ぜんりつせんがん
前立腺がん
前立腺にできたがん。年齢を重ねるとともに発見されることが多くなる。高齢化が進む日本では患者数が急増している。
12人の医師がチェック 390回の改訂 最終更新: 2026.01.15

前立腺がんの症状:初期症状、転移時、ステージ4や末期であらわれる症状

初期の前立腺がんはほとんど症状はありません。進行するとともに症状があらわれます。このページでは、前立腺がんが進行したときあらわれる症状と、同じく前立腺の病気である前立腺肥大症の症状との違いを中心に説明します。

1. 前立腺がんの初期症状はほとんどない

前立腺がんの初期症状はほとんどありません

尿が出にくくなったこと(排尿困難感)の原因が前立腺がんの初期症状ではないかと心配する人がよくいます。前立腺がんが原因であることもありますが、排尿困難感の原因は前立腺肥大症であることがほとんどです。ですので、排尿困難感の原因として前立腺がんの存在を心配しすぎる必要はありません。

2. 症状が出にくい前立腺がんをどうやって発見するか

前立腺がんは初期の段階では症状がほとんどないために、症状を手がかりにして早期発見することは困難です。そこで、前立腺がんの腫瘍マーカーとして使われているPSAを血液検査で調べると、初期の段階でも見つけやすくなります。なおPSAについては「前立腺がんの検査」で詳しく説明しているので参考にしてください。

前立腺がんの心配がある人や検査を受けてみたいと思う人は検診などを利用してPSAの測定を行うことが可能です。PSAが基準値を超えた人には泌尿器科医による診察や検査が行われます。
ただし、PSAは前立腺がん以外の病気でも上昇することがあります。つまり、PSAが基準値を超えたからといって必ず前立腺がんであるとは限りません。専門医と相談して、追加の検査の必要性などを相談してみてください。

3. 前立腺がんが進行して大きくなったときにあらわれる症状

前立腺は膀胱からでたところにあり、尿道(尿が身体の外に出る通り道)を取り囲むように存在しています。

【前立腺とその周りの臓器との関係】

前立腺とその周りの臓器との関係

前立腺がんが進行して大きくなると、尿道や膀胱に影響を及ぼして、次のような症状があらわれることがあります。

  • 尿がでなくなり下腹部が痛む
  • 吐き気やむくみ
  • 尿に血が混ざる

それぞれについて説明します。

尿がでなくなり下腹部が痛む

大きくなった前立腺がんが尿道を塞いで尿が膀胱から先に流れなくなり、尿を出せなくなります。この状態を「尿閉」と言います。また、尿が膀胱にたまり続けるために、下腹部が張って痛みがあらわれます。
尿閉が長く続くと腎不全という状態が引き起こされ、命に危険が及ぶこともあります。疑われる症状(尿が出ない・下腹部が張るなど)が出現した人はすみやかに医療機関を受診してください。

吐き気やむくみ

尿の流れが停滞すると、腎臓に負担がかかりその機能が低下します。腎臓の機能が低下した状態を腎不全と言います。腎臓には余計な水分や老廃物を尿にする役割があるので、腎不全になると、水分や老廃物が身体に溜まって吐き気やむくみがあらわれます。

尿に血が混ざる

前立腺がんが大きくなると膀胱などの周囲の臓器を破壊することがあります。組織が壊れた結果、尿に血液が混ざります。
血尿が出る原因は他にもあり、前立腺がんが原因であることは多くはありません、つまり、血尿が出たからと言って必ずしも前立腺がんであるというわけではありません。例えば、膀胱炎のような比較的治りやすい病気でももよく見られます。
とはいえ、治療が必要な病気が存在していることが多いので、突然血尿が出た人は、まずは泌尿器科医による診察を受けることをお勧めします。

4. 前立腺がんが転移したときにあらわれる症状

前立腺がんが進行すると転移を起こすことがあり、転移による症状あらわれます。転移する部位は骨が最も多く、その他ではリンパ節や肝臓、肺などがあります。

骨転移による症状

前立腺がんが転移しやすい骨は腰、背中、大腿(太ももの)などの骨です。手や足の先の骨に転移をすることはまれです。

前立腺がんの骨転移が起きやすい部位

骨転移が起こると痛みがあらわれます。例えば、腰の骨に転移をすると腰痛があらわれることがありますし、背中の骨に転移をすると背部痛を感じることがあります。症状が持続しやすい点が他の原因によるものとは異なります。骨への転移には放射線治療ホルモン治療がよく効き、症状を和らげることができます。

骨以外の転移による症状

骨転移ほど多くはありませんが、前立腺がんはリンパ節や、肝臓、肺に転移しやすいことが知られています。転移した部位によってあらわれる症状は異なります。例えば、足の付け根のリンパ節に転移した場合は足がむくみます。肝臓の転移では腹部の張りを自覚します。転移に対してはホルモン治療や抗がん剤治療が行われ、効果があらわれれば、症状が緩和されます。

5. 前立腺がんと前立腺肥大症の症状の違い

前立腺は尿の通り道である尿道を取り囲むように存在しています。そのため、前立腺の変化が排尿に影響することがあります。
前立腺は移行領域、辺縁領域、中心領域の3つの部分からなります。
移行領域の前立腺が腫大してくるのが、前立腺肥大症良性腫瘍がんではありません)です。尿道に近い移行領域が大きくなる病気なので、前立腺肥大症は排尿に影響を与えやすいです。
一方、前立腺がんの多くは辺縁領域に発生します。前立腺がんは尿道とは離れた位置に発生するために初期の段階では排尿状態に影響をほとんど与えません。

前立腺がん・前立腺肥大症の模式図

がんではないとはいえ前立腺肥大症にも治療が必要です。排尿に異常が見られる人は泌尿器科で相談してみてください。また、前立腺には前立腺肥大症と前立腺がんのどちらかしか発生しないというわけではなく、同時に見つかることもあります。ですので、症状から前立腺がんを過度に恐れる必要はありませんが、自己判断せずに医療機関で相談することをお勧めします。

参考:

前立腺がん診療ガイドライン
「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014