緑内障とはどんな病気なのか:白内障との違いや症状、原因、検査、治療について
緑内障は40歳以上の人に多くみられる目の病気で、この病気は2018年では日本人の
1. 自覚症状がほとんどない緑内障(英語名:Glaucoma)とはどんな病気?
緑内障は眼圧(目の中の圧力)が上がることによって視神経(目で見たものを脳に伝える神経)に障害が起こる病気です。視神経に障害が起こると視野が狭くなったり欠けたりすることがあり、進行すると失明することもあります。しかし、初期は症状が乏しいために、進行するまで気づかないという厄介な病気です。
失明の原因としても見逃せない緑内障とはどんな病気なのでしょうか。
緑内障は治る病気なのか
緑内障で欠けてしまった視野は元に戻ることはほとんどありません。視野が
緑内障に注意が必要な年齢とは
緑内障は40歳以上で多く見られるようになり、その後加齢にともなって発病する人が増加します。日本の研究では、40歳以上の人の20人に1人が緑内障を発病しているという報告があります。
年齢を重ねるとともに注意が必要な緑内障ですが、少ないながらも子どもにも発病します。
子どもの緑内障は、隅角という目の一部分の発育異常によって起こり、発達緑内障ともいいます。この発達緑内障は1歳未満で見つかることがほとんどです。
緑内障と白内障の違いや併発について
名前は似ていますが、緑内障と白内障は別の病気です。ここでは2つの病気の違いや併発(同時に起こること)について説明します。
■緑内障と白内障の違いについて
緑内障と白内障とでは病気の原因が異なります。緑内障は「目の圧力(眼圧)の上昇」によって起こる病気ですが、白内障は「本来は透明な
緑内障の治療の目的は眼圧を下げることで、点眼薬が有効です。また、緑内障の影響で欠けてしまった視野は元に戻りませんが、きっちり治療することで、それ以上の進行を抑えることができます。
一方で、白内障の治療の目的は水晶体の濁りをとることです。初期には点眼薬で治療することもありますが、ある程度まで濁りが進むと、手術で濁った水晶体を取り出してその代わりにレンズを挿入します。
■緑内障と白内障は同時に起こることがある
緑内障と白内障は同時に起こることがあります。同時に起こっていたとしても、治療を行なえます。緑内障と白内障が同時にある人には、白内障の手術が行われることが多いです。濁った水晶体を取り出して、代りに眼内レンズが挿入される白内障の手術を行うと、眼圧が下がることが多いです。眼圧が下がる白内障の手術は、白内障だけではなく緑内障の治療としても効果が期待できます。(白内障の手術については「白内障の治療」を参考にしてください。)
2. 緑内障の症状について
緑内障の症状は病気の状況によって変わります。ここでは「初期症状」と「進行したときや末期の症状」、緊急で対応が必要な「急性緑内障発作」の3つに分けて説明します。
初期症状
初期の緑内障には症状がほとんどありません。特に、片目だけ緑内障を起こしている場合は、病気を起こしていない方の目が視野の異常を補うため症状に気づきにくいです。このため、初期には症状を自覚しないことも珍しくはありません。
進行したときや末期の症状
緑内障が進行すると、次のような症状が自覚されます。
- 暗転:視野の中で見えにくい場所が現れる
視野狭窄 :見える範囲が狭まる
病気がさらに進行して末期の状態に近づくと、暗転が増えたり、視野狭窄がきつくなったりします。緑内障による症状は眼圧を下げることで、進行を食い止められる可能性があります。視野の異変に気づいたらすみやかに医療機関を受診するようにしてください。
急性緑内障発作
一般的な緑内障の眼圧の上昇は緩やかですが、急激に眼圧が上昇することがあり、この状態を急性緑内障発作といいます。数時間から数日で失明することもある危険な状態なので、特に注意が必要です。
【急性緑内障発作の症状】
- 目の痛み
- 目のかすみ
- 目の充血
- 頭痛
- 吐き気
過去に緑内障の指摘を受けた人に、上記のような症状が現れた場合は、発作が起きた可能性を考えなくてはなりません。緑内障の中でも閉塞隅角緑内障(後述)の人に特に起こりやすいことが知られています。一方で、発作をきっかけにして緑内障が見つかることもあります。上記のような症状が現れて、改善しない場合は医療機関で原因を詳しく調べてもらってください。
3. 緑内障の原因について
