ぱにっくしょうがい
パニック障害
突然のパニック発作を起こし、生活に支障が起こる状態。不安障害の中の一つ
9人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2025.11.07

パニック障害とはどのような病気か

パニック発作では、突然、動悸・冷や汗・めまいなどの症状があらわれます。そして、「このまま狂ってしまうんじゃないか」、「死ぬのではないか」といった恐怖感に襲われます。このような発作や発作への不安から、日常生活に支障をきたしている状態をパニック障害と言います。このページでは、パニック障害の原因、症状、治療法などについて詳しく解説します。

1. パニック障害とは

パニック障害は、突然激しい動悸や胸苦しさ、冷や汗、めまいが起きて、このまま死んだり狂ったりするのではないか、といった恐怖感におそわれる発作を何度も繰り返す病気です。

パニック障害は20代半ばで発症することが多いです。

男性よりも女性がかかりやすく、およそ2倍多くみられます。日本人では一生のうちに0.6-0.9%の人がパニック障害を経験するという報告があります。

パニック発作を一度起こしたからといってパニック障害と診断されるわけではありません。実はパニック発作自体はパニック障害ではない人にも起こります。1年の間にパニック発作を起こしたことのある人は約10%にのぼるとする米国の研究報告もあります。

参考文献
・American Psychiatric Association/原著, DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル, 医学書院, 2014
・川上憲人, 他, 精神疾患の有病率等に関する大規模疫学調査研究:世界精神保健日本調査セカンド. 2016年5月

2. パニック障害の原因について

パニック障害の発症には、遺伝、性格、環境などさまざまな要因が関係していると考えられています。要因を大きく分けると次のようになります。

【パニック障害の要因】

  • 脳における不安・恐怖を感じる神経回路の異常
  • 心理的要因(性格や気質)
  • 環境的要因
  • 遺伝的要因

以前は、パニック障害は主に環境や本人の性格・気持ちの問題であると解釈されていました。今でも「心の問題ではないか」、「弱い人間なのではないか」という誤解を受けがちです。自分自身をきつく責めてしまうこともあるかもしれません。しかし、現在では、さまざまな要因が絡んでいるとされ、脳の問題としても捉えられるようになってきています。

自分を責める必要はありませんし、また、抗不安薬などの薬を使うことを頑なに拒否する必要もありません。

脳における不安・恐怖を感じる神経回路の異常

パニック障害の要因として、不安・恐怖の神経回路の異常が考えられています。

「不安」や「恐怖」は私たちの身体にもともと備わっている正常な感情です。これらの感情は、海馬(かいば)や扁桃体(へんとうたい)を中心とした「大脳辺縁系」と呼ばれる部位が司っています。

まず、視覚、聴覚、嗅覚、触覚などのあらゆる種類の感覚が扁桃体に伝わります。そして、それらの感覚の情報をもとに、危険であるかどうかを判断します。危険と判断した場合には、不安や恐怖の感情が生み出され、自律神経を介して動悸、汗、震えなどの反応があらわれます。パニック障害ではこの一連のメカニズムに異常が生じている可能性があると考えられています。

より詳しく説明すると、脳内の情報伝達物質に異常が起こった時に、パニック障害の症状があらわれるのではないかと注目されています。

不安や恐怖に関係する情報伝達物質(神経伝達物質と言います)は次のものです。

【不安や恐怖に関係する物質】

  • ノルアドレナリン(ノルエピネフリン):緊張や恐怖を感じにくくなる
  • セロトニン:精神の安定や安らぎをもたらす
  • GABA(γアミノ酪酸):不安や恐怖を抑える

これらの物質を標的にしている治療薬があります。代表的なものは抗うつ薬です。抗うつ薬では、脳のセロトニンの濃度を高めることで、精神の安定をもたらします。また、抗不安薬はGABA受容体を刺激することで、不安や恐怖を抑える効果が期待できます。

心理的要因(性格や気質)

パニック障害には、性格や気質といったもともとの特性も関係することがわかっています。

【パニック障害を発症しやすい特性】

  • 不安気質:何事にも不安を感じやすい
  • 神経質:些細なことでも過敏に反応してしまう

こうした特性を持ち合わせている人は、より多くのストレスを感じるため、不安や恐怖を感じやすいと考えられています。また、不安によって起きた身体の変化(動悸・過呼吸・震え・めまい)に対しても過敏に反応してしまうため、さらに強い不安に発展しやすいのです。

パニック発作では、動悸・過呼吸・震え・めまいといった症状があらわれます。例えば、一度不安発作による動悸を経験してしまうと、運動をきっかけにした動悸でも、条件反射的にパニック発作が引き起こされる、という話を聞くこともあります。

