しーがたかんえん
C型肝炎
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって起こる肝臓の炎症。比較的ゆっくりと病状が進み、長年をかけて肝硬変や肝がんに至る
7人の医師がチェック 124回の改訂 最終更新: 2022.02.14

C型肝炎の検査について

C型肝炎はウイルス感染によって肝臓などの臓器がダメージを受ける病気です。C型肝炎ウイルスに感染してもすぐには症状が出ないため、長い年月をかけて進行し肝硬変肝臓がんなどになる人がいます。C型肝炎の早期発見や進行具合を確認するためには検査が必要です。このページではC型肝炎の人がよく行われる検査について解説をします。

1. 問診では何を伝えるとよいのか

C型肝炎が疑われる人が、お医者さんによく聞かれる質問項目についてまとめます。下記質問の答えを想定しておくとスムーズに受診できます。

  • どのような症状があるか
  • お酒をどれくらい飲んでいるか(お酒の種類、1回で飲む量、頻度)
  • 普段よく飲むサプリメントや薬はあるか
  • 家族で肝臓が悪い人がいるか
  • 注射の回し打ちをしたことがあるか 
  • 入れ墨や鍼治療、ピアスなどの経験があるか
  • 輸血や血液透析を受けたことがあるか
  • 持病はあるか
  • 性交渉の経験はあるか

C型肝炎では症状のない人が多いですが、倦怠感や食欲不振などの症状があれば伝えてください。また、肝炎の原因はC型肝炎以外にもあります。サプリメントや薬、飲酒なども原因として考えられますのでさまざまなことが聞かれます。また、C型肝炎ウイルスは血液を介してうつりますので、どこから感染したか類推するための質問をされます。

2. 身体診察ではどのようなことがわかるのか

身体診察はお医者さんが直接身体の様子を詳しく調べることです。初期のC型肝炎の人では異常がみつかることはほとんどありませんが、進行して肝硬変になった人では、異常がみつかることがしばしばあります。身体診察には次のようなものがあります。

  • バイタルサインの確認
  • 視診
  • 聴診
  • 打診
  • 触診

バイタルサインの確認

バイタルサインは脈拍数、呼吸数、体温、血圧、意識状態などのことで、日本語に直訳すると「生命徴候」です。バイタルサインを確認すると、おおまかに全身の状態がわかるため、緊急で対応が必要かどうかが判断できます。バイタルサインが異常である人は、治療が遅れないように優先的に詳しい検査が行われることもあります。

視診

視診とは見た目で身体の異常を調べることです。肝硬変になると、全身に皮下出血の青あざや拡張した毛細血管が見えたり、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が確認できたりします。また、男性では女性のように乳房が膨れることがあります。

聴診・打診

聴診とは、聴診器を使って身体の音を聞くことです。打診では身体を軽く叩いてその音から内臓の異常を調べます。多くのC型肝炎の人では異常は見つかりませんが、進行して肝硬変になると肺に水が溜まることがあり、聴診や打診で確認できることがあります。

触診

肝臓がダメージを受けて肝炎となると、触診で肝臓が大きく腫れている様子がわかることがあります。また、進行して肝硬変になると脚のむくみが起こることがあるので、触って確かめます。

3. 血液検査では何がわかるのか

血液検査ではC型肝炎ウイルスに感染しているかどうかや、肝臓がどのくらいダメージを受けているのか、がんになっている可能性はあるかなどを調べることができます。

C型肝炎ウイルスについての検査

一口にC型肝炎ウイルスといっても、遺伝子の異なる多数の種類が存在します。遺伝子型によって治療方針が異なってくるので、血液検査では、感染の有無に加えてどの種類のC型肝炎ウイルスにかかっているかも調べます。

◎C型肝炎ウイルス抗体HCV抗体)

C型肝炎ウイルス感染すると、体内でHCV抗体という抗体が作られます。。血液検査でHCV抗体が検出されれば「過去に感染していたが現在は治癒した状態」または「現在感染している状態」のどちらかであると考えられます。

ただし、感染してから抗体ができるまでに約3ヶ月間かかるため、感染したばかりと考えられる時期に調べるのには適さない検査です。

◎C型肝炎ウイルス核酸定量(HCV-RNA定量)

C型肝炎ウイルスの遺伝情報をもつRNAの量を測定する検査です。上述のHCV抗体が基準値より高い値であったときに、「過去に感染していたが現在は治癒した状態」なのか「現在も感染している状態」なのかを見分けることができます。また、C型肝炎ウイルスの治療が奏効したかどうかを見極めるときにも使われます。感染してからHCV-RNAが異常値になるまでにかかる期間が1ヶ月弱であることから、HCV抗体よりも早期に感染がわかる点もメリットです。

