[医師監修・作成]アルツハイマー病の検査について:問診、身体診察、質問式検査など | MEDLEY(メドレー)
あるつはいまーびょう(あるつはいまーがたにんちしょう)
アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)
認知症を引き起こす原因として最も多い病気。記憶や思考能力がゆっくりと障害されていく
19人の医師がチェック 325回の改訂 最終更新: 2023.01.22

アルツハイマー病の検査について:問診、身体診察、質問式検査など

アルツハイマー病が疑われる人には診察や検査が行われます。診察や検査ではアルツハイマー病かどうかを判断することに加えて、その程度についても調べられます。このページでは多岐に渡るアルツハイマー病の診察や検査について詳しく説明していきます。

1. アルツハイマー病の診察・検査の目的について

アルツハイマー病が疑われる人には診断のために診察や検査が行われます。

【アルツハイマー病の診察や検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 質問式検査
  • 血液検査
  • 画像検査
    • 頭部CT検査
    • 頭部MRI検査
    • SPECT検査
  • 髄液検査

アルツハイマー病の最も確度の高い診断方法は、脳の一部を取り出して調べる病理学的検査になります。しかしながら病理学的診断は身体への負担が極めて大きいため行われることはまずありません。そのため通常は、診察や質問式検査、画像検査から得られた結果を総合して、アルツハイマー病かどうかを判断します。

なお、病理学的検査は、死亡後の解剖であったり、他の脳の病気の手術で脳の一部を取り出した時に行われることがあります。

以下ではそれぞれの診察・検査の内容について詳しく説明します。

2. 問診

問診とはお医者さんと患者さん(または付添いの人)が対話形式で行う診察方法のことです。症状・身体の状況の把握や、患者さんが持つ背景の確認などが主な目的です。具体的には、患者さんが困っている症状について詳しく話し、その内容に基づいてお医者さんがいくつか質問をします。

【認知症の人への質問例】

  • 症状や身体の状況についての質問
    • 受診のきっかけになった症状はどんなものか
    • 症状が現れたのはいつくらいか
    • 症状が変化することはあったか
    • 最近頭を強く打つことはあったか
  • 患者さんの背景についての質問
    • 現在治療している病気
    • 過去に治療した病気
    • 血縁関係がある人の病気
    • 服用している薬の内容
    • 飲酒歴
    • 喫煙歴

お医者さんは問診で得た情報から可能性が高そうな病気を順位付けします。そのため、なるべく正確で多くの情報をお医者さんに伝えられると、受診してから診断までがスムーズになります。問診を上手に受けるコツはメモの活用です。事前に伝えたいことや聞きたいことをメモにしておくだけでも、伝え漏らしをなくし、随分違ったものになります。上の質問例を参考に準備してみてください。なお、「服薬している薬の内容」については「お薬手帳」を使うと手間も省けますし、正確性も高まります(参考:他の病気の治療薬が原因でアルツハイマー病に似た症状が現れる場合があります)。

3. 身体診察

一般的には問診に続いて、身体診察が行われます。身体診察ではお医者さんが直接患者さんの身体を見たり触ったりしてくまなく調べます。身体診察にはいくつか種類がありますが、その中でもアルツハイマー病が疑われる人には神経学的診察が重要視されます。神経学的診察とは神経や筋肉の状態を詳しく調べるものです。内容をかいつまんで説明すると、筋肉の力を調べるために、医師と力比べをしたりします(徒手筋力テスト)。また、専用の道具を使って身体の一部を軽く叩いたり、撫でたりして神経機能を評価します。

4. 質問式検査

アルツハイマー病では認知機能が低下します。認知機能とは理解・判断・論理などの知的な活動を司る力のことで、質問式検査で詳しく調べられます。よく行われる方法として改訂長谷形式認知症スケール(HDS-R)とミニメンタルステート(MMSE:Mini-Mental State Examination)があり、ともに点数をつけることで認知機能を評価します。有用な質問式検査ですが、この検査だけでアルツハイマー病の診断ができるわけではありません。質問式検査で認知機能の低下が見られなくても、可能性が残る場合にはこれ以降で説明する検査が追加されます。