緑内障は眼圧が上昇することによって視神経に障害が起こる病気ですが、眼圧が上昇する原因には大きく分けて2つあります。原因を深く理解するために必要な、眼圧の成り立ちや緑内障が起こるメカニズムについて説明します。
眼圧の成り立ちについて
ここまで緑内障の原因を「眼圧の上昇」と説明してきましたが、ここで、眼圧の成り立ちについて詳しく説明します。
眼圧は目玉の中の圧力のことで、房水という目の中を循環している液体の量の影響を受けます。房水は毛様体という場所から分泌されて、角膜と水晶体の間にあるスペースを満たしています。房水の量が過剰になると眼圧が上昇し、減ると眼圧は下がります。緑内障は房水が増加するメカニズムによって「閉塞隅角緑内障」と「開放隅角緑内障」の2つに分けられることが多いです。
【眼圧の成り立ち(目の断面図)】
閉塞隅角緑内障
閉塞隅角緑内障は隅角という場所の閉塞(または狭くなること)が原因で起こります。「眼圧とは」の復習になりますが、房水は毛様体という場所で作られ、その後、角膜と水晶体の間のスペースに流れて、目の外へ排出されます。目の外へ排出される出口の手前の部分が隅角です。隅角が狭くなると房水は出口から出て行きにくくなります。目の外に排出されにくくなった房水はスペースに溜まり続けるので、その量が過剰になってしまい、増加にともなって眼圧が上昇します。眼圧が上昇すると眼の裏側にある視神経に障害が及びます。このように、隅角が狭いことが原因で起こる緑内障を「閉塞隅角緑内障」と言います。
開放隅角緑内障
隅角の閉塞は緑内障の原因の1つですが、一方で隅角が閉塞していない緑内障もあります。隅角が正常な緑内障を開放隅角緑内障といいます。開放隅角緑内障は隅角ではなく線維柱帯の問題によって房水が過剰になり眼圧の上昇が起こったものです。
房水は隅角を通ってその奥にある線維柱帯から吸収され、目の外へ排出されます。線維柱帯に異常が起こると、房水の吸収が上手くいかず、その量が過剰になってしまいます。過剰な房水によって眼圧が上昇し緑内障が起こります。このように、房水の吸収が不充分なために起こる緑内障を開放隅角緑内障と言います。
4. 緑内障の検査について
視野の欠損や視力の低下などから緑内障が疑われる人には、次のような診察や検査が行われます。
【緑内障が疑われる人の診察や検査】
問診 - 身体診察
- 眼科検査
視力検査 - 視野検査
眼圧検査 - 隅角検査
眼底検査 - 光干渉断層計(O
CT )検査
この中では特に、眼圧検査と隅角検査、眼底検査が重要です。具体例を1つ挙げると、隅角検査では隅角の状態を調べることができるので、「閉塞隅角緑内障」と「開放隅角緑内障」のどちらかの判断が行われます。
それぞれの検査の詳しい内容は「緑内障の検査」で説明しているので参考にしてください。
5. 緑内障の治療について
緑内障の治療の目的は症状を悪化させないことです。症状の悪化を防ぐには眼圧を下げることが有効で、主な方法は次の3つです。
【緑内障の治療】
- 薬物治療
- 点眼薬
内服薬
- レーザー治療
- 手術
点眼薬を中心とした薬物療法が行われることが多いですが、病気や患者さんの身体の状態に合わせてレーザー治療や手術が行われることもあります。
薬物治療
薬物治療では主に点眼薬が使われます。
緑内障は角膜と水晶体の間のスペースに房水という液体が溜まりすぎることによって、眼圧が上昇する病気です。房水を減らすことで、眼圧を下げるのが点眼薬の狙いです。点眼薬は「房水の排出を促すもの」と「房水が作られるのを抑えるもの」の2つのメカニズムによってに大別されます。点眼薬には多くの種類があるので、眼圧や重症度を参考に適した点眼薬が選ばれ、1種類で治療することもあれば、複数のこともあります。
点眼薬で眼圧を下げることができなければ内服薬も検討されますが、強い副作用が出ることがあるので、使われることは多くはありません。
レーザー治療
レーザー治療は閉塞隅角緑内障の人に行われることが多いです。レーザーで虹彩という場所に穴を開けて、防水の流出路を作り出します。詳しくは「緑内障の治療」を参考にしてください。
手術
次のような状態の人に手術が検討されます。
- 薬物治療やレーザー治療の効果が小さくて眼圧が十分に下がらない人
- 閉塞隅角緑内障のために緑内障発作を起こす可能性がある人
手術の方法はいくつかありますが、いずれも房水の流れを改善することが目的です。緑内障の程度や目の状態に応じて適した手術の方法が選ばれます。手術の詳しい内容などについては「緑内障の治療」を参考にしてください。
【参考文献】
日本緑内障学会緑内障