アルツハイマー病の治療について:薬物療法、非薬物療法
アルツハイマー病を完治に導く治療法は現在のところ確立されていません。このため、治療の目的は病気の進行を遅らせたり、症状を和らげることになります。アルツハイマー病の症状は「中核症状」と「周辺症状」に分けられ、それぞれの症状に合わせた治療が行われます。また、治療法は薬物療法(薬を使った治療)と非薬物療法(薬を使わない治療)の2つに大別されます。
1. 薬物療法:薬を使った治療
アルツハイマー病の薬物療法の目的は進行の抑制と症状の緩和です。中核症状と呼ばれるものに対しては、進行の抑制が目的になり、周辺症状に対しては症状の緩和が目的となります。中核症状と周辺症状とはアルツハイマー病の症状を2つに大別する言葉で「こちらのページ」で詳しく説明しています。先に症状のページに目を通してからこれ以降を読み進めてもよいです。
中核症状に対する薬物療法
中核症状とは認知機能の低下を原因として起こる症状を指します。認知機能とは理解・判断・論理などの知的な活動を司る力を指します。現在は中核症状を完全に治す治療がないのですが、進行を緩やかにする効果が期待できます。
【中核症状】
- コリンエステラーゼ阻害薬
- NMDA受容体拮抗薬
- メマンチン(商品名:メマリー®)
アルツハイマー病では脳内の
個々の薬の詳細については「こちらのページ」で説明しているので、参考にしてみてください。
周辺症状に対する薬物療法
周辺症状は中核症状に付随して起こる反応や行動を指します。行動症状と心理症状の2つに大別することが多いです。
【アルツハイマー病の主な周辺症状】
- 主な行動症状
- 暴言・暴力
- 徘徊
- 多動
- 主な心理症状
- 無気力
- 易怒性:怒りっぽくなる
- 被害妄想
このように周辺症状は多様な形で現れますが、症状ごとに適切に薬物療法を行なうことでコントロールが可能になります。治療薬も多岐に渡り、「抗うつ薬」「
2. 非薬物療法:薬を使わない治療
薬以外の治療として、認知機能の低下を防ぐために脳を活性化する方法もあります。 例えば、見当識障害(場所や時間がわからなくなること)に対しては、リアリティ・オリエンテーションという方法が有効とされています。内容をかんたんに説明すると、少人数でグループを作り、「今日はひな祭りだから3月3日ですね」「ここは小学校ですね」といったふうに患者さんの見当識を補助する対話を重ねていきます。 その他では、回想法といって、患者さんに過去の出来事を話してもらう方法もあります。アルツハイマー病の人は新しいことは覚えられないことが多いのですが、だいぶ昔の記憶については忘れにくいことがわかっています。この現象を生かして、過去の思い出を語ってもらうことによって、脳を活性化し認知機能の強化をはかります。 リアリティ・オペレーションや回想法のより詳しい説明およびその他の非薬物療法については「こちらのページ」で説明しているので、参考にしてみてください。
参考
・田崎義昭, 斎藤佳雄/著, 「ベッドサイドの神経の診かた」, 南山堂, 2016
・河村満/編, 「認知症神経心理学的アプローチ」, 中山書店, 2012
・水野美邦/編, 「神経内科ハンドブック」, 医学書院, 2016