だいちょうがん
大腸がん
大腸の粘膜にできるがん。国内のがん患者数がもっと多く、死亡者数も女性において原因の1位
20人の医師がチェック 310回の改訂 最終更新: 2024.11.11

大腸がんの統計①:ステージ1,2,3,4の生存率、転移した時の生存率

大腸がんの生存率は進行度などからある程度予測できます。治療後5年以上生存できる人は少なくありません。統計データを見るとともに、自分がどの数字に当てはまるのかを正しく把握することが大切です。

1. 大腸がんの生存率のデータを調べるには?

大腸がんに限らずがんの生存率を調べたい場合には、「がんの統計」を見ると便利です。「がんの統計」は実際の患者の統計を集めた信頼できる資料です。

がんは最も死亡者数の多い病気です。2021年の1年間に、がんが原因でおよそ38万人が亡くなり、うち5.4万人ほどが大腸がんで亡くなっています。

1年間で大腸がんが見つかる人、大腸がんで死亡する人の数を表にまとめます。

【大腸がんの予測罹患数(2022年)】

性別

罹患数(全がん中の順位)

男性

89,500人(3位)

女性

68,700人(2位)

158,200人(1位)

(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」より)

【大腸がんの予測死亡数(2022年)】

性別

死亡数(全がん中の順位)

男性

28,500人(2位)

女性

25,500人(1位)

54,000人(2位)

(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」より)

他にもがんの情報をまとめたサイトは存在します。がんの情報を簡単に調べるためにネットは役に立ちます。

ただし、ネット上の情報は根拠不明のものも少なくありません。役に立つ情報とそうでない情報が玉石混交状態となっています。特に、がんに関しては、誤った情報を信じて行動すると大きな問題につながることも考えられます。

信頼できる情報だけを集めるには、できるだけ大学や公共機関が作ったサイトを使うなど、信頼できるサイトを見分けることが大切です。自分が見たサイトを主治医に見てもらうことも有効です。

このページでは統計データを理解する助けになることを説明します。

2. 大腸がんの生存率は年齢で変わる?

大腸がんの生存率と年齢は関係しますが、年齢だけで正確な予測はできません。

40歳で大腸がんになったら5年生存率は何%で70歳で大腸がんになったら5年生存率は何%といったようにはっきりとした数字を述べることはできません。しかし、高齢になれば生存率は低くなりやすいことが分かっています。

とはいえ、生存率は年齢だけでなくがんの状態によっても違います。大腸がんは「ステージ」や「分化度」によって細かく分類されます。大腸がんの中には生存率が比較的高いものも低いものもあります。

平均値で言うと高齢者の方が生存率が低い傾向はありますが自分にも当てはまるとは限りません。自分の生存率が知りたい方は、自分のがんがどういった状況で生存率はどの程度と予想しているかを主治医に聞いてみてください。

3. 大腸がんのステージごとに生存率は変わる?

がんのステージという言葉を聞いたことのある人は多いと思います。がんのステージは進行度を示します。進行しているほど統計的には生存率が低くなります。

がんのステージは客観的な評価で決まります。評価の基準は、腫瘍の深達度(T因子)・リンパ節転移の数(N因子)・遠隔転移の有無(M因子)の3つがあります。詳しい決め方は「大腸がんのステージの決め方」で説明していますので、ここでは簡単に紹介します。

各ステージの特徴を簡単にまとめると、下記のようになります。

  • ステージ0:がんが粘膜下層でとどまっていて、リンパ節や他臓器への転移はない
  • ステージⅠ:がんが固有筋層に達しているが、リンパ節や他臓器への転移はない
  • ステージⅡ:がんが漿膜を超えているが、リンパ節や他臓器への転移はない
  • ステージⅢ:がんの深さにかかわらずリンパ節に転移があり、他の臓器への転移はない
  • ステージⅣ:がんの深さやリンパ節転移の有無にかかわらず、他の臓器への転移がある

ステージ別大腸がんの5年生存率

5年生存率とは5年後も生きている人の割合のことです。がんの統計においては、ステージごとに5年生存率あるいは1年生存率(1年後に生きている人の割合)を計算することが多いです。大腸がんでもステージごとの5年生存率のデータがあります。

以下にその表を示します。

【大腸がんのステージ別5年実測生存率(全国がんセンター協議会加盟施設における)】

大腸がんのステージ(UICC)

