ぱにっくしょうがい
パニック障害
突然のパニック発作を起こし、生活に支障が起こる状態。不安障害の中の一つ
9人の医師がチェック 137回の改訂 最終更新: 2018.09.25

パニック障害の心理療法(認知行動療法、曝露療法、自律訓練法)について

パニック障害では、認知行動療法(不安階層表を用いた曝露療法)や自律訓練法といった治療法を行うこともあります。ここでは、パニック障害の心理療法について詳しく解説します。

パニック障害とは、突然激しい動悸や胸苦しさ、冷や汗、めまいが起きて、このまま死んだり狂ったりするのではないか、という恐怖感におそわれるパニック発作を何度も繰り返す病気です。「パニック発作」と、パニック発作が起きることを恐怖する「予期不安」、パニック発作を恐れて人が多いところや一人での外出を避ける「広場恐怖」が特徴的です。

パニック障害に対する治療法としては、心理療法と薬治療が代表的です。今回はそのうち心理療法について説明していきます。

パニック障害への心理療法では、主に認知行動療法が行われます。認知行動療法は薬治療と同じくらい効果的であり、認知行動療法と薬治療を組み合わせた治療法はより効果的であることが示されています。(薬治療について詳しくは「パニック障害の薬:ソラナックス、トフラニールなどの効果と副作用」で説明していますので、ぜひご覧ください。)
 
認知行動療法は、パニック障害の以下のような症状を改善する目的で行われます。

  1. パニック発作(不安発作:突然激しい動悸や胸苦しさ、冷や汗、めまいが生じて、数分から1時間以内で治まる。発作中はこのまま自分が狂ったり、死んだりするのではないか、という異常に強い恐怖感におそわれる
  2. 予期不安:「またパニック発作におそわれたらどうしよう」「パニック発作が起きて死ぬかもしれない」という強い恐怖感が1ヶ月以上続く
  3. 広場恐怖パニック発作への恐怖によって、何かを避ける行動を行う。例えば一人で外出するのをやめたり、人が多いところに出かけなくなったりする 

ここからは認知行動療法を、認知療法と行動療法(不安階層表を用いた暴露療法)に分けて説明していきます。

1. 認知療法

認知療法では、認知(考え方やものごとの捉え方)を修正していくことにより、不安を軽減させることができます。特にパニック発作を起こりにくくしたり、予期不安を軽減するのに役に立ちます。

 

例えば、パニック発作を起こしているとき、心臓が激しく脈打ち、めまいも表れていることを感じると、自動的に「自分は心臓発作を起こして死ぬんだ」と思い込み、強い恐怖感を抱きます。この「自動的な思い込み」がパニック発作を悪化させるので、認知療法で修正してきます。「不安で心臓が激しく脈打つのは人間の体の自然な反応であって、心臓発作の予兆ではない」ということを知り、思い出すことができれば、不安が軽くなります。

認知療法では、不安が生じるメカニズムを学び、自分のことを客観的にみていきます。そして「自分のパニック発作が起こりやすい状況」や「自分の不安を悪くする考え方のクセ(自動的な思い込み)」を把握して、パニック発作を起きにくいように環境を改善したり、パニック発作が起きそうなときや起きてしまったときにどう考え、どう行動したらいいのかを考えていきます。

具体的な方法に関しては、心理療法を行う医療機関や施術者によって異なりますが、例えば「パニック発作の記録」を行い、自分を改めて観察することも役に立ちます。

その記録には、以下のようなことを記載すると良いでしょう。 

  • 発作がいつ起きたか
  • そのときの症状
  • その時の考えと感情
  • 発作の引き金

これらの記録をつけることによって、「自分のパニック発作が起こりやすい状況」や「自分の不安を悪くする考え方のクセ(自動的な思い込み)」が少しずつ明らかになっていきます。

2. 行動療法(不安階層表を用いた曝露療法)

パニック発作を恐れ、人が多いところや一人での外出を避ける「広場恐怖」という症状に対して行われる治療法です。
 
「広場恐怖」では以下のような場所、状況を恐れ、避けることが多いことが知られています。

  • 公共交通機関(バス、電車、飛行機など)
  • 広い場所(駐車場など)や囲まれた場所(お店やレストラン、映画館など)
  • 列に並んだり、人の群れの中にいること
  • 一人で自宅の外に出かけること

暴露療法では、このような不安や恐怖を感じやすい場所、状況に自分を暴露させることで、少しずつ慣れていき、また自信をつけていくことになります。慣れることで不安や恐怖が軽減されていくことは、実際に研究でも証明されています。

それでは曝露療法についてもう少し詳しく見ていきましょう。

暴露療法では「不安階層表」という表を使うことで、実際に患者本人が不安に感じる状況を列挙して、11段階に分けて整理します。

不安階層表の具体例(0点:リラックスできる、100点:最も強く恐怖、不安を感じる)

0点  家のソファで横になりながらテレビを見る
10点  一人で外出する
 
20点  美容室で髪を切ってもらう
 
30点  歯の治療をする
40点  マンションのエレベーターに乗る
 
50点  バスに乗る
 
60点  パートナーとレストランで食事をする
70点  パートナーと映画館で映画を観る
 
80点  通勤帯の満員電車に乗る
 
90点  一人で映画館で映画を観る
 
100点  飛行機に乗る


急に強い不安を感じる場所、状況に行くのは刺激が強いので、症状によって例えば40~50点の中等度の場面から練習するといったような工夫をしていきます。練習する際には配偶者、パートナーや友人の付き添いが支えになることもあります。

3. 自律訓練法

自律訓練法とはもっともよく知られているリラクゼーション法で、自分に暗示をかけることでリラックスする自己催眠法です。

標準公式と呼ばれる、暗示で唱える言葉を用いてリラックスします。標準公式は以下の通りです。

  • 背景公式:気持ちがとても落ち着いている
  • 第1公式:手足が重たい
  • 第2公式:手足が温かい
  • 第3公式:心臓が静かに打っている
  • 第4公式:呼吸が楽になっている
  • 第5公式:お腹が温かい
  • 第6公式:額が涼しい

基本は仰向けになって寝ている状態で、それぞれの公式を順番に心のなかで唱え、自分に暗示をかけます。基本的には、医師の指導のもとで行いますが、第1、第2公式は自分でも行うことができて、十分効果が期待できます。自律訓練法を行うと心身がリラックスした状態になっているのですが、そのままだとボーっとした状態が続いてしまうので、終わる時には「消去動作」(一種の催眠状態から回復するための動作)を行うことになっています。

消去動作は両手のグーパーを数回繰り返し、両肘を数回曲げ伸ばしして、大きく背伸びをした後、深呼吸をするといった方法があります。