環境的要因

パニック障害の要因には、自分が置かれている環境も含まれます。代表的な環境要因を紹介します。

■子ども時代の虐待
子ども時代に肉体的あるいは性的な虐待を受けると、大人になってパニック障害を起こす危険性が高まると考えられています。

■ストレスの大きな出来事
病気や身近な人が亡くなる体験は、パニック発作を起こすきっかけになると考えられています。

遺伝的要因

パニック障害の原因として、遺伝的な要因も検証されています。過去に行われた家族研究の結果によると、パニック障害の人の親や子には、一般よりも高い確率でパニック障害が発症することが確認されています。また双子研究では、二卵性双生児よりも一卵性双生児のほうが、2人ともパニック障害を発症する確率が高いことが分かっています。これらの家族研究、双子研究から、パニック障害には強い遺伝性があると考えられています。しかしパニック障害の原因となる遺伝子は見つかっておらず、現在も原因遺伝子を見つける研究が続けられています。

参考文献
・Crowe RR, et al. A family study of panic disorder. Arch Gen Psychiatry. 1983 Oct;40(10):1065-9.
・Kendler KS, et al. Panic disorder in women: a population-based twin study. Psychol Med. 1993 May;23(2):397-406.

3. パニック障害と同時に見つかりやすい病気について

パニック障害は不安障害の一種です。他の不安障害の病気と合併しやすいことが知られています。不安障害には次のような病気が含まれます。

【不安障害に含まれる病気】

また、他にパニック障害と関連が深い病気には、心的外傷後ストレス障害PTSD)、強迫性障害うつ病があります。

パニック発作は、パニック障害の症状ですが、他の病気でも見られます。特に上記の疾患で起こることが多いのです。パニック発作でも、もとの病気によって治療法が異なりますし、パニック発作が起きるから必ずパニック障害であるということではないため、きちんと精神科医の診断を受けて、治療を始めることが重要です。

それでは、それぞれの病気について、もう少し詳しく見ていきましょう。

限局性恐怖症

限局性恐怖症とは、ある特定の対象や状況に対して、異常に強い恐怖や不安を抱く病気です。不安発作を起こすこともあります。一般的に高所恐怖症や閉所恐怖症は、この限局性恐怖症の中に含まれます。恐怖を抱く対象として以下のようなものがあります。

【限局性恐怖症の対象】

  • クモ、ムカデ、ヘビなどの生き物
  • 注射針や血液
  • 高いところ(高所恐怖症)
  • エレベーターの中などの狭い所(閉所恐怖症)

ある対象に対して、ほぼ毎回恐怖を感じることが特徴的です。また、恐怖症の対象は複数にわたることが多いです。一方、パニック障害で起こるパニック発作は、予期できないことが特徴的であるため、限局性恐怖症のパニック発作とは少し特徴が異なります。例えばクモを見るといつも強い恐怖におそわれる、飛行機で毎回不安発作を起こすといったような時は、パニック障害というよりも単なる恐怖症である可能性が高いということです。

社会不安障害(社交不安障害)

社会不安障害とは、他人から観察、批判されたり、恥をかくのを極端に怖がり、他人から見られるような場面で強い不安や恐怖を抱く病気です。恐れている状況に身を置くと、必ず不安が生じ、動悸、顔のほてり、息苦しさ、そわそわした感じなどが引き起こされます。さらに、そういった変化や不安、恐怖を他人に知られることを怖がる人もいます。

例えば、多くの人の前で話すような機会で、毎回強い不安に襲われ、不安発作を起こしてしまうようなときは、パニック障害というよりも社会不安障害である可能性が高いです。

また、社会不安障害は、パニック障害を含む不安障害、うつ病と同時にみつかることが多く、さらに自閉症スペクトラム障害、統合失調症の人には、社会不安障害が多く見られることもわかっています。

社会不安障害の治療としては、抗不安薬や抗うつ薬などの薬物治療、認知行動療法や森田療法、注意訓練、対人関係療法といった心理療法などが行われます。

広場恐怖症

広場恐怖症は、パニック発作が生じたと仮定したときに逃げたり、休んだりできない状況に対して恐怖感を抱くことから、そのような状況を避けてしまう病気です。具体的には以下のような状況で強い恐怖、不安を感じます。

【広場恐怖症が起こる状況】

  • 公共交通機関(バス、電車、飛行機など)
  • 広い場所(駐車場など)や囲まれた場所(お店やレストラン、映画館など)
  • 列に並んだり、人の群れの中にいる状況
  • 一人で自宅の外に出かけること

