2017.08.10 | ニュース

入院して治ったと思ったら脈拍が40、夜勤医師が偶然発見した原因

髄膜炎後の徐脈の症例報告

from Case reports in medicine

入院して治ったと思ったら脈拍が40、夜勤医師が偶然発見した原因の写真

心拍数は1分あたり60程度が正常とされ、心臓の病気などで少なくなることがあります(徐脈)。原因不明の徐脈でペースメーカー植え込みが予定されていた患者で、偶然原因が見つかった例が報告されました。

ギリシャの研究班が、感染症何らかの病原体が引き起こす病気。細菌、ウイルス、真菌などが原因となることが多い。人から人へ直接うつらないものも含めた総称で入院中に原因不明の徐脈脈がゆっくりなこと(50-60回/分以下とすることが多い)。必ずしも病気によるものであるとは限らないが現れ、ペースメーカー不整脈の治療に用いる小型の機械。心臓に電気刺激を与えて、脈を一定にコントロールする植え込み予定の数日前に原因が偶然発見された70歳男性の例を、専門誌『Case Reports in Medicine』に報告しました。

この男性は、激しい頭痛、発熱、意識の混乱を訴えて入院しました。

診察と検査の結果、細菌性髄膜炎と診断され、抗菌薬細菌感染症に対して用いられ、細菌の増殖を防ぐ、もしくは殺菌する薬。ウイルスや真菌(かび)には効果がない抗生物質微生物が産生する細胞の増殖や機能を阻害する物質。抗菌薬・抗ウィルス薬・抗がん薬を含む)を使った治療で入院3日目に症状は完全になくなりました。

入院4日目に、心拍数が1分あたり40にまで少なくなり、軽いめまいの症状が現れました。心電図心臓から出ている弱い電気を感知して、心臓の状態を調べる検査では心拍数が少ない以外の点で心臓の電気的活動は正常でした(洞徐脈)。

 

髄膜炎の治療後だったことから、徐脈の原因として頭蓋内圧頭蓋骨の内側の圧力のこと。脳腫瘍や水頭症、脳浮腫、出血などの「場所をとる」病変があると、頭蓋骨の内側の圧力が上がることになる亢進が疑われました。

髄膜炎は、脳や脊髄脳から脊椎の中へ向かって通っている太い神経。脳と体の各部位を行き来する指令を伝える役割をもつの周りを包んでいる髄膜に細菌感染症を起こす微生物の1つ。ウイルスと比較して10-100倍の体の大きさをもつが感染する病気です。髄膜炎により、頭の中の水分が多くなり、脳の周りの圧力(頭蓋内圧)が高くなる(亢進する)ことがあります。

頭蓋内圧が上がることで脳の機能に影響が出ます。心臓も脳からの信号を受けているので、髄膜炎により頭蓋内圧が上がったとすれば徐脈の説明がつくかもしれません。

しかし、ほかに頭蓋内圧亢進を疑わせる症状などはなく、眼底検査眼底鏡などの道具を使って、眼の内部にある眼底の状態を観察する検査でも頭蓋内圧亢進の証拠は見つかりませんでした。

徐脈の原因として薬剤も考えられます。しかし、すべての投薬を中止しても徐脈はなくならず、原因不明のままでした。

24時間心電図首からかけられるサイズの心電図計を丸一日間着用して、心臓の状態を調べる検査。通常の心電図検査よりも情報量が多いを取り続ける検査(ホルター心電図首からかけられるサイズの心電図計を丸一日間着用して、心臓の状態を調べる検査。通常の心電図検査よりも情報量が多い)でも、心臓超音波検査空気の細かな振動である超音波を使って、心臓の状態を調べる検査心エコー空気の細かな振動である超音波を使って、心臓の状態を調べる検査)でも、徐脈の原因は見つかりませんでした。心拍数は24時間のうち最も少ないときで1分あたり30でした。

原因不明のままでしたが、徐脈の治療としてペースメーカー植え込みが検討されました。

手術予定日の数日前に、夜勤の医師が偶然、患者の妻が患者に目薬を差しているのを発見しました。目薬は緑内障の治療に使うチモロールでした。

チモロールは、副作用として徐脈やめまいを起こすことがあります。

医療スタッフは誰もチモロールの目薬が使われていることを知りませんでした。目薬は徐脈が見つかる前日の夜から使われていました。

目薬をやめると徐脈と症状が改善しました。退院後の診察でも徐脈の再発はありませんでした。

 

目薬を使っていることを医療スタッフに伝えていなかったために、副作用の発見が遅れた例の報告を紹介しました。もし目薬が偶然発見されていなければ、患者は不要なペースメーカーを植え込まれていたかもしれません。

この目薬について詳しくは報告されていません。患者の緑内障に対して正しく処方されたものだったかどうか、報告からは読み取れません。

間違った理由で患者や妻の自己判断により使われていたとすれば、それ自体が危険なことです。

正しく処方されたものだったとしても、入院中にほかの病気について伝えなかったこと、使用中の薬についても伝えなかったことなどは危険です。緑内障がある人には悪化させる恐れがあるため使えない薬もたくさんあります。

医師からすれば問診医師が、ある症状や病気についての経過を聞き、質問を繰り返すことをしっかりして、ほかの病気がないか、ほかに使っている薬がないかを漏らさず聞き出すことが大切と言えるでしょう。しかし、入院中に新しい薬を使い始めることまで予想するのはやはり無理があるかもしれません。

薬の情報を間違いなく医療スタッフに伝えるには、お薬手帳をきちんと使うことも役に立ちます。また、「薬」と言われたときに目薬や塗り薬、サプリメントなどは関係ないと思えるかもしれませんが、こうしたものが影響する場合もあります。

使っている「薬」をこまめに伝えることが、不要なペースメーカーを植え込まれる事態を防ぐことにもなるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

An Unexpected Cause of Bradycardia in a Patient with Bacterial Meningitis.

Case Rep Med. 2017

[PMID: 28713431]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]