しーがたかんえん
C型肝炎
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって起こる肝臓の炎症。比較的ゆっくりと病状が進み、長年をかけて肝硬変や肝がんに至る
7人の医師がチェック 125回の改訂 最終更新: 2025.03.06

C型肝炎はどのような病気なのか

C型肝炎はC型肝炎ウイルスの感染によって肝臓にダメージが起きている状態です。近年、治療薬が劇的に進歩し、ほとんどの人でC型肝炎ウイルスを排除できるようになりました。しかし、C型肝炎ウイルスに感染したまま長年肝炎の状態が続くと、肝硬変肝臓がんになることがわかっています。このページではC型肝炎の概要を説明します。

1. C型肝炎とは

C型肝炎とはC型肝炎ウイルスに感染して起こる肝臓の病気です。日本ではC型肝炎ウイルスに感染している人は100-150万人いると推測されています(2019年現在)。C型肝炎になっても症状はほとんどありませんが、そのままにしていると進行して肝硬変肝臓がんになることがあるので治療が必要です。

C型肝炎ウイルスに対する治療薬はここ数年で劇的に進歩したため、患者数は今後減少していくことが予想されます。

2. C型肝炎の原因について

C型肝炎の原因はC型肝炎ウイルスの感染です。C型肝炎ウイルスの特徴や感染経路について説明をします。

C型肝炎ウイルスはどのような病原体なのか

C型肝炎ウイルスの種類について少し詳しく説明をします。C型肝炎ウイルスに感染している人は、ウイルスの種類によって治療薬が変わることがあるため、頭の片隅に入れておくとよいです。

C型肝炎のウイルスの中にはRNAという遺伝子が入っています。このRNA遺伝子の違いによって、C型肝炎ウイルスは50以上の型に分類されています。日本では1b型という遺伝子型が約70%と最も多く、次いで多いのが2a型で15%と報告されています。どの遺伝子型のC型肝炎ウイルスに感染しているのかはは血液検査でわかります。

C型肝炎ウイルスの感染経路について

C型肝炎ウイルスは血液を介してうつります。具体的には次のような行為に注意が必要です。

【日常生活で感染しないために注意するとよいこと】

  • 歯ブラシやカミソリなど、血液が付着する可能性があるものは共有しない
  • 注射器を共用しない(危険ドラッグなど)
  • ピアスや刺青をするときに消毒が不十分な機材を使わない
  • 他人の血液を触る時にはゴム手袋などを使用し直接触らない
  • 感染しているかもしれない相手との性交渉ではコンドームを使用する

性交渉での感染のリスクは低いといわれていますが絶対に感染しないとはいえません。また、男性同士の性交渉はリスクが高いといわれています。

また、C型肝炎ウイルス感染の原因になりうる医療行為には下記のようなものが挙げられます。

  • 輸血
  • 臓器移植
  • 血液透析

C型肝炎ウイルスが発見されたのは1989年のことです。その後、献血する人や臓器を提供する人のC型肝炎ウイルスの検出精度が高まり、現在では輸血や臓器移植で感染することは極めて少なくなりました。血液透析をしている人は、C型肝炎ウイルスに感染する確率が多少高いといわれています。

3. C型肝炎の自然経過について

C型肝炎ウイルスに感染しても、約30%の人では自然とウイルスが排除されます。しかし、残りの約70%の人は、治療をしないとウイルスはなくなりません。

C型肝炎ウイルスが感染して肝臓に炎症が起きた状態がC型肝炎です。C型肝炎を10-20年間放っておくと、肝臓へのダメージが進行してC型肝硬変になってしまう人が出てきます。また、C型肝炎やC型肝硬変の人では、肝臓がんができやすいことがわかっているため、肝臓がんの早期発見ができるように、定期的な血液検査や画像検査が必要になります。

4. C型肝炎の症状について

C型肝炎ウイルスに感染しても自覚症状はほとんどありません。また、ウイルスの感染が持続してC型肝炎になった人でも、症状を感じないことが多いです。

肝硬変の人は、症状によって代償期肝硬変と非代償期肝硬変に分けられています。代償期肝硬変とは肝硬変の初期の段階のことで、ほとんどの人は症状を感じません。非代償期肝硬変になると、意識障害黄疸(眼球や皮膚が黄色くなること)、腹水、息切れ、倦怠感などの症状を生じます。

5. C型肝炎の検査について

C型肝炎を疑われた人が医療機関を受診をすると、問診や身体診察が行われたうえで、次のような検査をされます(詳細を知りたい人は「C型肝炎の検査について」のページを参考にしてください)。

ウイルスを調べる血液検査

C型肝炎ウイルスについて調べる血液検査には下記があります。

  • C型肝炎ウイルス抗体HCV抗体)
  • C型肝炎ウイルス核酸定量(HCV-RNA定量)
  • C型肝炎ジェノタイプ

HCV抗体が陽性ならば過去に感染した可能性が高いですが、現在も感染が続いているかどうかはわかりません。HCV-RNA定量が陽性であれば、現在感染していることがわかります。また、治療で適切な薬を選ぶためにC型肝炎ウイルスの遺伝子型(ジェノタイプ)を調べます。

肝炎・肝硬変・肝臓がんを診断するための検査

C型肝炎ウイルスに感染している人が、肝炎や肝硬変肝臓がんになっていないかどうか調べるための検査には下記があります。

  • 肝機能の血液検査(AST、ALT、γGT、血小板数、アルブミン、凝固検査など)
  • 肝臓がんで異常となる血液検査(AFP、AFPレクチン分画、PIVKA-IIなど)
  • 肝硬変で異常となる血液検査(ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、M2BPGiなど)
  • 腹部超音波検査

さらに、肝硬変肝臓がんになっている人には、詳しく病態を調べるために腹部CTMRI検査や胃カメラなどのさまざまな検査が必要になることがあります。

6. C型肝炎の治療について

C型肝炎の治療では、直接作用型抗ウイルス薬(DAA : Direct Acting Antiviral)という内服薬が主流になっています。さまざまな種類のDAAが販売されており、ウイルスの遺伝子型や肝炎の進行度、過去の治療歴などを元に選ばれます。これにより初回の治療で95%以上の人でC型肝炎ウイルスを排除できます。

DAAの中ではグレカプレビル水和物・ピブレンタスビル (マヴィレット®︎)とレジパスビル・ソホスブビル(ハーボニー®︎)の2つの治療薬が特によく使われてます(2018年の売り上げより)。他には腎機能が悪い人にも使いやすいエルバスビル(エレルサ®︎)・グラゾプレビル(グラジナ®︎)の組み合わせや、やや進んだ肝硬変の人にも比較的使いやすいソホスブビル・ベルパタスビル(エプクルーサ®︎)などの治療薬があります。

また、C型肝炎の人は、A型およびB型肝炎ワクチンを接種してC型以外のウイルスに感染しないことが重要ですし、禁酒や生活習慣病の改善も重要な治療です。

治療について詳しく知りたい人は「C型肝炎の治療について」のページを参照してください。

参考文献

・日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会/編, 「C型肝炎治療ガイドライン(第7版)」, 2019
・厚生労働省「平成29年 患者調査」