5年実測生存率

82.7%

75.5%

68.3%

16.8%

(『がんの統計'23』を元に作成)

ステージごとの生存率を見ると、ステージが進行するほど生存率が低くなっていることがわかります。

ステージⅣはステージ分類では一番最後ですが、「末期がん」という言葉のイメージとはかなり違います。表のとおり、ステージⅣの大腸がんが見つかった人のうち20.7%は5年後も生存しています。「末期」の状態で5年間過ごせると言われると違和感がないでしょうか。ステージはあくまで大まかな分類であり、同じステージに分類される人でもひとりひとり症状や全身の状態は大きく違います。

表では5年生存率のことを「5年実測生存率」と書いています。「実測」という言葉は、「相対生存率」と区別する意味があります。

相対生存率というのは、がんがない場合と比べてどれぐらい危険かを示す数字です。5年生存率を調べるためには大腸がん患者を5年後まで追跡調査するのですが、5年後までに死亡する原因は大腸がんだけではありません。5年という期間は長いため、大腸がんは治ったけれども老衰で亡くなってしまったということも少なくありません。そこで、純粋に大腸がんによる影響を表すためには、他の原因で死亡することを計算に入れた指標が必要です。大腸がんがある人の5年生存率を、大腸がんがない人も含めた5年生存率で割ると、仮に大腸がんがまったく余命を縮めない場合は「100%」という数値になります。この指標を5年相対生存率といいます。

大腸がんの5年相対生存率

大腸がんのステージ別5年生存率

【大腸がんのステージ別5年相対生存率】

大腸がんのステージ

5年相対生存率

94.5%

88.4%

77.3%

18.7%

(「がんの統計 '23」を参考に作成)

相対生存率はがん以外で死亡する人数を除外していますので、相対生存率の方が実測生存率よりも高くなっています。ステージⅠの大腸がんなら、大腸がんがない人と5年生存率がほとんど変わらないことが示されています。5年相対生存率が99%というのは、「5年後まで99%生きられる」という意味ではないことに注意してください。5年後まで生きられる確率に近いのは5年実測生存率です。

実は対象者をさらに細かく分けたデータもあります。大腸は結腸と直腸に分けることができます。したがって大腸がんは結腸がんと直腸がんに分類できます。結腸がんと直腸がんを別に調べた生存率のデータが存在します。以下に表として示しますので参考にしてください。

【結腸がんのステージ別5年生存率】

結腸がんのステージ

5年実測生存率

5年相対生存率

90.3%

99.6%

81.2%

91.4%

77.5%

85.0%

18.8%

20.2%

(『がんの統計 '18』を参考に作成)

【直腸がんのステージ別生存率】

直腸がんのステージ

5年実測生存率

5年相対生存率

90.6%

97.8%

81.6%

91.4%

77.0%

82.3%

26.7%

28.1%

(『がんの統計 '19』を参考に作成)

実際のところ、生存率に関しては結腸がんも直腸がんも大きな差はありませんので、この表はあまり重要ではないかもしれません。しかし、大腸が結腸がんと直腸がんに分けられているのには意味があります。結腸がんと直腸がんの特に大きな違いは、手術の方法です。詳しくは、「大腸がんの手術法によって違うメリット・デメリット」で説明しています。

4. 大腸がんが転移したときの生存率は?

がんの転移とは、血液の流れやリンパ液の流れに乗ってがん細胞が別の臓器に移動して増殖を始めることを指します。「大腸がんの肝転移」とは、大腸がんのがん細胞が肝臓に移動したことを意味しています。

大腸がんの転移は、リンパ行性転移と血行性転移という2種類のしくみで説明できます。リンパ液の流れに乗って転移した場合をリンパ行性転移と言い、血液の流れに乗って転移した場合を血行性転移と言います。リンパ行性転移か血行性転移かで転移する先の場所が違います。

大腸がんのリンパ節転移(ステージ3)とその生存率

リンパ節は全身にたくさんある器官です。大腸がんのリンパ節転移は大腸のすぐ近くに見つかることが多いです。リンパ節転移がある大腸がんはステージⅢ以上に分類されます。

リンパ節転移はリンパ行性転移です。リンパ節転移は順々に隣のリンパ節に現れるという特徴があります。これはリンパ液がリンパ節から隣のリンパ節へと流れていて、離れた場所までリンパ節を通らずに流れる経路がないためです。そのためリンパ節転移が最初に現れる場所は通常、がんの周囲です。リンパ節転移を調べる際には、がんがある場所の周囲のリンパ節に注目することが特に重要です。造影CT検査などで大きくなっているリンパ節を探します。また、手術を行った場合も、大腸がんの周囲にあるリンパ節に変化がないかを慎重に調べます。

