たはつせいこうかしょう
多発性硬化症
免疫の異常が原因で、中枢神経(脳や脊髄)が障害を受ける病気。障害を受けても回復することがあり、症状が出たり消えたりする。
13人の医師がチェック 228回の改訂 最終更新: 2022.02.28

多発性硬化症の症状について

多発性硬化症は脳や脊髄の障害がいくつもの箇所で起こる病気です。脳や脊髄は場所によって担っている役割が異なるので、障害が起きた場所に応じてさまざまな症状が現れます。ここでは、多発性硬化症で現れる症状と再発した時の症状について説明します。

1. 多発性硬化症の症状

多発性硬化症は脳や脊髄のあちらこちらが障害を受ける病気です。脳や脊髄は筋肉や臓器に司令を出しますが、場所によって担っている役割が異なります。障害を受ける場所は人によって違うので、現れる症状も人それぞれ異なります。

多様な症状の中でもよくみられるのは次のものです。

【多発性硬化症の主な症状】

  • 手や足が動かしにくくなる
  • 感覚に異常が起こる
  • ものが見えにくくなる
  • 排泄行為がうまくできなくなる

この他にも痛みやめまい、性機能障害(性行為をする力が低下する)、認知症倦怠感などさまざまな症状が現れます。上のリストにあげた代表的な症状について、この後もう少し詳しく説明します。

手や足が動かしにくくなる

手や足に力が入りにくくなり、動作に支障が現れます。例えば、歩きにくくなったり、ものをつかみにくくなったりします。症状が現れるのは片側のこともあれば両側に現れることもあります。

感覚に異常が起こる

感覚の異常は、ものの温度を感じ取れなくなくなる、痺れる、ヒリヒリする、痛むなどさまざまな形で症状が現れます。特に、首を曲げると、腰から足にかけて電気が走るような感覚が現れる症状(レルミッテ徴候)が特徴的です。感覚の異常は持続するときもあれば、一時的にに現れる場合もあります。

ものが見えにくくなる

目の前がぼやける、視野の一部が欠ける、ものが二重に見えるといった症状が現れ、ものが見えにくくなります。見えにくさとともに、目の奥に痛みを感じることもあります。

排泄行為がうまくできなくなる

排尿や排便といった排泄行為を司る神経にも影響が出ることがあり、排泄行為が上手くできなくなります。具体的には、頻尿になったり、排尿が上手くできなくなったり、残尿感を感じたりします。排便への影響としては便秘や腹痛、お腹の張りなどが現れます。

2. 多発性硬化症の再発時の症状

多発性硬化症は再発しやすい病気です。再発時の症状の特徴は、以前の症状とは違う症状が現れやすいことです。例えば、手や足の脱力で多発性硬化症が見つかった人が再発した場合、手や足の脱力以外の症状が出て再発が見つかることがあります。多発性硬化症が再発したときは、できるだけ早く治療を開始するのが良いと考えられています。再発に備えて、上記のうち経験していない症状についても頭の中に入れておいてください。

参考文献
・「神経内科ハンドブック」(水野美邦/編集)、医学書院、2016
・難病情報センターホームページ「多発性硬化症/視神経脊髄炎」(2019.3.2閲覧)