2017.07.24 | ニュース

C型肝炎の薬は命を救うのか?「証拠がない」とする報告に対して

データの吟味と見通し

from Lancet (London, England)

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C型肝炎ウイルスに対する治療薬は最近も開発され、ウイルスを排除する高い効果を示しています。しかし最近の研究報告で、死亡を防ぐ効果は未確認としたものがあります。反論の形でほかの研究者からの意見が出されました。

ワシントン大学のステファン・ウィクター氏、ジョン・スコット氏が、医学誌『Lancet』に寄稿したコメントで、C型肝炎治療薬の効果についての主張を述べました。

このコメントは、直接作用型抗ウイルス様々な病気の原因となる病原体の一つ。細菌とは別物であり、抗菌薬は無効であると呼ばれる種類の治療薬を話題にしています。

直接作用型抗ウイルス薬はC型肝炎を治療します。最近も新しい薬剤が開発され、広く使われるようになっています。例として次の薬剤があります。

  • テラプレビル(商品名:テラビック)
  • シメプレビル(商品名:ソブリアード)
  • ソホスブビル(商品名:ソバルディ)
  • レジパスビル・ソホスブビル合剤(商品名:ハーボニー配合錠)
  • オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル合剤(商品名:ヴィキラックス配合錠)
  • エルバスビル(商品名:エレルサ)・グラゾプレビル(商品名:グラジナ)の併用
  • ダクラタスビル(商品名:ダクルインザ)・アスナプレビル(商品名:スンベプラ)の併用
  • ダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビル合剤(商品名:ジメンシー配合錠)

ウィクター氏らは、直接作用型抗ウイルス薬を「慢性C型肝炎ウイルス肝炎の原因となるウイルスの一種。C型肝炎が慢性化して、肝硬変、肝がんと進行する場合があるHCV肝炎の原因となるウイルスの一種。C型肝炎が慢性化して、肝硬変、肝がんと進行する場合がある)感染の治療に革命を起こした」と位置付けています。

根拠として、直接作用型抗ウイルス薬を試した臨床試験で、治療された人のうち90%以上でウイルスが検出されなくなったという結果が多く報告されていることなどを例に挙げています。

ウイルスが検出されないことはSVR(sustained virologic remission)という用語で表されます。

HCV感染が長年持続していると、慢性肝炎肝硬変が引き起こされ、肝細胞がんにもつながります。

SVRは肝炎や肝細胞がんを防ぐことと同じではありませんが、もしHCVが体から排除され(SVRの状態になり)、再び体内で活動することがなければ、肝臓へのダメージがそれ以上進むことを防げるかもしれません。

2017年3月には、世界保健機関(WHO)が、「必須医薬品のモデルリスト」の中で直接作用型抗ウイルス薬を挙げています。

 

このコメントは、直接作用型抗ウイルス薬による治療の有無によって死亡などを防ぐ効果があるかについて議論しています。

2017年6月に『Cochrane Database of Systematic Reviews』に掲載された研究は、直接作用型抗ウイルス薬がSVRを達成するために有効としたうえで、治療後にHCVに関連する病気や死亡を減らす効果はまだデータとして確かめられていないことを指摘しています

ウィクター氏らはこの報告が「直接作用型抗ウイルス薬による治療が何の利益もないという誤解を招く」「そのことは悲劇的な結果かもしれない。防げたかもしれない死を招くことになるのだから」として、注意点を指摘しています。

  • 治療後の追跡が短い研究を調査対象としているため、HCVの感染による影響と、治療したことによる差が表れにくい
  • 直接作用型抗ウイルス薬と比較したグループもほかのHCV治療を受けていたため、差が小さく出る
  • 過去に開発されたが市販に至らなかった、比較的効果の低い治療法も直接作用型抗ウイルス薬の中に含めている

そして、無治療と直接作用型抗ウイルス薬を比較して死亡などの結果を比較する研究は、直接作用型抗ウイルス薬に有益な効果があると推定するだけの理由がすでに示されていることから、倫理的に許容されにくいとしています。

ウィクター氏らは「HCV治療のための予算の配分について判断する立場にある公衆衛生政策立案者は、死亡率を指標とした完璧なデータを待つことはできない。なぜならそうしたデータを生成するようなタイプの試験は決して行われないだろうから」と記しています。

 

C型肝炎治療薬の効果について、ある面は「証拠がない」とした報告と、それに対する反論を紹介しました。

薬が誰にとって・何と比べて・どのような効果を持つかを判断するには、多くの要素を考えに入れる必要があります。また、必ずしも想像しうる限り最大限の証拠がなければ勧められないわけではありません。

現時点で、直接作用型抗ウイルス薬が「有効」であることは示され、日本でも保険診療の中で認められています。死亡を防ぐことにつながるかどうかはまだ推測の域とはいえ、治療として直接作用型抗ウイルス薬を使うことには根拠があります。

一方、上でも「予算」という言葉が出てきているとおり、直接作用型抗ウイルス薬の中には非常に高価なものもあります。高価な薬を医療保険制度でカバーするかどうかは多くの人に関わる問題です。たとえ有効だとしても、高価すぎて制度を破綻させてしまうほどならば現実に認めることができない状況はありえるかもしれません。是非を判断するには、費用対効果を予測することを含め、保険制度全体を将来どのようなものにしていくかという視野の議論を避けては通れないでしょう。

問題設定が共有されないままでは、提示された証拠が目的にかなうかどうかも判断できません。意思決定をする主体にとって本当に必要な情報は何かをはっきりさせることが、データを参照するよりも先に必要なのではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

What is the impact of treatment for hepatitis C virus infection?

Lancet. 2017 July 8.

[PMID: 28699578] http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)31762-2/abstract

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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