リンパ節転移が起こった場合はステージ3以上になります。ステージ3の治療では手術が可能であれば手術を行い、その後化学療法抗がん剤治療)を行います。ステージ3の大腸がんの人の5年生存率は次のようになります。

【ステージ3の大腸がん全体の生存率(全国がんセンター協議会加盟施設における)】

大腸がんのステージ

5年実測生存率

5年相対生存率

3

68.3%

77.3%

(「がんの統計 '23」を元に作成)

これらの統計では、おおよそ7割以上の方が、ステージ3の大腸がんと診断されても治療によって5年以上生存するということになります。

一般論としてはこの数字は決して低いものではありません。「転移がある」と言われると「末期がんではないか?」と動揺してしまうかもしれませんが、リンパ節転移だけでステージ3にあたる場合なら7割以上の人が5年後も生存しているのです。

大腸がんのステージ3と告知された方は、気持ちを落ち着かせたあとはしっかりと治療を受けられるように準備しましょう。

大腸がんの遠隔転移(ステージ4)とその生存率

遠隔転移がある大腸がんはステージ4です。ステージ4の中にはいろいろな場合が含まれるので、遠隔転移があるからといって必ずしも「末期がん」とは限りません。「末期がん」という言葉はステージのように明確には定義されていないのですが、ステージⅣの大腸がんが見つかってから5年以上生存する人も少なくないことからすると、ステージⅣのすべてを「末期がん」と呼ぶべきかには疑問があります。そこで、まず遠隔転移がある大腸がんはどんな状態かをもう少し説明します。

遠隔転移のほとんどは血行性転移です。遠隔転移はリンパ行性転移と異なり、大腸から離れた臓器にも突如として現れます。血管は遠くまでつながっていて、途中にリンパ節のような構造がなく、一度に流れていけるためです。

特に大腸がんは肝転移や肺転移、腹膜転移を起こしやすいことがわかっています。そのため遠隔転移がないか全身を調べる際には特に肝臓と肺、腹膜には注意が必要です。大腸がんの転移しやすい臓器と、それぞれの臓器で転移が見つかった割合のデータがあるので、表に示します。

【大腸がんの転移臓器とその割合】

肝臓

腹膜

10.9%

2.4%

4.5%

0.4%

0%

大腸癌研究会・全国登録 2000-2004年症例を元に作成)

遠隔転移がある場合、ステージⅣになります。ステージⅣの生存率は以下のとおりです。

大腸がんは遠隔転移が存在するステージ4の状態でも条件に合えば手術することができます。体力が落ちている人やがんが多数の臓器に転移している人は手術ができません。しかし、手術が可能であれば基本的には手術を行ってがんの根治を目指すことが勧められます。

次に示すのがステージ4の大腸がんの生存率です。

【ステージ4の大腸がん全体の生存率(全国がんセンター協議会加盟施設における)】

大腸がんのステージ

5年実測生存率

5年相対生存率

4

16,8%

18.7%

(「がんの統計 '23」を元に作成)

手術を行えた場合よりも生存率は低くなっています。しかしながら、他のがんの5年生存率よりは高い水準です。ステージ4の大腸がんと言われても、5年以上生存できる人が2割以上います。

また、この数字はさまざまな人の中での割合を見ているものですが、一人ひとりの生存期間にはばらつきがあります。自分にあった治療を行うことで、より長く生きられる確率を高めることが期待できますので、主治医とよく相談して自分に最適な治療を探しましょう。

5. 大腸がんの再発とは?

