[医師監修・作成]多発性硬化症とはどんな病気なのか? | MEDLEY(メドレー)
たはつせいこうかしょう
多発性硬化症
免疫の異常が原因で、中枢神経(脳や脊髄)が障害を受ける病気。障害を受けても回復することがあり、症状が出たり消えたりする。
13人の医師がチェック 227回の改訂 最終更新: 2021.11.26

多発性硬化症とはどんな病気なのか?

多発性硬化症は神経難病の1つです。治療で一旦症状が落ち着いても再発することが多いので病気との付き合いも長くなります。ここでは、多発性硬化症の概要として、症状や原因、検査、治療を説明します。

1. 多発性硬化症とはどんな病気なのか?

多発性硬化症(英語名:multiple sclerosis;MS)は厚生労働省の定めた指定難病の1つです。国内では比較的まれな病気なため、多発性硬化症という名を聞いてもどんな病気か想像はつきにくいものです。ここでは多発性硬化症がどのような病気なのかやどんな人に起こりやすいのかを説明していきます。

また、トピックとして、つい一昔前まで多発性硬化症の一部であると考えられていた「視神経脊髄炎」との違いについても説明します。

多発性硬化症は中枢神経に(脳や脊髄)に障害が起こる病気

多発性硬化症は中枢神経に多発性に脱髄(だつずい)が起こる病気で、再発と寛解を繰り返すことが特徴の1つです。これだけでは専門的な言葉含まれていて分かりにくいので、次に用語とともに詳しく説明していきます。

■中枢神経とは脳や脊髄のこと

神経は「末梢神経」と「中枢神経」の2つに大別できます。中枢神経とは脳と脊髄(背骨の中にある神経)のことを指し、そこから枝分かれして全身に広がっている神経を末梢神経といいます。そして、多発性硬化症は脳や脊髄に起こる病気です。

■多発性硬化症は中枢神経の脱髄疾患

神経の長く伸びた突起部分は軸索と呼ばれ、電気信号はここを通って伝達されます。神経には、軸索が髄鞘(ずいしょう)で覆われているタイプのものがあります。髄鞘の役割は神経の電気信号が伝わるスピードを早めることです。この髄鞘がダメージを受ける病気のことを脱髄疾患と言い、神経の電気信号の伝導速度が遅くなりさまざまな症状が現れます。

【脱髄が起きた神経】

脱髄が起きた神経

■多発性硬化症は脳や脊髄、視神経に多発性に病変が現れる

多発性硬化症は脳や脊髄の複数箇所に起こること(多発性)が特徴の1つです。脳や脊髄はその場所ごとに異なる役割を担っているので、障害されて現れる症状はさまざまです。

■多発性硬化症は再発と寛解を繰り返す病気

再発とは抑えられていた症状が再び現れることです。一方、症状が抑えられている状態のことを寛解といいます。再発と寛解を繰り返すことが多発性硬化症の特徴の1つです。再発の間隔は人それぞれで、年に数回起こる人もいれば、数年に一回の人もいます。

多発性硬化症はどんな人に起こりやすいのか:患者数・好発年齢・性別

次に、多発性硬化症の患者さんの人数と、発病しやすい年齢、発病しやすさの男女での違いについて説明していきます。

■多発性硬化症の患者さんの人数について

日本で行われた調査結果によると、患者さんの数は約12000人で、10万人あたり10人程度と考えられています。

■発病しやすい年齢について

どの年齢でも発病することはありますが、20代から30代に発病しやすいと考えられています。子どもや高齢者に発病することは比較的少ないです。

■男性と女性での発病のしやすさについて

多発性硬化症は女性に多い病気です。女性の患者数は男性の2倍から3倍に上るとされています。

かつては多発性硬化症の1つのタイプと考えられていた視神経脊髄炎との違い

トピックとして視神経脊髄炎についても説明します。

視神経脊髄炎は視野と視力の障害に加えて足の麻痺が起こる病気です。この症状は多発性硬化症でも起こることがあるので、かつては多発性硬化症の1つのタイプと考えられていましたが、近年、この2つは別の病気であることがわかりました。視神経脊髄炎の発病には血液中の抗アクアポリン4抗体という物質の増加が関与しており、これは多発性硬化症ではみられることはほとんどありません。

