2016.07.08 | ニュース

薬が効かないC型肝炎ウイルスに、新薬ベルパタスビルの効果は?

ジェノタイプ2、ジェノタイプ3に対する効果を検証

from The New England journal of medicine

薬が効かないC型肝炎ウイルスに、新薬ベルパタスビルの効果は?の写真

C型肝炎ウイルスは長年のうちに肝硬変や肝細胞がんを引き起こします。治療には最近登場した薬もありますが、ウイルスの中には薬が効きにくい種類もあります。特定の種類のウイルスを狙って、新薬ベルパタスビルを使った治療が試されました。

◆C型肝炎治療薬の限界

C型肝炎ウイルスはさらに細かい分類の「ジェノタイプ」に分けられ、ジェノタイプによって薬の効きやすさが違います。

日本では2015年に発売されて話題になったハーボニー®配合錠は、ジェノタイプ1のC型肝炎ウイルスに対する高い効果が報告されていますが、ジェノタイプ2、ジェノタイプ3に対しては2016年7月時点で保険適用がありません。

 

◆ソホスブビル+ベルパタスビルの効果を検証

ここで紹介する研究は、ジェノタイプ2およびジェノタイプ3のC型肝炎ウイルスに対して、新薬のベルパタスビルと、ハーボニーの主成分でもあるソホスブビルを組み合わせた治療の効果と安全性を調べています。

ベルパタスビルは、以前の研究でも、ジェノタイプ2、ジェノタイプ3を含む多くの種類のC型肝炎ウイルスに対して効果を示している成分です。

研究班は、対象者をランダムにグループに分け、ベルパタスビルとソホスブビルの治療をするグループ、しないグループとしました。

比較のため、ベルパタスビルを使わないグループでは既存の薬であるリバビリンとソホスブビルを使って治療しました。

効果の判定は、治療終了から12週間後にウイルスが検査で検出されないこと(SVR)を基準としました。

 

◆ジェノタイプ2、ジェノタイプ3ともリバビリン治療より高い効果

次の結果が得られました。

HCVジェノタイプ2に感染した患者のうちで、SVR率はソホスブビル・ベルパタスビル群で99%(95%信頼区間96-100)であり、ソホスブビル・リバビリン群の94%(95%信頼区間88-97)に勝っていた(P=0.02)。HCVジェノタイプ3に感染した患者のうちで、SVR率はソホスブビル・ベルパタスビル群で95%(95%信頼区間92-98)であり、ソホスブビル・リバビリン群の80%(95%信頼区間75-85)に勝っていた(P<0.001)。2件の研究で最も多い有害事象は疲労、頭痛、吐き気、不眠だった。

ジェノタイプ2のC型肝炎ウイルスに対する治療では、ベルパタスビルを使ったグループの99%でSVRが達成され、リバビリンとソホスブビルを使ったグループより勝っていました。

ジェノタイプ3のC型肝炎ウイルスに対する治療では、ベルパタスビルを使ったグループの95%でSVRが達成され、リバビリンとソホスブビルを使ったグループより勝っていました。

副作用と疑われる主な症状として、疲労、頭痛、吐き気、不眠が多く報告されました。

 

新薬の登場により、C型肝炎ウイルス感染を治療するチャンスがさらに広がるかもしれません。ソホスブビルとベルパタスビルを含む製剤はヨーロッパとアメリカで承認を目指されています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Sofosbuvir and Velpatasvir for HCV Genotype 2 and 3 Infection.

N Engl J Med. 2015 Dec 31.

[PMID: 26575258]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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