[医師監修・作成]アルツハイマー病とはどんな病気なのか? | MEDLEY(メドレー)
あるつはいまーびょう(あるつはいまーがたにんちしょう)
アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)
認知症を引き起こす原因として最も多い病気。記憶や思考能力がゆっくりと障害されていく
19人の医師がチェック 325回の改訂 最終更新: 2023.01.22

アルツハイマー病とはどんな病気なのか?

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は認知症を引き起こす病気の1つです。脳細胞の変化が原因で、記憶障害や思考力の低下などが起こり、日常生活に支障をきたします。このページでは概要として、症状や原因、検査、治療などを網羅的に説明します。

1. 認知症の原因となるアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)とはどんな病気?

物忘れを主な症状とする認知症はいくつかの病気が原因となります。その中でも最も多いと考えられているのがアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)で、認知症の人の半分程度を占めると考えられています。このページではアルツハイマー病のあらましについて順次説明していきます。なお、認知症の原因となる他の病気については「こちらのページ」を参考にしてください。

2. アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の症状について

アルツハイマー病の症状は中核症状と周辺症状の2つに大別されます。 中核症状とは認知機能(理解・判断・論理などの知的活動を司る力)の低下によって現れる症状を指します。例えば、記憶障害が起きたり言語の理解・発語がおぼつかなくなったりという症状です。

【アルツハイマー病の主な中核症状】

  • 記憶障害
  • 実行機能障害(または遂行機能障害):筋道をたてた行動ができなくなる
  • 失語:言語の理解や発語ができなくなる
  • 視空間障害:視力に問題はないにも関わらず、ものをみつけたり認識ができなくなる

一方、周辺症状とは中核症状の影響で引き続いて起こる症状を指します。

【アルツハイマー病の主な周辺症状】

  • 暴言・暴力
  • 徘徊
  • 多動
  • 無気力
  • 易怒性:怒りっぽくなる
  • 被害妄想

これらの症状が、「他人が自分の物を盗んだという妄想を抱く」「うろうろと家の周りを歩き回って帰ってこない」「突然暴言を吐いたり物を投げつけてくる」などさまざまな形で現れます。症状がひどくなると、本人・家族のQOL(Quality of life:生活の質)が著しく低下するので、治療や介護によるコントロールが重要になります。 症状のより詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。

3. アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の原因について

アルツハイマー病の主な原因は、脳の神経細胞にタウ蛋白やアミロイドβという物質が蓄積することによって、脳細胞が変化することだと考えられています。専門的には変性疾患というグループの一つになります。タウ蛋白が蓄積する原因については主に加齢や遺伝が関与していると考えられており、その他では糖尿病・高血圧といった生活習慣病や喫煙の関与も考えられています。

4. アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の検査について

アルツハイマー病が疑われる人には次のような診察や検査が行われます。診察や検査ではアルツハイマー病かどうかと、アルツハイマー病の程度の2つが調べられます。

【アルツハイマー病の検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 質問式検査
  • 血液検査
  • 画像検査
    • 頭部CT検査
    • 頭部MRI検査
    • SPECT検査
    • DATスキャン
  • 髄液検査
  • 病理学的検査

アルツハイマー病と似た症状が現れる病気は他にもいくつかあります。例えば、アルツハイマー病と同じように脳細胞が変化する病気では、レビー小体型認知症多発性硬化症があり、記憶力障害などの症状が現れます。また、一部のビタミン欠乏や感染症でもアルツハイマー病に似た症状が見られることがあります。このような似た病気の中からどの病気が症状の原因となっているかを突き止めるため、複数の検査が行われます。 また、病気の進行具合も診察や検査で把握できます。進行具合の把握はお医者さんが治療計画を立てるのに役立ちますし、患者さんを支える家族にとっても役立ちます。 それぞれの検査について詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。

5. アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の治療について

現時点ではアルツハイマー病を完全に治す方法は見つかってはいませんが、病気の進行を遅らせたり症状を和らげるための方法はあります。その方法は、薬物療法(薬を使った治療)と非薬物療法(薬を使わない治療)の2つに大別されます。また、アルツハイマー病の症状は大きく中核症状と周辺症状の2つに分けられますが、それぞれで効果のある治療が異なります。

中核症状に対する治療

先に説明した通り、中核症状とは認知機能(理解・判断・論理などの知的な行動)の低下が原因となって起こる症状です。中核症状の治療は薬物療法が主体になります。治療に使われる薬は主に「コリンエステラーゼ阻害薬」と「NMDA受容体拮抗薬」の2つです。いずれの薬にも効果が認められます。しかしながら、完治は難しく、治療の目的は進行をできるだけ遅らせることになります。

周辺症状に対する治療

周辺症状とは中核症状にともなって起こる行動や反応をひとまとめにしたものです。 周辺症状は中核症状に比べて多様です。そのため、治療も多岐に渡ります。例えば、徘徊は薬物療法だけでは対応が難しく、なるべく徘徊が起きないような声かけや環境づくりが重要です。一方で、薬物療法が効果的な症状もあり、例えば、無気力に対しては「抗うつ薬」が有効になりますし、易怒性に対しては「抗精神病薬」が有効になります。また、リハビリテーションも症状の緩和に有効です。

治療に関してより詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。

6. アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)について知っておくとよいこと

アルツハイマー病の予防については全世界で研究が進められていますが、残念ながら、現時点では確実な方法がありません。また、完治する方法も見つかってはいません。このため、なるべく早くみつけて、進行を遅らせるのが、上手な病気との付き合い方と言えます。

ただ、物忘れは誰にでもあるものですし、ある程度の年齢であればなおのこと記憶力の低下は自然なことだと思いがちで、医療機関で相談するのが後手後手になっている人が少なくありません。あるいは、認知症と診断を受けたくないという気持ちも少なからずあるものかもしれません。しかしながら、最初に述べたように、完治が困難でも早期発見により、進行を遅らせることは十分に可能です。

認知症は向き合うのが難しい病気だとは思いますが、心配な人は勇気をもって相談してみてください。もし認知症でなければ一安心ですし、認知症の疑いがあったとしてもすぐに治療を始めることができます。

なお、受診のコツや本人・家族が知っておくとよいことについては「こちらのページ」で説明しているので参考にしてください。このページが皆さんの後押しや支えになれれば幸いです。

参考

・田崎義昭, 斎藤佳雄/著, 「ベッドサイドの神経の診かた」, 南山堂, 2016

・河村満/編, 「認知症神経心理学的アプローチ」, 中山書店, 2012

・水野美邦/編, 「神経内科ハンドブック」, 医学書院, 2016