◎C型肝炎ジェノタイプ

C型肝炎ウイルスは、ウイルスのもっている遺伝子の違いにより50以上の型に分類されています。日本で見つかる遺伝子型は1b型が最も多く約70%、次に多いのが2a型で15%です。適切な抗ウイルス薬を選択するのに必要な検査です。

C型肝炎となっているかどうか調べる血液検査

C型肝炎ウイルスに感染にしても、約3割の人は身体にそなわっている免疫機能によってウイルスを排除します。一方、約7割の人ではウイルスが感染し続け、肝臓にダメージを与えて肝炎になります。C型肝炎では下記の検査が異常値となります。

  • ALT
  • AST
  • γGT
  • ビリルビン(直接ビリルビン)
  • ALP

ALTとASTのどちらが高いかによって肝障害の原因の見当がつくことがあります。AST>ALTであればアルコール性肝障害肝硬変肝細胞がんであることが多く、ALT>ASTであれば、ウイルスによる慢性肝炎や非アルコール性脂肪性肝疾患であることが多いです。

肝硬変の有無と重症度を調べる血液検査

C型肝炎が長年続くと肝硬変になってしまう人がいます。肝硬変になると下記のような血液検査が異常値になります。

  • 血小板
  • アルブミン
  • アンモニア
  • 凝固検査(プロトロンビン時間、活性化トロンボプラスチン)
  • 線維化マーカー(IV型コラーゲン、ヒアルロン酸、M2BPGi)

これらの検査値を参考にして、肝硬変の重症度を判断します。

肝臓がんで異常となる血液検査:腫瘍マーカー

C型肝炎や肝硬変の人は、肝臓がん腫瘍マーカーを定期的に検査することがあります。肝細胞がんの腫瘍マーカーには、AFPやAFP第3分画、PIVKA-IIなどがあります。ただし、腫瘍マーカーだけでは肝細胞がんの有無ははっきりとはわからないので、画像検査と組み合わせて診断が行われます。

4. 画像検査

C型肝炎が進行すると肝硬変肝臓がんになることがわかっています。肝硬変肝臓がんになっていないかどうかを検査するためには画像検査が有用です。

腹部超音波検査(腹部エコー検査)

人には聞こえない高い音(超音波)を身体に当てて臓器の断面図を観察する検査です。超音波検査では重大な副作用の報告はなく、安心して受けられる検査です。C型肝炎の人では、肝臓がんの早期発見のために定期的な腹部エコー検査が勧められます。がんかどうか判断が難しい画像が見つかったときには、より鮮明な画像を得るために、造影剤を注射をしてから超音波検査をすることがあります。

腹部CT・MRI検査

CT検査やMRI検査は、血液検査や超音波検査だけでは診断が難しいときに行われることがあります。腹部CT検査では放射線を、MRI検査では磁力を利用して身体の断面を映し出します。

腹部超音波検査と同様に、CT検査やMRI検査でも、造影剤を注射することでがんと他の病気を見分けやすくなります。気管支喘息、ヨードアレルギー体質、褐色細胞腫腎機能が悪い人などでは、合併症が出やすくなるため造影剤を使えないことがあります。

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)

肝硬変になると、胃や食道の静脈にコブができる胃食道静脈瘤になることがあります。胃食道静脈瘤は破裂して大出血を起こすことがある病気です。肝硬変の人は、胃食道静脈瘤の有無や状態を調べるために定期的に胃カメラをする必要があります。

5. 肝硬度測定装置(フィブロスキャン®︎)

肝硬度測定装置は肝臓の硬さを調べる装置です。下記の病理組織学的検査よりも精度は劣りますが、超音波を使う検査であるため副作用の心配がありません。

6. 肝臓の組織を詳しく調べる検査:肝生検と病理組織学的検査について

生検とは、皮膚の上から肝臓まで針を刺して肝臓の一部を採取する検査です。採取した細胞や組織を顕微鏡で観察することを病理組織学的検査といいます。肝生検は画像検査に比べると身体に負担がかかり、基本的に入院が必要になる検査です。また、出血などの偶発症が起こることがあります。この検査によって慢性肝炎・肝硬変の進行度や原因が突き止められることはありますが、その他の検査によって十分に病状がわかっている人では行われません。