入院して治ったと思ったら脈拍が40、夜勤医師が偶然発見した原因

心拍数は1分あたり60程度が正常とされ、心臓の病気などで少なくなることがあります(徐脈)。原因不明の徐脈でペースメーカー植え込みが予定されていた患者で、偶然原因が見つかった例が報告されました。
細菌性髄膜炎の治療後に徐脈が現れた70歳男性
ギリシャの研究班が、
この男性は、激しい頭痛、発熱、意識の混乱を訴えて入院しました。
診察と検査の結果、細菌性髄膜炎と診断され、
入院4日目に、心拍数が1分あたり40にまで少なくなり、軽いめまいの症状が現れました。
検査でも原因不明、薬をやめても原因不明、ところが
髄膜炎の治療後だったことから、徐脈の原因として
髄膜炎は、脳や
頭蓋内圧が上がることで脳の機能に影響が出ます。心臓も脳からの信号を受けているので、髄膜炎により頭蓋内圧が上がったとすれば徐脈の説明がつくかもしれません。
しかし、ほかに頭蓋内圧亢進を疑わせる症状などはなく、
徐脈の原因として薬剤も考えられます。しかし、すべての投薬を中止しても徐脈はなくならず、原因不明のままでした。
原因不明のままでしたが、徐脈の治療としてペースメーカー植え込みが検討されました。
手術予定日の数日前に、夜勤の医師が偶然、患者の妻が患者に目薬を差しているのを発見しました。目薬は緑内障の治療に使うチモロールでした。
チモロールは、副作用として徐脈やめまいを起こすことがあります。
医療スタッフは誰もチモロールの目薬が使われていることを知りませんでした。目薬は徐脈が見つかる前日の夜から使われていました。
目薬をやめると徐脈と症状が改善しました。退院後の診察でも徐脈の再発はありませんでした。
使っている薬はちゃんと伝えよう
目薬を使っていることを医療スタッフに伝えていなかったために、副作用の発見が遅れた例の報告を紹介しました。もし目薬が偶然発見されていなければ、患者は不要なペースメーカーを植え込まれていたかもしれません。
この目薬について詳しくは報告されていません。患者の緑内障に対して正しく処方されたものだったかどうか、報告からは読み取れません。
間違った理由で患者や妻の自己判断により使われていたとすれば、それ自体が危険なことです。
正しく処方されたものだったとしても、入院中にほかの病気について伝えなかったこと、使用中の薬についても伝えなかったことなどは危険です。緑内障がある人には悪化させる恐れがあるため使えない薬もたくさんあります。
医師からすれば
薬の情報を間違いなく医療スタッフに伝えるには、お薬手帳をきちんと使うことも役に立ちます。また、「薬」と言われたときに目薬や塗り薬、サプリメントなどは関係ないと思えるかもしれませんが、こうしたものが影響する場合もあります。
使っている「薬」をこまめに伝えることが、不要なペースメーカーを植え込まれる事態を防ぐことにもなるかもしれません。
執筆者
An Unexpected Cause of Bradycardia in a Patient with Bacterial Meningitis.
Case Rep Med. 2017
[PMID: 28713431]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。