5. 血液検査

アルツハイマー病の診断を血液検査だけで行うことはありません。腎臓や肝臓の機能低下、ビタミンの欠乏、感染症、ホルモンの異常といったものでもアルツハイマーに似た症状が現れます。血液検査の主な目的はこれらの原因が隠れていないかを調べることになります。

6. 画像検査

画像検査とは身体の中の状況を画像化する検査のことを指します。アルツハイマー病が疑われる人には脳を詳しく調べるために頭部の画像検査が行われます。

【アルツハイマー病が疑われる場合の画像検査】

  • 頭部CT検査
  • 頭部MRI検査
  • SPECT検査
  • DATスキャン

それぞれについて詳しく説明します。

頭部CT検査

CT検査では放射線を利用して身体の中を画像化します。頭の中の状態を詳しく調べることができ、出血の有無や脳の形、脳室(脳の隙間)を調べるのに有効です。 CT検査についてより詳しく知りたい人は「こちらのページ」を参考にしてください。

頭部MRI検査

MRI検査では磁気を利用して体内を断面図として画像化します。MRI検査では放射線を使わないので、被ばくの心配はありません。CT検査に比べてより詳細に脳の状態を調べることができますが、検査時間がより長く、20分から30分かかります。またペースメーカーなどの機械や金属製の器具を埋め込んでいる人には行えない場合があります。 MRI検査についてより詳しく知りたい人は「こちらのページ」を参考にしてください。

SPECT検査

SPECTはSingle Photon Emissiion Computed Tomographyの略で、日本語名は単光子放射線コンピュータ断層撮影です。SPECT検査では脳の血流を評価できます。具体的には、血流が良い部分ほど赤っぽく表示され、悪い部分は濃紺になります。中間の場合は黄色から緑色になります。アルツハイマー病の人では病気の初期段階から特定の部位(前頭側頭葉や後部帯状回)に血流の低下が確認されます。

7. 髄液検査

髄液脳脊髄液の略で、脳や脊髄の周りを包み込むように満たしている液体のことです。外からの衝撃を吸収したり浸透圧を保ったりするなどして脳を保護する役割があります。脳や神経の病気になると、その影響で髄液に異常が見られる場合があるので、髄液検査をして調べることがあります。アルツハイマー病の人の髄液にはAβ42の低下・総タウ蛋白の上昇などがみられ、診断に役立ちます。しかしながら、髄液検査は身体の負担になることや、他の検査で診断が十分可能な場合がほとんどであることから、行われるのはまれです。

髄液検査についてより詳しく知りたい人は「こちらのページ」を参考にしてください。

8. 病理学的検査

アルツハイマー病の原因は、脳にアミロイドβやタウ蛋白という物質が溜まることによって、細胞が変化することだと考えられています。少し専門的な話になりますが、アルツハイマー病の人の脳を顕微鏡で観察すると、「老人斑の出現」「神経原性線維変化」「神経細胞脱落」といった特徴が見られます。

病理学的検査とは身体の一部を取り出して顕微鏡で調べる検査のことを指します。例えば胃に腫瘍が見つかった場合でいうと、腫瘍が悪性のもの(がん)か良性のものかは胃カメラ内視鏡検査)でみるだけでは結論付けられません。腫瘍の一部をつまみ出して、顕微鏡でがん細胞の有無を確認することによって決着がつけられます。つまり、病理学的検査は最終判断の材料になるわけです。

脳細胞に特徴的な変化がみられるアルツハイマー病でも病理学的検査が有用そうですが、診断のために脳の一部を取り出すのはあまりにも伴うリスクが高すぎます。また、このページで説明した他の診察や検査を組み合わせることで診断は十分だと考えられていることもあり、基本的に病理学的検査を行うことはありません。このため、病理学的検査によってアルツハイマー病と診断されるのは主に死後に解剖された人など特殊なケースになります。

参考

・田崎義昭, 斎藤佳雄/著, 「ベッドサイドの神経の診かた」, 南山堂, 2016

・河村満/編, 「認知症神経心理学的アプローチ」, 中山書店, 2012

・水野美邦/編, 「神経内科ハンドブック」, 医学書院, 2016