ししついじょうしょう(こうしけっしょう)
脂質異常症(高脂血症)
悪玉コレステロールが多い、または善玉コレステロールが少ない状態。動脈硬化を速め、脳卒中や心筋梗塞を起こしやすくする
16人の医師がチェック 132回の改訂 最終更新: 2019.07.08

知っておくべき脂質異常症の注意点

脂質異常症は動脈硬化の進行を引き起こし、狭心症心筋梗塞脳梗塞、閉塞動脈硬化症などの原因となるため、しっかりと治療する必要があります。脂質異常症の治療では生活習慣の改善や薬をしっかり飲むといったことが重要です。

1. 脂質異常症をしっかり治療するために

脂質異常症はそれ自体にあまり目に見える症状がなく、また付き合いも長くなる病気であり、治療意欲を維持するのが難しい病気かもしれません。しかし、脂質異常症は治療されていない状態が続くと、動脈硬化を悪化させることが知られており、進行すると狭心症心筋梗塞脳梗塞、閉塞動脈硬化症を起こします。狭心症心筋梗塞脳梗塞、閉塞動脈硬化症は生活の質を大きく低下させたり、最悪の場合、命に関わる病気です。脂質異常症は症状が出にくい病気ですが、これらの病気を予防する意味でしっかり治療することが大切です。

脂質異常症は食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせて治療が行われます。ここでは脂質異常症の治療の重要なポイントである「生活習慣の改善」、「薬をしっかり飲む・通院を継続する」という点について説明したいと思います。

生活習慣の改善

脂質異常症は暴飲暴食、運動不足、不規則な生活などがあると悪化することがわかっており、生活習慣と密接に関わっている病気と言えます。実際、これらの生活習慣を改善できると薬を使用しなくても脂質異常症が良くなることも珍しくありません。日常の一工夫で脂質異常症が良くなることもあります。例えば、次のことが挙げられます。

  • 外食、飲み会の回数を減らす
  • ご飯を満腹まで食べず、腹8分目程度にとどめる
  • 夕飯は寝る2時間前までに済ますようにする
  • 野菜を多めにとるようにする
  • 肉を食べる時は脂身を残す
  • 通勤に徒歩や自転車を取り入れる
  • エレベーターやエスカレーターを使わず階段を使うようにする

より細かい食事や運動のポイントについては「治療の章」でも説明しています。

生活習慣を変えるだけで脂質異常症が良くなってしまえば、薬を飲む必要がなくなり、薬の費用もかからなくなります。脂質異常症で生活習慣の乱れに心当たりのある方は、できるところからで構いませんので、改善していくことをお勧めします。

薬をしっかり飲む・通院を継続する

脂質異常症の方の中には、食事療法や運動療法のみでは十分改善せず、薬物療法が必要になることがあります。脂質異常症に高い効果のある薬の登場もあり、食事療法や運動療法だけで良くならなかった脂質異常症が薬物療法で劇的に良くなるということも珍しくありません。

一方で、一度開始した薬による治療を自己中断してしまう方もいます。具体的には以下のような理由が考えられます。

  • 症状があまりないので薬を飲む必要性を感じない
  • 薬代が高い、定期的な通院が大変
  • 薬物療法で脂質異常症が改善したことに安心した

脂質異常症は目に見える症状が現れにくい病気であり、治療の必要性を感じにくい病気ですが、狭心症心筋梗塞脳梗塞、閉塞動脈硬化症などの原因になるため、これらの病気を予防する意味でも脂質異常症の治療は重要です。費用については脂質異常症の治療薬には後発品(ジェネリック医薬品)があるものがあります。薬物療法を始めた直後の通院は、薬物療法の効果や副作用がないかを確認するため、短い間隔で必要になりますが、薬物療法を開始して脂質の値が安定している場合には、通院の間隔を伸ばせる場合があります。

薬物療法で脂質の値が改善した場合でも、薬をやめてしまうと脂質の値がもとに戻ってしまうことが珍しくありません。そのため、薬物療法は脂質の値が改善したあとも継続されることが多いです。ただし、薬物療法を開始して長期間、管理目標値を達成している場合は薬物療法を中止することもあります。

通院の間隔や治療内容につき、疑問点があれば担当の医師に遠慮なく聞いてみてください。

2. 脂質異常症と言われたが喫煙はして良いか?

タバコにはニコチンや一酸化炭素といった有害物質が多く含まれています。タバコに含まれている有害物質は、動脈硬化を悪化させることがわかっています。脂質異常症による動脈硬化を助長させない意味でも喫煙は望ましくないと言えます。

まずはご自身で禁煙に挑戦し、もし難しい場合には禁煙を専門としている外来(禁煙外来)を併設している病院やクリニックもあるので、一度相談してみると良いかもしれません。

また喫煙者のみではなく、まわりにいる非喫煙者もタバコの煙を吸う可能性があります。非喫煙者が喫煙者のタバコの煙を吸ってしまうことを受動喫煙と呼びますが、受動喫煙であっても悪影響があると言われています。もし、ご家族にタバコを吸われている人がいる場合は、受動喫煙を避けるためにご家族の協力も必要になります。

3. 脂質異常症は遺伝するか?

何らかの遺伝的な要因(先天的要因)も脂質異常症の発症に関わっているとされます。つまり、脂質異常症のなりやすさは遺伝すると考えられています。ただし、そのような人でも、遺伝子だけで脂質異常症になるかが決まるわけではなく、カロリーの摂りすぎや運動不足など生活習慣などの影響(後天的要因)も強く受けます。つまり、なりやすい体質と生活習慣の影響の両方があって初めて脂質異常症を発症する人が大半です。

一部の人ではありますが、脂質の産生や消費に関わる遺伝子に異常があることで重症の脂質異常症を持ち、家族が何人も同様の状態になるということがあります。中でも遺伝性の重症な高コレステロール血症を家族性高コレステロール血症と呼びます。家族性高コレステロール血症は遺伝的な影響を強く受けるため、生活習慣に関わらず、脂質異常症を起こしてしまいます。具体的に家族性高コレステロール血症は以下のような時に疑います。

  • LDLコレステロールの値が極めて高い
    • 15歳未満でLDLコレステロールが140mg/dL以上
    • 15歳以上でLDLコレステロールが180mg/dL以上(250mg/dL以上の時は特に強く疑われる)
  • アキレス腱や皮膚に黄色味を帯びたしこりがある(黄色腫)
  • 男性55歳未満、女性65歳未満で狭心症心筋梗塞を起こした血縁者がいる

家族性高コレステロール血症の診断には、遺伝子検査が必要になる場合もあります。家族性高コレステロール血症は食事療法や運動療法のみでは良くならないことが多く、専門施設で薬物療法を受ける必要があります。

参考:日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症について」

4. 脂質異常症にサプリメントは効くか?

最近ではω-3脂肪酸(オメガ3脂肪酸)のサプリメントやDHAのサプリメントなどが市販されています。サプリメントの中には、血液中の脂質に対する作用を持つと説明されるものがあります。たしかに、それらのサプリメントも脂質異常症に対して効果がある可能性はあります。しかし、病院で処方される脂質異常症の改善薬に比べると、有効性や安全性に関する試験が十分でないものが多く、効果があるとははっきり言えないというのが現状です。また、サプリメントの中には、医薬品との飲み合わせが悪いものもあるので、もしサプリメントを内服されている方は、担当の医師や薬剤師に相談することをお勧めします。