多発性硬化症の概要はこの後説明していきますが、視神経脊髄炎については「視神経脊髄炎の基礎情報ページ」を参考にしてください。

2. 多発性硬化症の症状について

脳や脊髄のあちらこちらに障害が起こる多発性硬化症では、さまざまな症状が現れます。次が主なものです。

【多発性硬化症の主な症状】

  • 手や足が動かしにくくなる
  • 感覚に異常が起こる
  • ものが見えにくくなる
  • 排泄行為がうまくできなくなる

上記の症状以外にも痛みやめまい、性機能障害(性行為ができなくなる)、認知症倦怠感といった症状が現れます。また、再発した時には、それまでの症状が必ずしも繰り返されるわけではなく、まったく違う症状が現れることがあります。再発になるべく早く気づいて治療をするためにも、どのような症状が起こりうるかを知っておくことが大切です。

症状の詳しい説明は「多発性硬化症の症状」を参考にしてください。

3. 多発性硬化症の原因について

多発性硬化症の原因ははっきりとはわかってはいませんが、「免疫機能の異常によって起こる病気」だと考えられています。免疫機能は細菌ウイルスなどの外敵を攻撃して身体を守ってくれるものですが、異常が起こると、自分の身体を攻撃してしまうことがあり、このような病気を自己免疫疾患と言います。

ただ、多発性硬化症を起こす免疫機能の異常がどのようにして起こるかについては、まだはっきりとしたことはわかってはいません。

4. 多発性硬化症の検査について

多発性硬化症が疑われる人に行われる診察や検査の目的は「多発性硬化症と診断すること」と「多発性硬化症の重症度を把握すること」です。

【多発性硬化症の診察や検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 画像検査
    • 頭部MRI検査
    • 頭部CT検査
  • 髄液検査
  • 誘発電位検査

どの診察や検査も診断の手がかりになりますが、なかでも頭部MRI検査と髄液検査は診断の決め手になることがあるので重要です。それぞれの検査について詳しい説明は「多発性硬化症の検査」を参考にしてください。

5. 多発性硬化症の治療について

多発性硬化症の治療は時期によって異なり「発病した直後に行う治療」と「再発を予防するための治療」、「後遺症に対する治療」の3つに分けられます。

発病した直後に行う治療:急性期の治療

発病したばかりの頃はステロイド薬を使って治療します。ステロイド薬には炎症を抑える効果があり、多発性硬化症の症状を抑えるのに有効です。ステロイド薬はパルス療法という大量のステロイドを点滴する方法で用いられます。ステロイドパルス療法は有効な治療ですが、なかには効果が乏しい場合もあり、その際には血液浄化療法という方法が検討されます。血液浄化療法は血液を身体から抜き出して機械で不要な成分を取り除き、再び身体に戻す治療です。ステロイドパルス療法や血液浄化療法によって症状が抑えられた後には、再発を予防する治療を行います。

再発予防の治療

多発性硬化症は再発を繰り返す特徴があるので、症状が落ち着いた後は再発予防の治療が行われます。再発の予防には次のような薬が用いられます。

【多発性硬化症の再発予防に使う薬】

これらの薬を使うことで再発の可能性を低くすることができます。どの薬も効果がありますが、病気の状態と患者さんの身体の状態を考慮して薬が選ばれます。薬の詳細な説明は「多発性硬化症の治療」を参考にしてください。

後遺症に対する治療:リハビリテーション

多発性硬化症では症状が残る(後遺症)ことがあります。 多発性硬化症の症状はさまざまなため、その後遺症も人によって異なります。後遺症を和らげたり、機能を元の状態に近づけるにはリハビリテーションが有効です。

リハビリテーションの方法は主に次の3つです。

  • 理学療法:日常生活の基本動作(歩く、座るなど)
  • 作業療法:日常生活での細かな動作(食事をする、着替えをするなど)
  • 言語聴覚療法:話すことと飲み込む動作

患者さんの後遺症に合わせてリハビリテーションが組み合わされます。詳しい内容については「多発性硬化症の治療」を参考にしてください。

6. 多発性硬化症の疑問や悩み

多発性硬化症は再発を繰り返すので、その分病気と向き合う時間も長く、疑問や悩みを抱きやすいとよく耳にします。ここでは拾いきれなかった内容は「多発性硬化症の疑問や悩み」で取り上げて説明しているので、参考にしてください。

参考文献
・「神経内科ハンドブック」(水野美邦/編集)、医学書院、2016
・難病情報センターホームページ「多発性硬化症/視神経脊髄炎」(2019.3.20閲覧)