がんを切除し根治したと思われたあとで、一定期間を超えて再びがんが現れることを再発と言います。再発は見えない状態で潜んでいたがん細胞が再び腫瘍として大きくなった状態です。元々のがんのあった部位の付近で再発すること(局所再発)もあれば、遠隔臓器で再発することもあります(元々のがんとは関係ない別のがんが新しく発生した場合は再発とは言いません)。大腸がんはどの部位で再発することが多いのかを以下の表に示します。

【大腸がんの再発部位と再発の起こる割合】

再発部位

再発する割合

肝臓

7.1%

4.8%

局所(がんのあった部位の近く)

4.0%

吻合部(手術した断面)

0.4%

その他

3.8%

合計

17.3%

大腸癌研究会プロジェクト研究1991-1996年症例)

また、大腸がんの中でも直腸がんの方が結腸がんよりも再発しやすいことが分かっています。特にどの臓器で違いが出やすいかについてのデータもありますので紹介します。

【結腸がんと直腸がんの再発の起こる割合の違い】

再発部位

結腸がんの再発割合

直腸がんの再発割合

肝臓

7.0%

7.3%

肺*

3.5%

7.5%

局所*

(がんのあった部位の近く)

1.8%

8.8%

吻合部*

(手術した断面)

0.3%

0.8%

その他

3.6%

4.2%

合計*

14.1%

24.3%

大腸癌研究会プロジェクト研究1991-1996年症例)

ここで*の付いている部位では統計学的に差が出ています。直腸がんの方が再発が多いのでより注意が必要ですが、結腸がんでも無視はできません。いずれにしてもがんの治療後の再発の有無には細心の注意を払っていく必要があります。

大腸がんの再発を早く見つけるにはどうしたらよい?

大腸がんが再発していないかをできるだけ早く見つけるには、定期的に検査していく必要があります。ここで、大腸がんの再発は、手術してから5年以内に起こることがほとんどであることが重要です。このため、手術してから5年間は定期的な検査を行うことが推奨されています。

実際に行う検査は以下になります。

  • 問診・診察
  • 血液検査(腫瘍マーカー
  • 胸部CT腹部CT検査
  • 大腸内視鏡検査下部消化管内視鏡検査

また、ステージが進行しているがんほど再発しやすいことが分かっています。実際どの程度の頻度で再発するのかは下の表で示します。

【大腸がんのステージ毎の手術後再発の起こる割合】

大腸がんのステージ

再発する割合

3.7%

13.3%

30.8%

合計

17.3%

大腸癌研究会プロジェクト研究1991-1996年症例)

ステージⅠかステージⅡで手術した人に比べると、ステージⅢの大腸がんで手術を受けた人は、特に慎重に術後検査を行っていくことになります。

手術後の検査は有効なのか?

大腸がんは手術がうまくいってもいくらかの確率で再発します。再発を早く見つけて治療すれば、再発後の治療成功率が上がると考えられます。しかし昨今「手術後の検診や検査がどの程度必要なのか」という議論が一部でなされているのも事実です。実際に手術後の検査を行うことで良い結果が得られるのでしょうか?

実際のデータからは、手術後の検査を十分に行うことで、大腸がんの再発巣切除率や死亡率が改善するという報告があります。そのため、通常は手術後定期的に検査が行われます。

スケジュールについて詳しくは「手術後の検査スケジュール」で詳しく説明しています。

 

大腸がんが再発した場合の治療は?

大腸がんが再発した場合は、通常の大腸がんと同様にステージ分類がなされます。がんのステージと身体の状況を鑑みて治療方法が決まります。手術などの治療を経験した後の身体ですので、最初の治療前よりも身体の状態が悪くなっている場合があります。

治療の内容は、手術が可能であれば手術を行います。手術が難しい場合は全身化学療法・動注化学療法・熱凝固療法・放射線療法などを行う場合があります。またどの場合にも必要に応じた緩和医療を組み合わせて行います。

大腸がんが再発したら生存率は?

大腸がんが再発した場合の生存率に関して、明確な数字はありません。しかし、ステージが進行したら生存率が下がると考えていいです。また、手術や化学療法を受けることで身体の状態は悪くなっていることも多く、初発の大腸がんよりも再発の大腸がんの方が生存率が低いことも予想されます。

そのために再発を素早く見つける目的の定期検査を行います。また、再発を起こしにくいように、術後補助化学療法といって初発大腸がんの手術後に化学療法(抗がん剤治療)を行うこともあります。

参考文献

Joe J. Tjandra M.D., F.R.A.C.S. & Miranda K. Y. Chan M.B.B.S., F.R.A.C.S. Follow-Up After Curative Resection of Colorectal Cancer: A Meta-Analysis. Diseases of the Colon & Rectum volume 50, pages1783–1799 (2007)
Jeffery, M. et al. Follow-up strategies for patients treated for non-metastatic colorectal cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Nov 24.