配偶者や友達が一緒にそばにいたり、別のことに集中していたり、子どもや犬などと一緒に移動していると不安が和らぐ人が多いです。

広場恐怖症は多くの場合、パニック障害と同時に起こります。パニック障害において「広場恐怖」という症状は特徴的なのですが、パニック発作を起こさずに「広場恐怖」の症状があらわれる人もいるため、「広場恐怖症」として独立した病気として考えられることもあります。

広場恐怖症の治療として、パニック障害と同様の薬物治療が行われたり、恐怖を感じる場所に行き少しずつその場所、状況に慣れていく方法が行われます。

全般性不安障害

全般性不安障害は、健康、家計、家庭、学校、職場といった生活全般に対して、過剰な不安を抱く病気です。生活のことに関する過剰な不安やパニック発作の症状に加えて、落ち着きのなさ、緊張感、疲労しやすさ、集中困難、怒りっぽさ、筋肉の緊張、睡眠障害などの症状があらわれるのが特徴です。その多くが、パニック障害や社会不安障害など、他の病気も同時に見つかります。

全般性不安障害の治療は、心理療法と薬物治療(抗不安薬、抗うつ薬など)を組み合わせて行われます。その時々のストレスに応じて、一時的に症状が悪くなったり、良くなったりとなかなか治らないこともあります。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

心的外傷後ストレス障害PTSD)は、生死をさまよう、瀕死の重症を負う、性的暴力を受ける、傷害事件や災害に巻き込まれる体験などのあと、その時の記憶が何度もよみがえり、その度に苦痛や怒り、恐ろしさをともなう病気です。PTSDは、原因となった体験の直後に発症することが多いです。

PTSDはパニック障害と見分ける必要があります。見分ける上で役に立つPTSDの特徴は以下の通りです。

PTSDの特徴について】

  • 原因となる体験があること
  • パニック障害では動悸やめまいなどの身体の症状が主だが、PTSDでは記憶のよみがえりや感情的な症状が主なものであること

ただし、実際には見分けるのが難しいので、精神科への受診をお勧めします。

PTSDの治療は薬物治療や心理療法です。薬物治療として抗うつ薬や抗不安薬が使われ、心理療法として認知行動療法が行われます。また原因となった体験と関連するような場所、状況を避けることも、治療になります。

強迫性障害

強迫性障害とは、何かを恐れたり、落ち着かない気持ちを和らげるために儀式のような行為を繰り返し、その行為を自分で望ましくないと理解しつつもやめることができないという病気です。強迫的な考えとそれに対応する行為として多いのは、次のものです。

【強迫的な考えと行為の例】

  • 不潔を嫌がる
    • 過剰に手や体を洗う
    • 手すりやつり革を触れない
  • 人や物事を異常に疑う
    • 戸締りを何度も執拗に確認する
    • 人の行動を執拗に確認・監視する
  • 身体や健康を過剰に心配する
    • 些細な不調でも、重い病気ではないかと不安になり受診を繰り返す
  • 対称性へのこだわり
    • 異常なほど対称に整理整頓する
    • 自分の決めた配置に物が位置していないと気が済まない
  • 物が捨てられない
    • 常人離れした収集癖がある
    • 不要な物が捨てられず、足の踏み場がないほど物をためこむ

強迫性障害では、こういった行為を繰り返し、時間を浪費することによって、苦痛と生活への支障が生じていることが特徴です。その点で、単にこだわりが強い人とは異なります。

多くの人は10代後半から20代前半で発症します。急に発症することもあれば、少しずつ症状があらわれて悪化してくることもあります。強迫性障害は、パニック障害を含む不安障害、うつ病強迫性パーソナリティ障害と合併することが多いです。

強迫性障害の治療は、薬物治療として抗うつ薬が、心理療法として認知行動療法が行われます。

うつ病

うつ病は、抑うつ気分や意欲低下の症状が2週間以上続く病気です。うつ病の症状は次のとおりです。

うつ病の症状】

  • 抑うつ気分:気分が落ち込む、憂うつだ、悲しい
  • 意欲低下:今まで好きだったことや趣味に対して興味が持てない、何をしていても面白くない
  • 思考力低下:集中力が落ちた

上記の症状に加えて、不眠、食欲の低下、倦怠感、頭痛、体の痛みなども特徴的です。生真面目な人や責任感が強い人は、うつ病になりやすいとも言われています。 うつ病とパニック障害は合併しやすく、またうつ病でもパニック発作が起きることはあるので、しっかりと見分けられなければなりません。

うつ病の治療には、抗うつ薬が使われたり、心理療法として認知行動療法が行われます。治療してもなかなか治らない場合、電気けいれん療法が行われることもあります。

参考文献
American Psychiatric Association/原著, DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル, 医学書院, 2014