粉症といえばスギですが、欧州では花粉症といえばイネ科です。
カモガヤは河川敷、空き地、道ばたなどに自生しています。草本花粉であるため飛散距離が短く、数10-100メートル程度です。カモガヤが生えている場所には近づかないようにすると、症状を防ぐことができます。
8. ブタクサ花粉の地域ごとの飛散時期


(『鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版』をもとに編集部作成)
ブタクサはキク科の植物で、秋の花粉症の代表です。
【各地でのブタクサ花粉の飛散時期】
- 北海道:なし
- 東北:8-10月(9月上旬-下旬に飛散量増加)
- 関東:8-12月(8月中旬-10月上旬は飛散量増加)
- 東海:9月
- 関西:8月下旬-10月上旬(9月中旬に飛散量増加)
- 九州:8月-11月中旬(9月下旬は飛散量増加)
ブタクサは昔は空き地や河原、水気の多い所に群生し、代表的な花粉症の原因でした。現在は宅地造成や除草がすすみ、飛散量は減少して、スギ・ヒノキ、イネ科花粉症につぐ花粉症となっています。
9. その他の植物の花粉について
桜
お花見に行くと花粉症の症状が出る人もいるかもしれません。「桜の花粉症なのかも」と思ってしまうかもしれません。確率論から言うと、その場合は桜ではなく同時期に飛散しているヒノキ花粉症が原因となっている可能性が高いです。桜は虫が花粉を運んで受粉する虫媒花(ちゅうばいか)であり、遠くまで花粉が飛びません。風に花粉をのせて受粉する風媒花であるスギやヒノキは、花粉が遠くまで飛ぶことから花粉症の原因となりやすいのですが、虫媒花である桜での花粉症は少ないです。
ただし、お花見に行って、桜の花粉が付着した花びらや木に触れた手で、鼻や目などを触るとかゆくなる可能性はあるので、お花見中には手と粘膜の接触は避けたほうがよいです。
ユリ
ユリは雄しべの花粉がよく知られているので、花粉症の原因になると思う人がいるかもしれませんし、ユリの香りで鼻に違和感を覚えた人もいるかもしれません。しかし、ユリの花粉は飛散しにくいため、花粉症の原因となる可能性はあまり高くありません。とはいえ、花粉自体が目や鼻につくと違和感やかゆみの原因にはなりえます。花粉が手についた状態で目や鼻を触らないようにはしてください。
10. 季節ごとの花粉
ここまで説明してきたように、季節によって飛びやすい花粉の種類は異なります。まとめとして、季節ごとの花粉を見ていきます。
春に飛びやすい花粉
春の花粉症は多くの人が経験あると思いますが、その原因はスギやヒノキが多いです。春が近づくと花粉の量が増えるため、2月あたりから症状が出る人が多くなってきます。
夏に飛びやすい花粉
夏の花粉の代表はイネ科の植物です。イネ科の植物は、カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリなどが代表です。
イネ科花粉の飛散時期は最も長く、春から秋(4-10月)です。二峰性の飛散パターンで、春から梅雨のにかけてのピークと、晩夏から秋にかけてのピークがみられます。
夏の花粉症を起こすイネ科植物の多くは牧草として栽培され、路端や河川敷に生息します。草本花粉であり、数10メートルまでしか飛ばす、遠くへは飛散しません。植物の生えている場所に近づかないようにすると良いでしょう。
秋に飛びやすい花粉
秋の花粉の代表はキク科のブタクサです。8-10月に飛散します。
同じくキク科のヨモギや、クワ科のカナムグラ、イラクサ科のイラクサなども秋に飛散します。
スギ花粉も少量ではありますが、秋にも飛散します。秋にスギ花粉が多く飛散した翌年の春は、スギ花粉の飛散量が多いことが知られています。
冬に飛びやすい花粉
冬は微量ながら花粉が飛散していますが、冬に花粉症で悩む人は少ないです。
冬には北海道と沖縄を除く地域で、スギ花粉が少しずつ飛び始めています。その他の冬の花粉としては、関東から九州にかけてはイネ科や、関東ではブタクサの花粉が飛散しています。
11. 地域ごとの季節の花粉
ここまで花粉それぞれの特徴や季節に注目して説明してきました。地域によって花粉が飛散するタイミングが少しずれるので、次に地域ごとの花粉が飛散する時期を図にまとめます。

図:北海道と東北地方で季節ごとに飛散する花粉

図:関東地方と東海地域で季節ごとに飛散する花粉

図:関西地域と九州で季節ごとに飛散する花粉
12. 花粉と天気の関係
花粉が多く飛散する天気の特徴として次のものが考えられます。
- よく晴れた日
- 雨の降った翌日
- 風が強い日
花粉の飛散量が最も多くなるのは、前日が雨だった風の強い晴れた日です。
雨の日の翌日がよく晴れると、開花が一気にすすみ花粉の飛散量が多くなりますし、湿度の低くさも飛散量が多くなる原因となります。風の強い日は、より遠くに花粉が飛散することになります。都市部では地面におちた花粉が、風に乗って再び巻き上がって、飛散量が増加します。
花粉症の時期になると、今日の花粉の飛散予測情報をテレビやWEBから得ることができるので、参考にしてみてください。
13. 夜にも花粉は飛ぶか
夜にも花粉は飛んでいますが、飛散量は減ります。都市部では日中に地面におちた花粉が、夜になって風に乗って再び巻き上がり、飛散することがあるので、花粉症の季節は、マスクや眼鏡を着用するなど対策をして外出することをお勧めします。