だいちょうがん
大腸がん
大腸の粘膜にできるがん。国内のがん患者数がもっと多く、死亡者数も女性において原因の1位
20人の医師がチェック 305回の改訂 最終更新: 2024.01.10

大腸がんの内視鏡治療:適応や治療内容について

大腸がんの内視鏡治療は深い層まで到達していないがんに適しています。注意するべき合併症としては、出血することや大腸に穴が開くことが数%程度あります。追加の手術が必要になることもあります。そのほか大腸がんの内視鏡治療の特徴を説明します。

1. 大腸がんの内視鏡治療はどんな時に行うの?

内視鏡

大腸がんの内視鏡治療の多くは、粘膜や粘膜下層の浅い部分までにがんがあり、深い層にまで到達していない場合に行われます。大腸がんがどのように進行するかは「大腸がんのステージのページ」で説明しています。

大腸がんの内視鏡治療には主に3つの方法があり、それぞれポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術、内視鏡的粘膜下層剥離術と呼ばれます。どの方法にするかは、がんの大きさ、深達度(がんがどのくらい深くまで達しているか)、形などを踏まえて決定します。

2. ポリペクトミーとは?

ポリペクトミーは、キノコのように飛び出した形のポリープ・がんに対して行う治療法です。大腸内視鏡に付いたスネアという輪っかの部分をポリープにかけ、電気を流して焼き取ります。ポリペクトミーで無理なく切除できるポリープの大きさは、2cm程度までであると言われています。

3. 内視鏡的粘膜切除術(EMR)とは?

内視鏡的粘膜切除術は、ポリペクトミーが対象とするような茎の部分がない平たいがんに対して行われることがあります。基本的にがんが粘膜にとどまっている場合に選択可能になります。がんの根元に生理食塩水などを入れて浮かび上がらせてから、スネアの部分で焼いて切り取ります。この治療は外来で行っている施設もあります。

4. 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とは?

内視鏡的粘膜下層剥離術は、2cmから5cmくらいの大きさの大腸がんに使われる治療法です。EMRと同じように浅い層のがんを切り取る方法で、粘膜下層の浅い部分までにがんがとどまっている場合に選択可能となります。EMRとは違ってスネアをひっかけるのではなく、電気メスでがんの周りに余白をとって切り込みを入れていきます。この治療は数日入院して行うことがほとんどです。

5. 内視鏡治療に合併症はある?

大腸がんの内視鏡治療によって起こる可能性がある問題(合併症)について説明します。内視鏡治療で重要視される合併症として、「出血」と大腸に穴が開く「穿孔(せんこう)」があります。このような合併症は、ポリペクトミーとEMRでは0.8%程度、ESDでは3.8%程度の割合で発生すると言われています。合併症はどんなに優秀な医師でもゼロにはできません。合併症の可能性をあらかじめ見込んでおいて対策することが大切になります。

大腸がんの内視鏡治療による出血や穿孔に対しては、出血部分の止血(電気で焼く、クリップで挟むといった対処)や、穿孔に対する手術を行うことがあります。

6. 内視鏡治療のあとはどんなことをする?

内視鏡治療で切り取った組織は回収され、顕微鏡で観察する「病理検査」によって、さらに詳細に調べられます。病理検査によって、切り取ったものが確かに大腸がんだったのか、それとも良性のポリープだったのか、大腸がんだとすればどの深さまで浸潤していたかといったことがわかります。

病理検査の結果によっては内視鏡治療では不十分だったと判断され、追加で手術する場合もあります。

内視鏡治療で想定通りがんを取り切れたとしても、再発には注意が必要です。がんの治療では、1個の細胞も残さず取り切れたと確かめる方法はありません。そのため、治療直後の検査で取り残しが見つからなかったとしても、再発する可能性がまったくないと言い切れることはありません。

内視鏡治療で取り除かれた早期がんに対しても、治療後定期的に大腸内視鏡検査などを受けることが大事です。